(旧)マギカクロニクル   作:サキナデッタ

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※アフターメリークリスマス♪(二日過ぎて)

※冬休みに入ったけど、思うようにキーボードが進まなくて大変でした……


第20話 襲撃I ~ 一夜が明けて

 

第20話 襲撃I ~ 一夜が明けて

 

 

 

『どうして……こうなるって分かっていたのに、あなたは……!!』

 

『ごめんね。またほむらちゃんを苦しませちゃって……』

 

『…………』

 

『ねぇ……最期に頼みたいことがあるの』

 

『…………』スチャ

 

『もう……分かってるんだね』

 

『この頼み事もずっと繰り返してきた……何度もこの手であなたを手掛けてきた……』

 

『そこまで気負わなくていいんだよ……なんて言えないよね』

 

『どうせなら私もこのままあなたと一緒に死ぬのも悪くないと思ってるわ』

 

『そうなの? じゃあ頼み事、もう一個だけしていいかな?』

 

『何?』

 

『後一回だけでいい……ほむらちゃんの魔法を使って時間をやり直して欲しいの。本当はあなたにばかり辛いことを押し付けたくないんだけど……お願い、希望を捨てないで』

 

『…………分かったわ』

 

『ありがと…………うぐっ!!』

 

『大丈夫?! しっかりして!!』

 

『も、もう一つだけ……伝え、たい、ことが……』

 

『何をする気なの……止めて!! 銃を下ろして!!』

 

『あなたと、友達になれて……本当に良かった……』パリン

 

『まどかぁぁぁぁあ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

「見慣れた天井だわ……」

 

 悪夢から醒めて最初に見えたのがそれだった。とはいってもこの前と同じ病院の天井ではなく、私の部屋のものだったけど……

 ここまで考えが至るや私は慌てて飛び起きた。そして意識を失う前に起こった出来事を思い出す。

 

「確か私は……呉キリカに……」

 

 そう口にしていると全身に激しい痛みが襲いかかった。自分の身体をよく見るとパジャマの下に包帯が何重も巻かさっていて、点々と血の跡が滲んでいる。

 現状を確認したことで今がどういったことになっているのか思考を巡らせる。

 

 呉キリカに銃弾を受けて、私はそのまま気絶。その後、さやかと巴さんが何かかしらの手段を使ってあの二人から逃げ切り、避難と傷の手当ての為に私の家に訪れた。恐らくこれで合っているはず……

 

__ガッシャン!!

 

「?!」

 

 すると突然扉の方から物が落ちる音が聞こえる。そちらを向くとそこには驚いた様子でこちらを見るまどかがいた。

 

「ほむらちゃん……」

 

「まどか」

 

 名を呼ぶとまどかは今にも泣き出しそうな顔をしながら、私の胸に飛び込んできた。

 

「うぐっ……!」

 

「よかった……無事に目が覚めてくれて、本当によかった!!」

 

「ま、まどか……傷に響くから少し離れて……」

 

 胸元をすりすりされるのは本来なら嬉しいけれども、今の身体だと相当キツい……

 

「あっ、ごめん!! つい嬉しくて」

 

「別に気にすることないわ。それよりもあなたの方は何ともないの?」

 

「うん。ちょっと危なかったけど、さやかちゃんのお陰ですっかり元通りだよ。ほら!」

 

 なんの躊躇なく、服を捲ってみせてきて思わず吹き出してしまう。ちょっ……無防備過ぎるわよ!!

 私の反応に、行為をやってみせたまどかの顔がみるみる内に赤くなっていく。バシュッと音が出てもおかしくないくらいのスピードで服を戻す。

 

「ほむらちゃんのえっち……」

 

 じっ……とこちらを見ながら小さく呟いた。

 いや、あなたが見せてきたのでしょ?!

 

「起きて早々何しとんじゃあんたら……」

 

「あっ、さやかちゃん」

 

「ほむら。調子はどう?」

 

「最高よ、この怪我さえなければね」

 

 苦い顔をしながら、とんとんと胸の辺りを叩いてみせる。

 

「それと治療してくれてありがとう。あなたがいてくれなかったら今頃、私もまどかもきっと死んでいたわ」

 

「まだ慣れていないから上手く治せなかったけどね」

 

「初めてにしては上出来なものよ」

 

「おぉ……ほむらが珍しくあたしを誉めた」

 

「私を何だと思ってるのよ……」

 

「ま、とりあえずこの三人は無事で何よりだね」

 

