何故か分からないけど『
な、何が起きたのか全く分からなかった。
いえ、
より正確に言うと、
「フラン…………不意討ちで姉を始末しようとするとは……流石、私の、いも、う、ガハッ」
「おね~さま~~~!?」
フランの声を聞きつけた咲夜が私を助けてくれた。具体的に言うと……いえ、あまり詳しく言うのは駄目ね。こういうの何て言うんだっけ、咲夜。
「R18ですわ、お嬢様」
「ふーん。ま、そんなのはどうでもいいわ。フラン?」
声をかけると、顔を俯かせたままビクッと体を震わせた。我が妹ながら可愛らしい。虐めたくなってくる。
「私は、怒って、無いわ。ど~してこんなことしたのか・し・ら?」
「ヒイッ」
「なぁに? 私は理由を聞いてるのよ?」
「怒るお嬢様も可愛いですわ……」
なんか聴こえた。なんか少し不穏な言葉が聴こえたわ!?
「咲夜?」
「なんでしょうか」
あ、あれは確かに咲夜の声だったわ……。だけどどうだ。咲夜は澄ました顔をしている。聞き間違い? その方が良いのだけど……。
「……」ジーッ
「…………?」
「お姉様、ごめんなさい!」
あ、忘れてた。
「だからー、私は怒って無いのよ。なんでって理由を聞いてるのよ」
「それは、その、お姉様の『目』がいつもより大きくなってたから……」
「―――ちょっと待って? 色々突っ込みどころがあるんだけど、取り合えず、『目』が大きく?」
フランは他人の弱点をピンポイントで握り潰すことで『あらゆるものを壊す』ことが出来る。フランはその弱点の事を『目』と呼んでいる。
「うん」
「つまり、私の弱点が大きくなってたって事?」
「多分」
「……それは、懸念事項ね」
私にだって弱点はある。が、だからと言って増えていい訳じゃない。
「じゃあ次。なんで大きくなったって分かったの?」
「だって、毎日見てるから」
「…………そう」
これがあるからフランは怖いのよ。見た目は私に似て可愛いのにねぇ。
「最後に。だからってどうして握ったのかしら?」
「ううん、握ってないよ」
「え?」
「間違って落っことしちゃったの」
…………え?
「『目』って、落とせるの?」
「みたいだね」
「『目』って、割れるの?」
「硝子みたいにパリーンッて」
「私って可愛い?」
「カリスマ(笑)」
「オーケー有罪よ」
「お嬢様お待、お待ちを!」
何よ咲夜。変換で『さくや』って入れても『咲夜』って出てこない癖に。
「だからって『さくよる』は酷い……じゃなくて! 妹様、お嬢様の『目』はどれだけの大きさになったのですか!?」
「これっくらいの」
庶民一般が使いそうな大きさの弁当箱ぐらい? それは無駄に大きいわね。
「さーらに、5倍」
…………。
「そんっくらいっじゃすーまなくてさーらに、2倍」
「待て待て待て待て待て待て!」
面積の倍は線の倍よりえげつなく広がってくのよっ! わざわざ『フォーオブアカインド』使ってまで倍にしなくても良いのよ!?
「冗談だよ。せいぜい一抱えあるくらいだったから安心して、お姉様」
「…………いやそれでも十分大きいわよ。何それ、そりゃあ落っことすわよ」
――――パテェ~~、助けて~~。
「私はパテェなんて人知らないわよ」
「あらそう。ならパチェで良いわ。~かくかくしかじか~なんでどうにか出来そうな本無い?」
「無い?」
「あらフラン、いらっしゃい。走り回ったら『プリンセスウンディネ』ね」
「はーい」
「パーチェー!」
「人の名前を間違えるからよ」
だって『チ』と『テ』って似てるじゃない。おんなじタ行だし形も似てるし。
「はぁ。…………なら、マッサージしてもらえば? フランに」
「「 え? 」」
パチェ曰く、『そんなに大きな目はもはや誰かがどうこう出来るレベルを越えている。だからフランに小さくしてもらうしかないと思う』だそうだ。
「間違って握らないでね、フラン」
「わ、わ、わ、わかかかか、わかっててててて!」
「ほらほら、妹様。リラーックスリラーックス」
「う、うん、すーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ、すーーーーーーーーっっ!」
「深呼吸するならせめて吐きなさいフラン!」
「がふーーーーーーーーーーーっ。…………行くよ」
「あ、うん」
ドカーン
地獄の日々が始まった。
レミリアの受難は三ヶ月もの間続き、そこから更に美輪が参入し三ヶ月。合計六ヶ月のレミリアの尊い犠牲のおかげで、今の紅魔館マッサージがあるのです。
あるいは、一番の立役者がレミリアなのかもしれません。