東方高次元   作:セロリ

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一応、投稿できなかった日があったので、纏めて投稿です。


74話 流石にそれは無かったか……

そこまで酷くなくて良かったよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、話してもらおうじゃないか。なぜ妖怪と密通していたのかを」

 

これは想定してはいたが、何とも痛い質問である。確かに家族、第二の故郷であるこの諏訪地方に隠して、妖怪との深い関係を持っていたことについては言い訳のしようが無い。

 

ソレを今の状況で隠すつもりは全くない。ただ、これがもし彼女らの言う事が、俺の予想している言葉だとしたら反論はする。

 

俺は目の前にどっしりと構えて座る2柱の神に、視線を合わせる。

 

彼女らの視線は、全ての者の心を見透かすような極めて透き通った水のような目をしており、またその水のような目の中に激しい怒りを感じ取る事ができる。

 

此処で俺が下手な嘘をつけば、彼女らに対しての背信行為になる上に、今まで俺の安否を気にかけていてくれた彼女らを侮辱してしまう事になる。

 

だから俺は先ほど考えていたように、素直に話そうと思う。

 

だが、いざ話そうとするが、正直に言うと怖い。まるで小さい頃に、親に怒られているかのような心境にさせられる。

 

それほど俺にとって彼女らの存在が大きく見えてしまうのだ。神奈子との体格差は大して変わらない。むしろ俺の方が少し背が高いくらいである。

 

さらに諏訪子に至っては神奈子よりも背が小さいのだ。普通なら恐怖や緊張感を抱く事など無いだろう。

 

しかし、今は俺に圧倒的に非がある上に、俺もその非の事を認めているのだから、相乗効果として出てきてしまっているのだろう。

 

俺は正座したまま、彼女らに向かって口を開き、話していく。

 

「最初の妖怪は――――っ」

 

と話し始めた所で、横やりが入る。

 

「ちょっと待て。……まさか複数なのか?」

 

と、その言葉を言ったのが神奈子であった。その顔は、覆われた手によって見ることは叶わなかったが、それでも呆れているのと、怒りが表れているという事だけは予想できる。

 

俺は、やはり複数という事も直前まで隠していたという事も、怒りの大きさを肥大化させることにつながってしまうだろうと思った。

 

そしてさらには俺がこれから言うであろう妖怪は、日本における代表的な大妖怪とも言うべき存在であり、当然のことながらこの2柱のブラックリストにも載っているであろう存在なのである。

 

まず最初の風見幽香は、その圧倒的かつ暴力的な力と妖力を持ち、妖怪人間問わずから畏れられている存在。そう世間では、一般に語られている。

 

鬼のように、笑いかければ泣く子も黙り、嘘をつけば命をとられる。そんな噂まで立つほど畏れられているのだ。

 

ただその表側とは違い、心の内ではその圧倒的な力の代償として得ざるを得なかった孤独に心を痛めていたのである。

 

俺は彼女と出会ったのは、偶然の産物であったかもしれない。だが、それに後悔はない。

 

その事を伝えるべく、まず最初の幽香について答えることとした。

 

「はい、仰る通りに一人ではなく複数であり、まず最初に話す人物は風見幽香です。御二方も御存じでしょうが、あの花妖怪の風見幽香です」

 

俺が幽香の名前を出した瞬間に露骨な反応を見せる。諏訪子は、帽子を深く被ったまま此方に顔上半分を見せずに、ただ口を固く閉ざしたままであり、まるで聞きたくないとでも言うかのように。

 

そして神奈子は俺をより一層睨みつけ、今にも攻撃を繰り出してきそうな敵意すら感じてしまう。

 

俺はその様子を見ながら、突き放された感覚を覚え、何とも先が話しづらくなってしまう。しかし、一度彼女らに話すと決めたからにはソレを完遂しなければならない。

 

元々攻撃されるという想定もしている上に、関係断絶ということもありうるのだ。おまけにこれ以上話しても話さなくても結果は変わらないであろう。

 

そう思いながら俺は彼女たちをさらに見つめて口を開く。

 

