ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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124ありんすちゃんまたまたまたまたせいおうこくにいく

「ルーンは輝く希望の光!」

 

 シズの言葉に兵たちが唱和します。

 

「「ルーンは輝く希望の光!」」

 

「もう一度でありんちゅ!」

 

「「ルーンは輝く希望の光!」」

 

 ありんすちゃんは満足そうに頷くとシズに合図しました。

 

「……ルーンはすごいなサイコーだ!」

 

「「ルーンはすごいな最高だ! ルーンはすごいな最高だ!」」

 

「……あなたも私もルーンルーン!」

 

「「貴方も私もルーンルーン! 貴方も私もルーンルーン!」」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 前回突然おやつを食べに魔導国に戻ったありんすちゃんでしたが、唐突に今度は何故か戦闘メイドのシズと一緒にローブル聖王国に現れるのでした。

 

「……アインズ様の命でサポートする。頑張る」

 

 聖騎士団の皆は訳がわからないまま、とりあえず不問にするのでした。

 

 ありんすちゃんとシズは兵たちを集めると皆に唱和させ始めます。意味がわからない言葉でしたが兵たちは声を出している内に力がわいてくるのでした。

 

 次にありんすちゃんは従者ネイアを壇上に上げると、彼女の弓を皆に示しながら叫びました。

 

「……そして、こりがしゅごいルーンちゅいた、アルテメシュテン、グスタンンスーパ、でありんちゅ! 我らに勝利をー! ……でありんちゅ」

 

 兵たちの歓声が壇上のありんすちゃん、シズ、ネイアを包み込むのでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……うむ。これはいけるな。これならば勝てるぞ」

 

 騎士団の士気の高まりを見てレメディオスは喜びました。しかしながら副団長のグスターポの胸中は複雑でした。

 

 そもそも一旦倒した筈のヤルダバオトがまたしても現れたのはありんすちゃんのせいでしたから。

 

 ありんすちゃんとシズは壇上から降りると一画にシートを広げてどこからか取り出した武器や防具を並べ始めました。

 

「しゅごいルーンちゅいた武器が今ならお買い得でありんちゅよ!」

 

「……ルーンの刻まれた武器。支払いは分割払いのローンでも良い」

 

 どうやら魔導国製のルーンが刻まれた武器や防具を販売し始めたようでした。

 

「──なんだ……と! ルーンの武器か! 私も買うぞ!」

 

 レメディオスの顔色が変わりました。すぐさま並べられた商品から一番高そうな武器を手にします。

 

「──この剣なら、この剣ならヤルダバオトにダメージを与えられるか?」

 

「……それは『こうてつのけん』にルーンを刻んで強化したもの。ダメージは──」

 

「──金貨三十枚のちょころ二十枚におまけしるでありんちゅ!」

 

「──よし! 買った!」

 

 シズの説明を遮ったありんすちゃんの言葉にレメディオスは即決してしまいました。聖騎士達は「どうのつるぎ」、民衆兵達は「ひのきのぼう」や「たびびとのナイフ」をそれぞれルーンが刻まれて強化されたものを、あるものは即金で、また、あるものはローンで購入するのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 いよいよヤルダバオトと再対決です。いつの間にか聖王のカスポンド陛下も無事に合流しました。

 

「いよいよ改めて決戦だ。ヤルダバオトを倒し聖王国を取り戻すのだ!」

 

 カスポンドに並んだレメディオスが剣を抜きます。

 

「いざ!」

 

 聖騎士団を中心とした解放軍二万が城外に陣形を組みます。対するヤルダバオト率いる亜人の軍勢は同じく一万です。

 

「「貴方も私もルーンルーン! 貴方も私もルーンルーン!」」

 

 思い思いにルーン武器を装備した解放軍の士気は高く、誰もが勝利を疑いませんでした。

 

 やがて亜人軍が左右に割れ、ヤルダバオトが進み出てきました。

 

「全軍前に!」

 

 レメディオスを筆頭に聖騎士団の騎馬隊が突入して戦闘が始まりました。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

「……くっ。……何故だ? 何故勝てないのだ?」

 

 カリンシャ城内に敗走したレメディオスは壁を叩きました。

 

「……ちょれはルーンが一つだったからでありんちゅ。ルーンがふたちゅならもっとちゅよいでありんちゅ。……ただ……」

 

 ありんすちゃんが小首を傾げて続けました。

 

「……ルーン、一つ増えると倍の金額になるでありんちゅ」

 

「……その……ルーンはいくつまで刻めるのですか?」

 

 副団長のイサンドロの質問にシズが答えました。

 

「……ルーンは現在の所、最大で三つまで。値段は一つ増える毎に倍になるからルーン三つなら倍の倍で四倍の金額になる。……分割払いのローンで購入するのがお薦め」

 

 かくしてシズの前には聖騎士の列が出来るのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「──くらえ! ルーンの輝き! アルティメイト・シューティングスター・スーパー!」

 

 ネイアが放った矢は避けようとしたヤルダバオトの右腕に刺さりました。

 

「……恐るべしルーンの力! かつて封印されし秘術、ルーンとはここまで凄まじいものだとは!」

 

「──ちが──わない!」

 

 ヤルダバオトは驚愕し、思わずネイアも叫びます。

 

「……さすがはールーンが刻まれた武器の力ー。すごいー。……ルーン最ー高ー」

 

 抑揚のないシズのやや棒読みで投げやりなセリフが続きます。

 

「……ありんちゅちゃがとどめ、しるでありんちゅ! 〈ヴァーミリオンノヴァ〉!」

 

 ヤルダバオトはありんすちゃんが放つ光に包まれていきます。

 

「……最後ルーン……関係ない……」

 

 シズの小さな呟きは巨大な爆発にかき消されてしまいました。

 

 ヤルダバオトは消滅し、ありんすちゃんとルーンの力によって聖王国に平和が訪れるのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓 第十階層〈玉座の間〉──玉座のアインズの前にありんすちゃんとシズが跪きます。

 

「二人ともご苦労だった。……で、ルーンの宣伝は上手くいったかね?」

 

 ありんすちゃんが顔を上げて答えます。

 

「ありんちゅちゃ頑張ってローン、いっぱい契約したでありんちゅ」

 

 うーん……ありんすちゃんは目的のルーンがいつしかローンになってしまったみたいですよ。

 

 ……うーん……仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。


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