新しい世界で俺は忍者になる!   作:ルーニー

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忍術の使いやすさって半端ねぇ

やったぜ。ついに影分身が出来るようになったぜ。つってもまだ1人しか出来ないけど、それでもこれで修行速度が単純計算で2倍だぜ。

いやぁ。しかし、予想以上に早く終わったな。変化の術分身の術変わり身の術でかなり時間かかったから数年かかると思っていたけど、まさか1年弱で出来るとはなぁ。分身の術とかでチャクラの使い方に慣れが生まれてきたから簡単に出来るようになってきてるのかね。

 

あとは火遁の術を使えるようになればバッチリだな。……いやまて。火遁の術か?手裏剣術は結構出来るようになってきてるからいいとして、火遁の術をメインで修行した方がいいか?個人的には螺旋丸とか出来るのなら千鳥とかやりたいけど、あれ取得難易度A超えてたよな確か。

でも千鳥はともかく螺旋丸は修行方法が分かってるからなぁ。印もできるか怪しい火遁の術を修行するよりそっちをやった方が効率いいか?悩むなぁ……。

 

よし。とりあえずは片方が火遁でもう片方が螺旋丸の練習に使おう。千鳥はちょっと性質変化の問題でできるか怪しいし、できそうなものから初めて自信をつけた方がいいだろうしな。

うんうん。まだ考えてるだけだけど結構忍者としての修行もかなりできるようになってきてるな。これはかなりテンション上がってくるなぁ!

 

……しかし、忍者になると決めてからもう9年弱か。早いもんだ。体力もかなりついてきてるし、身体能力も忍者っぽくなってるのが最高。木を伝うのも余裕でできるぐらいだし、全力出せば高速道路走ってる車にもワンチャン追いつけるしな。まぁ走り方に関しては師範代からいろいろとコツを教えてもらったからできるんだが。いやぁ師範代様様だ。足向けて寝れないぜ!

 

よし!なんかテンション上がってきた!今なら修行もいつもより身につく気がして来たぜ!町外れの海辺に人気がない工場っぽいところがあったな!そこで影分身してからの螺旋丸と火遁の術の練習だ!ひゃっはー!テンション上がってきたァ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今はもう人がいない港の中、縄に縛られた少女と明らかにアウトローの人間たちが各々武器になるものを、そしてリーダー格の男が携帯を持ってどこかに連絡をしていた。

 

「あぁ。そうだ。娘の命が惜しければ1時間後に金を振り込め。そうすれば五体満足で返してやる」

 

ニタニタと、覆面越しでもわかるほどの笑みを浮かべている。チラリと人質である少女たちに目を遣り、近く手に入るであろう身代金に興奮が抑えきれずにいた。

 

「……ごめん。こんなことにすずかを巻き込んじゃった」

 

「大丈夫。アリサちゃんのせいじゃないよ」

 

少女たちはなにもできずにいる現状に悔しそうに顔を歪ませる。この少女たちはいわゆるいいところのご令嬢であり、人質としてかなりの価値がある子供だった。

誘拐するのにかなり手間取ったり綿密に計画を立てたりしたが、今こうして捕らえられたことに誘拐犯たちは満足していた。あとは、この少女たちの親から大金を巻き上げるだけという、そんなときだった。

 

「こらぁ!こんなところで何やってんだぁ!」

 

突然、工場の中にいるはずのない少年の声が響いた。突然のことにその場にいた全員が声のした方を見ると、見つかったことを悟ったのか直ぐに逃げようとする少年の後ろ姿がそこにあるのを見た。

 

「あのクソガキを捕まえろ!」

 

このまま逃げられて警察に通報されたら面倒なことになる。そうなる前にあの少年を捕まえ、交換したあとの人質として利用しようと考えていた。

相手は少年だ。大人が複数人襲いかかろうとしたらそれだけで怯んでうまく逃げられないだろう。そう思って手を抜いて少年を追いかけようとすると、その少年が逃げながら腕を振り上げて手に持っていた石を男たちへと投げつけ始めた。

 

「いっ!」

 

その石礫はかなりの速さをもって男たちの手に当たり、子供が投げたと思えないほどの痛さで手にしていた物を落としていく。

 

「なんだあのガキ、なんつうコントロールしてるんだ!?」

 

予想以上の痛みに手を振り、男たちは手になにも持たずにそのまま少年を追いかける。複数人の大人とたった1人の子供の鬼ごっこであるはずなのに、どうしてか男たちは少年を捕らえるどころかいとも簡単に逃げられ、更には石礫による手痛い反撃すら受けていた。

 

「おい!もっと人回せ!あのガキすばしっこいぞ!」

 

あまりにも捕まらない現状に段々と苛立ちが募ってきたせいか、少年を追いかける男たちが徐々に増えていき、最終的には少女たちの見張りの男1人以外が少年を追いかけるというおかしな状況へと転がっていった。

そして、人手を増やしたおかげかようやく工場の端に追い詰め、隙をついて少年を背後から捕まえることに成功した。

 

