※お待たせいたしました! 約一ヶ月ぶりに本編再開です!!
※物語もいよいよ後半戦。第3章、遂にスタート!!!
3/1追記~ちょっと諸事情により、一部分だけ追加台詞を加えました。
第25話 全てはLゆえに ~ 受け入れる覚悟
第25話 全ては
「あたし…どうしたらいいんだろう」
あたしは全てを失った。
大切な友人も仲間も…人間という存在も……
こうなったのも全部自分の責任だっていうことは分かっている。後戻りは出来ないことだって知ったうえでああしたんだ。
「ソウルジェム…もうこんなに真っ黒になってる……」
これも因果応報なのだろうか。
あのとき選択を間違えていなければ、こんな結末を変えられたのかな?
このままだとあたしは確実に魔女になる。またまどか達に迷惑かけちゃうね……
でもいっか、今更何をしたって変わらないんだ。いつもの楽しかった日々は二度と戻ってこない。
「もうどうでもよくなっちゃったなぁ……」
空を見上げる。雲一つない澄み切った夜空だ。
最後にいいもの見させてもらったね。あたしはこれからこんなにも美しい世界を滅茶苦茶に壊してやろうとしている。
お願い、みんな。どうか躊躇わないで…過去の思い出に振り回されることないで、一思いにあたしを殺して……
これがあたしに…相応しい終わり方だから……
「あたしって…ほんとバカ……」
★
五日前……
今日一日最後の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、号令がかかる。
それによってあたしは目を覚まして寝ぼけ半分のまま挨拶をする。
そしてそのままHRに入って先生が連絡を言っていくけども、ほとんどが耳に入らなかった。
「……かちゃん、さやかちゃんってば!」
「うえっ?」
まだ眠気が残っていたせいか、間の抜けた返事をしてしまった。
見上げるとそこにはあたしの親友、まどかが心配そうにこっちを見ていた。
「もういつまで寝てるの、もう放課後だよ」
「あっはっはー、やっぱし疲労には勝てなかったかー。
こりゃ今日ほむらが学校に来なくてよかったかもねー」
「さやかちゃんったら……」
「そういうまどかも午前中はぐっすりだったじゃんか。人のこと言えないぞー」
「い、いいもん! お昼からはちゃんと聞いていたし」
「ホントかなー?」
「ホントだもん!」
頬を膨らませてふてった顔をするまどか。
そうやって楽しく話していると、今日の明け方まであった出来事がまるで嘘のように思えた。
だけども残念ながら無かったことには出来ない。
あたしは現に疲弊しきって、朝からずっと寝っぱなしだったし。
ほむらは美国織莉子達との戦いで負った傷のせいで学校には来ていない。
それに魔女の被害にあった仁美もまだ家で療養を取っていて休んでいる。
「__でね、わたしどうしても心配だから……って聞いてるの?!」
「えっ、あっ…悪い悪いまたボーっとしてた。んで何の話だっけ?」
「だ・か・ら、やっぱりほむらちゃんのことが気になるから今日の帰りにお家に行こうかなって思っていたの」
「あーはいはい、ほむらのことね。いいんじゃない? 自慢の嫁が看病してやったらアイツも一気に元気になるに違いないよ」
「よ、よ、よ、嫁ってそんな……!!」
いつものからかい文句のはずなのに、まどかはこれまでにないくらいの慌てっぷりを見せていた。
こんな格好のネタを勿論見逃すはずもなく、あたしはまどかの胸を肘でうりうりと弄ってやる。
「そう照れなさんなって、じゃああたしは今日はマミさんと帰ろっかな? 一緒に付いて行ったらお邪魔になるだろうし」
「邪魔って…そんなことないよ」
「いいのいいの、まどかはさっさとほむらのトコ行ってあげればそれでいいの」
「う、うん……。それじゃあ、また明日ね」
「おう、またねー」
まどかが教室を出ていくのを見送った後、あたしはテレパシーでマミさんに話しかけた。
