戦車と麻雀のコンチェルト   作:エルクカディス

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お久しぶりでございます。
2か月も放置して申し訳ない……

リアルがいろいろ立て込んでましてこんなに期間があいてしまいました。


3話 ―サンダース大戦車隊―

『お尻に響くV12(マイバッハHL120TRM)の振動、慣れれば結構心地良いんだよ!』とは誰が言ったのか記憶からは抜け落ちているが、ヒコーキ乗りの京太郎からすれば肯ける意見ではある。

彼自身も九三式中間練習機(元愛機)の日立『天風』や紫電改(現愛機)の中島『誉』の奏でるエンジン音とその振動にウットリとすることがある。

液冷V字型と空冷星形では振動も音も大分違うが、それでも同じ内燃機関を搭載した乗り物を操る同志としてその意見に大いに賛成だ。

だが、そう思ったことすら記憶の向こうへ放り投げ、今の彼の頭の中を占めているのはただ一つ、「戦車なんてロクなものじゃない!」と言う感想だけだ。

何のことは無い、現在進行形で彼の乗る38(t)戦車が限界に近いスピードで悪路を爆走していて、エンジンの振動以上の衝撃が襲い掛かっているのだ。もちろんサスペンションはあるのだが、それですらショックを相殺しきれていない。

 

「まるでッ! 未舗装滑走路でのッ! 離陸ッ! みたいだなッ! うおォッ!!」

 

ガタンとどでかい衝撃が戦車に加わり、京太郎の体を一瞬宙に浮かせる。彼の体は回転翼機(ヘリ)ではないので当然浮いたままにはならず、次の瞬間ドスンと座席に落ちる。

乗っているのは戦車であるからして、座り心地の良いシートではなく硬い座席だ。

こればっかりは仕方ないが、彼にとっては大誤算もいいところ。

最近の飛行機のシートは人間工学に基づいて設計されたパイロットに負担を掛けない座り心地の良いものが多い、おまけにハーネス型のシートベルトでガッチリ体を座席に固定する。それに比べて戦車はハーネス型ではなく2点式のしょぼいベルト、飛行機の座席に慣れ切った京太郎にとって座席の硬さは拷問に近いうえ体が不安定で心細いことこの上ない。座布団を用意しておけばと後悔するがすでに後の祭りである。

しかも……

 

「うおぉぉぉぉおお!! 入ったぁぁあ!! アナにはいったぁぁああ!!」

 

なんの穴とは言わないが、着座した瞬間に衝撃が穴に入ったようである。手でお尻を押さえて悶絶する京太郎、不幸なことに次の瞬間にまたもや大きな衝撃が来て今度は頭をゴチン。

踏んだり蹴ったりとは当にこのこと。

愛用の鍔付きの飛行帽を被っているとはいえ鉄の塊に頭を打ち付けたのだから痛いものは痛い。

さて、いったん京太郎のことは放っておくとして、38(t)戦車B/C型戦車と言うのは4人の乗員で運用する。京太郎はその通信手だ。

では、他の3人はどんな様子かと言うと……

 

「もうダメだぁ…… お終いだぁ……」

 

「…………………………」

 

「…………クッ!」

 

砲手の桃が泣きそうな顔で泣き言を言い、冷や汗を浮かべた難しい顔で干し芋を齧る杏に、歯を食いしばりながら必死に戦車を走らせる柚子。

共に共通しているのは焦りと悲壮感がその背中からありありとにじみ出ている点だろう。

 

『きゃぁぁああ! 掠った 掠ったぁぁあ!!』

 

無線からは他の戦車に乗っているメンバーの悲鳴のような声が聞こえてくる。何より、チームメンバー全員が相手のプレッシャーに呑まれてしまっているこの現状はよろしくない。

 

(初戦のサンダース戦からこの調子か…… まぁ、相手が優勝候補の一角ってことを考えれば妥当なところ…… か)

 

そんな中、お尻のダメージから復活した京太郎だけは冷静に状況を見ていた。隊長になったみほですら悪い状況に頭の整理が追いつかないのに、この男、なかなか肝が据わっている。

さて、今一体何が起きているのかと言うと……

全国大会一回戦の対サンダース戦の真っ最中である。

 

 

 

…………………………………

……………………

…………

 

 

 

 

 

時間を少し遡ろう。

京太郎が大洗に来てから数日後に戦車道全国大会の開会式と対戦日程の抽選が開催された。全国大会はトーナメント方式で1ヶ月半にわたる。みほが隊長として籤を引いたのだが、1回戦の相手はなんと優勝候補のサンダース大学付属高校……

初っ端から優勝候補の一角と当たるなど、大洗女子学園も不幸と言うか籤運の無さも大概である。本音を言えば知波単学園あたりの手ごろな学校と当たって自信をつけておきたいところだがコレばっかりはどうしようもない。

