※マギレコにハマって執筆を忘れ、つい最近☆4キリカをゲットしたsakiでございます。
※メイン、外伝、魔法少女、ミラーズ。どれもストーリーが面白くて凄く良いアプリだと思ってます。私にもあんな感じの才能があればな~ と思っちゃいますね(笑)
※さて、それはさておき今日9/20をもって連載1周年を迎えることができました! これまでモチベが保てたのも皆様のお蔭です。今後もこの作品の応援よろしくお願いします!!!
夜道をふらふらとおぼつかない足取りで歩くほむら。その目に光は消え去っており、生気は全く感じられなかった。
当てどころもなく、ただただ彷徨い続ける。
そんな彼女の携帯に一通の着信がかかった。
発信はマミからだった。
このまま無視をするか、切ってしまおうと考えていたほむらだったが、何故か指が勝手に動いて電話に出てしまった。
『もしもし、暁美さん?!!』
「…………」
通話ボタンを押すやいなやスピーカーからマミの声が聞こえてくる。
その声には余裕が感じられず、かなり焦っているようだった。
『ごめんなさい。こんな夜遅くに…でもどうしても気になっちゃって』
「…………」
『暁美さん。あなたにも色々と思うことがあるのかもしれないけど、鹿目さんの件はあなただけの責任じゃないわ。
あの変身解除はちゃんと前兆が起こっていた。それなのに関わらず、しっかりとあなた達の傍に付いてあげなかった私にも原因はあるのよ』
「…………」
『私がこんなこと言うのもおかしいけどね…そのことは鹿目さんも分かってると思うの。
今はまだ寝たきりのままだけど、目を覚ましたらきっと同じようなことを言ってくれるわ……』
長々と喋り続けるマミの声は所々が震えていて、必死にほむらを励まそうとしているのが伝わって来ている。
無論、それはほむらも理解はしている。
しかし今の彼女には今更な言葉だった。
「……あなたの言う通り、優しいあの子ならきっと私のことも許してくれるでしょうね。
だけどもそれはこの世界だけの話、どれだけの償いをしようとも私の罪は一生消えることはない……」
『そ、それはそうかもしれないけど……』
「もう私には無理なのよ…これ以上の何かを背負って生きていくのは、だったらいっそのこと死んだ方が__」
『バカなこと言わないで!!』
最後まで言い切る前にマミが強引に遮る。
『あなたは私達の大切な仲間であって友達なのよ?! そんなこと私が絶対にさせない!!』
「……ありがとうマミさん。あなたにそんなこと言ってもらえるようになるなんて」
表情はそのままだが、一瞬だけほむらの声が優しいものになる。
しかしそれはすぐに次の言葉と共に消えてしまう。
「昔の私が羨ましく思えるわね……」
『ど、どういうことなの…?』
「マミさん…みんなに伝えて。私はもう…私じゃない……」
『待って暁美さん!! 待って!!』
「さようなら……」
そう言って、ほむらは電話を切って携帯を持っていた手の力を緩める。
携帯はゆっくりと落下していき、カシャンと音を鳴らして地面に落ちた。
ほむらはそれに目もくれることなく、再び闇夜の中を歩き出す。
その場には点々と水の跡が残されていた。
第31話 希望への
「暁美さん!! 暁美さん!!」
何度も携帯に向かって彼女の名前を呼び続けたけど無意味だった。
どうしよう。佐倉さんだけじゃなく、暁美さんまで…悪いことがどんどん連鎖していってる……
「一体どうしたらいいの…?」
その場に蹲って必死に思考を巡らす。
みんな段々おかしくなってる…だからこそ私がしっかりしないといけないのよ。