『マミさん。ちょっといいですか?』
『あら美樹さん、何かしら?』
『相談に乗ってもらいたいことがあるんですけど、このあと大丈夫ですか?』
『全然平気よ』
『ありがとうございます。じゃあ校門の前で待ってますね』
『分かったわ』
そう言ってテレパシーを切って、急いで帰りの支度を始めた。
☆
「それで…話したいことって何?」
それからあたしとマミさんは、いつもまどか達と来ている店で向かい合って座っていた。
「実はお願いしたいことがあるんですけど……」
「何でも来なさい!」
気のせいだろうか、マミさんがいつもよりちょっと元気そうに見える。
久しぶりの学校だし何かいいことでもあったのかな? そう思いながらあたしはマミさんにあることを頼んだ。
「あたしを…マミさんやほむらみたいに強くしてください!!」
「別にいいけども…どうして急にそんなことを?」
首を傾げるマミさんにあたしは魔法少女になったここ数日でずっと思っていた悩みを打ち明けた。
「キュゥベえと契約してから、魔女や他の魔法少女と戦ったけども、あたしのせいでみんなの足を引っ張っているんじゃないかって思って……」
「そんなことないと思うけど…だってあなたがいなかったら鹿目さんや私は魔女にやられていただろうし、それにたった一人で美国さんや呉さんと戦って頑張っていたじゃない」
「でも魔女を実際にやっつけたのはまどかだし、回復魔法を使ったごり押し戦法で挑んでもあの二人には手も足も出ませんでしたよ」
「あなたはまだ魔法少女になってから日が浅いからそれは仕方のないことよ。無理に自分を責めることはないわ」
「はい、だからこそ早く強くなってマミさん達の足を引っ張らないような魔法少女になりたいんです!!」
「美樹さん……」
マミさんはそう言うと、優しく微笑んでゆっくりと頷いてくれた。
「分かったわ。あなたの気持ち、受け取ったから」
「ホントですか?!」
「可愛い後輩がここまで私達のこと大事に思ってくれているのだもの。しっかりと叶えてあげなくちゃいけないわよね」
「ありがとうございます!!」
「ふふっ、それじゃあもう少しだけここでお話ししてから特訓を始めましょうか」
「そうですね!」
「ところでずっと気になっていたけども、鹿目さんはどうしたの? いつもなら一緒にいるはずなのに……」
「あー、それはですね」
あたしはさっきあった出来事を話した。
その話を聞いてマミさんは可笑しそうに笑う。
「鹿目さんったら、まるで暁美さんの保護者みたいね」
「あの二人って時々立場が変わったりするから全然飽きませんよ」
「そんなこと言ったら二人に悪いわ。でも微笑ましいことは確かね」
「やっぱりそうですよね。たまに見ているこっちが恥ずかしいってやり取りをしていたりしますもん」
「あら、どんなこと?」
「前に学校でまどかが先生に荷物を運んでもらいたいって頼まれた時ですね。結構運ぶのに苦労していたから手伝ってやろうとしたんですよ。
そしたら先にほむらの奴がまどかのトコ歩いて行って手伝わせてって名乗り出たんです」
「やっぱり暁美さん、鹿目さんにはとっても優しいのね」
「んでアイツ何をするかと思えば、まどかの背中に回って荷物を持ったんですよ」
「それってつまり……」
「後ろからまどかを抱きしめているのと何ら変わらない状況でしたよ、あれは……」
「大胆なのね」
「あたしもそう思って、ほむらに言ってやったんですよ。
そしたら何とアイツ素であんなことやったらしくて…後ろから持つんじゃなくて半分持ってあげればいいじゃんってからかってやったら、急に顔真っ赤になって…いやぁー思い出すだけでまた笑えてくる」
あまりにも印象的過ぎたことだからあのことは鮮明に覚えている。
思い出し笑いをしていると、マミさんが二人について質問してきた。