そして始まった戦車道全国大会、大洗女子学園は戦車道家元の娘・みほの指揮の元、状況を開始する。

 

サンダース戦に参加している大洗の戦車は5両。

まずⅣ号戦車、チーム名はあんこう。乗り込むメンバーは車長の西住みほ、装填手の秋山優花里、通信手の武部沙織、砲手の五十鈴華、操縦手に冷泉麻子の2年生5人。

次にⅢ号突撃砲F型、チーム名はカバさん。車長兼通信手にエルヴィン、装填手はカエサル、砲手が左衛門佐で操縦手がおりょうとソウルネームで呼び合うなど少々痛々しい一面がある2年の歴女4人組だ。

京太郎を大洗に引き込んだ諸悪の根源たる生徒会のメンバー、角谷杏、河嶋桃、小山柚子の3人は38(t)戦車に乗り込んでいる。チーム名はカメさん。京太郎が乗っているのもこのチームの戦車だ。

残るはアヒルさんチームとウサギさんチームの2チーム。

アヒルさんチームに所属するのは、バレー部の磯部典子、川西忍、近藤妙子、佐々木あけびの4人。2年生の典子以外は1年生の編成で操る戦車は八九式中戦車甲型。

ウサギさんチームは最もメンバーの数が多い6人で澤梓、山郷あゆみ、丸山紗希、阪口桂利奈、宇津木優季、大野あや。戦車はM3中戦車リー。

以上が大洗女子学園の全兵力なのだが、M4シャーマン9両とシャーマンファイアフライ1両で編成されたサンダース大付属と比べれば、正直言ってしょぼい。

指揮官のみほは戦術と個々人の腕でどうにかするつもりのようだが、どうなることか……

何はともあれ、試合は始まってしまっているので今ある戦力でやりくりするしかないのも事実だ。

 

『試合開始!』

 

アナウンスと共に両チームの戦車が一斉に動き出す。大洗チームの隊長になったみほはまず右翼にウサギさんチームを左翼にアヒルさんチームを偵察に出す。

今回のルールはフラッグ戦と言い、各校の戦車の中から一両をフラッグ車に指定し、その戦車を撃破するか、相手の戦車を全滅させれば勝ちだ。

このルールならこちらのフラッグ車以外が全滅したとしても、相手のフラッグ車を討ち取れば良い。

大洗にも勝ちの目があるルールである。

 

さて、偵察に2チームを派遣したわけであるが、行き成りウサギさんチームが敵戦車6両に包囲されるという急展開となる。

偵察隊を見捨てるわけにもいかず、みほは、あんこうチームとアヒルさんチームで急造の救援隊を編成しウサギさんチームの援護に向かう。

が、救援に向かう途中で救援隊そのものがシャーマン3両に囲まれてしまう。

 

「北東から6両、南南西から3両…… すごい! 全10両中9両をこの森に投入ですか!!」

 

「ずいぶん大胆な戦術ですね……」

 

優花里と華がのんきに言うが、全戦力の10両中9両が突っ込んできたのだ。みほたちが何処にいるか完全に分かったうえで、叩き潰す為に戦力を集中投入したのは火を見るより明らかだ。何とかしなければ一気に戦力をすり潰されて敗北してしまうだろう。

その後、何とか合流に成功し森を脱するために南東に進路を取って逃げようとしたが、再びサンダースの戦車2両に行く手を阻まれる。

何とか森の出口で待ち伏せていた2両に正面から反航戦を仕掛けることで包囲を脱し、一両も欠けることなく撤退に成功したのは不幸中の幸いと言えよう。

 

(……変だな、9両の集中投入は戦力の分散を嫌ったからで説明はつくけど…… 森の出口での待ち伏せは、予めこっちの行動が分かっていないと出来ないはず…… 西住先輩が戦車の進行方向を変えるのを見てからじゃ遅すぎるし…… まさか!?)

 

京太郎は味方チームの戦況を38(t)戦車の無線通信機器で聞いていたが、疑問を感じ地形図を睨んで考えていた。疑問を感じるのは当然だろう。サンダース大付属の作戦はあまりにも出来過ぎている。と、その時、京太郎は中学時代に母親(ケイ)と交わした会話を思い出す。

 

『母さん、やっぱジェット戦闘機って最新鋭機が勝つことが多いのか?』

 

『そうねぇ…… 一概には言えないわ。新鋭機の方が機体の能力が高いのは確かよ? でも現代航空戦って戦闘機とその支援システムの総力戦だから電子戦(EW)の方が重要よ。それさえしっかりしていれば電子戦支援(ES)のない最新鋭の機体(ハイテク)をローテク機で撃墜することも可能よ。』

 

