「ふぅ~。やっと終わったぁ~」
「フラン様、お疲れさまです」
今日は何人ぐらいをマッサージしたかな? 大体200くらいかな?
部屋を出て紅魔館の自分の部屋へ向かう。
「あ、お姉様」
「あらフラン。マッサージお疲れ様。咲夜!」
「はい、何時ものでございます」
熱々の血が入った紅茶を飲む。
「それで今日は大丈夫だった? 変な奴に絡まれなかった? 力加減失敗しなかった?」
「私に変な事するようなのは美鈴が追っ払ってるし。せめて門番ぐらいは信頼してあげなよ。で、失敗は無し。ま、慣れだよね」
「そう、なら良かったわ」
お姉様は咲夜を連れて去っていく。何処に行くのやら。
「……流石に咲夜にはバレてるか」
紅茶の入っていたカップの底には『お身体は大切に』のメッセージが。
「それで大切にするの?」
「する訳無いよね」
「今日は誰が?」
「じゃんけん。は決着がつかないからサイコロの目が一番大きい私が」
「「「「生け贄だね」」」」
そもそも
フランドール・スカーレットの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』である。
つまり、マッサージするようにゆっくり『ほぐしていく』のは本来の能力の使い方ではない。
靴を左右逆に履いたらどう感じるか。
押し扉だと思ったら引き戸だったらどう感じるか。
当然。ストレスが溜まる。
では人間ならストレス発散にどうするか?
人によるだろうが、取り合えず元の使い方をしてスッキリするのが一般的だろうか。
靴を履き直し。
扉をスライドさせ。
悪魔の妹も、それにならった。
グチャッ
「ふぅ。まずは一人」
「う~ん。あんまり泣かなかったね、私」
「仕方無いよ。あんまりにも一瞬だもん」
悪魔の一人遊び。およそ人間には理解出来ないだろう。
だが、誰にも迷惑を掛けない。悪魔は悪魔なりに考えているのだ。
グチャッグチャッ
「ウフフ、ウフ、ウフフフフフフ」
「アハハ、アハ、アハハハハハハ」
思い切り、思い切り能力を使う。
一切合切一辺の情け容赦無く静かに確かに確実に力強くその手を握る。
ゴキッグチャッ
「ハア、ハア、ハア……でもまだ足りない。
グチャッ
「……まだ」
グチャッグチャッ
「…………」
グチャッガキッゴキッグチャッバキッメキッ
夜はふける。
フランドール・スカーレットのマッサージ。
フランのフランによるフランの為の、マッサージ。
「お嬢様。今夜もまた」
「……はぁ。まあ、フランのお陰で紅魔館がもってるのも事実。あの遊びでフランがミスをしなくなるのなら……見逃すのも、悪いことでは、無いわ、よね?」
「……はい」
瀟洒なメイドは口には出さない。ただそっと、主人の口元から流れる血を
マッサージ師フラン。彼女は何人もの相手をマッサージしてくれている。ではしかし、彼女をマッサージしてくれる相手は居るのだろうか。どうやら、彼女は四人に分身することが出来るようだが…………。
真相は闇の中。誰にも分からない。