ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
今日もありんすちゃんは二人のヴァンパイア・ブライドに抱えられて自分の階層を見回りしています。あれ? ありんすちゃんはやたらと手をバタバタさせ始めました。ヴァンパイア・ブライド達はありんすちゃんの意図がわからなくて困っているみたいですね。
手足をバタバタさせながら、ひたすらイヤイヤをするように頭を振っています。
あんまり激しく手足をばたつかせていたのでありんすちゃんは落ちてしまいました。大丈夫でしょうか?
ありんすちゃんは勢いよく走り出すとどこかに行ってしまいました。後に残されたヴァンパイア・ブライド達は互いに顔を見合わせてため息をつきました。
なんでも今日のありんすちゃんは朝から喋れないみたいなんですって。一体ありんすちゃんに何が起きたのでしょう?
しばらくすると爽やかな表情のありんすちゃんが戻って来ました。もしかしたらオシッコがしたかったのかもしれませんね。
さて、そろそろお昼です。ありんすちゃんは何を食べるのでしょう?
食堂にやって来たありんすちゃんは難しい顔をしています。うーん……もしかしたら何も食べられないのでしょうか?
よく見るとありんすちゃんは口をモゴモゴ動かしています。まるで飴玉でも舐めているみたいですね。
結局、ありんすちゃんはお昼に何も飲み食いしませんでした。まあ、アンデッドなので問題はなさそうですが……
〈ありんすちゃん、貴女にカルネ村のドワーフ達に物資を送ってもらいたいのだけれど〉
アルベドからのメッセージです。
〈モゴモゴモゴ……〉
〈ちょっと、返事しなさい?〉
〈……モゴモゴ……〉
〈……わかったわ。貴女には頼まない〉
うーん……ありんすちゃんはどうやらアルベドを怒らせちゃったかもしれませんね。大丈夫でしょうか?
ありんすちゃんが喋れなくなった事はアインズの耳に入りました。
(うーむ……まさかNPC特有の感染症とかじゃないよな? ……とりあえずシモベ達から少し情報を集めておくか……)
アインズは自らヴァンパイア・ブライド達からありんすちゃんに何が起きたのか尋ねました。その結果、昨夜プレアデスの面々と『セツ・ブーン』を祝っていた事、そしてそれからずっと喋っていないらしい事がわかりました。
次にプレアデスのユリ、シズを呼び出して話を聞いてみました。
彼女達の話では昨夜は『セツ・ブーン』では『エホ・マ・キー』なるご飯と具をノリで巻いた食べ物を食べるという事で、試しに挑戦してみたとの事でした。細長い『エホ・マ・キー』を食べ終わるまで一言も喋ってはいけないという決まりがあるとの事でした。もしかしたらその『エホ・マ・キー』に理由があるのかもしれません。
「うーむ……他の戦闘メイド達には影響が出ていないが……もしかしたらヴァンパイアか子供にだけ影響があるという事も有り得るかもしれぬ。ユリよ、その『エホ・マ・キー』とやらを再現してみてくれぬか?」
「かしこまりました。至急、作りましてお持ち致します」
※ ※ ※
しばらくして執務室のアインズ、アルベドのもとにユリとシズが『エホ・マ・キー』を持参して来ました。ありんすちゃんも一緒です。
アインズは『エホ・マ・キー』を見てふと関西出身のメンバーから聞いた風習の話を思い出しました。
(確か長い巻き寿司を家族揃って無言で食べる風習だったかな……あれは誰から聞いた話だったか……)
アインズは『エホ・マ・キー』を崩して中身を調べ始めました。玉子、カンピョウ、シイタケ、キュウリ、そして……梅干し。
「もしかしたら……ありんすちゃんよ、口を開けてみよ」
ありんすちゃんが口を開けると中に梅干しの種がありました。
真相はこうです。ありんすちゃんは『食べ終わるまで一言も喋ってはいけない』と言われた為、梅干しの種が無くならないからまだ『食べ終わっていない』と思い込んで喋れなかった、というわけです。
仕方ないですよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。