東方高次元   作:セロリ

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54話 これは喜ばしい事なのだろうか……

俺はただ防衛しただけであって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ははは……、お二人ともどうしてここに?」

 

俺はすぐさま幽々子の両手を解放してやり、彼女を背にして紫達と正面から向き合う。

 

正直なところ、ものすごく怖い。俺はただ危険回避しようとしただけなのになぁ……。

 

しかし、紫は俺の行動の最後の方しか見てなかったらしく、俺の行動が変態以外の何ものでもないかのような目で見てくる。

 

「どうしてここに居るかですって? あれよ……」

 

そう言いながら静かに部屋の隅を指差す。俺は釣られるようにその方向を凝視する。

 

ああ、そうか。俺のせいじゃねえか。こんちくせう。あの時大きな音を立てながら引きずり出したせいか……。

 

俺は思わず苦い顔を浮かべてしまう。それに気付いたのか、紫は実に良い笑顔を浮かべながら俺に一歩詰め寄る。

 

「夜中にあんな音を立てられたら……ねぇ? 気付かない方がおかしいでしょう?」

 

と、俺の失態が功を成したかのような口調で言ってくる。

 

はい、全く持ってその通りであります。全部俺が悪うございました。

 

だが、俺にも正当な理由があるので、すこし言いづらいが正直に言う。

 

「いやいや、これは俺のせいじゃないんですってば。むしろ俺は被害者だったり……信じてくれますよね……?」

 

俺が信じてくれますようにと思いながら紫に言ってみたのだが、紫はニコニコしながら

 

「あらあら、それは違うのでしょう? これはどう見ても貴方の強姦現場にしか見えないのだけれど……?」

 

ですよね~、と思いながら俺も紫の意見に心の内で賛成する。紫の見た部分は俺が幽々子を取り押さえている所のみ。

 

おまけに俺の能力をおおよそは知っているため、俺が幽々子を簡単に取り押さえられることも分かっているのだ。

 

つまりは、今現時点において俺の状況は非常に悪い。それも紫と幽々子の両者に挟まれるという最悪な形で。

 

これは……命蓮寺での出来事よりも酷いな……。

 

「違う、違うんです紫さん。本当に俺は幽々子さんを犯そうだなんてしてません。ただ危険回避をしたっ!?」

 

紫になおも弁解をしていた俺だったのだが、思わぬ衝撃に言葉を切らしてしまう。

 

その衝撃の源は背後からであり、気付いた時には両腕を胸板あたりにまで回され、拘束されていた。もちろんやったのは幽々子。

 

「さあ、紫っ! 犯人は捕まえたわよ。好きに料理して頂戴?」

 

いやいやいやいやいやいや。それは無いだろうっ! いっくら何でも無茶苦茶すぎるっ!?

 

俺は突然の行動に驚き、幽々子の両手を引っぺがそうとする。

 

「ちょっと、何やってんですか! 幽々子さん! 俺何も悪い事してないでしょうが。幽々子さんっ!?」

 

わちゃわちゃと慌てながら必死に離そうとするのだが、案外がっしりと両腕を組んでおり、なかなか引き剥がせない。

 

それを好機と見たのか、紫は俺に一気に近づき、扇子で少々俯き加減の俺の顎を持ちあげこちらの目を見るようにさせる。

 

その顔にはちょっとした嗜虐心が垣間見えており、愉悦感あふれる笑みを浮かべている。

 

やっぱり紫も妖怪なのだなと思ってしまう。やはり手負いにはかなりの……Sですな。

 

「本当に節操無いわねえ。……一体どうして幽々子を襲う気になったのかしら?」

 

「いやいや、ですからそれは幽々子さんが、俺にですね……あ~、俺にですね……」

 

言ってしまっていいのかどうか少々悩んでしまう。俺の中に少しだけ不安が湧きでてくる。やはり、あの時に思ったように紫と幽々子の関係が崩れてしまうのを恐れている自分がいる。

 

でも、これぐらいでは崩れないとは思う自分もいる。

 