「ところであの二人っていつからあんなに仲良くなったのかしら? 私が最初に見たからずっとあんな感じだったけど」
「ほむらが転校してきた日に聞いたんですけど、どうやら前の週に既に会っていてそこで仲良くなったらしいですよ」
「えっ? 幼馴染とかそういう関係じゃないの?!」
「はい。二人ともそれが初対面だって言ってて、それに昔からまどかと一緒に居たけどもそんな話、一度も聞いたことないですからね」
「へぇー不思議ね」
「ですよね、だからあたしはそのことについてある仮説を立てたんです」
「なになに?」
「きっとあの二人は前世では恋人同士で、そして時代が流れて運命の再開を果たしたってことですよ!」
「…………」
「あれ?」
割とそうじゃないかと思った考えだったけども、マミさんが何の反応もしない。
もしかしてサイコな電波ちゃんな子って思われちゃったかな? うーん、そのポジションはまどかかほむらがなんだけどな~
なんて思っていると突然マミさんがあたしの手を掴んできた。それにビックリしていると、マミさんは目をキラキラさせながら手をブンブンと振ってきた。
「その考えは無かったわ…前世から因縁、いえ因果が再び収束したのね__」
「あっ…そう、ですね……」
何だか変なスイッチ入れちゃった? すっごい難しいこと喋り出しちゃったけど……
しばらくマミさんの語りは続いたけども、その件があってあたしはマミさんのことを前よりも親しみやすい人だと思えるようなった。でも……
「あのーそろそろ特訓始めませんか?」
★
「う…ん……」
薄ぼんやりとする意識を起こして私は目を開ける。悪魔となった私の過去を見た後、そのまま眠ってしまったようだ。
「…………」
寝起きでまだハッキリとしていない頭を頑張って働かせて悪魔が見せた記憶を思い出す。
『まさか私が魔女になるなんて……』
『そう、インキュベーターの企みを自分を捨ててでも私は阻止しようとした。だけど、まどか達はそうすることを許さなかった。
私はみんなの力のお蔭で完全な魔女にならずに再びまどかと出会うことが出来た』
『けど…それをあなたは……』
『導かれようとする寸前に私はまどかを捕まえて真っ二つに引き裂いた。人間としての鹿目まどかと円環の理としての鹿目まどかにね。
そして私は宇宙のルールを改変して、まどかが人間として生きられる世界を創りだした』
『それで…あなたの世界のまどかはどうしているの?』
『友人やクラスメートに囲まれて楽しく暮らしているわ。時折、美樹さやかが彼女を円環の理として目覚めさせようとしてはいるけど』
『そう……』
『何か言いたそうな顔ね。あなたも私のしたことを責めているのかしら?』
『確かにあなたは彼女が願った祈りを否定して、自分の欲望のまま世界を創り替えた。それは批難すべきことなのかもしれない。
けど…それによって偽りの世界の中であろうとも、まどかは人間として幸せに生きている。それは決して間違ってはいない』
『分からないわよ? もしかしたら私が無理やりまどかに幸せになるように改変しているかもしれないし』
『恐らくそんなことはしないって思っている』
『根拠は……?』
『無いわ。それでも少なからず私よりはマシな人ってことは分かる』
『…………』
あの時の私は自分のことだけにしか囚われていなかった。
それに対して、悪魔がした行為はある意味で円環の理となったまどかを救済した。
本当に私は愚かね、別の世界の私よりも遥かに劣っている下の下だわ。
ガチャッ
自己嫌悪に陥っていると玄関のドアが開けられる音がした。
おかしい…鍵は閉めたはずなのに……
ゆっくりと起き上がって玄関の方を見ると、そーっと中に入ろうとするまどかの姿があった。
「お、お邪魔しまーす……」
「いらっしゃい、まどか」
「ひゃいっ! ほ、ほむらちゃん…ビックリさせないでよ!!」
何故か怒られてしまった。これって私の責任なの?
