ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
ナザリック地下大墳墓第二階層〈屍蝋玄室〉──ありんすちゃんが机に向かって書きものをしています。珍しいですね。
ありんすちゃんはお風呂に入るか眠るかお菓子を食べているかしかイメージがありませんが……ゲフンゲフン。
もしかしたらオーバーロード15巻がなかなか発売されないので自分で書き始めたのかもしれませんね。一枚の紙に何やら書き連ねると満足そうに頷きました。
「むふー。けっちゃくが出来たでありんちゅ」
ありんすちゃんは机の引き出しを開けました。どうやら書きあがった傑作をしまうみたいですね。
おや? 引き出しの中には何やら書きなぐったメモが入っていました。
「……こりはなんでありんちゅね? ……えとえと……」
ありんすちゃんはメモを声を出して読み上げました。
「──もつちもち うれしよん たいへん あるだろ ドラゴン しよつく たおれる かわいい すべてしまつ かんしや どあーふ ほうもつこ──宝物庫!」
ありんすちゃんの顔に赤みがさしてきました。
「こりは宝もののありか、しめちた謎謎でありんちゅ!」
……いやいや、ありんすちゃん。たぶん忘れているみたいですがそのメモはドワーフ王国にアインズ様のお供をして行った時に一生懸命アインズ様の言葉を書き記したやつですよ?
「……お宝、ありんちゅちゃがみちゅけるますでありんちゅ!」
※ ※ ※
ありんすちゃんがやってきたのはカルネ村でした。
「……え? 儂にうれしょんしろ、じゃと? ……いや、それは……いったいどういう意味なんじゃ?」
カルネ村の一画に工房を設けたドワーフ達の一人、ゴンドはいきなり詰め寄るありんすちゃんに困っていました。
「……お主の言うことが全くわからんのじゃが……儂がうれしょんすれば宝が見つかるとは一体どういう事なんじゃ? そもそもうれしょんとは……まさか嬉しさのあまり垂れ流すというやつではあるまいの?」
ありんすちゃんは胸を張り、フンスと鼻息を荒くします。
「チャッチャとうれしょんしるでありまちゅでありんちゅ。うれしょんしたらおちっこが宝ものありかみちゅけるんでありんちゅ」
ありんすちゃんはメモを両手で掲げ持ちました。すると──
「……フンフン。なんか面白そうな匂いがするっすね。なんすか? このしわくちゃなメモは?」
突然姿を表したルプスレギナがありんすちゃんからメモをひったくり、広げました。
「……なんすかこれ? うれしょん……これって餡ころもっちもち様がうれしょんされたってことっすか? マジっすか!!……」
ありんすちゃんはルプスレギナを見ながら考えます。餡ころもっちもち様のうれしょんって何だか記憶にありました。確か老犬がうれしょんをして困るって話だったはずですが……
「……え? なんすか? イヤイヤイヤ、私はうれしょんなんてしないっすよ? そもそもうれしょんなんて犬のような事は私はしないっす」
ルプスレギナはふと何やら思いつき、ありんすちゃんに囁きました。
「……そんなにうれしょんにこだわるなら……餡ころもっちもち様が作られたNPCにも犬がモチーフな人物がいるじゃないっすか」
※ ※ ※
「……ありんすちゃん様。餡ころもっちもち様に対して不敬ですわ。……わん。……それと私は犬では御座いません……わん。……そもそもこんなメモに宝物のありかが示されているなど到底思えません……わん」
納得いかないありんすちゃんが唇を尖らせますが、ペストレーニャは上手でした。
「そんな事より……最近副料理長が新作のスウィーツを作りまして、紫芋を使った紫色のモンブランケーキですよ……わん。栗と芋を合わせたクリームが絶妙でしたわん」
ペストレーニャを急かして食堂に向かったありんすちゃんの頭から先程のメモの事はなくなってしまっていました。
仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。