導かないヤタガラス   作:半端野郎
<< 前の話

4 / 4
やっと戦闘…。難しい。







一難去ってまた一難

―「  てっ!!」―


――「右  !!」――


―――「ふんば !!」―――


――――「今だっ!放てっ!!」――――


戦場に飛び交う声や音を聞きながら重影は考えを巡らせていた。

おかしい。

自分で言うのも何だが、俺はここまで弓は上手くはなかったはずだ。当然狙いはつけるし、ソコに当てるつもりで射るが…。ここまでの腕では無かったはずだ。

連合軍の先鋒に弓を放つ際、放物線を描き頭上から当る様に構え放った矢はそのまま彼方へと消えてしまったのだ。堪らず周りの奴らに笑われちまったぜ…。

この世界に来てから身体の調子がいいのは実感していたが、こうも弓の腕にまで影響する程なのか?都合がいいっちゃいいが中々慣れねえもんだな。まぁ今は目の前の戦に集中しねえとな。

今俺の目の前にはほぼ赤い鎧一色、連合軍の先鋒たる孫軍が寄せてきている。流石後に三国志の一角となるだけあって中々手強い。そして馬鹿みたいにこっちに突っ込んで来ようとする痴女が2人いるのも見える。黒髪のこれまた痴女がどうにか留めている様に見えるが…。

なんにせよ一点集中で向かって来られるよかましだ。周りの奴らも初めての戦であるだけに硬さやぎこちなさは抜けない。むしろ初めてにしては十分に良くやっているとさえ言える。

このままの調子なら今日は余裕をもって凌ぎきれるだろう。……余裕を持って…?。

おかしい…。様子見としての先鋒の役割もあるにはあるが、こちらは戦の素人集団だ。一度崩れてしまえば立て直すのは不可能だろう。多少の被害は覚悟の上で攻めれば突破は出来るはずだ。自分で言うのも悲しいが…。

あの痴女達を見る限り、黒髪を除き先頭に立ち敵を屠りたくて仕方がないのだろう。多分…。先鋒で門をこじ開ける事が出来れば被害はともかく、この規模の一揆だ、名声や褒美は計り知れない物となるだろう。そんな中余力を残して攻めるというのは何かあるはずだ。

他陣営との探り合いか…。それとも………。




計略か…。





その後互いに大した消耗もなく敵は引いていった…。やはり何かあるのかもしれないな、念の為に陣内を見回っておくとしよう。敵が引いて行くまでちょくちょく痴女三人を観察していたが、遠目でも黒髪ねーちゃんが苦労しているのは分かった。南無…。





翌日。





「てめら!!未の方角だ!放て!!」

「敵を殺ろうと思わんでいい!!勢いを削げばいい!!」

「辰の方角にやばいのが突っ込んでくるぞ!弓一、二番手はこっち優先!三番手はそのまま未の方角!接近されたら投石に切り替えだ!忘れんなよ!」

おおおおお!!


ぐお〜っ、何なんだこの猛攻は!?昨日の比じゃねえぞ!目の前の青い集団。曹操の軍は練度連携ともにやり辛いったらありゃしねえ!

特にさっきから何度も猛進してくる黒髪女と何故か俺を狙って弓を放つ短髪おんなぁ!!下からあの距離飛ばすってどういう事だよ…。

特にあの短髪弓おんなぁ!なんだ?そんなに面頬が珍しいか!?さっきから無駄に殺気込めて俺ばかり狙いやがって。こうなりゃやってやる!

「弓三番手!正面奥の目立つ青頭の兵士の一帯に斉射だ!放て!!」




―――――――




………さて、あの者はどう対処するのだろうか?私と姉上による仮面の男を狙った二面攻勢。昨晩華琳様から承った指示だ。「あの男を見極めろ」と…。

姉上にちょっかいを掛けさせそちらに気が向いた所を私の弓で仕留める。単純ではあるが姉上だからこそ委ねられる作戦でもある。

昨日の奴の手腕を遠目ではあるが見ていた。今の所、特に目立った動きは見せていないが、元農民である黄巾賊共を上手く指示をだしこちらの勢いを削ぐ事に徹底している。

自分の部隊に遠目からでは弓、近くなると投石と使い分け、敵を的確に狙うのでなくあくまで面で、一帯を狙う様に仕向けている。

明らかに場慣れしている上に、調練も兵の特性に合わせ行えると見た。軍務に就き、兵を率いた事のある者で無ければまず無理であろう。

まぁひとまずは合格と言った所だろう。武芸に関してまでは分からぬが十分だろう…っとこちらを狙い出したか。

兵を下がらせ…っ狙いは私か。フッ受けて立つとしよう。今度は私が囮となる番だな。

「私が囮となる!敵の攻撃の合間に少しずつ戦線を押し上げろ!」

奴ら射程範囲で動き回り、隙を伺い弓手を確実に減らしていく。ほんの少しでいい…。貴様等が私に目を向けている間に姉上が貴様等の喉元に喰い付くだろう。さあ来いこっちだ!