『私もAWACSには助けられたわ。通信傍受とか支援管制とかで相手の行動を丸裸にすると機体の一寸した性能差なんて吹っ飛んじゃうしね。そういえばサンダーヘッドは元気かしら?』

 

ヒコーキ親子らしい会話である。サンダーヘッドっていったい誰?と言う疑問はあるが今回の本題とは全く関係ないので脇に置いておこう。そう、今回の本題は『通信傍受』と『相手の行動を丸裸』の2つ。この2つの単語が頭に浮かんだ瞬間、京太郎はパズルのピースが全て嵌まったような感覚を感じた。そう、大洗(こちら)の無線が傍受されている……

慌ててキューポラから上半身を出し、空を見渡す。傍目からはただ青い空があるだけで異常があるようには見えないが、両親から英才教育を受けた根っからのヒコーキ乗り(パイロット)の京太郎の眼は誤魔化されなかった。鋭い目で蒼い空をジッと睨み、愛用のNIKON M511双眼鏡で確認すると思った通り、そこには本来あるはずのないものがあった。そうブルー系のロービジ迷彩が施された阻塞気球……

京太郎でないと見つけることすらできなかっただろうソレが、何の為に空に浮いているのかなど一目瞭然。

 

(マズった! こっちの動きが丸裸とか冗談じゃねぇぞ!? 早く西住先輩に伝えないと…… でもどうする……? あれは絶対に通信傍受だ、無線機は使えない…… 手旗や発光信号はそもそも味方を視認できない現状では無理、信号弾は敵に居場所を教えるようなものだし……)

 

深刻な顔で必死に頭をフル回転させる京太郎。

 

(サンダースの隊長、なにが「フェアな戦いをしよう」だよ…… 電子戦支援(ES)とか思いっ切り絡め手じゃねーか! となると試合前のあの態度は通信傍受を悟らせないための布石? とんだタヌキだな……)

 

サンダースの隊長のケイの試合前のフレンドリーな態度を思い出しイライラを募らせる京太郎。こうなると自分の母親と同じ名前と言うのも気に食わない、京太郎の中でサンダース隊長(ケイ)の株は大暴落して完全にストップ安だ。

実際はサンダース副隊長兼フラッグ車車長を務めるアリサの独断。つまり京太郎の評価はケイにとっては完全にとばっちりだが、京太郎にとってはどうでもいい事だし、知ったことではない。

 

(さて、本当にどうするか…… ただやられっぱなしってのも気に食わないけど、まずは通信手段の再構築か……)

 

考えながら京太郎は無意識に手をフライトジャケットのポケットに突っ込む。その時、ポケットの中で固いものに手が当たった。ちなみに京太郎がなぜ愛用のフライトジャケットを着ているのかと言うと、単に杏が京太郎のパンツァージャケットを発注したのだがサンダース戦に間に合わなかっただけ。発注する時に「角谷会長! ズボンですよね!? スカートなんて止めてくださいよ!! 絶対に!!」と京太郎が必死に念押しする一幕があったりしたが、今は置いておこう。

手にあたったものを取り出すとそれは縦15cm、よこ7cmの樹脂製で箱状の物体。片面には液晶画面がついている…… まぁ、たやすく言えばスマホだ。

手に持ったスマホをジーっと見て、何を思いついたのやらニヤリと相好を崩す京太郎。もしこの表情を咲、和、優希とまこが見たなら揃いも揃ってこう言っただろう。

 

部長()が悪巧みした時と同じ顔してる……」

 

須賀京太郎、知らず知らずのうちに竹井久の薫陶をしっかり受けていたようだ。

 

 

 

 

「何にもないよぉーーーーーー!!」

 

チチチっと小鳥の声が聞こえる拓けた丘陵地に少女の声が木霊する。声の主はサンダースの隊長のケイ。周りにはエンジンをアイドリングさせて大洗の戦車を今か今かと待ち構えるシャーマン戦車9両。独断で無線傍受をやっているアリサの誘導に従ってこの場所で待ち伏せをしているのだが……

待てど暮らせど、大洗の戦車は現れず時間だけが過ぎていく。

 

『そんなはずありません!!』

 

無線からは慌てたアリサの声が聞こえるが、現に大洗の車両の影すら見えない現状では説得力はない。

さて、いったい状況はどうなっているのか…… 結論から言うと大洗がサンダース大付属を罠にハメた形になる。

サンダースの無線傍受に気付いた京太郎はスマホを見て対抗手段を思いつく。無線では偽情報を流してサンダースを手玉に取り、重要な情報のやり取りはスマホもしくは携帯で、まさしく情報戦である。

この作戦はうまくハマり、戦力に優れるサンダースを手玉に取ることに成功する。おまけに、シャーマンを一両撃破するという大戦果すら挙げていた。

 

「一体どういうこと? もしかしてハメられた……?」

 