後ろを振り向き、ベットの上で静かに眠るゆまちゃんを見ながら気力を奮い立たせる。
あれからずっと泣いている彼女を放っておくわけにもいかないので、今日はひとまず家に泊めてあげることにしたのだ。
同じ境遇にいる身としてその苦しみは痛いほど理解している。
寝ているゆまちゃんの頭をそっと撫でてから、部屋の外に出る。
そして今自分が何をするべきなのか考え直そうとした。すると突然、私の携帯が鳴りだした。
「……!! まさか、暁美さん?!!」
震えながら携帯を開いて、通話ボタンを押す。
そこから聞こえてきた声は予想外の人だった。
『……もしもし、マミさん?』
「その声…美樹さん?!」
電話をかけてきたのは事件の直後、すぐにいなくなってしまった美樹さんからだった。
ここしばらく様子が変だったことに不安を抱きながら会話をする。
「心配してたのよ…急に何処かへに行っちゃって、どうしようかと思ってたわ……」
『ごめんなさい。あたしもいきなり過ぎて気がおかしくなっちゃってたみたいで……』
「そう…でも、元に戻ってくれてよかった」
『はい、本当にすみませんでした』
「いえ…あんなことが起きて冷静でいられる方が無理なことだもの」
どうやら落ち着きを取り戻してくれたみたいで少しだけホッとする。
そう安堵していると今度は美樹さんの方から話しかけてきた。
『マミさん。あたしがいなくなってから何が起こったのか話してくれませんか? それと…ほむらのことも……』
「!!!」
美樹さんの口から出たその名前を聞いて、胸が締め付けられるような痛みを感じる。
電話の切り際に言っていた暁美さんの不穏な言葉…それは数日前に彼女が変化した恐ろしい怪物の姿を連鎖させる。
あれがどういうものなのかは全く分からないけども、暁美さんがただならない状況に置かれてしまっていることは間違いない。一刻も早く見つけ出して何とかしなくちゃ……
『マミさん…?』
「あっ、ごめんなさい。ちょっと色んなことが立て続けに起こっていたから、つい……」
軽く謝ってから私は全てを話した。
それを美樹さんは黙って静かに聞いていた。
「__それで暁美さん。今回の件で凄く責任を感じてて、死んだ方がいい…って……」
『言ったんですか? アイツが…そんなこと?』
「えぇ、そう言って暁美さんは…暁美さんは……ッ!!」
話している内に段々とさっきの出来事が鮮明になっていき、声に感情が込め過ぎながら喋っていた。
そして無意識の内に私は涙を流していた。
「もういいんですよ。マミさん……」
「美樹さん…?」
『大丈夫です。アイツのことは任せてくださいよ…だから今日はもう休んでください。絶対に『何とか』してみせますから……』
「ごめんなさい…私……」
『じゃあそろそろ切ります。お休みなさい』
そう言って美樹さんは、最期まで言い切る前に通話を切った。
きっと一刻も早く暁美さんを見つけるために急いでいたのね。
大切な仲間の為に頑張り続けている彼女のことを考えると、それと同時に自分自身の不甲斐なさに胸が痛んだ。
美樹さんは文字通り命を懸けて、魔法少女の世界に入った。
それに対して私は…? 恐怖に囚われて怯えて、苦しんでいる仲間に手を差し伸ばすことさえ出来やしない。
私は無力だ。何も…何もしてあげられない。
「やっぱり私は…ダメね。魔法少女失格だわ」
「ううん、ちがうよ」
「!!」
突然聞こえてきた声に驚き、咄嗟に後ろを振り向く。するとそこには泣きつかれて眠ってしまったはずのゆまちゃんがいた。
ひょっとしてさっきまでの会話のせいで起こしちゃったのかしら…?