何とももどかしい。早くこの厄介事を片づけたいというのに。

 

知らず知らずのうちに俺は自分の事を言ってしまってはいけないのでは? という考えが支配してくる。

 

そしてその考えが俺の脳内を、流れを得て渦巻き始めた時、俺は自然と顔を歪めてしまっていた。

 

それを見た紫は、首を傾げて何が起きたのかというようなしぐさをする。

 

「俺に……何かしら?」

 

と言ってくる。

 

「いえ……何でもないです」

 

やはり、言えないと判断して俺は彼女に対してはぐらかしの言葉を言ってしまう。

 

また、実際のところ俺と紫の背はあまり変わらない。若干俺の方が高いだけである。紫は170cm越えしていると思う。

 

そんな紫が俺の方に近づいてくるとどうなるか。もちろん顔の位置の差はほとんど変わらない。そう、その美顔が俺の前に接近してくるのだ。

 

その顔を前にすれば当然俺の心臓は早鐘を打つように拍動する。しかし同時に紫の目は濁っており、俺の行動が如何に良くない物として映ったのかが分かる。

 

そして俺がそこまで認識した所で、紫は俺に強く抱きつき、首に両手を回して俺の耳に顔を近づける。

 

「え、ちょっ、ちょっと紫さん?」

 

俺は紫の突然の行動に驚きつつもその真意を問う。

 

対する紫は、俺の動揺を無視しつつ俺に対して冷酷な一言を述べる。

 

「さあ、どうしてくれようかしら? ねえ? 藍?」

 

「そうですねぇ、おおよその部分は分かるので、幽香の事と同じような事をしてしまえばいいのではないでしょうか?」

 

幽香? …………まさか、あの時の事なのか? あの媚薬を飲まされて犯されたあの夜の事なのか? ……いや、でも彼女らには話していない。という事は、殺すという事なのだろうか?

 

そんな考えがまるで火山の噴火のような勢いで一気にあふれ出てくる。

 

「そうねえ、それも良いわね。この節操なしには良い薬になりそうだしねぇ……?」

 

そう言いながら紫は、俺を幽々子から引き剥がし、自分の方へ体重がかかるように俺を抱き寄せる。

 

俺は紫を引きはがそうとしているのだが、直接的な害があるわけでもないので、領域が上手く作用してくれない。

 

「藍、こっちに来なさい? ……一緒に、ね?」

 

藍は、まるで極上の獲物を見つけたかのような目をしており、肉食獣その物。妖怪の本能むき出しの状態で紫に返事をする。

 

「はい、了解しました。紫様。…………さあ、耕也。節操のないお前に罰の時間だ。」

 

「藍、紫。…………俺をどうする気なんだ? …………もしかして、俺を殺すのか?」

 

つい口調が荒くなってしまいそうだが、押さえつける。

 

ただ、俺を殺すという事ならばジャンプを使用して自宅まで逃げおおせてしまえばいい。もし、それでも追いすがってくるならば、神奈子や諏訪子のいる神社まで避難すればもはや危険度は0に等しくなるだろう。

 

しかし、紫から放たれた言葉は俺の先ほどまで考えていた対策とは大きく違っていた。

 

「ふふふ、あははは。………………可笑しい事言うのね耕也は。 私があなたを殺すだなんてあり得ないわ。一体何を心配しているのかと思えばそんな事……ふふふ」

 

俺の考えている事が紫にとっては予想外の事であったようで、クスクス笑いながらさらにさらに強く抱きしめる。

 

幽々子に向かって口を開く。

 

「さあ幽々子、この件は私達が処理するわ。」

 

俺の視界には捉える事ができなかったが、紫が幽々子に何かしらの合図をしたのか、幽々子は笑いながらそれを了承する。

 

「ふふふ、分かったわ。……まったく、程々にしておきなさいよ? はぁ……残念だわ」

 

そう言いながら俺を放置して部屋から出ていく幽々子。

 

「さあ、耕也。藍が防音と人払いの結界の札を張っておいてくれたから、もう音も漏れることは無いわ」

 