ケイの本隊から大分距離のある竹林の中に停車している一両のシャーマン。アリサの乗るフラッグ車であるが、そのキューポラから上半身を乗り出してアリサがひとりごちる。イライラが溜まっているのか無意識に爪を噛んでいる。と、そのときエンジン音とともに八九式中戦車甲型が柴垣を踏み倒してシャーマンに飛び出してきた。

 

……大洗のアヒルさんチームである。サンダース大付属のフラッグ車を探して偵察に出ていたのだが、間の悪いことに偵察対象と鉢合わせである。

キューポラから上半身を乗り出しているアリサと典子、お互い突然のことに固まって見つめ合うだけ。場の空気を表すかの如く一陣の寒風が吹き抜けた。

ゆーっくりと脳がはたらきを取り戻してきたのか、コンコンと自車の車体を拳で叩く典子。次の瞬間には……

 

「右へ転進! 全速前進!!」

 

脱兎のごとく逃げ出した。

 

「ま、待ちなさい!!」

 

フリーズから復活したアリサも大慌てで八九式中戦車甲型を追うようにクルーに指示を出した。

 

 

 

『0765地点にて敵フラッグ車を発見! しかし、こちらも発見されて現在追撃を受けています!!』

 

無線機から聞こえる状況報告、これを聞いたみほは表情を強張らせた。

「なるべく敵に見つかりたくなかった……」

大洗の戦車は捕捉されてしまうと、まずサンダース大付属の戦車とはまともに撃ち合えない。こちらが一方的に撃破されるだけである。だからこそ見つかることは避けたかったのだが、見つかってしまったものは仕方がない。チームメイトを見捨てることなどできないみほは、援護&待ち伏せの作戦を大急ぎでまとめ戦車隊に指示を飛ばす。

 

「なんとかするしか……」

 

彼女の首筋に一筋の汗が流れた。

みほが思いつめた表情をしているその時、我らの京太郎はと言うと……

 

「よーーしッ! アヒルさんチームよくやった!!!」

 

ガッツポーズとともにアヒルさんチームをベタ褒め、みほとは違いテンションアゲアゲである。この2人の対応の違いは何なのか……

言ってしまえば性格の違いである。最善手を打てなかったと落ち込むネガティブな性格のみほ、ミッションの必要条件はクリアしたと喝采を上げるポジティブ思考の京太郎。全く持って対照的である。

付け加えると京太郎は、アヒルさんチームの成果は必要条件どころか十分条件すら満たす好ましい結果だと考えている。もちろんベストはこちらが一切捕捉されず、相手の行動を丸裸にすることだが、さすがにそこまで求めては贅沢と言うものだろう。みほはそれを求めてしまった訳だ。

 

そんなこんなでちょっぴりシリアスに陥ったみほの指揮の下、サンダース大付属のフラッグ車を待ち伏せしたわけだが、失敗した。アヒルさんチームが煙幕を焚きつつキルゾーンにシャーマンを釣り出す。まんまと包囲網に飛び込んだシャーマンだが、アリサが女のカンで急停止を発令、これが三号突撃砲の必殺の砲撃をギリギリで躱すという大金星につながった。

圧倒的に不利な状況に陥ったことを理解したアリサは反転し遁走を始める。逃がしはせぬと追いすがる大洗戦車隊、フラッグ車を5両の鬼で追いかける前代未聞の鬼ごっこが始まった。大洗の戦車道のコーチを引き受けている陸自の戦車教導隊所属の蝶野一尉はこの試合展開を見て大爆笑していた。

外野の反応はともかく、このチャンスをものにして一回戦を突破したい大洗は果敢に砲撃を仕掛けるが、ローテクの代名詞ともいえるWW2世代の戦車の行進間射撃が早々当たるわけもなく、中々仕留めることが出来ない。

そうしているうちにアリサの救援要請を受けてスッ飛んできたケイの戦車隊が大洗戦車隊の後方に追いすがってくる。

 

次第に距離を詰めてくるサンダース大付属、凡そ5kmまで距離を詰めると、ファイアフライがその砲門を開いた。ファイアフライの最大射程(11km)内とはいえ命中など期待できる距離ではない。なのにあえて撃ったのは「追いついたぞ、さぁ決戦だ!」というサンダースの意思を告げるためだ。

ズドンと腹の底まで響くその砲声によってみほたちは(サンダース)が迫っていることに初めて気づいた。こうして鬼ごっこは新たな展開を見せる。

逃げるアリサの乗るフラッグ車、それを追う大洗の戦車5両、そしてさらにそれを追いかけるサンダース大付属の戦車4両。1両撃破されているのでサンダースの戦車はあと9両あるはずである。4両ほど数が少ないのはフェアプレイ至上主義のケイが大洗の車両数と同じにする決断をしたからだ。

 

「戦車道は戦争じゃない! 堂々と同じ数で勝負しようじゃないの!」

 