「ごめんね、起こしちゃった?」
「ゆまはずっとおきてたよ」
「もしかして…話聞いてた?」
ゆまちゃんはこくんと頷いて、私の手を優しく握った。
「マミはダメな魔法少女じゃないよ。
みんなの為に魔女と戦う凄い人だよ」
「どうして、そんなことが分かるの……」
根拠の無さそうな、励ましの言葉に少しだけムッとくる。そんな余計な気遣いは無用よ……
「キョーコが言ったから」
予想もしなかった返答にまじまじと彼女の顔を見つめる。
その視線に彼女は一切目を逸らさずに話を続けた。
「マミはすごいやつで、むかしからずっとあこがれていたんだって」
「佐倉さんがそんなことを……」
「マミはダメなんかじゃない。だからなかないで、ゆまももうなかないから」
なんて強い子なんだろう。
親を魔女に殺されてから間もなく、更に唯一頼れる存在であった佐倉さんと離れ離れになったばかりだというのに。
この子はその苦しみに耐えている。
それに対して私は…私は……
気が付くとまた涙を流していた。
「だいじょうぶ。ひとりぼっちじゃない、ゆまがついてるよ」
「ゆまちゃん……」
ゆまちゃんがそっと私に抱きつく。
自分よりもずっと小さな体であったけども、それはとても心地よく私の心を癒してくれた。
私はまだ頑張れる…みんなの為に、今度こそ……
★
「チッ…ヤな天気だぜ……」
空を見上げながらアタシは吐き捨てるように言った。病院を出てからあてもなく歩き続けていたけども、そろそろ宿の代わりになる場所を探さないとな…このままだとずぶ濡れになっちまう。
そうなったらただでさえ、気分が悪いってのにますます酷くなる。
「…………」
なんでこんなに不機嫌になってんだよ…初めから分かりきってたんだろ。希望を抱くこと自体が間違いだって。
辺りは住宅街だが、どの家の明かりも消えてとても静かだ。みんな寝静まっているんだろう。
「久しぶりかもな、一人になるのって……」
たった10日。とても短かったけど悪くない時間だった気がする。
今となっちゃ懐かしい思い出だな。そう思い出……
「畜生…センチになってんじゃねーよ」
そんな独り言を呟きながら歩いていると、道路の先に小さな人影が見えた。ほむらだった。
「アイツ何やってんだ?」
遠くからで良く見えないが、何だかおぼつかない足取りで見てて危なっかしい。
「……はぁー」
なんてため息をつきながら、後を追いかけることにした。
ったく気にせずに無視しときゃいいのにホント何やってんだろアタシ……
しかし瞬間、人通りのない通路の景色が消えて目の前に白と黒の二色の世界が一面に広がった。
「これは…魔女の結界?!」
おかしい。ソウルジェムにも何の反応もなかったはずだし、ましてやこんな図ったようなタイミングと場所に魔女が現れるわけがない!
突然の現象に戸惑っていると頭上から人間の声が聞こえてきた。
「やぁ~、久しぶりぃ。佐倉杏子」
声を聞いてアタシの中の疑問が全て解決した。
そういや居たよな…こんな喋り方をして、こんな能力を使って以前アタシに襲い掛かってきた魔法少女が…見上げるとそこには確かにヤツがいた。
「いきなりどういうつもりだ。優木沙々?」
アタシの問いかけに応じる様子の見せずに、優木沙々は不気味な笑みを浮かべる。
刻々と過ぎていく無駄な時間の経過に段々と苛立ちが募ってくる。
「もう一度聞く。何しに来た?
こっちはオマエ如きに付き合ってる暇はないんだよ」
煽るような言い方をしてやると、優木沙々は少しムッとしたような顔をして、ようやく口を開いて喋り出した。
「何ってそりゃ…たまたまあなたの姿を見かけたもんだから、この前の仕返しをしてやろうと思っただけですよォ」
「ふん。助っ人二人でようやく戦えるようになったヤツがタイマンでアタシと渡り合えるってのか?」
「随分とナメられてますねぇ…でもこれを見ても同じ態度を取っていられますかなぁ?」
自信満々に喋る優木沙々。
その時背後から殺気を感じ取り、大きく飛び上がる。直後、今立っていた場所から大量の黒い棘が生えてきた。
「なっ?!」
「へぇ~不意を突いたつもりだったけど、そう簡単にはやられてくれないか」
感心した様子で話す優木沙々だったが、ヤツが攻撃の手を緩めることはなかった。
着地後も次から次へと地面から棘が出て来て、アタシを串刺しにしようとしていた。
「くっ…この、魔女は…まさか……」
「ついさっき見つけたばかりの新しい魔女さッ。
かなり弱っていたけど、中々強かったからね遠慮なく駒にさせてもらったよ」
何とか避けつつ、攻撃をしてくる魔女の姿を捉える。結界の雰囲気でとっくに察してはいたが、やっぱり『あの魔女』だった。
影の魔女は声にならない咆哮をあげ、自身の周りに使い魔を呼び寄せてこちらへと仕向けた。
咄嗟に変身しようとするも、使い魔達の攻撃でそれが出来ずに大きく吹っ飛ばされてしまう。
「うぐッ……!!」
「あらら随分と苦戦しちゃってるみたいですねー。
まあ無理もないか、この街の魔法少女ですら敵わないくらいの強さだし」
優木沙々はそう言いながら、懐から何かを取り出してこちらに見せつけてきた。
それは見覚えのあるものだった。
「……!! オマエそれって……」
「ああ、この魔女の結界に入った時に拾ったんだよ。最初見たときは安物の指輪かと思ったけど、結構面白くてねー」
「面白い…?」
「ほーら、よく見て見なよ」
優木沙々はそう言って指輪をこちらに乱暴に投げつけた。
よろよろと立ち上がって、どうにかキャッチする。間違いないね…鹿目まどかが付けていたものと同じやつだ。恐らく魔女の攻撃をくらった衝撃で……
「…………」
数時間前の惨劇が脳裏に蘇る。
嘆き、憤り、悔み…そして別れ。
……何であんなことになったんだよ。
アタシが、アイツらが何をしたってんだよ。
希望を抱くこと自体が間違い?