「では続きを話します」

 

すると、諏訪子は相変わらず黙ったままだが、神奈子は俺に

 

「続けてくれ」

 

と、話す事を促してくる。

 

俺はそれに素直に従いながら話していく。

 

「私はある日、風見幽香の討伐の依頼を受けました。……依頼を受けた経緯は色々あるので詳しくは覚えてはいませんが、その討伐の達成条件として、風見幽香だと特定できるものを持って来いとのことでした。もちろん自分は討伐に行きましたが、そこで会った風見幽香は、噂とは随分違った妖怪だったのです」

 

俺はそこまで言ってから一つ間を置き、深呼吸してからさらに続きを話していく。

 

「出会った風見幽香は、確かに強大な力の持ち主でもありました。しかし、彼女の心は孤独から解放されたいという感情でいっぱいになっていたのです。私はその事を知った瞬間に討伐をする事ができなくなり、任務は失敗に終わることとなりました。ただ、それで終わったわけではなく、自分は彼女からの申し出から友人となりました。……そしてさらに過去の話を聞いていくと、噂とは全く違い彼女は基本的に戦いをせずに、降りかかる火の粉を払うだけの妖怪でした」

 

そして俺は続けて藍の話題へと移っていく。

 

八雲藍。彼女もまた孤独な妖怪の一人であり、幽香同様俺の大切な人の一人である。彼女は、俺に会うまでは様々な国を渡り歩き、人間に愛されようと必死になっていたらしい。

 

しかし、彼女は人間から迫害されようとも、人間に愛されたいという気持ちでその生をつぎ込んでいた。ただ愛されたいという彼女の気持ちをどうして拒否する事ができようか?

 

確かに俺の中にも、色々と顔や性格等といった要素も判断材料になってはいたであろう。しかし、彼女との関係が深くなるごとに、彼女と関係を持った事を良しと思える自分がいるのだ。俺はそれに後悔するつもりはない。

 

俺は、彼女らに話す前に、自分の中の藍という存在のあり方や大切さを確認して口を開く。

 

「そして、次は白面金毛九尾の狐である八雲藍についてです」

 

その言葉と同時に今度は諏訪子からの威圧感が強まってくる。大体は予想がつくが、俺の関係している妖怪が、強力な妖怪だから怒りを隠せないのだろう。

 

俺はそれに仕方のない事だと思いながらも、彼女らに説明をしていく。

 

「彼女は言い伝えでは、傾国の美女とも言われるほどの力と美貌を持ち合わせております。そして彼女の目的は人間を弄び滅ぼすのが目的だったとも言われています。しかし、実際には彼女は違うのです。彼女は人間に愛されたいがために人間の世界に溶け込んだだけであり、実際には彼女が害ある行動をしたわけではないのです」

 

俺はさらに言葉をつづけていく。偽りのないように。伝わるように。理解してもらえるように。

 

「そして最後の人物は、八雲藍の主である八雲紫です。…………八雲紫は「もう良いっ!」――――」

 

俺が話している途中で突然大声で諏訪子が遮ってきた。その声はあまりにも大きな声であり、空気を震わせながら飾られている皿などを割ってしまうほどの圧力を生じさせていた。

 

もはや俺の話している事があまりにも気に入らない内容であったためか、それとも俺に対する信頼等が崩れていくのが耐えきれなくて無理矢理遮って来たのか。

 

それを俺が判断することなどできはしないのだが、彼女の硬い表情からはそのような負の面しか読み取れない。

 

また神奈子は俺から視線をずらし、全てを諏訪子に任せると言った感じで諏訪子の方を見ていた。

 

その表情からは、俺に対しての評価等を得るという事はできず、ただ突き放すといった印象の方が強い感じである。

 

そしてしばらくの沈黙の後、諏訪子から小さな声が発せられた。

 

「…………………耕也」

 

そう言いながらムクリと立ち上がり、此方にゆっくりと歩いて近づいてくる。

 

その足取りは今までの諏訪子からは考えられないほどユラユラとしており、それだけで俺の心を震え上がらせるほどであった。

 

ただただ、俺は目の前にいる諏訪子の歩きをゆっくりと見ている事しかできない。まるで金縛りにあったかのように身体が動かないのだ。

 

やがて俺が動けないうちに諏訪子は目と鼻の先まで接近し、俺座っている位置にまで腰を落とす。

 

その目には、いつも紫達が見せるような光のないぼんやりとした眼ではなく、激情を宿す厳しい眼であった。

 

今まで見てきた中でも一番のきつい眼。諏訪大戦の時にすら見せなかったこの目は、一体どれほどの怒りを溜めこんでいるのだろうか?