そう言って4両だけを引き連れアリサの救援&大洗との決戦にやってきたのだ。

シャーマンの17ポンド砲弾が雨あられと降り注ぎ、辺り一帯に衝撃波を撒き散らす。みほはアヒルさんチームとウサギさんチームに追いすがってくるサンダース隊の対処を指示、残る3両で敵フラッグ車の撃破を目指す作戦をとる。みほの指示を受けてアヒルさんチームとウサギさんチームは砲塔を旋回させ、後ろに狙いをつけて砲撃するが惜しくも両弾とも狙いを外してしまう。追い打ちを掛けるがごとくファイアフライが八九式中戦車甲型に砲撃を命中させアヒルさんチームを行動不能に追い込む。さらにM3中戦車リーも一発貰い大破炎上。当然のごとく白旗が上がり行動不能になる。

これで戦力差は3対5と完全に劣勢に立たされてしまった大洗女子。チーム全体が完全にサンダースの勢いにのまれてしまい、敗北への道を一直線に歩みかけていた。

 

 

 

…………………………………

……………………

…………

 

 

 

ここで話は冒頭に戻る。

固い座席に打ち付けたお尻をさすりながら京太郎は、冷静に思考を巡らせる。

正直言って負け確定のこの状況をひっくり返すのは並大抵の方法では無理だ。と言うかチームの士気がどん底なのが痛すぎる。まぁ、京太郎にとってはこの試合に負けた方が清澄に早く帰れるので得なのだが、それはあまりにも不義理と言うものだ。実際、京太郎はこのチームを勝たせるために来ている訳だし、そのためには出来る限りのことはするつもりでいる。今も状況をひっくり返すために色々考えているのがいい証拠だ。

 

(とりあえず、士気を回復させなきゃいけないんだけど…… ふむ……)

 

何か思いついたのか無線機のハンドマイクを掴むと、親指で送信ボタンを押す。

 

「こちらカメさんチーム通信手、須賀だ。全車聞け」

 

 

 

 

 

『こちらカメさんチーム通信手、須賀だ。全車聞け』

 

「えっ? 須賀君……?」

 

あんこうチームでは押し黙り必死に打開策を考えているみほとそれを黙って見つめる沙織、華、優花里、操縦に集中する麻子。雰囲気的にはお通夜に近かった。

が、そんな車内に無線機から京太郎の声が響き、みほがハッと顔を上げる。

 

『なにやら負けたような雰囲気になっているが勘違いするな。こちらも敵フラッグ車を射程に捉えている、状況は五分と五分だ』

 

『先にフラッグ車を撃破すればいいだけだ、それで勝てる。落ち込むのはこちらの負けが決まってからにしろ、大馬鹿者共』

 

なんだかんだ言っていつも優しい京太郎とは思えないほどの厳しい言葉遣い。しかし、それがかえって皆の萎えた心に鞭を入れ奮い立たせる。

 

『なぁに、皆、一生懸命に練習を積んできたんです…… 簡単なことではないが不可能ではないさ』

 

京太郎の言葉を聞いて、皆の表情に生気が戻る。

 

「みぽりん!」

 

「みほさん!」

 

「西住殿!」

 

「西住さん」

 

あんこうチームの皆がみほの方を見る。落ち込んだ情けない表情はすでに消え去り、「やってやろうじゃないの!」と言ったやる気に満ちていた。

みほの表情も力を取り戻し、皆に「うん!」と頷いて目線を返す。そして、無線機のスイッチを入れ、残った戦車に檄を飛ばす。

 

「みなさん、須賀君の言う通りです。私たちは…… まだ負けていません! 敵フラッグ車に全火力を集中させます。必ず命中させてください!」

 

そう言って無線機のスイッチを切る。

 

『どうやらやる気は戻ったみたいですね? じゃあ俺の方からさらにやる気が出る提案をしましょう』

 

みほの通信が終わって間髪入れず、再び京太郎の通信が入ってくる。

 

『敵フラッグ車を撃破したチームには殊勲賞として…… 俺の特製ザッハトルテをご馳走しましょう。この間のババロアよりも得意なお菓子ですから期待してくれていいですよ?』

 

何と京太郎、お菓子でチームメイトを釣りだした。女の子は甘いものに目が無いとは言うが、そんなものでやる気を出すのは某M家のインハイチャンプくらいだろうが……

 

「……須賀君の……」

 

「ザッハトルテ……」

 

どうやら京太郎のお菓子は大洗の女の子を釣ることも出来るらしい……

車内は静寂に包まれていた。彼女たちの脳裏に浮かぶのは、歓迎会の時にふるまわれたあのババロアの味だった。それこそ下手なお店をはるかに上回る味のババロア。口に入れた瞬間、至福の感覚が体中を包み込んだあのババロアの味。それ以上に出来がいいと京太郎自身が太鼓判を押すザッハトルテはどんな(ユートピア)なのだろうか……