そんなんあってたまるか……
「さーてと無駄話もこれくらいにして、そろそろ仕返しを済ませちゃいますか。
ズタボロにしてこの魔女と同じ、私の
掛け声と共に魔女は唸り声をあげて、アタシの前に立つ。
操り人形にされているコイツに果たして自我はあるんだろうか…いや、んなことはカンケーない。
考えりゃ簡単じゃないか、何でああなっちまったのかなんて。
アイツは、ほむらのせいとか言ってたが全然違う。ほむらでも、アイツでも、鹿目まどかでも、アタシのせいでもない。
全部…テメェら魔女のせいだ。
向ける矛先が定まり、これまで胸の奥に抑え込んでいた怒りが一気に競り上がって来る。
もう限界だ。この胸糞ワリィ気持ちを全部コイツに吐き出してやる……
手に持っていた指輪を強く握り、ポケットの中に乱暴にしまう。
すぐさま魔法少女に変身し、槍を召喚して槍先を魔女へ向ける。そして喉も張り裂けんばかりに叫んだ。
「全部…テメェのせいだァァァ!!!」
その叫びは結界全体に響き渡り、魔女の身体を大きく震わせた。
☆
私はただ歩いていた。
今自分が自分がどこにいるのかも分からずに。
ゆらりゆらりとまるでこの世とあの世を彷徨う亡者のように。
そうしていると雨が降って来た。
雨粒がポタリポタリと落ちて私を濡らす。
だけど全然気にはならない。何故なら……
もう私には何も感じられないのだ。
感じられるはずの雨粒の冷たさも。
動いているはずの心臓の鼓動も。
この胸の痛みも……
少しずつ…少しずつ……
歩を一歩進める度に感覚は薄れていった。
胸の奥底に潜む何かがそうさせている。
ゆっくりと芯から肉体を蝕み、全てを凍らせていく。
恐怖は感じない。むしろとても心地よかった。
私に取り巻くあらゆる障害を払ってくれる。
何もかもを忘れさせてくれる。
あと少し、あと少しで私は解放される……
はずだったのに何故か私の歩は止まってしまう。
ペタリと地面に膝を着いてしまった。
立ち上がりたくても身体が言うことを聞かない。
一体どうしてしまったのだろう。そう思っていると背後から何かがゆっくりと近づいてきた。
それは正面に回り込んで私のことを、見上げた。
「にゃー」
「エ、イミー…?」
私の前に現れたのは、かつて命を救った小さな黒猫だった。
エイミーはこの世界に来た最初の日に出会い、それからも放課後や休みの日に会いに行ったこともあった。でも、どうしてこんな所に…?
「にゃー」
不思議そうにしているとエイミーは膝の上に飛び乗り、そっと私の手を舐めだした。
励ましてくれているのだろか?