「捕まえたぞ!」

 

「は~な~せ~!」

 

じたばたと少年は暴れるが、その程度で抜けられるほど大人の力は甘くはない。病弱や筋力不足ならばまだ可能性はあっただろうが、誘拐犯たちはそれなりに鍛えられた肉体をしており、少年の力ではまず振りほどけない。

ここでアニメやマンガなら不思議な力が沸き上がって一瞬にして誘拐犯を打ちのめすことができただろうが、現実はそんなことは起きるわけがないのだから。

 

「このクソガキ、さっきから俺たちをバカにしやがって!痛い目に遭う覚悟はあるんだろうな!」

 

「えー。痛いのはさすがに嫌だなぁ」

 

男の言葉に、少年はピタリと暴れるのを止めた。その声も余裕があるようなものを含んでおり、男たちも訝しげに少年を見る。

ニタリと、少年はしてやったりといったように笑みを浮かべると、何かしたような様子もないのに突然少年から煙が上がった。

 

「な、何が起きた!?」

 

突然のことに少年を囲っていた男たちは慌てて煙から離れる。警戒しながら煙の中を見ていたが、煙が晴れて少年がいるであろう場所を見ると、そこにはもとから誰もいなかったかのごとく何もなかった。

 

「どうなってんだ!?どうやって消えたんだ!?」

 

普通に考えてまずあり得ない状況であった。男は確実に少年を羽交い締めにしていた。子供の力で抜け出せるほど男は非力ではないのに、どうやって煙をあげたのか。移動したような気配や煙の動きは一切なかったはずなのにどうやって消えたのか。まるで狐につままれたかのように、忽然と姿を消したのだ。

 

「驚いてるね、おっさん」

 

突然の出来事に混乱している最中、聞き覚えがある声が上から聞こえた。慌てて声の聞こえた上を見ると、あり得ない光景がそこにあり、誘拐犯たちは思わず息を呑んだ。

 

「なっ!?」

 

男は文字通り天井に立っていた。姿、服装、骨格、脂肪、ありとあらゆる見た目がある誘拐犯と全く同じ男が、人質として金を要求するはずだった少女たち2人を抱え、そこに重力があるかのごとく立っていたのだ。

慌てて人質がいたはずの場所を見るも、そこには誰もいなかった。慌てたような表情や恐怖に顔を強張らせているのを見るに、間違いなく男が抱えているのが今回拐った人質だろうと容易に想像できた。

 

「んじゃ、精々捕まんないように注意して逃げなよ~。もっとも、あの人間離れした人たちから逃げられるとは思えないけど」

 

それだけ言うと男はすぐ近くの窓を割り、少女たちに破片が引っ掛からないように注意するようにゆっくりと外へと出ていく。少女たちも落ちたらひとたまりもないと察して黙って抱えられている。

 

「あばよ誘拐犯!次に姿を見るのはニュースになったときだな!」

 

まるで友達に挨拶でもするかのように気軽にそう言って男は工場の外へと跳んでいった。あまりに現実離れした出来事に呆然と男が去って行った窓を見ていた。が、それも数秒後にリーダー格の男が慌てて呆然としている男たちへと激を飛ばす。

 

「逃がすな!追え!」

 

リーダー格の言葉にハッとなった男たちが男が去って行った方向へと走り出す。が、外に出ようとした瞬間、先頭にいた数人がまるで台風にでも吹き飛ばされたかのように工場内へと吹っ飛んでいき、男たちは急なことに驚きで足を止めてしまった。

 

「まったく。いきなり連絡が来たと思ったらこんなことに首を突っ込んでいたとはね」

 

「まぁまぁ。人を助けようとしたんだし、そんなに怒らなくても……」

 

「まだ子供なんだぞ。なのにこんな危ないことに首を突っ込むのはダメだろう。あとでキッチリと叱らなければな」

 

そこから現れたのは3人の男女だった。誰も彼も顔立ちが整っており、道着を着ているその様子はどこかで撮影があったと言われたら信じてしまいそうなほどだった。が、その人の良さげな雰囲気を消すかの如く男たちを威圧し、手にしている木刀は実は真剣ではないかと思うほどに剣呑な気配を放っていた。

 

「でも、あの子のおかげですぐに見つけることが出来た。あの子も逃げられたみたいだし、僕たちも大人としての義務を果たさないとね」

 

ニッコリと優しそうな、しかし明らかに威圧感を放ち、見てるだけで絶望感が湧き出てくる男性に、誘拐犯たちは恐怖で足の震えが止まらなくなる。

自分たちは凶器を持っている。銃すらも1丁だけだがある。相手は木刀しか持っていない。なのに、ここまで恐ろしいと思うことになるとは、この場の誰もが思いもしなかったのだ。

 

「さて。あいつの妹を拐ったんだ。痛い目に遭う覚悟は出来てるんだろうな」

 

これが、男たちが蹂躙され、全員捕縛される3秒前の出来事である。


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