「三人?」

 

 その言葉を聞いて血の気が一気に引いていく。そういえばさっきからあの人の姿が見えない……

 

「巴さんは……彼女は何処にいるの?」

 

「…………」

 

 恐る恐る聞いてみるが、さやかから答えは帰ってこない。まさか……あの二人に……

 私の問いかけに答えてくれたのはまどかだった。

 

「マミさんは……あの人達に連れていかれたよ……」

 

「そんな……」

 

 美国織莉子達と戦う上で貴重な戦力を失ってしまった。そしてそれだけでなく、今度アイツらと戦うにあたって慎重に行動しなければならない。

 そうなれば必然的に必要になってくるのは情報だ。情報を集めて巴さんを救い出さなくては……

 

「二人ともあの廃墟の一件があってから私はどれくらい意識を失っていた?」

 

「大体一日くらいだよ。そんなことよりも一刻も早くマミさんを助け出さないと!!」

 

「ダメよ、軽率な行動はかえって奴等の思う壺になる」

 

「じゃあどうすればいいんだよ! このままじゃマミさん、殺されちゃうかもしれないんだぞ!!」

 

「大丈夫、巴さんは殺されない」

 

「どうしてそう言い切れるんだよ!」

 

「奴等の目的が私達全員を殺すことではないわ。もしそうならばあそこで巴さんとあなたはやられている」

 

「じゃあマミさんは人質として連れて行かれちゃったってことなの?」

 

 まどかの言うことにコクリと頷く。そして今自分が隠していることをうっかり漏らしてしまわないように慎重に言葉を選びながら話す。

 

「そうよ、奴等の殺害対象である私とまどかを誘き寄せるためにね」

 

「わたしとほむらちゃんを?」

 

「一体何のためにあんた達を殺そうとするんだよ?」

 

「憶測だけど私とまどかが彼女達にとって脅威になる存在であるからでしょう」

 

 奴等がまどかを狙う本当の理由は、彼女が魔女になって世界を滅ぼす未来を美国織莉子が予知能力を使って見たから。このことは二人にはまだ話せないので適当なことを言って済ませる。

 するとまどかが肩を震わせて言った。

 

「どうして、同じ魔法少女同士なのに殺し合わなくちゃいけないの…?」

 

「認めたくないけれど、こういうのが魔法少女の本来の姿なのよ。

 魔法少女が生きていくためには魔女を狩り続けて、グリーフシードを得なければならない。だけどもその数には限りがある。

 もしも自分達のテリトリーに魔女がいなくなってしまったら、今度は別の縄張りを探さなくてはならない。

 でもその場所に他の魔法少女がいたとしたら? 当然グリーフシードの奪い合いとなってしまう」

 

「じゃあアイツらがあんた達を狙っているのは、予め邪魔者を潰しておくためってことかよ?!」

 

「恐らくね」

 

 これだと美国織莉子達が私利私欲のために動いている魔法少女として勘違いされそうね。まあ彼女らがどういった扱いになろうとも私には関係ないけれど。

 などと思っていると私の言うことに焚き付けられたさやかが勢いよく立ち上がった。

 

「許せない…そんなことのためだけにあたしの親友たちの命を狙うなんて…!!」

 

「いや、これは私の憶測だからそんなに真に受けないでちょうだい」

 

「あ、そうなの?」

 

「何回も言ってるでしょ…」

 

「さやかちゃんは思い込みが激しいから許してあげて、ほむらちゃん」

 

「そんなの分かり切ってるわよ」

 

「相変わらずのこの評価である…。んで話を戻すけどさ、アイツらって結局何者なの?

 ほむらは名前を知っていたけどさ」

 

「私は前に奴等と一度戦ったことがあるからよ」

 

「「えっ?!」」

 

 二人が驚いた様子で私の方を見る。別の時間軸のことだけど嘘はついていないし、これで辻褄合わせもしっかり出来る。

 

「それでどうなったの?」

 

「勝負はつかなかったけどあのまま戦っていたらきっと負けていたでしょうね」

 

「そうなんだ…」

 

「ほむらでも勝てないとなったら、もう二人のあの変身しか残っていないってことじゃん」

 

 確かに以前までならそれも作戦の視野には入れていた。けれどもついこの間、知ってしまったあの変身のデメリットがあるため私の中では不採用となっている。

 

「それもダメよ。そんなことしてしまったらこの怪我やダメージが全てまどかへと移ってしまう」

 