私にネコの気持ちは分からない。
だけども不思議かこの子に触れていると、とても暖かな気持ちになる。
その熱は私の凍った身体をゆっくりと溶かしていく。
「にゃッ!」
「痛ッ!」
ぼんやりとしていると不意にエイミーに指を噛まれる。それほど痛くなってないのに思わず声を出してしまう。
その衝撃で視界を覆っていた闇が晴れて、自分のいる場所がどこかを初めて知った。
「ここって……」
自分のいる場所。
そこはこの世界のまどかと初めて会った河原だった。どうやら無意識で歩いている内に偶然来てしまったのだろう。
いや本当に偶然なのだろうか。
ここで歩くのを止めてしまったのも、エイミーがこんな雨の中でも私の元にやって来たのも。
『ほむらちゃん』
「えっ?!」
突然まどかの声が聞こえて慌てて顔を上げる。
するとそこには信じがたい光景があった。
二人の少女が河原で夕焼けに照らされながら、隣り合って座っていた。
一人は黒髪の少女、もう一人は可愛らしい赤いリボンを付けたピンク色の髪の女の子。
彼女達はお互いに笑いあいながら楽しそうに談笑していた。
『ほむらちゃんって別の街から引っ越してきたんだね。実はわたしもそうなんだ、とは言っても結構前の話だけどね』
『どんな街に住んでいたの?』
『うーんとね…詳しくは覚えてないけどもいい場所だったよ』
『羨ましいわね。少なくても私が住んでいた所よりは良さそうだわ』
『そうかなぁ』
『きっとそうよ。ふふっ』
黒髪の少女が笑うのと同時に夕焼けに包まれた景色は消え去り、闇夜の世界が現れる。
急すぎる出来事にどう反応していいのやら分からなかった。
今のは一体何? 幻覚…なのかしら……
分からない。どうして今になってこんなものを見るのか。
あの頃の私は希望があった…前例のない出来事が起こることによって未来を変えることが出来るかもしれないと……
でもたとえ未来を変えたとしてもそこに私の居場所はない。あってはいけない…彼女の願いを踏みにじり、裏切った報いは死をもって償う以外に方法はないのだ。
それは百も承知。死ななくてはいけない…なのに、なのに何故私は……
「嫌だ…私は、ただ……
お願い…誰か、私を……」
私の葛藤は続いた。
周りで起きている変化に気付くことなく。
ただ延々と……
雨の勢いが激しくなることも。
エイミーが途中でいなくなったことも。
背後から忍び寄る気配にも。
「やっと見つけた」
後ろから誰かの声が聞こえる。
私は俯いた状態から立ち上がり振り返った。
そこには全身雨に濡れたさやかがいた。
「さやか……?」
「こんな所にいたのか…随分と探したよ」
「あなた…どうしてここに……?」
私の問いかけにさやかは小さく溜息をつく。
そしてその後にニッと笑ってみせた。
「決まってんじゃん。アンタを見つける為だ」
まさか彼女も巴さんと同じく私を……
自分のことをこれだけ案じてくれている仲間達の顔を思い返すと、胸が締め付けられるように痛むのと一緒に少しだけ暖かくなる。
もしかして…もしかしてだけども、私はまだ…この世界でみんなと生きていたいと望んでいるのかもしれない。
もう誰にも頼らない。そう思いながらずっと一人で戦い続けていた。
これまでも、これからも…終わりの見えない迷路を孤独に彷徨い続けると。
だけどもそんな
私が長い間、抱えていたものを彼女達は受け入れてくれた。
もし…もしも…みんなが私の犯した罪を、過ちを受け入れてくれるとしたら……
逃げるのではなく、許してもらうのでもなく、認めてくれるなら……
私は、もう一度やり直せるかもしれない。
「さやか…私は、私は……ッ!!」
全てを目の前の仲間に告白しようと意を決する。
罪を受け入れて新たな自分になれるように。
「ほむら…アンタ、死にたいんだってね」
しかしそんな望みはあっさりと『裏切られた』
「えっ…?」
「マミさんから聞いたんだ…死んだ方がいいって」
確かにそんなことを言った記憶は残っている。
でも何故さやかがそれを話す必要がある?
意図が分からずに混乱している私を見ながら、さやかは自身のソウルジェムを取り出して前に掲げて静かに言った。
「あたしはあの人とは違う…望みを叶えてやるよ」
「……ッ!!」
「暁美ほむら…お前を、殺してやる!!!」
魔法少女に変身してゆっくりと近づく。
私は驚愕のあまり動けないでいた。
そして……
「全部…お前のせいだ。この…悪魔がァァァ!!!!!」
渾身の力で振るわれた拳を受け、私は大きく吹っ飛ばされた。
☆
「らあぁァァァァァ!!!」
怒りに任せた一撃がまた一つ使い魔を消滅させる。杏子の脅威的な猛襲に沙々は焦っていた。
「あ、あわわわ…!!」
少し前までは自分が優位に立っていたはずなのに…どうしてッ?!