一瞬、ほんの一瞬だが彼女たちの頭から試合のことは消し飛んでいた。

が、次の瞬間、彼女たちの目は獲物を狙う獣の……

いや飢えた狼の目になっていた。

 

「秋山さん、砲弾の装填速度を上げてください」

 

「はい!」

 

「華さん! 敵戦車のウィークポイントに確実に当ててください!」

 

「もちろんです!」

 

「殊勲賞、私たちのチームが貰います! みなさん頑張りましょう!」

 

みほの檄に4人そろって「おう!!」とやる気満々の声で返事をする。

カバさんチームとカメさんチームでも同じような光景が繰り広げられていて、テンションはアゲアゲである。一方、撃破されたアヒルさんチームとウサギさんチーム、無線で京太郎に『ズルい!』だの『私たち参加できないじゃない!!』などブーイングの嵐を浴びせる。しかし、京太郎はどこ吹く風で『さっさと撃破される方が悪い。次頑張れ』と無情なお言葉で返り討ちにしていた。

で、士気が天を衝かんばかりの大洗戦車隊の攻撃は苛烈を極めた。発射速度は機関砲と見紛うほどの猛射、射撃精度も信じられないくらいに上がりシャーマンの車内でアリサたち乗員はパニックに陥っていた。

げに恐ろしきは女性の甘味への執念か。

そして、ちょっと小高い位置からあんこうチームが伏角の撃ち下ろし射撃を敢行、見事シャーマンの天蓋を突き破り行動不能判定の白旗がはためいた。

 

「やったよ! みぽりん!」

 

「やりました!」

 

「ふぅ…… ありがとう、華さん」

 

こうして一回戦は大洗女子学園の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 

夕焼けで赤く染まる港でみほたちは戦車輸送用の揚陸艦に乗せられていくサンダースの戦車を見送っていた。試合の後、ケイ達が通信傍受の謝罪に訪れたりして親睦を深めるなどのイベントもあった。最初、京太郎はケイのことを胡乱な目つきで見て警戒していたが、アリサが独断だと告白し謝罪したので、グチグチ言っても仕方ないと水に流すことにした。

 

「さーあ、こっちも引き上げるよ! お祝いに特大パフェでも食べに行く?」

 

「行く」

 

サンダースの戦車を載せた艦の出港を見送って、沙織が明るく問いかける。それに夕方になって調子が上がってきた麻子が答える。みほたちの表情も一回戦突破と言う結果を出したおかげか明るい。そんな勝利の余韻に浸る空気の中、突然、猫のニャーニャーと言う声が流れてくる。

 

「私だ」

 

麻子がそう言って自分の携帯を取り出して通話を始める。最初はウンウンと相手の言葉に耳を傾けていた麻子だが、突然携帯を取り落としてしまう。表情は茫然としていて思いもよらないニュースを聞いた時のようだ。

 

「どうしたの麻子?」

 

「な…… なんでも…… ない」

 

沙織の問いかけにも消え入りそうな震えた声でしか答えられない。誰がどう見ても何かあったと思うだろう。肩も震えていてみほたちは只ならぬ事態が起きたことを悟る。

 

「なんでもないわけないでしょ!」

 

「おばぁが…… 倒れて病院に……」

 

「えっ! 麻子、大丈夫!?」

 

「早く病院へ!」

 

「でも大洗までどうやって!?」

 

「学園艦に寄港してもらうしか……」

 

「撤収まで時間がかかります……」

 

俯いていた顔を上げて辛うじてそう言う麻子。どうやら彼女の祖母が倒れて大洗の病院に担ぎ込まれたらしい。それを聞いた沙織たちは大騒ぎだ。急いで麻子を病院に連れて行かなきゃと騒ぐが、戦車道の試合が行われていたこの場所は八丈島だ。すでに八丈島空港発羽田行きの最終便は出た後、端的にいえば足が無い。学園艦には緊急用のヘリが搭載されていて、それを使う手もあるにはある。しかし、元々みほ達の撤収は大洗学園艦が寄港して行うことになっていて、学園艦の入港予定時刻は明日の午前8時。そんなに悠長に待ってなどいられない。かといってほかに手段があるわけでもなく、華が学園艦の運行管理室に一報を入れようと携帯を取り出した。

 

「泳いでいく!」

 

もはや冷静な判断が出来なくなっているのだろう。何を思ったか、そう言って制服を脱ぎだした麻子。当然、泳ぐことの出来る距離ではない、沙織達が全力で止めにかかる。

 

「ちょっと麻子! 泳いでいくなんて無茶だよ!!」

 

