ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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076ありんすちゃんとひみつかいぎ

 ナザリック第十階層にある巨大図書室──アッシュールバニパルにおいて密かに行われている会合、それが通称『賢人会議』です。

 

「お集まりの諸兄、本日はまず、我が賢人会議に今回特別に御参加頂きます御方をご紹介致します。……至高の方々のまとめ役であり我らがナザリックの絶対的支配者、アインズ・ウール・ゴウン様──からの推薦によりまして参加されるありんすちゃんです」

 

 ありんすちゃんは立ち上がって丁寧にお辞儀をしました。

 

「では、各員宣誓を。私ティトゥス・アンナエウス・セクンドゥスはこの集まりでの内容を未来永劫秘匿する事をここに誓います」

 

「……かいまちゅでありんちゅ」

 

 各司書達に混ざってありんすちゃんも宣誓します。秘密の会議なんてワクワクしますね。

 

「……ゴホン。前回はアインズ様の下着のあるべき方向性について実に有意義な議論が出来ました。ブリーフ派とトランクス派の熾烈な戦い、伏兵のふんどし案、さらには『はかない案』……最終的にボクサーパンツに行き着くまでの徹底した議論が出来ました」

 

 ティトウスは感慨深げに目を閉じました。

 

「さて……本日の議題ですが……『階層守護者マーレ殿の下着は男ものであるべきか女ものであるべきか』です」

 

 オーと一堂から静かな歓声が上がりました。

 

「コホン……かのナザリック地下大墳墓においてもっとも『純潔の乙女』という表現が相応しいマーレ嬢、ゴホン、マーレ殿にはやはり純白のシルクのレース模様のショーツこそが似合うと私は愚考致します」

 

 LV80のオーバーロードの司書の一人、コッケイウスが発言しました。ありんすちゃんはマーレこそが『純潔の乙女』という主張に納得いきませんでしたが、我慢して黙っています。

 

 すぐさま反対意見が上がりました。挙手をして自らの意見を述べる機会を得たアウレリウスが重々しく意見を述べます。

 

「意外性の妙、これこそが我々が目指すべき究極の美ではないでしょうか? ……私は美少女にしか見えないマーレ殿が実は男である、というそもそもかの創造主である至高のお方、ぶくぶく茶釜様の意図を汲んでこそ最善の案と考えます。よってマーレ殿には男性用のブリーフ、しかも真っ白でGUNZEのロゴが入ったものこそ相応しいと考えます」

 

 アウレリウスの意見に賛同する意図を込めてありんすちゃんは手を叩きました。つられたかのように二三人がパラパラと拍手をしました。

 

「ちょっとよろしいか?」

 

 ウルピウスが手を上げました。

 

「……アウレリウス殿の意外性が大切という意見は誠に結構。私も重要だと思います。……が、それが男性用ブリーフが相応しいというのは戴けませんな。……マーレ殿の顔かたちはまさに天使であるならば、その肌にまとうのは小悪魔たるべき装いこそが相応しい! ……でーーあーるーなーらーばーあ!……」

 

 ここで興奮し過ぎたウルピウスがカッと白目を剥いて仰向けに倒れ込んでしまいました。

 

「……く、黒じゃ……ガーターベルトに網のすと、きんぐ……」

 

 シモベ達に担がれて退場する際にウルピウスは譫言のように呟いていました。

 

「同志ウルピウスの執念、実に素晴らしい。その遺志は我らが継ぐ事にしよう」

 

 議長のティトウスが重々しく言い渡します。

 

「……では、そろそろ結論を出すとしよう。皆々方はいつものように挙手で多数決を……」

 

「まちゅでありんちゅ!」

 

 ティトウスの言葉を遮ってありんすちゃんが立ち上がりました。その瞳には強い意志が満ち溢れ、とても5歳位の女の子には思えないものでした。

 

「〈グレーターテレポーテーチョン!〉」

 

 次の瞬間、天井に向かって伸ばされたありんすちゃんの右手には水色地に白の水玉模様のビキニタイプのブリーフがありました。

 

「これがマーレがはいていたパンツでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんはティトウスにパンツを突きつけて得意そうに笑いました。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 その後会議は紛糾し、ありんすちゃんは外に連れ出されてしまい、プンスカしていたそうです。まあ、ありんすちゃんは間違っていなかったと思いますが、仕方ありませんよね。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

「──クシュン……」

 

 マーレは不意に寒さを感じてくしゃみをしました。

 

「ちょっと、マーレ。風邪ならうつさないでよねー?」

 

 一緒にいたアウラが露骨に嫌そうな顔をしました。その時、一陣の風がマーレのミニスカートを翻していきました。

 

 数分間の沈黙が二人の間に過ぎていき──

 

「……マーレ……あんた変態みたいだよ……」

 

 マーレをジトっとした目で見つめるアウラがぼそりと呟きました。


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