敵の矢が放たれる中、殺気を感じ矢を撃ち落とす。…フッ仮面の男か…。残念だがこの程度でサクッ……な…に?

「「「「夏侯淵様ぁぁぁぁ!!!」」」」

右肩に熱感が広がっていく。くっ…ともかく一時撤退しなければ!なんとか矢を避けつつ奴を見てみるとこちらを向き仮面越しでも喜色を浮かべていると分かる雰囲気で私に向かい口にしていた……。




…………この借りは必ず返す!!




―――――――





「ざまあっ!!!」

やってやったぜ!見たかあの顔!?こっちを見て歯を食いしばるあの顔!!あ~ほんとやってやったぜ〜。

にしても幾ら殺気を込めたとは言え矢を撃ち落とすとはな…。正面きっての戦いでは勝てないかもしれないな。だが想いや気の乗らない狙撃は初めてだったみたいだな。

獲物を狙う際に多少であろうと殺気や感情が乗っちまうのはよろしくないな。俺からしたらまだまだだ。標的なんぞ只の的、無心にしようとする事すら必要ない。そうやって俺は生き残ってきたんだ。

何やら俺の動きを探っていたようだが戦場を舐めてるとしか思えんな。夏侯淵程の者であったとしてもここは戦場、何が起きてもおかしくはないんだ。今回の事でいい勉強になったろ。

よし!それはともかく…。

「てめえら見たか!!?あの夏侯淵って奴の無様な姿!!」

煽らねばっ☆

「自信満々に出てきたと思えば無様に尻尾巻いて逃げやがった!!」

別嬪さんにゃあ悪いがとことん利用させてもらうぜ☆

「曹軍の二枚看板の一人がこれじゃあ曹操って奴も高が知れてるなぁ!!」

はっはっはっはっはっはっは!!!

敵を貶めつつ、こちらの指揮を上げる。良いとこの兵士であればこんな罵詈雑言をしようと無意味だが、支柱となるであろうと将を退け、こちらは正規兵ではない。効果は抜群だと信じたい…。

………曹操に捕まったら確実に死ぬなこりゃ……。





その後良く分からんがなんか怒り狂ったもう片方の攻勢を退けなんとか撤退させる事に成功した。




その夜寝付く前に拠点内の主要な場所も周る事とした。門から敵方の様子をみたり、普段使わない道を使ったりして見たがいまのところ収穫はない。予想が外れてるに越したことはないからいいんだが…。

そうこう考えながら歩いているがやはり変わった所は無いな。もういいか適当な奴に声を掛けて何かあれば報告させると………人?…………人がいない…?

いくら人通りが少ないとは言え、巡回の兵に全く合わない…。誘い込まれたか!?

「気が付いた様ですね。」

後ろを取られ 刃物を背中に押し付けられる。やられたわ〜。

「可愛い声してるがあんた誰だい?」

「身分を明かす人がいると思いですか?」

違いねえ。

「それで?俺になんの様だ?直ぐ殺さないって事は何かあるんだろう?」

「ないです。」

「えっ?」

「ないです。このまま殺します。さようなら。」

「待って!お願い待ってって!情報教えるからさ!」

「……聞いてあげましょう…。」

よし来た!乗ってきた!

「そうだなここいらの地理はど「知ってるのでいいです。」……じゃあ兵の人数や配置に「知ってます。」……。」

筒抜けじゃねえか!!?酷すぎだろう!?

「なっなら張三兄弟に関してはどうだ!」

「…聞きましょう。」

「あんたらの事だ。生け捕りもしくは首が欲しいのだろう…違うか?」

「無駄話はいいです、早く言ってください。」

「そうか…。張三兄弟は男じゃない女だ。」

「え?」チャンス!!

身体を反転させながら左肩にあえて刃物を突き刺させる。そのまま貫通させ刃を抜かれない様握る。痛えええええっ!

「なっ!?正気ですか!?」

「うっせえ!生き残る為だ可愛らしい嬢ちゃん!」

「ですがそんな状態でどうするつもりですか?」

「フッ舐めて貰っては困るな嬢ちゃん…。こういう時の為に奥の手を用意してるのさ…。」

「…。」

見せてやろうじゃねえか!
俺は身を翻し地面を蹴る。

「誰かああああぁぁぁ!!!助けろおおおおぉぉぉ!!!!」

「えぇ〜。…まぁ良しとしましょう…。」





その後奴に追われる事は無く、なんとか巡回の兵に見つけてもらい保護してもらえた。








―重影無様なり―








只の小悪党にしか見えない重影。大丈夫!これからカッコよくなる!はず…。






※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。