防音、人払い、夜そして妖艶な美女二人。これの意味するものはもう一つしかない。

 

「紫、まさか……うそだろ?」

 

俺は紫の温かいく柔らかい肌の感触と、嫌に落ち着かせる心臓の鼓動を感じながら彼女に確かめるように尋ねる。

 

もう一つしかない。そう、これしかないのだ。もはやこの状況が作り出すものと言えば男女のアレだ。

 

確かにそんな気配は持っていた。藍が俺の布団に入りこんだときや、紫の異常なほどの恥ずかしがりよう。

 

そんな事を考えつつも自然と身体は紫から離れようと力を込め始めている。

 

「あらあら耕也。そんなに怖がらなくても大丈夫よ?」

 

そう言いながらさらに力を込めてくる。しかも領域が反応しないような絶妙な力加減で。

 

ヤバい紫の奴、この極僅かな短期間で領域の特性を把握してやがる。

 

そんな危機感が俺の中で湧きおこる。しかし、それについては深く考える余地などは無かった。

 

「……いやいや、十分に怖いよ。それに、幽香と同じ事というのがいまいち想像がつかないモノだからね」

 

そう言って何とか時間の猶予を増やそうとする。

 

しかし紫はもう我慢する事ができ無くなったのか、俺に少しだけ厳しい口調で言う。

 

「ねえ、耕也。……はぐらかすのはやめましょうよ? もう、貴方も分かっているはずよ」

 

「そうだぞ耕也。見苦しいぞ?…………やはり、お前を見ていると抑えきれなくなってくる。……やっとお前を抱けるのだからな。どれほどこの日を待ちわびた事か」

 

紫に続けて藍も言ってくる。それはもう嬉しそうに。そして頬をほんのり赤く染めながら淫靡な眼をして見てくる。

 

片や三国を傾けた大妖怪。もう一人は妖怪最強の美女。予想しなくても分かるが、この二人を同時に相手をしたら俺がぶっ壊れてしまう。

 

特に藍はとんでもないほどに性技に長けているはずだ。もう無理だろ。精神が壊される以外の未来を見いだせない。

 

「紫、藍。そんな事をしたら俺が壊れてしまう……」

 

「安心しろ耕也。壊れても責任を持って一生面倒を見てあげるから」

 

「そうよ? それに、壊れてしまったら亡霊になるという素晴らしい手段もあるのよ?」

 

…………え? ……もしかして幽々子と共謀してたのか?

 

そんな嫌な考えが間欠泉が噴出するように頭の中を駆け巡り、一気に身体がガタガタと震えだす。

 

嵌められたのか俺は……。

 

「もしかして、嵌めたのか?」

 

そう言うと、藍は俺の方をしっかりと見つつ否定の言葉を言う。

 

「それは違う。私達は、先ほどの幽々子様のしていた事を見てから咄嗟に思い付いたことだ。幽々子様は関係ない」

 

だとしたら何か? 俺のあの苦労は全部水の泡なのか? 必死に弁解していたあの俺が?

 

何て無様なんだ。紫と藍にの手のひらの上で踊っていただけかよ……。

 

まあ、頭脳戦でこの二人に勝とうなんて思いはしないんだけどな。

 

俺はそんな事を思ってしまったのだが、ほんの少しだけだが、この状況が気に入らなくなってきた。

 

だから

 

「もし、俺を犯そうとするなら、ジャンプして逃げるよ?」

 

身体の震えを抑えつつそんな事を言ってしまう。おそらくこれで何とか手を引いてもらえないかと思いながら。

 

もしこれで手を引いてもらえれば万々歳。これで駄目ならば、また別の手を講じなければならなくなる。

 

とりあえずは、衝突だけは回避したい。この二人と闘っても負けることはまずないが、周囲への影響がでかすぎる。

 

そんな事を考えながら俺は彼女の反応を待つ。

 

しかし、世の中優しくないようで、聡明な彼女には俺の考えていることなどすべてお見通しだったようだ。

 

