※第2章最終話! 織莉子、キリカ、そしてほむら……少女達の物語はまだまだ続く……
「!!」
まどかと巴さんと一緒の帰り道、いきなり謎の激痛が私を襲った。
それによって思わず膝をついてしまって、二人が不思議そうにこちらを見る。
「ほむらちゃん?」
「暁美さん、どうかしたの?」
「い、いえ…何でもないわ……」
「「…………」」
誤魔化そうとしたけれども、さすがにそれは通用しなかった。
かといって本当のことを話すわけにはいかない。なので、少々心苦しいけども嘘をつくことにした。
「はぁ…ちょっと立ち眩みがしたのよ……そんなに心配することないわ」
「全くあなたは…もう少しわたし達を頼ってもいいんじゃないかしら……?」
「苦しかったら手を貸すよ? ほむらちゃん」
「無理というか、無茶というか…あなた達だってかなり疲弊しているのだから、そこまでしてもらわなくても結構よ」
「でも一応、今日は学校お休みした方がいいと思うわ」
「…………」
「大丈夫だよ。さやかちゃんにもしっかり伝えておくから」
逆に無理をしてしまったらかえって皆に余計な心配をかけてしまうかもしれない。それなら家でキチンと療養した方がいいわね。
それに…この激痛を今日一日中、耐えられるだけの自信は正直言ってない。だったら私がするべきことは一つ。
「分かった。また学校を休んでしまうけど、今日は体力の回復に勤しむとするわ」
「何かあったらすぐにテレパシーで教えて頂戴。いつでも駆け付けられるようにするから」
「その…迷惑じゃなかったら、ほむらちゃんの看病をしてもいい……んだよ?」
「過保護過ぎないかしら……?」
難病にかかっているわけでもないんだから、そこまで気を遣わなくてもいいのに……
何だかこの一晩で別の方の信頼を大きく失ったような気がするわね。
取り敢えず今日一日絶対安静という条件と引き換えに何とか心配性の二人から解放される。
そして念のために家の前まで送ってくれて、その後に私は玄関で彼女達を見送った。
「それじゃあね、暁美さん」
「ほむらちゃん…早く良くなってね……」
「えぇ、二人ともまた明日……」
二人の姿が見えなくなるまで、玄関の前で立ち続ける。
完全に居なくなった後、私は勢いよくドアを閉めて鍵をかけて、それから背を壁にして倒れた。
「はぁ…はぁ……」
胸の痛みがどんどん増していって、動機も荒くなる。
この感覚は、間違いなくあの力がもたらす呪い…でもどうして? あれは、まどかのお陰で治ったはずでは……?
そう思っていると指輪の宝石が禍々しい光を放ち出した。慌ててソウルジェムを確認してみると、とんでもないものがあった。
「何よ…これ……?!!」
そこには、卵型に金色のレリーフをした宝石ではなく、黒い正八面体の宝石が私の手の中に存在していた。
魔法少女、魔女……姿を変えるとき、それと共に魂の容器も変化する。だけどこの変化は一体……?!
『なるほどそれがあなたの成り果てなのね……』
困惑する私の前に何処から入って来たのか悪魔が姿を現した。
「あなた…これは一体どういうことなの?!」
キッと彼女を睨み付けて理由を問いただす。
すると悪魔はあのときと同じように王冠型の宝石を取り出した。
『これはダークオーブ、円環の理の力を取り込んで変化した私の魂の器。
あなたと非常によく似た変化によって生まれたもの。だけども少し違う……』
「違う……?」
『私はたった一つの
だけども、あなたの場合は複数の
「心…じゃあ、あなたはどんな思いでその姿へと変わったの?!」
『ふふっ…それは希望よりも熱く、絶望よりも深いもの……あなたも持っているものよ』
「それって…?」
『いつかあなたにも分かるときが来るわ。
それはさておき、あなたはまだ呪いから解放されてはいないわ』
「ならどうして私は戻って来れたの?」
『まどかのお陰であなたが『希望』を見つけたからよ。
けれど、そんなのはその場しのぎに過ぎない……呪いは延々とあなたの肉体、そして精神を蝕んでいくでしょうね』
「ど、どうすれば…呪いは解かれるの?!」
ニタァとこれまでで最も邪悪な笑みを見せる悪魔に私は恐る恐る尋ねた。
それに対して返ってきた答えは残酷なものだった。
『今のあなた以上の強大な力によるものではない限り、呪いは決して解かれない。方法があるとするならば、まどかが契約をすることしかないわね。
つまり不可能ということになるわね』
「そんな……」
『今はまだ抑え込んではいられる。でも、勿論それには限界があるわ。
