この時代はどうやら縄文時代の晩期にあたるらしい。稲作があるしね。
俺はリキさんの家に居候になってから約3ヵ月の間、自分の能力などを検証してみた。
もちろん、その能力を生かして仕事を手伝うという形だったが……
検証の仕方と言えば、その辺の若者をつかまえて角材を持たせ、殴ってもらう事などだ。
角材で殴ってもらったところ、何も念じていないにも関わらず、インパクトの瞬間に角材が折れ、弾かれていった。
次に、焚火に手を突っ込んでみたところ全く熱くない。
それはなぜか温かいと感じる範囲までは本当に温かい。しかし熱い、やけどしそうだという
範囲にまで接近すると途端に熱くなくなる。そして油をかけて腕を燃やしても全く熱くなかった。
何の損傷もなく。ホント不思議。
それからさらに日がたって自分の能力に領域のようなものがある事が分かった。
焚火に手をかざすと、明らかに手の無い部分まで火が避けていくのだ。それは角材でも青銅製の剣でも同じだった。
集落の人達は最初は驚いていたが俺を迫害するようなことは無かった。理由としては、実際に洩ヤの加護を体験したりしているためとのこと。
だから特に問題は無かった。
領域の方は自由自在に広げられるようだった。範囲は後で調べていこうと思う。
これはひょっとしたら今後生きていく上で、自分でもかなりのアドバンテージになるのかもしれないと思っている。
そして翌朝、長に声をかけられた。
「耕也君、これから洩ヤ様のところまで収穫した米をお届けしに行くのだが、手伝ってくれないか?」
自分も洩ヤというのが、どういったものなのか知りたいため二つ返事で了解する。
「分かりました。お供します」
「うむ、助かるよ。では、この米俵を牛車に積んでくれ。もちろん皆でな」
「はい。……すみませーん、ちょっと手伝ってください」
俺が声をかけるとわらわらと男たちが手伝いに来る。
そして、集まった男たちの一人が話す。
「どうしたんだい?耕也」
「洩ヤ様に豊作の報告と感謝、そして税として持っていくための米俵を、牛車に積み込むのを手伝ってほしいのです」
「おう分かった。よしお前ら急いで積み込むぞ」
男たちは納得して積み込んでいく。
当然のことながら俺も積み込んでいくのだが、マジで軽い。まるで羽のように軽い。能力は使えば使うほど上達していくのが分かる。
順調に積み終わり、俺と長は集落を出発して中央の里を目指す。距離は牛車で一日と少しらしい。
そこに洩ヤの社があるとのこと。
ちなみに服はここの人達と同じものを着ているため、怪しまれることは無いだろう。
(にしても過積載なんじゃないか?牛が苦しがってるぞ。)
そう思いながら積荷の重量を軽くしてやる。すると牛は苦しがらなくなりスムーズに歩くようになった。
やはり便利だ。しかしリスクなどは無いのだろうか?
道中ではそんな不安が俺の中に残った。
そんなこんなしているうちに中央の里に着いた。ついたのは良いのだが、もう夜です。昨日の朝に出発したのに夜です。
俺が里を見渡していると、長が「社に行くぞ。洩ヤ様にお会いしに行かなくてはならん。気を引き締めろ。」と注意を促す。
「分かりました」
と、短くやり取りし、社の目の前に行く。
社の目の前に着くと、税として、また信仰の証として納める米俵を積み上げていく。積み終わると、一同土下座をするかのような格好になる。
当然俺も土下座しているのだが。事前に長に教えてもらっていたからだ。
そして、しばらくすると里長が
「洩ヤ様!今年もあなた様の御神徳により見事な豊作と相成る事ができました!感謝のしるしといたしまして。ここに酒と宴を用意してございます。どうぞご堪能くださいませ!」
すると社の中から声が響き渡る。
「よかろう。皆の者、苦労であった」
「「「「ははーーーーっ。」」」」
どこの時代劇だよと思いながらも俺も声を発する。
そして、社から洩ヤと思わしき者が姿を現す。
その瞬間俺は思わず声をあげてしまいそうになった。
(な、何だとおおおおおおおおっ!!)
里親の言っていた洩ヤの姿と全く違っていたからだ。
その姿は
(あいつ、諏訪子じゃん!!)
そう、東方風神録に出てくる守矢諏訪子だった。
長は禍々しい黒い蛙だって言ってたのにさ!
(ここって東方の世界じゃないか!!)
もうどうしよう……。
そして、俺の驚きをよそにどんどん里長と諏訪子とのやりとりが進んでいく。
「なにとぞ来年も豊作になりますよう、お力添えをお願い致します」
「よかろう。ならば信仰を示せ。お前たちのできる最高の信仰をな」
「ははっ。つきましては半年後にふさわしい生贄を「いや、生贄は私が決めさせてもらう」は?」
「生贄はあの男で良い」
俺の方を指さしながら言った。
……は?おれええええーーーーーっ!?
次話へ続く