「それくらいヘッチャラだよ、ほむらちゃん」

 

「今の私はある程度の痛みに耐えることが出来るこの身体が魔法少女であっても動くのがやっとの状態よ。そんなのを生身のあなたが受けたら大変なことになってしまう」

 

 まどかを苦しませないために言った言葉ではあるけど、だからといってこのままのんびりと横になりっぱなしでいるわけにもいかない。

 美国織莉子達が攻めてきたときはこの身を呈してでも最後まで戦うつもりだ。

 

「と、なれば現状戦えるのはもうあたししかいないってことか…

 ねぇ、何かないの? アイツらに勝つための作戦とかさ」

 

「あなた一人で戦っても勝機は全くないわ。現状の経験も力も何もかも奴等に劣っている」

 

「ず、随分とズバッというね…」

 

「だからこそ軽率な行動は控えるべきなの」

 

「んじゃあさ、あの二人の戦い方とか教えてくれない? もしかしたらそこを上手く突ければ勝てるかもしれないじゃん?」

 

「さやかちゃん凄い…いつもとは全然違うね。まるで別人みたい」

 

「へへーん、あたしだってやる時にはやるのだ!」

 

 確かにいつも以上に頭が冴えている、いや冴えすぎていて逆に不気味だけど残念ながらそう簡単にはいかない。

 水を差すようで少し申し訳ないけど、突っ込ませてもらうわよ。

 

「戦い方や能力を考慮して出した結論がさっきのなんだけどね」

 

「うそーん……で、でも一応戦い方くらいは聞いておこうかな? 知ってて損はないだろうし」

 

「美国織莉子の魔法は予知、これから起きるであろう未来を知ることが出来る。

 呉キリカは速度低下、対象の動きを遅くしてから武器の鉤爪で攻撃する」

 

「……」

 

 説明をし終えても、これといった反応を見せないさやかを不思議に思ってみてみると、その顔色が髪と引け目を取らないくらい真っ青になっていた。

 そう、巴さんみたいに遠距離攻撃尚且つ、多彩な技を駆使して戦うのなら話は違うけれども、さやかの武器は剣のみでしかも戦い方も真正面から突っ込んでいくタイプ。当然、魔法をモロにくらってしまう。

 

「ぜ、絶望的じゃん…」

 

「やっと分かってくれたのね」

 

「ほむらちゃん…どうするの?」

 

「方法が無いとは限らないよ」

 

 辺りをどうあがいても絶望的なオーラが立ち込めている中、そこへ忌々しい奴が現れた。

 

「キュゥベえ…」

 

「ちっ…一体何の用なの?」

 

 わざと大きく舌打ちをして、顔をしかめるとインキュベーターがため息混じりの声を出す。

 

「君達が困っているようだからアドバイスしに来てあげたというのに、随分な扱いだね」

 

「何さそのアドバイスって……」

 

「鹿目まどかが僕と契約して魔法少女になれば、美国織莉子達に勝つことは容易いってことさ」

 

 そんなことだろうと思ったわ。と心の中で呟いているとさやかがインキュベーターの身体を持ち上げて言った。

 

「ふざけんじゃないわよ。これ以上、あんたのせいで魂を石ころに変えられる人を増やしてたまるか!」

 

 どうやらさやかが契約する前に二人の中で一悶着あったらしい。大方、巴さんやソウルジェムの真実を知らない魔法少女達を騙していたことについてであろう。

 

「そうかい。なら君はどう思っているんだい、まどか?」

 

「わたしもまだ考え改める気はないよ」

 

「まだ……か」

 

 含みのある言い方をまどかはしていたけど、この状況が一向に好転しなかったら恐らく契約することを考えているってことだろう。

 そのことを思って不安になっていると、インキュベーターが紙を取り出してさやかへ渡してきた。

 

「何だよこれ…?」

 

「美国織莉子から君達に渡すように言われた物だよ」

 

「これって……地図かな?」

 

 身を乗り出して紙面を覗きこむ。そこにはある場所を示した地図と美国織莉子からのメッセージが書かれていた。

 

 

 

『美樹さやかへ

 今日の午後六時までに指定された場所に鹿目まどかを連れて来なさい。

 もしも時間通りに来なければ巴マミの命は無いと思いなさい』

 

 

 

「きょ……脅迫状かよ……!!」

 

「午後六時までって、もう時間もあんまりないよ……」

 

「作戦を考える時間も与えないわけね……それにしてもどうして私の名前が書かれていないのかしら?」

 

