ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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070劇場版 ふしぎのくにのありんすちゃん??

 ナザリック地下大墳墓玉座の間に各階層守護者が集められていました。守護者統括アルベドが玉座の前で跪き恭しく口上を述べます。

 

「ナザリック地下大墳墓の主にして至高のお方のまとめ役、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下、第四第八階層を除く守護者一堂御身の前に」

 

 玉座のアインズはアルベドの挨拶に片手を上げて答えると要件を切り出しました。

 

「さて、諸君。いよいよ劇場版オーバーロード総集編の公開が迫っている。丸山くがね氏の特典小説目当てで前売り状況はなかなか好調のようである。実に喜ばしい事だ」

 

 階層守護者の顔に喜色が広がります。もちろんありんすちゃんも大喜びです。

 

「しかし、だ。……今回劇場版後編での最大の山場である私、アインズとシャルティアとのバトルシーンを新しく撮影し直す事となった」

 

「なんと……あれはスタントや吹き替えやCGを使わないガチンコバトルであったはず……そんな事が……」

 

 真っ先にデミウルゴスから危惧する意見が出ました。かのシャルティア戦について一番否定的であったのですからもっともな話しです。声に出さないまでも他の階層守護者達も同じ思いのようでした。若干一名を除いては。

 

「頑張るでありんちゅ」

 

 見るとありんすちゃんが既に真紅のフルアーマーを身に纏い、スポイトランスをしきりに振り上げていました。ありんすちゃんはやる気満々みたいですね。

 

 アインズはそんなありんすちゃんを少し憐れみを含んだ目で眺めながら言葉を続けました。

 

「……ふむ。結構。ありんすちゃんよ、そのやる気は評価したい。しかし、だ。その……今の状態ではちょっとまずいのでな」

 

「たしかに……今のありんすちゃんでは過去のシャルティアとの繋がりがありませんな。これは困りましたね」

 

 アインズの意を汲んだデミウルゴスが問題を指摘します。そうでした。シャルティアがありんすちゃんになってしまったのは復活後なのですから、アインズVSシャルティアの時にありんすちゃんではまずい訳です。

 

「くふふふふ。皆はまだ気がつかないのかしら? アインズ様がこれ位の事を見越していなかったと本気で考えているのかしら?」

 

「……なる程。アルベド、そういう事ですか。さすがはアインズ様。既に手を打っていたとは」

 

 含み笑いをするアルベドに同意して、デミウルゴスが大きく頷いてみせました。

 

 二人を除く階層守護者達は一様にわけがわからないでキョトンとしています。内心ではアインズも何のことか全くわかりませんでした。

 

「どゆことでありんちゅか? せちゅめいするでんちゅ」

 

 アインズは鷹揚に頷いて見せてからデミウルゴスを促しました。

 

「他の者達はまだわからないようだ。デミウルゴス。説明してあげなさい。……ありんすちゃんにも理解出来るように」

 

「全くもってアインズ様には不可能な事など無いとしか思えませぬ。私めなどは到底至りませぬ」

 

(お世辞は良いから説明してくれよ……一体どうしたら良いのか……そうだ、アルベドだ。アルベドならば……)

 

「コホン……では、アルベド。お前から説明してあげなさい。……ありんすちゃんにも理解出来るように」

 

「そもそも何故シャルティアが復活の折、ありんすちゃんとなってしまったのか? ……そこに至ればアインズ様のお考えに至ると思われます」

 

 アルベドは訳知り顔で微笑むと平伏しました。

 

「……ふむ。……そうか」

 

 アインズは目を閉じて感慨深く俯くのがやっとでした。デミウルゴスもアルベドも何を言っているのか全くわかりませんでしたから。

 

「あ! ……アタシわかったかも!」

 

 唐突にアウラが叫びました。

 

「この前、アインズ様はこの二次作品の作者を捕まえて餓食狐蟲王の穴に放り込んでおいたじゃん。あの作者に書き直させたら良いんだね」

 

「……ウム、ソレハ一体ドウイウ事ナノカ?」

 

「つまりさー、作者にありんすちゃんが元のシャルティアに戻る話を書かせたら解決する──」

 

「わかったでありんちゅ! ありんちゅちゃんが主役の映画をちゅくれば良いでありんちゅね!」

 

 得意気に説明するアウラを遮ってありんすちゃんが叫びました。

 

「ちょっとありんすちゃん。アタシの見せ場を横取りしないでくれる?」

 

 アウラが抗議しますがありんすちゃんは全く聞きません。もうすっかり自分の考えに酔ってしまっています。

 

「アインズ様、如何いたしますか?」

 

 アルベドが困った様子でアインズに尋ねました。次善の案としてパンドラズ・アクターがシャルティアに成り代わって撮影しても良いのですが、そうなればおそらくありんすちゃんがヘソを曲げてしまう事でしょう。

 

 それはそれで非常に厄介な事態といえました。アインズは目を閉じて絞り出すような声で決断しました。

 

「……良かろう。ありんすちゃんの好きにさせるが良い。……まあ、所詮は読者も少ない二次作品で映画などありえないのだがな」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 その後どうなったか、ですって?ありんすちゃんは自分で脚本を書くんだと言って張り切っていましたが、案の定、ほんの数時間で飽きて投げ出してしまいました。仕方ないですよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 

 ちなみに劇場版総集編オーバーロード後編はなんとかなったとかならなかったとか……まあ、上映されたら皆さんのご自分の眼で確かめられる事をお薦め致します。

 


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