沙織がまこを羽交い絞めにして、優花里が何とか落ち着かそうとして宥めるが効果は無い。そんなグダグダしているところに「私たちが乗ってきたヘリを使って」と後ろから声が掛けられた。

 

「えっ、お姉ちゃん……」

 

黒い黒森峰のユニフォームに身を包んだ2人の少女、みほの姉の西住まほとその片腕の逸見エリカだ。何やらエリカが「隊長!こんな娘達にヘリを貸すなんて!」と喚いているがそれをまほが「これも戦車道よ」と諭して宥める。全国大会の抽選の時に戦車喫茶『ルクレール』で睨みあった黒森峰からの思いもよらぬ提案にしばし理解が追いつかないみほ達。まぁ、睨み合ったのはエリカと沙織、麻子、華、優花里であってみほは引っ込み思案の性格で俯き、まほは一歩引いた位置から見ていただけなのだが……

 

「先輩方、どうしたんですか?」

 

そんな一同に別の声が掛かる、それも男性の。

 

「あっ、須賀君…… 実は……」

 

そう、声を掛けてきたのは京太郎だった。本日は金曜日だったので試合会場から直で長野に帰る予定を立てていた彼、もちろん紫電改も学園艦から降ろして八丈島空港のハンガーに駐機してあった。で、帰るための最終チェックをしていて終わったので、帰る前にみほ達に挨拶しに来たのだ。

京太郎に事の次第を説明するみほ。みほの話を聞く京太郎の表情はだんだん険しいものになっていき、説明を聞き終えると顎に手を当てて考え込んだ。

 

「西住まほ先輩…… でいいですか?」

 

「君は?」

 

「大洗女子に戦車道の助っ人として短期国内留学している須賀京太郎です。お聞きしたいんですが、ヘリの機種は?」

 

「……君が噂に聞く大洗に来た男子戦車道選手か…… ああ、済まない。ヘリはドラッヘだ」

 

まほの言葉を聞いた京太郎は「Fa233か……」と呟くと顔をあげて皆を見渡し、ある提案を口にした。

 

「西住まほ先輩のご厚意に割り込むようで申し訳ないのですが…… 俺から一つ提案です」

 

八丈島(ここ)から大洗までおよそ360 km、黒森峰のFa233の速度は120 km/hでおよそ3時間ぐらいですね」

 

「もし…… 冷泉先輩が狭いのや振動を我慢できるなら俺の紫電改で送りましょう。紫電改の巡航速度は370 km/h、燃費を気にしなければ500 km/h以上で飛べるから1時間もかかりません」

 

まっすぐ京太郎の目が麻子を見る。麻子はそんな京太郎に縋るような視線を向ける。

 

「いい…… のか……?」

 

「なに、長野に帰る途中で寄り道するだけです。うまく風を捕えれば45分くらいで着くことも可能なはずです」

 

「戦闘機だから乗り心地はすごく悪いと思いますけど、どうします? 冷泉先輩」

 

「須賀…… たのむ」

 

了解です(ラジャー)! それと、西住まほ先輩、すいません折角の厚意に割り込むような真似をして」

 

「いや、事情が事情だ、気にすることは無い。それと「西住まほ先輩」は呼び辛いし、みほと紛らわしいだろ? 君さえ良ければ名前呼びしてくれて構わない」

 

麻子の返事を聞いた後、まほに向かって横から割り込んだことを謝罪する京太郎。京太郎の謝罪にまほは全く気にしていないと返事する。それどころか京太郎に名前呼びを許してしまう。少し柔らかめの表情を浮かべるまほを見て目を丸くする周囲の面々。まほは普段、鉄面皮で表情を変えることが殆ど無いので、柔らかい表情はかなり珍しい。

それはともかく、京太郎は大急ぎで紫電改の出発準備を整える。操縦席の後ろのスペースに厚手の毛布を2つ敷き、麻子が搭乗できるように整える。

さて、いよいよ出発と言ったところで、いきなり沙織が同行を申し出た。確かにスペース的には少女がもう1人乗るくらいの余裕はある。

 

「……分かりました…… では武部先輩、体重は幾らですか?」

 

「乙女に何てこと訊くのよ!!」

 

沙織に体重を訊ねたところ、怒声とともにビンタが飛んできた。パチーンと小気味のいい音とともに京太郎の頬に見事な紅葉が……

もちろん体重を訊ねたのは機体重量が必要燃料や離陸速度、離陸滑走距離に影響を与えるためで、絶対聞いておかなければならない事なのだ。B737やB747、DC-10みたいな旅客機クラスの機体なら人ひとり分くらい誤差の範囲で済ますことが出来るだろうが、京太郎の愛機は本来一人乗りの紫電改……

到底、無視など出来る訳がない。つまり京太郎に一切非は無い。体重を聴いた理由を告げられた沙織は一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、慌てて土下座。真っ赤になりながら京太郎に自身の体重を耳打ちした。ちなみに如何ほどの重さだったかは、京太郎の予想よりも軽かったとだけ言っておこう。