釈然としなかったけども取り敢えずまどかを家の中に入れてあげる。
「ほむらちゃん、もう平気なの?」
「えぇ、しっかり休んだから大丈夫よ」
「それでもいくら疲れているからって鍵くらいは閉めないと危ないよ」
「私はちゃんと閉めたはずなんだけどね……」
よくよく考えてみると、朝に家にいた悪魔の姿が見当たらない。もしかして私が寝た後にそのまま玄関から出て行ったのかもしれないわね。
随分と律儀な悪魔だこと。
「でもでも、ほむらちゃんが元気になって安心したよ」
「ありがとう。あなた達の方も何か変わりはない?」
「マミさんは何ともなかったけど、さやかちゃんはずっと学校で寝てたよ」
「なら、朝の賭けは私の勝ちで決定ね」
「ほむらも休んだんだから今回の勝負はなしだー、とか言いそうだけどね」
「さやかだからあり得るかも」
「うん!」
そう言った直後、場の空気が急に静まり返る。
ついさっきまで明るかったまどかの表情も一気に暗くなっていた。
何か話しかけるべきか迷っていると彼女の方からこちらに話してきた。
「ほむらちゃんってさ…私を助ける為に何度も時間をやり直しているんだよね?」
「!!」
悪魔の力に呑み込まれていたときの記憶が蘇る。あの時のまどかは幻か何かかと思っていたかったけども、やっぱり本物だったのね。
もう全部知っているとまどかは言っていた。それならもう隠す必要もないだろう。私は彼女の言葉にゆっくりと頷く。
「そうなんだ……」
「弁解するようで申し訳ないけども、意地悪で隠していたわけじゃないの。信じてもらえないかもしれないと思ったのもあるし、そのことを知ってあなたに負担を抱えてほしくなかったから……」
「うん、やっぱりほむらちゃんって優しいんだね。わたしなんかの為にあんなに一生懸命に頑張ってくれて」
「『わたしなんか』なんて言わないで。
前にも話したけども、私にとってあなたはかげがえのない人で、私に生きている意味を教えてくれた大切な人なの。
だから自分をそんなに卑下しないで、そんなことしてしまったら…私も傷つくから……」
そう言うと、まどかは俯いて体を震わせる。泣いていたわ私はそっと彼女の傍に近づいて涙をそっと拭ってあげる。
「あなたが責任を感じる必要はないのよ。これは私がやりたくて選んだ道だから、後悔なんかしていない。もしそうだったら私はとっくに魔女になっているわ」
「違うの…嬉しくて……。こんなにも近くにわたしのことを想っていてくれた人がいたなんて…全然気づかなかった」
「覚えている方が不自然よ。でもそうだとしても構わないわ」
「ありがとう。あなたはわたしにとって最高の友達だったんだね」
「!!」
聞き覚えのある言葉に私の忌まわしき記憶が蘇る。
場所は違ったけども、あれも私のしてきたこと全てを知ってもらったことと同じ。
『まさか自分自身に励まされるとは思っていなかったわ』
『そんなつもりはなかったけどね』
『なら、私からもあなたに一つアドバイスをあげる。同じ暁美ほむらとしてね。
私は形はどうであれ、まどかを幸せに出来たのかもしれない。けど、彼女の祈りを否定して踏みにじったことには変わりはない。でも私は自分がしたことを否定する気はないわ』
『……たとえそれが誰かに咎められようとも?』
『勿論、殺されたって構わない。私は自分の欲望のままにしたことなのだから』
『自分の欲望…それって何かしら?』
『希望よりも熱く、絶望より深いもの…愛よ』
『愛……』
『あなたもそれゆえに何度もまどかを救おうとしているんじゃないの?』
『それは……』
『もっと自分に素直になりなさい。そうすればきっとあなたも自分の罪と向かい合えるようになる。
やがて、その罪が自分に跳ね返ってきても、それを受け入れることが出来る…そういう生き方をした方がいいと思うわ。その方がずっと楽になれるわよ?』
『そんなことはとっくに分かり切っている』
『どうかしらね、少なくとも私にはそうは見えないけど?』
『根拠は?』
『無いわ』
『あなた……』
『仕返しのつもりはないけど、言わせてもらったわ。それともう一つだけ……』
『何よ』
『あなたが今手にしている悪魔の力、下手に手放さない方がいいわよ』
『……どういうこと?』
『この世界にその力を狙っている者達がいるかもしれないから』
『まさか美国織莉子?!』
『さあね、そこまでは教えられない。でもくれぐれも用心することね、そうなってはお互いに不都合なことになるから』
『…………』
『そろそろ私は行くわ。頑張って私に面白いものを見せてくれることを祈ってるわ』
『ま、待ちなさい!!』
あの悪魔が言いたかったことは結局よく分からないままだ。
だけども罪を受け入れることの大事さ、それだけはしっかりと伝わった。全てはまどかへの愛ゆえに…どれだけの罪を背負おうとも、彼女を幸せにすることさえ出来ればそれで十分だ。
「ほむらちゃん?」
動かないでいるのに不思議に思っているまどか。私は彼女の横に立ってその体をギュッと抱き締めた。
「ふえっ?」///
「何があってもあなただけは守ってみせるから……」
☆ to be continued…… ★
※次回はまどか視点。そしてこの章で重要な役目を果たすあの子もようやく登場!!
第26話 全てはLゆえに ~ わたしが望むもの