 

そう思っているうちに諏訪子は俺の方に手を伸ばして、勢いよく胸倉を掴み、口を開く。

 

「お前は、お前はそれで良いのか? 人間と妖怪は相容れぬ存在。……お前はそれを破ったがために……破ったがためにっ!」

 

大きな声で俺を叱責したかと思うと、掴んだ腕を前に倒し、俺を押し倒してそのまま俺に顔を近づけて叫び始める。

 

先ほどよりも目は激しくなり、呼吸は乱れ、目は血走る。もはや誰にも止められないほどの激情を宿していた。

 

「お前が、お前がその選んだ道は、お前の名誉や財産を全て失う結果につながったのだぞっ!? 確かにその妖怪達にとってはお前の存在は救いになったかもしれないっ! だが、お前の行為は自らを破滅させる行為なのだぞ!? お前は一体何故こんな事を。何故こんな事を!?」

 

「グッ…………!」

 

胸倉を掴まれているために、上手くしゃべる事ができない。唯、諏訪子の言い分も理解できる。

 

妖怪の救いになるのは構わないが、お前が破滅したら本末転倒であろう。と。

 

だが、俺は何度も頭の中で反芻していたように、この事については後悔はしていない。

 

しかし、俺が反論しようとすると、口を開く前に俺の口に手で蓋をし、さらに叫び散らす。

 

「お前はもう地上で普通に暮らすことはできない。もう地上にお前の居場所は無くなってしまったんだっ! 言っている事が分かるか!? …………お前は不老でこれからもずっと生き続ける…。お前が生きている限り、地上にお前の居場所はないのだっ!! お前の存在はもう人間からすれば悪の権化と同義であり、二度とその悪評が払拭されることはないのだぞ!? 分かっているのかぁ!?」

 

俺は諏訪子のあまりの剣幕に言葉を返す事ができなかった。初めて見る諏訪子の此処までゆがんだ顔。それを初めて目にした衝撃というのもあったのだろう。

 

過去にあった諏訪子の顔を思い出しながら俺はただ叫び続ける諏訪子を見ていた。

 

……いつ何時でも俺などの家族には優しい笑みを浮かべていた諏訪子。彼女は祟り神ではあった。恐怖を与え、それに伴う信仰を集めて自らの糧とし、またその糧の中から民草に豊作等を与えて国を栄えさせてきた諏訪子。

 

そう、俺と出会ってからはそんな顔をしなかった諏訪子が今俺に初めて見せる今にも泣きそうな怒り顔。

 

そしてそのままの顔で、諏訪子はついにボロボロと涙をこぼしてくる。

 

「何で……こんな事になるまで…………もっと私達を頼ってくれても……良いじゃないか…………? …………お前は優し過ぎるんだよ……」

 

それに俺は静かに呟くように諏訪子へ口を開く。

 

「それでも俺は後悔してませんよ。……確かに頼るべきでしたね。……申し訳ありませんでした」

 

そういうと、諏訪子はそのまま俺の服に顔を落して静かに、長く泣き続ける。

 

俺はその小さく埋もれる頭に手を乗せ、緩く撫でてやる。

 

本当にこれからが大変だというのが、諏訪子からの言葉から再認識する事ができた。

 

俺がこれから……おそらく幻想郷ができるまで……いや、できてもまだ冷却期間が必要であろう。

 

まだ俺の事を知っている人がいるはずだから。言い伝えというモノがどれほど長く強く伝わるかが良く分かるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくした後、俺達は気まずい空気が流れながらも、一応夕食を共にするという変な構図が出来上がってしまっていた。

