ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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057ありんすちゃんのあかずきん

 第六階層のコロッセウムには戦闘メイドのルプスレギナ、ユリ、シズ、階層守護者のアウラが集まっていました。みんなありんすちゃんからの呼び出しを受けてきたのでしたが、何をするのか誰も知りませんでした。

 

 誰もが顔を見合わせながら戸惑っていると、ありんすちゃんがやって来ました。何か思いついたように得意気な表情を浮かべたありんすちゃんは唐突に口を開きました。

 

「あかずきんちゃんでありんちゅ」

 

 見るとありんすちゃんは真紅のフード付きのコートを着ていました。胸元に揺れるボンボンがとても可愛らしく似合っています。なるほど、ありんすちゃんはあかずきんちゃんになりきっている訳ですね。

 

 「フンス」と小鼻を膨らませて得意そうに胸を張るありんすちゃんでしたが、観衆達はただ戸惑うだけでした。

 

 ありんすちゃんはまたもや「あかずきんちゃんでありんちゅ」と胸を張りますが誰も喝采してくれません。

 

 仕方ありませんよね。そもそもナザリックの舞台では『あかずきんちゃん』はおろか『グリム童話』自体もほとんど知られていないのですから。

 

 ありんすちゃんは顔を真っ赤にして手にしていた一冊の絵本を投げ出します。その絵本は童話『あかずきんちゃん』でした。絵本の表紙の赤い頭巾の女の子を見てようやくなんとなくありんすちゃんの意図に気がついたアウラがありんすちゃんに尋ねました。

 

「ふーん。なんか前にマーレが読んでいたかも。……で、あたし達が集められたのと関係あるのかな?」

 

 ありんすちゃんは勢い良く叫びました。

 

「あかずきんちゃんの劇をするでありんちゅ!」

 

「えーー?」

 

 かくしてナザリック演劇部のあかずきんちゃん上演が決定されたのでした。

 

 まずは配役を決めます。主役のあかずきんちゃんはもちろんありんすちゃんです。

 

 ありんすちゃんは次々に役をふっていきました。ルプスレギナはオオカミ、お婆さんはユリ、猟師はシズです。

 

 最後にアウラが残ってしまいました。ありんすちゃんは一生懸命考えてようやく一つの役を思いつきました。

 

「アウアウはイジワルままははでありんちゅね」

 

「えーー? なにそれ? あたしの役おかしくない? ……イジワル継母って出てくるのは他の話じゃなかったっけ?」

 

「……良いんでありんちゅ!」

 

 アウラはすぐさま胸元の金のドングリでマーレを呼びます。

 

「……あれ? お姉ちゃん。どうかしたの?」

 

「マーレ、イジワル継母ってあかずきんちゃんの話に出てこないよねー?」

 

 状況が今ひとつわからないマーレの声は寝起きの様にボンヤリしていました。

 

「うーん……イジワル継母が出てくるのはシンデレラ、じゃないかな?」

 

 短くマーレに礼を告げてドングリの発動を切ると、アウラは勝ち誇った表情でありんすちゃんに詰め寄りました。

 

「ほーら? マーレに聞いたけど『あかずきんちゃん』には継母って出てこないよ?」

 

「……でてくるでんちゅ……でてくるでんちゅよ……うわーーん!」

 

 アウラに問い詰められてありんすちゃんは泣きながら飛び出して行ってしまいました。

 

 どうやらありんすちゃんがナザリックを飛び出していったのはこういう事情があったのですね。

 

 まあ、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なんですから、それも仕方がありませんよね。

 

 

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 

 


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