故郷の名は。   作:s7uira45

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ぎりぎり間に合いましたね!(汗)500UAありがとうございます!
金曜に何とか一話出ました。こんな投稿の仕方をしたのは初めてでしょう。
それではどうぞ!

※このシリーズでは、一週間空いていなかったらあらすじは書きません。
ご了承ください。


2:完全降伏宣言

Side 俊樹

 

 机上の、ごく一般的であろう固定電話から発せられる、無機質な着信音が部屋にけたたましく鳴り響く。

 いつもなら迷わず取るか……無視を決め込むかの二択である。そして今の役場の状態を鑑みるのなら、迷わずとるべき電話だ。

 だが……

 私の居城ともいうべきこの部屋に、()()()の親族がいることが―――

 発信元が正面玄関からだということが―――

 理屈では説明できない――――――私の勘が的中しそうだという予感が。

 

 ―――――――――私に電話を取らせることを躊躇わせている。

 

 

 

 

 

 

 

 そうしてついに。

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――電話のベルが鳴り止むのと、部屋の扉がノックされるのは全く同じタイミングであった。

 

* * *

 

 私が返事をしなくてもこの部屋に侵入してくるのは、恐らく私の近縁者だけではないか?とふと思う。今朝もだが……それはつい十数分前と今現在で、確信に変わった。

 だからこのバカ娘が再び姿を見せた時も、あまり驚きはしない。なぜなら…

 

 今朝のことは私の記憶の中に、強く刻まれているのだから。

 まさか娘に、胸倉を掴まれるとも思ってもみなかったし……

 ――娘の身体に別の何かが宿るなんて、それこそ考えたことさえなかった。

 

 だからこそあの、娘の姿形をした、化けの皮を被った何かが。

 再び突撃してきて、またあのくだらない、本当にくだらない妄言を。

 もし、今一度繰り返してきたのなら。

 それ相応に、今度こそこっ酷く、もう二度と妄言なんぞ口にしようなんて、一時も考えさせないように。

 そんな(てい)で論破を……と。

 

 そういった算段を立てていた――――――――――――

 

 そのはずだったのに。

 

 義母(ばあさん)の所為で。

 それらは一瞬の内に、脆くも崩れ去った。

 

 我ながら何とも情けない話だ、とも思う。

 やはり宮水家の女性は強すぎる、とも思う。あの人だって…そうだった。

 どんな時でも……死に際でさえ……

 

 そしてもう一つ……ほら。あの人の血を強く受け継いだ、この娘の顔付きを。

 何かを強く決意した、鋭い表情を。

 

(こりゃばあさんがいなかったとしても危なかったかもな……)

 

 それを見ているだけで、こう感じてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――俺は多分、宮水の血にも、不思議な力にも。

 一生……いや、何生でも絶対に勝てないんだろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

* * *

 

 「父を必ず説き伏せる。」

 

 そんな固い決意を胸に秘め、ラスボスといざ決戦……!

 

 

 

 ……実際、ドアノブを回して部屋に押し入るまで、三葉のオーラはそういった類のものであって。それを遠目に見ていた役場の職員たちは、畏怖に近いような感情を抱いていて。確かにこれは揺るぎやしない、事実であった。

 

 だが。

 

 当然というべきであろうか……

 こちら側の計画も一瞬にして、見るも無残に、崩壊したのであった。

 

 

 ―――頓挫したタイミングが、奇しくも完全に同時とは、何という皮肉であろうか。

 

 

 そして。

 

 

 因縁を持った者同士の対面には、必ず因果があるとでもいうのだろうか……

 

* * *

 

Side 三葉

 

 ズン、ズン、ズン、と。

 自分でも勢いが良すぎるけな…と、そう感じ取れる程に。

 自分でそうのもなんやが、力強う歩けとると思いけな。

 

 やけど。

 

 その瞬間、用意しとった言葉や、何やいうもんは、ぜーんぶ吹き飛んでまったさ。

 

 

 お父さんの、あいふうな顔見てもうたら……

 誰でも毒気なんて抜かれてまうなけな!

 

 

 

 

 ……はっきりとした驚愕の後、自嘲の笑みなんて―――ダメやよ……

 

 

 

 

 ――――――笑いが止まらんくなるもんで!

 

* * *

 

 さ、仕切り直しやさ。

 

「ねぇ、お父さん。」

 

 そう切り出してみる。やが……

 

「ああ……もういい。」

 

 ……え?

 私何もそってないぜな。

 何で?

 

「……ん、言い方が悪かったか?もう何も言わなくてもいいと言っているんだ。」

 

 何も言わなくてもいい―――

 

 何も言わなくても―――――

 

 何も―――――――――――

 

 その言葉は私の中で、強く反響しとる。

 そして…それを脳が認識しはった瞬間に、とてつもない徒労感が襲ってくるさ。

 

 ……あの表情は何やったんやさ、という微かな疑問と共に。

 

 や、やけど。

 

 もういっぺん…もういっぺんだけ……

 

 そう思うた、次の瞬間に。

 

 ――――――信じられんことは、確かに起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             先ほど……

             私たちが、学校から。

             不正に発した、あの音が。

             役場の全階に。

             高校の校庭に。

             そして――――――――

 

 

 

             町全域に―――――――

             それは甘美に、鳴り響く。




2話でした!いかがでしたでしょうか?
やはり方言を使うところに差し掛かった瞬間に、筆のスピードが極端に落ちてしまいます…飛騨弁って何でこんなに難しいんでしょうか……
だから、Side俊樹は効率のいい執筆ができたのですが…Side三葉は難産を極めました。

まあとにかく頑張っていきます。

あと次回以降ですが……予定が不明瞭です。合間にポチポチとしていきますが、大幅に遅れるかもしれません。
先に謝っておきます、ごめんなさい。

それではまた!

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