そう考える間にも杏子は使い魔を蹴散らし、徐々に魔女に近づいていく。
「な、なな、何やってんのさ! 早くアイツを倒しちゃってよ!!」
沙々はパニックになりながらも魔女にヤケクソ気味に命令を下した。
慌てる沙々とは対称的に魔女は無機質な顔で彼女を一瞥し、複数の触手を召喚して襲い掛からせた。
「しゃらくせえェェェ!!!」
しかし杏子はその攻撃に動じず槍を薙いで触手を切り裂き、消滅させる。
そうして一気に魔女との距離を詰める。だが次の瞬間、沙々の焦っていた表情がニヤリと歪んだ。
「くらいやがれ!!」
「今だッ!!」
その掛け声と同時に杏子の背後から無数の触手が現れて、彼女の手足を拘束する。
「何ッ?!」
まさかに不意打ちに驚く杏子に沙々は畳みかけるように指示を繰り出す。
「そしてこのまま押しつぶしちゃいなァ!!」
『____!!』
魔女はそれに応じ、まだ残っている使い魔達を杏子へと仕向ける。
そうして杏子は抗う間もなく全身を黒い影によって覆いつくされてしまった。
「し、しまっ……」
「勝った!!」
勝ち誇る沙々、その傍らで黒い塊がゴリッゴリッと鈍い音を立てながら蠢いていた。
その光景を見て、沙々は少しだけ後悔しながら塊に声をかけた。
「ちょっとやり過ぎたかも……」
良くて全身複雑骨折。最悪な場合だと……
思考がそこまで行きついた所で沙々は考えるのを止めて、その場から立ち去ろうとした。だが……
「うおおおおおおォォォ!!!」
突如、黒い塊は弾け飛んで中からズタボロになった杏子が出て来る。
あまりにも唐突過ぎることに沙々も魔女もどうすることもかなわなかった。
当然その隙を杏子が見逃すはずなかった。
「終わりだァァァ!!!」
一閃。斬撃と共に魔女の頭と胴を繋ぐ首がゆっくりとズレていく。
魔女は声にもならない悲鳴をあげながら接合部からどす黒い液体を吹き出しながらゆっくりと消滅していく。
「!!」
魔女の消滅と共に結界が消えていくのに気付いた杏子はそのまま何処かへと走り出す。
沙々はただ茫然とその後ろ姿を見つめていた。
「…………」
その傍らにグリーフシードはなく、魔女の頭だけが残されてた。
☆
さやかに吹っ飛ばされた私は彼女からひたすらに逃げていた。
何故私を襲うのかと、疑問を投げかけながら。
「オラァァァ!!」
「さやか! お願い、話を…!!」
「うるさいッ!!!」
激昂しながら剣をこちらへと投げ飛ばす。
どうにかして身体を捻って避けるが、そのせいでバランスを崩してその場に倒れてしまう。
慌てて顔を上げると、冷徹な目つきで私を見下ろすさやかがいた。
「……終わりだ」
剣を両手で握り、刃を突き立てようとする姿に思わず目を瞑ってしまう。
「うっ…!!」
「…………」
しかしいつまで経っても刃は私に突き立てられなかった。
不思議に思い、恐る恐るさやかを見ていると彼女はただ前を見つめていた。
ひょっとして思いとどまってくれたのか…?
そう期待し、声をかけようとする。
「さや__」
「どういうつもりだ? 美樹さやか?」
しかしそれは第三者の声によってかき消されてしまう。その声を聞いた瞬間、ぞわりと全身が凍り付くような感覚に囚われる。
「勝手に行動して織莉子の計画に支障をきたしたらどうするんだ」
「でもキリカ…今度は私達にとっていいように作用してくれたみたいね」
どうしていつもこうなのだろうか……
私の抱く希望は必ず悪い形で裏切られる。
顔を上げて、さやかの見つめる方向を見る。
そこには美国織莉子と呉キリカ。
絶望が目の前に広がっていた…………
☆ to be continued…… ★
次回予告
第32話 散華
☆お楽しみに……★