果たしてどこまで耐えられるのかしらね』
嘲笑い続ける悪魔に私はただ愕然とするしかなかった。だけどそんなとき脳裏にある言葉が甦った。
「それなら二人とも幸せになれるように頑張ろうよ!!」
まどかと交わした約束を思い出す。
そうだ。もう己を捨てることは出来ない。
二度も彼女を悲しませるわけにはいかない。
それなら私は____
「耐えてみせる……」
『えっ?』
「あの子の幸せの為なら、こんな呪いなんてどうってことない。
一生解かれることがなくても構いはしない」
『へぇ、どこまで足掻けるのか……
ふふっ、やっぱりこの世界のあなたは何かが違う。ますます興味が出たわ』
私の回答に悪魔は面白そうに見た後、こちらに手を差し出してきた。
『折角だから見せてあげるわ。あなたと同じく過ちを犯した私の過去を……
もしかしたら、あなたの呪いを解くヒントになるかもしれないしね』
「…………」
『さあ、どうする?』
別の世界の私の過去……もしそれが呪いを解くヒントになるのなら、見る他はないだろう。
私は悪魔の手を掴んで、命令をした。
「見せなさい。あなたが犯した罪、しかと見届けてやるわ」
『なら、しっかりと付いて来なさい』
そうして再び悪魔の創りだした空間へと導かれていく。
たとえ呪いを解く手掛かりを見つけられなくても、私は耐え続ける。
まどかと共に幸せな道を歩むことが出来るのならば……
今の私には彼女を想う心だけが、生きる支えだから……
★
ほむら達が工場を去った後、織莉子とキリカもようやく瓦礫の中から脱出することが出来た。
その身は二人ともボロボロでまさに満身創痍だった。
「くっ……」
「大丈夫かい、織莉子?!!」
「手も足も出なかった。一体どうすればいいの……」
「織莉子……」
「あ~あ~、こんなにボロボロになっちゃって大変なことになったね~」
落ち込む織莉子達の前に一人の少女がやって来る。それを見たキリカは、もの凄い形相で彼女を睨んだ。
「黙ってろよ。我先に逃げ出した腰抜けが……」
「ふ~ん、そんなこと言うんだ~。それは私に殺してもらいたいってことなのかな?」
「お前みたいな奴なんか、今の手負いでも十分だね」
「止めなさい、二人とも」
険悪なムードになろうとするのを織莉子が止めさせる。
二人はまだ不服そうだったが、諦めて別の話題を振った。
「で、あんな化け物一体どうやって倒すのさ? 真っ正面からなんて絶対に出来っこないよ」
「ああ……あれに普通にやって勝つのは無理だ。織莉子、何か考えはあるのかい?」
「……ええ、あるわ」
「「!!」」
まさかの返答に二人は驚きを露わにする。
「でも、その為にはまた準備が必要になるわね。果たしてあの怪物が再び出てくるまでに間に合うのか……」
「心配ないさ、織莉子。もしそうなったら私が命を懸けてキミを守るから」
「キリカ……」
何かを言いたそうにしていたが、そこへ少女がため息をつく。
「羨ましいね~、忠実な従者がいるアンタは……」
「勘違いしないで頂戴。私とキリカはそんな関係なんかではないわ」ギロッ
「うおっ…そ、そんなに睨まなくてもいいじゃん……」
「それはともかく、もう私達に残された時間はほとんどない。
体力を回復させたらすぐに動くわよ、二人とも!!」
「あぁ!!」「は~い!」
織莉子の言葉に頷き、三人も工場を後にした。
彼女らの次の作戦とは一体……?
★
「本当に行っちゃうの?」
「あぁ…キュゥベえの情報によりゃ、アイツらは見滝原にいるらしいからな」
「私も行く!」
「だからそれはダメって散々言ったろ!!
何のためにこの二日間、お前に一人で生きる術を教えたと思ってんだ!!」
「嫌、絶対に付いて行く!! 置いて行かれても勝手に付いて行く!!」
「だぁーーー!! わーったよ、けど常にお前のことは見てやれないからな」
「うん! 自分の身は自分で守れるようになれ。一番最初に教えてくれたことだよね」
「はぁ…何でそれは素直に聞いてくれるんだか……」
「ところで、見滝原ってどんな場所なの?」
「あん? アタシもちょっとの間しか居なかったから、そこまで記憶には残ってないな」
「その間、何していたの?」
「ちょっと色々な……」
「?」
「とにかく行くぞ。アイツらにたっぷり借りを返してやらなくちゃな」
「うん!!」
「見滝原か……久しぶりだな……」
☆ to be continued…… ★
※本来なら第3章で登場させる、とあるキャラ達を先行登場させました。
それでは次回をお楽しみに!!