 私の疑問に答えたのはインキュベーターだった。

 

「君は相当なダメージを受けているからね、まともに動くことはもう出来ないと判断されたんだろう」

 

「ナメられたものね……これしきの傷、どうってこと……ぐうっ!!」

 

 鼻で笑いながら起き上がろうとするも、身体にとてつもない激痛が走って床に倒れこんでしまう。

 

「ほむら、あんたはそこにいなよ。マミさんはあたしがとうにかして助け出すからさ」

 

「相手は何人もの魔法少女を殺しているのよ!! 無策で突っ込んでもただ殺されるだけよ!!」

 

 このまま行かせてしまったら間違いなく取り返しのつかないことになってしまう。

 それを全力で止めようと必死に動こうとするも身体が言うことをきかない。するとそこへ更にインキュベーターの悪魔のような囁きが入る。

 

「そうとも限らない。さやか一人で彼女らに勝つ方法もあるよ」

 

「いい加減なこと____をッ!!」

 

 そこまで言ったところで後頭部に強い衝撃が加わって、私は意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 ほむらを気絶させた後、さやかは彼女の身体にそっと毛布をかけて謝罪する。

 

「ごめん、ほむら。後でちゃんと謝るから……」

 

「さやかちゃん……」

 

「それはそうとキュゥベえ、その方法とやらを早く教えなさい」

 

「勿論、構わないよ」

 

「意外だね。あんたはてっきりアイツらの味方かと思っていたけど」

 

「僕は君達の敵でも味方でもない。あくまで中立の立場でいるつもりだよ」

 

 そうは言うキュゥベえだが、まどかもさやかも全く彼の言葉を信じてなんかいなかった。

 

「…………」

 

「そう、まあどっちでもあたしは構わないけどさ」

 

「ねら手短に伝えるとするよ。マミが殺されたら僕にとっても不都合だからね」

 

 

 

 

 

 

  それからどれだけの時間が過ぎただろう。私は再び意識を取り戻して、後頭部を抑えながら起き上がった。

  辺りを見渡すと明かりは点いているみたいだけど、まどかとさやかの姿は何処にもない。

 

「まさか!」

 

 大慌てで玄関を出ようとしたが、その前に視界にインキュベーターの姿が映り込んだ。

 

「やあ、起きたようだね」

 

「インキュベーター……」

 

「君に知らせておきたいことがあってね」

 

  奴がここにいるってことは、まだ気を失ってからあまり時間が経っていない?

  まだ二人と止められるチャンスがある。と思って安心しかけたが、インキュベーターの言葉でその期待は打ち破られた。

 

 

 

「まどかとさやかが美国織莉子の手に堕ちた」

 

 

 

  それを聞いて、目の前の景色がぐにゃあと歪み出した。

 

「嘘だ……そんな、そんなことが……夢よ、夢に決まってる……」

 

  現実逃避したくて発した一言だが、そこへインキュベーターが追い打ちをかけた。

 

「ところがどっこい、これは現実なんだよ。暁美ほむら」

 

「嘘……そんなのって……!!」

 

  絶望感と喪失感が一気に私に押し寄せてくるのにたまらず私は発狂した。

 

「君もここまでのようだね。じゃあ僕がこの辺で美国織莉子の元へ戻るとするよ」

 

  インキュベーターが満足そうに頷いて、この場から居なくなる。だがそんなことはもうどうでもよかった。

 

 

 

心が闇に支配されていく……

意識が堕ちていく……

 

 

 

「嗚呼……もう駄目、こんなのもう耐えられない……」

 

  ずっと心を支えてきた柱が音を立てて崩れ去る。そして次の瞬間、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________

 

 

 

 

 

『ふふっ……来てみたのはいいけど、何やら大変なことになっているみたいね。さて、どうしようかしら?』

 

 

 

 

 

☆ to be continued…… ★

 





☆次回予告★



__私は何度も繰り返してきた。この終わりのない戦いを……

__そしてある時、自分にこう誓った……

__私がどうなろうとも、まどかだけは呪われた運命から救い出してみせると……

__それによって私が、人間でも魔法少女でもなくなったとしても……

__まどかのためなら、どうなろうとも構わない!!!


「ほむらちゃん!!」

「暁美さん!!」

「ほむらァ!!」

「君は一体……」

「嘘……だろ……」

「こんなことがあるというの……」


第21話……


「さようなら……まどか……」パリン




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