 

静かに飯を食べながら、2柱と目を合わさず話さずにいると、神奈子が一言つぶやく。

 

「耕也。……これからどうするんだ? ずっと地底に居るというのも精神的にも良くないのではないか?」

 

「はい、確かにそうではありますが、一応気分転換にも地上にちょっと首を出す程度のことはしているので大丈夫かと。それに仕事が地底にありますし、恩人の方々もいますので」

 

そういうと、神奈子は、何とも言えない表情をしながら焼き魚の身を口に運びながら短く返答する。

 

「そうか」

 

と、その表情は口調とは裏腹に何か言いたそうなモノとなっている。

 

おそらく、その表情から予測できる事は、何か俺に対しての支援のような事をしたいと言った感じだろうか?

 

だが、この空気は本当に気まずい。神奈子は何とか話したのだが、諏訪子とはあれから全く会話を交わしていない。

 

その表情ま、無表情に近いモノがあり、怒っているのか、悲しんでいるのかすら判断できないのだ。

 

確かにそれはやむなしというべきものがあったが、それにしてもこの空気は俺がいてはいけないようにすら感じてしまう。

 

俺は何とかこの空気を払拭したいと思い、諏訪子に聞く事にした。

 

「あの、……諏訪子様、俺の封印の影響で信仰とかに影響は…ありましたか?」

 

すると、俺が突然声をかけたためか諏訪子はびくりと肩を震わせて、箸を落としそうになってしまう。

 

手の上で踊る箸を何とか捕まえて、ホッとため息を吐く諏訪子は、薄く笑みを浮かべながら

 

「いや、ほとんどないよ。……関係があるなんてほとんど知られていないからね……耕也が此処に直接来てくれたおかげでね」

 

一応直接この本社に来ていた事が功を奏したようだ。

 

彼女らももちろんこの情報が入った瞬間に、俺との関係があったという事を隠ぺいしただろうし、彼らもそこまで俺の事を詮索していたわけではなかったのだろう。

 

だから今回は信仰の減少を防ぐ事ができた。本当に不幸中の幸いというべきか何と言うべきか……。

 

俺はその事に安堵のため息を吐き、諏訪子の方を見て一言言う。

 

「良かったです……。それでも御二人に御迷惑をおかけした事には違いありません。申し訳ありませんでした」

 

と、俺が頭を下げて再び謝罪をする。

 

すると、すこしだけ間が空いてから神奈子から言葉が返ってくる。

 

「いや、もう良い。お前が後悔してないのなら…………なあ、諏訪子?」

 

そう言いながら神奈子は諏訪子の方を見て返答を促していく。

 

その神奈子の行動を受けて諏訪子も、俺の方を見て答えてくれる。

 

「まあ、もう言いたい事は言ったしね……あまり無理はするんじゃないぞ?」

 

神奈子と諏訪子の言葉を聞くと、やはりどうしても嬉しいという気持ちが湧いてきてしまい、自然と頬が緩んでしまう。

 

どうしても感情を隠すのが苦手な俺は、神奈子たちの前でその表情をさらけ出していた。

 

どうもその姿が不気味だったせいか、諏訪子からツッコミが飛んで来る。

 

「耕也……不気味だからやめてくれ…」

 

思わずその言葉に俺は表情を元に戻す羽目になり、ジト目になりながら諏訪子に渋々謝る。

 

「すんませんでした」

 

そういうと、諏訪子も此方にジト目になりながら口を開いてくる。

 

「何だいその態度は。……お前はもう少し神に対しての態度を改めるべきだ。……この変態め」

 

流石に変態という言葉に対しては、俺も反論したいので口を開いて大急ぎで言葉を吐き出す。

 

「へ、変態? 俺が変態なわけないでしょう。 一体全体この俺のどこが変態なんですか?」

 

そう俺が反論するも、諏訪子は俺の方を憐れんだ目で見るだけであり、ため息を吐きながら一言だけ言った。

 

「手遅れだな……」

 