「そんな事をしても無駄よ? 私は貴方を追い続けるし、ふふ………………貴方の一番さんは一体どうなるのかしら?」

 

と、不敵な笑みを浮かべながら言ってくる。

 

対する俺は脅しだと理解しつつ、何故幽香との関係を知っているのかを問いただしたくなってしまい、そして幽香に攻撃をする事が許せず紫に厳しく問い詰めるたくなる。

 

しかし、ここは理性でグッとこらえ、誤魔化すようにそれとなく答えを引き出そうとする。

 

「紫、…………さっきから思っていたんだが、何故幽香が出てくるんだ? 俺は幽香とは特に何かがあったわけではないぞ?」

 

そういうと、紫は男を蕩かすような淫靡な表情から、一気に無表情になり、俺に冷たく言い放つ。

 

「嘘を吐くものではないわ、耕也。貴方は隠しているつもりかもしれないけれども、私達には丸わかりよ。いくら身体を洗ったとしても、いくら別の服に変えたとしても。…………もう貴方の身体に染み付いてしまっているもの。幽香との行為がね」

 

だからあの時俺の服の匂いを嗅いでいるようなしぐさをしていたのか。

 

それと同時に俺は、妖怪は一体どれほどの嗅覚をもっているのだろうかと疑いたくなってしまう。

 

さらに言えば、もともと俺を犯したいがために俺と幽々子との間に割って入ってきたのだろうと結論付ける。

 

そしてもう逃げ道が無いという事も認識させられる。

 

それを見て紫はニヤリと笑い、俺を本格的に料理しようとしてくる。

 

「さあ、…………もう何も言う事は無いわよね? 据え膳食わぬはなんとやらよ。じゃ、藍お願いね?」

 

そう言って藍を俺に預けていく。

 

もう拒否する事が無駄だと分かってしまった俺は、素直に藍に抱きしめられる。

 

「分かりました紫様。紫さまも殿方の悦ばせ方を知るには丁度いい機会です。とはいっても、私達は耕也だけにしかあり得ないのですが……ん」

 

そう言いながら俺に唇を重ね、自分の欲を満たし、本番へと準備を万全にしていく。

 

「んんんっ、んんぅ…………んあ、じゅる…………ずず……れろ、れるぅ……ふふふ、もう良いかな?」

 

「馬……鹿………何の前……振りも無く………するんじゃな……い」

 

藍からの激しいディープキスの応酬を受けた俺は、そのテクニックに一気に力を抜かれ、全体重を預けてしまう形となってしまう。

 

ビリビリと身体に電気ショックのように響くその快感に、俺は喋ることすらもままならなくなり、とぎれとぎれでしか言う事ができなくなってしまった。

 

だが、藍に反則だのなんだの言ったところでやめてくれるわけもなく

 

「おやおや……まだ足りなかったか……完全に弱らせる必要がありそうだな?」

 

「や、やめ……て…………」

 

「大丈夫だよ。命を落とすようなことは無いからな? …………お前は紫様と私の旦那様なのだからなぁ。ああ、でも幽香も入ってきてしまうのか。それはまあ後で。さあ、紫さまもお早く」

 

そう言いながら紫を手招きして俺を凌辱する行為に名を連ねていく。

 

「分かったわ藍。ふふふ、耕也。貴方はもう手遅れなところまで来てしまったのよ。引き返すことのできない所まで来てしまったのよ。……私達は、貴方に感謝しているわ。孤独から救いだし、さらには妖怪と知っても態度を変えずに接してくれた初めての殿方。これを愛せずして何とするのかしら? それに幽々子とも友人になってくれたようだし万々歳。でも妖怪としての欲だけは抑えられない。貴方を前にして、犯すことを考えたらもう濡れてしまうのよ? だから……ね?」

 

この苦痛としか思えない快楽にさらされ、意識を失う前に思ったことはただ一つ。

 

本当に女性は怖い。それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、耕也。楽しみましょう? いずれは幽々子も含めた4人でね? いや、5人になるのかしら? 本当は独占してしまいたいのだけれど…………ふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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