ちょっとしたハプニングはあったが、みほ達が見送るなか、紫電改は夕日が照らす滑走路を走り軽やかに空に浮かび上がった。そのまま所定の離陸経路をたどり進路を北に向けて八丈島を飛び去って行った。

 

 

 

…………………………………

……………………

…………

 

 

 

紫電改が八丈島空港を離陸したころ、長野県立清澄高校の麻雀部部室には少女が6人集まっていた。

 

「ロンですね…… すいません役がわかりません」

 

咲、和、優希、久とまこの5人はいつもの部活メンバーだが残りの1人は意外な人物である。

 

「ええっと…… 清一色一盃口ドラドラだから倍満ね、凄いじゃない京子ちゃん」

 

そう京太郎の妹・京子だ。彼女は中学2年生だが、学校が終わったあと清澄高校に遊びに来たのだ。

 

「でも京子ちゃんが麻雀教えてほしいって言ってきたときはビックリしたなぁ」

 

「高校に入って兄さんが入れ込んだゲームですから。兄さんと楽しさを分かち合いたいですし」

 

「……これまた分かりやすいほどのブラコンねぇ……」

 

和、まこ、優希と卓を囲み、久に教えてもらいながら麻雀を打つ京子。彼女が麻雀を教えてほしいと言ってきたことが意外だったと話す咲。それに対する京子の答えを聞いて久は呆れながらも仲の良い兄妹だなと溢す。

 

「兄さんが好きかといえば、好きですよ。肉親としても男性としても」

 

「あの、京子さん…… 日本では兄妹同士というのは……」

 

「大丈夫です、そのくらいは弁えていますよ、和先輩。兄さんに迷惑をかけては本末転倒ですから」

 

異性として京太郎が好きと公言する京子に、後頭部にでっかい汗を浮かべながら和が窘める。また、日常で京太郎と触れ合う時間の長いライバルが出現かと身構えた5人だが、京子の答えに安堵のため息をつく。

 

「それはそれとして…… 麻雀、奥深いですね」

 

「そうじゃろ? 人によって打ち方も千差万別じゃけぇ、ぶち奥深いんじゃ」

 

インターハイ優勝チーム5人を独占しての麻雀教室。かなり贅沢な麻雀教室だろう。特にまこや久はその経験の豊富さから教え方が上手い。和はその論理的思考能力故の説明が上手い。咲と優希? 麻雀に必要な感覚を教えてくれる良い教師だ。

 

「中学2年だとまだ早いかもしれないけど…… 志望校は清澄(ここ)?」

 

「もちろんです、1年間とは言え兄さんと同じ学校に通いたいですから。麻雀部にも入るつもりです」

 

余りにも堂々としたブラコン宣言である。

 

「そう言えば京子もヒコーキに乗るんだよな? いつ頃から乗ってるんだじぇ?」

 

「そうですねぇ…… 初めて操縦桿を握ったのは小学校に入ってすぐだったと思います。免許を取ったのは小5の時です」

 

「……京太郎もか?」

 

「ええ、兄さんも同じくらいから乗ってましたね、免許取得は私より早くて小3の時のはずです」

 

「……2人そろってとんでもないのォ……」

 

優希が飛行機関係で京子に訊くと、返ってきた答えは結構とんでもなかった。なんと須賀兄妹、小学生のうちにヒコーキの免許をゲットしていたのだ。まぁ、両親の英才教育の成果と言えばそれまでだが、それにしたって早すぎである。

 

「京子さん、ヒコーキの免許って簡単なんですか?」

 

「そう言う訳ではないですけど…… ただ、交通の便が悪いところでは中学で通学に使っている人も多いですね」

 

和がさらに訊く。どうやら小学生で免許取得はともかく、中学生では地域によっては珍しくないとのこと。それを聞いて何やら考え込む清澄5人娘。彼女らの様子を見て京子が声を掛ける。

 

「飛行訓練します? 父や母に頼んでみますけど?」

 

「……いいの?」

 

「構いませんよ。兄さんがやっていることが気になるのは私も一緒ですから」

 

こうして清澄5人娘もヒコーキの操縦にチャレンジすることになった。それと同時に京子が清澄麻雀部に出入りすることになり、ますます麻雀部が賑やかになっていくことが決まった。京子曰く「兄さんのお嫁さん候補はガッチリ固めておかないと…… 変な女性に引っかかられると困ります」とのこと。どうやら咲達は京子のお眼鏡に適ったらしく、京太郎との仲を進展させるための協力をする密約が取り交わされたとか、されなかったとか。

 




冷静な京ちゃんってかっこいいよね!

次話は日常話をお送りする予定です。
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では次の話の投下までしばしお待ちください。

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