その後、何故か神奈子まで口論に参加するようになってしまい、決着方法として何故か将棋をする羽目になってしまった。

 

……そして結果は俺の惨敗で、その一日は変態と呼ばれ続ける羽目になった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして就寝時、俺達は特に情報漏洩等によるカチコミもなく、極めて平和に一日を終えることができた。

 

左から神奈子、俺、諏訪子と川の字に並んで寝ている俺達は、照明スタンドを一つだけ点けて、地底での生活について話していた。

 

「なあ変態。……変態は、今何の仕事をしているんだ?」

 

と、諏訪子が言ってくる。さすがに俺は変態と呼ばれ続けるのはあまり気分が良くないので、呼称を変えてもらおうと思う。

 

「あの、……諏訪子様? 変態という呼び方はそろそろ御控頂きたいかなあ。と、思うのですが」

 

そういうと、此方をギロリと諏訪子が首だけを回して睨みつけ、話し始める。

 

「変態なのだから仕方が無いだろう? 何だ何だ……大体3人と肉体関係持ってるなんて聞いてなかったぞ。しかも妖怪だ妖怪!」

 

そう言いながらゲシゲシと布団ごと蹴ってくる。

 

諏訪子から伸ばされる足は、やはり身長のせいか短く、布団に対しての衝撃が小さい。

 

俺はため息を吐きながら蹴られるのは勘弁と嘆願する。

 

「わ、分かりましたから蹴るのは勘弁して下さいな。…………そうですね、仕事は酒屋で配達とか並べたりする感じですね」

 

そういうと、神奈子は急に欲がこもった目になり、此方をクルリと見てくる。

 

その表情は金を見つけた人間と同じように喜んでおり……、いや、これは最早欲塗れの人間だろ。

 

そして神奈子はその表情のまま嬉々として口を開く。

 

「酒屋だと!? ……なあ、耕也。定期的に来る時には酒を持ってこい。いいな?」

 

と、涎までたらしそうな勢いでまくしたててくる。

 

俺はその表情と口調に、思わず笑ってしまいながら神奈子に了承する。

 

「分かりました。持って行きますから安心して下さい」

 

そう俺が神奈子に言うと、神奈子はその場で腕を振り上げて喜びを表現する。

 

「いよっしっ! これで酒の心配は…………ん?」

 

と、喜んだかと思えば何とも言えない不思議な表情をしながら神奈子は布団の中で考え始める。

 

やがて何かを思い出したのか、俺の方を見てニヤニヤしだす。

 

「あの、神奈子様?」

 

と、俺が神奈子様に問うと、神奈子はゆっくりと頷きながら口を開く。

 

「耕也……お前確か酒を創造できたよな?」

 

俺は嫌な予感がしながらも、嘘をついても仕方が無いので素直に答える。

 

「はい、その通りですが……」

 

すると、神奈子は布団から這い出して、俺の両肩をガシリと掴んで言ってくる。

 

「耕也。明日、倉に一杯の酒を創造しろ。いいな?」

 

俺はその言葉に驚きはするのだが、その他にもっと驚きがあった。

 

神奈子が布団から布団から這い出た際に、帯が解けてしまったのか、寝巻きが乱れて、その大きな胸が毀れかかっていたのだ。

 

俺はそこに目が釘付けになりながら神奈子に言う。

 

「あ、あの神奈子様。……御酒は良いのですが、……その、胸が」

 

俺が注意すると、神奈子は身体を起こして目を自身の胸に向ける。そして向けた瞬間に自分の寝間着の惨状を理解し、一気に顔が赤くなる。

 

「いやぁっ!!」

 

と、かわいらしい悲鳴を上げて布団にもぐりこみ、慌ててモゴモゴと服を直してそのまま黙りこんでしまった。

 

俺はその様を見てから漸く脳が活性化し、謝る事にした。

 

「あ、す、すみませんでした……」

 

そういうと、返って来たのは神奈子の声ではなく、諏訪子の声であった。

 

「ド変態め……」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は、あれです。あっちで見ていて下さった人は分かると思いますが、次はアレを投稿します。

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