(旧)マギカクロニクル   作:サキナデッタ

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※かなり返信遅くなりましたが、tyanドラーさん一言評価ありがとうございました!!

※そしてUA3000&お気に入り20件突破!! 感謝感激であります!!!

追記 サブタイ変更です。だってこっちの方がカッコいいって思ったんだもん!!



第19話 襲撃I ~ 黒白の執行者

 

第19話 襲撃I(iregular) ~ 黒白の執行者

 

 

 

 美国織莉子と呉キリカは他の時間軸では決して現れることはなかった。だけども彼女らの能力はよく覚えている。

 

 美国織莉子は予知能力、未来に起きる出来事を見ることが可能で彼女はその能力を使い、まどかが魔女化した際の危険性を知り、まどかを殺そうと計画した。

 一方で呉キリカは速度低下、私の能力と同じ時間干渉とまではいかないが、その汎用性は計り知れない。

 しかし最も恐ろしいのが彼女ら二人の抜群のコンビネーションでその時間軸の巴さん曰く、契約してままならないのにも関わらず何人もの魔法少女を殺してきていて、一切の躊躇い無くこちらを殺しにかかってくる。

 

 直接対決したときは時間停止を使って、何とか渡り合える……いや防戦だけで精一杯だった。では、能力が使えなくなってていて且つ魔力が大幅に減少し、弱体化してしまっている私が彼女達と戦うとどうなるのか?

 

 答えは簡単。勝ち目なんかあるはずない。だがそう易々と殺られるわけにはいかない、全力で足掻いてやる!

 

 

 魔法少女に素早く変身し、銃を取り出して向かってくる二人に弾が無くなるまで撃ち続ける。

 銃声が廃墟全体に鳴り響く。

 しかし美国織莉子は後ろに下がって避け、呉キリカは銃弾を全て捌ききり、鉤爪をこちらへと突きつける。私はそれを盾で受けた。

 

 ガキィィン!! と激しい金属音が辺りに響き渡り、彼女と至近距離で対面する。

 

「何が目的なの?!」

 

「君達を殺す、ただそれだけさッ!!」

 

 呉キリカのかける力が増していく。両足を踏ん張らせるも徐々に押されて、体勢が崩れていく。このままでは押し倒されてしまう。そうされる前に盾から新たに銃を出して至近距離で発砲する。

 

「甘いよ!!」

 

 だがあっさりと先を読まれてしまい、呉キリカは飛び退いてしまう。銃弾は空を切って廃墟の壁に当たる。

 二人との距離が離れている隙に弾を入れ換えて、まだ目の前の出来事に呆然としていたさやかを叱咤するように呼び掛けた

 

「さやか! 何をしてるの、早くあなたの魔法でまどかを治療しなさい!!」

 

「お、おう!! ……ってなんであんた、あたしの能力知ってるの?!」

 

「いいから! 幼なじみの腕を治したのと同じ要領でさっさとしなさい!!」

 

「願い事もバレてる?!!」

 

 かなり動揺しているみたいだったけど、直ぐ様倒れているまどかの所へ向かって撃たれた傷を治そうとする。

 

「させませんよ」

 

「へっ? おわっ?!」

 

 しかし美国織莉子はそれを許さなかった。魔弾をさやかとまどかの間に放ち、さやかの進行を遮る。

 

「くっ……そこをどけよ!!」

 

「そうはいかないわ。今鹿目まどかに動かれては都合が悪いのよ」

 

「訳の分からないことを……言うなァ!!!」

 

 剣を構えてさやかは飛びかかった。それから攻撃を当てようと剣を振り続けるも美国織莉子はその軌道を見切り、簡単に避けていた。

 

「ただがむしゃらに振っていても、私には当たりませんよ」

 

「う、うるさい!!」

 

「隙だらけです!」

 

「なっ……?! わああっ!!」

 

 剣を弾かれて体勢をグラつかせる。美国織莉子はがら空きになった腹部へ魔弾を撃ち込んで、さやかを吹き飛ばした。そしてそのままさやかは廃材の中に埋もれてしまった。

 

「さやか!」

 

「余所見している暇はないよッ!!」

 

「__!! うっ……!!!」

 

 さやか達の方に気を取られていたせいで私の反応が一瞬遅れる。そのせいで呉キリカの鉤爪が私の左腕を切り裂くのを止められなかった。

 激痛が走り、血がボタボタと溢れ落ちる。声をあげてしまうのを必死に我慢しながら顔を上げる。そこにあったのは私を蹴り飛ばそうと片足を振り上げている呉キリカの姿だった。

 

「うあっ!!」

 

 ゴロゴロと床の上を回って、うつ伏せの状態になって力無く倒れる。

 

 駄目だ……あまりにも力の差があり過ぎる。

 

 悔しさと自分の無力さを痛感しながら、床に拳を叩きつける。

 

「やめて……やめてェェェ!!!」

 

 巴さんの悲痛な叫びが耳に入る。彼女を見ると、操られている状態から抜け出そうともがいていた。

 それを見た呉キリカは鬱陶しそうな表情をして早足に彼女の元へと近づいて、後頭部に重い一撃を当てた。

 

「あっ…………」

 

「君の役目は終わりだ。もうそこで寝てろ」

 

 白目を剥いて巴さんも倒れてしまう。呉キリカはふんっ、と彼女を一瞥してから美国織莉子の所へ歩いていった。

 

 今の状況はこれまでにあった展開の中で最も絶望的なものだ。

 まどかと巴さんは完全にリタイア。さやかも戦いの経験が少ないためまともやり合うことが出来ない。そして私も同じく……せめて時間停止さえが使えれば……

 けど無いものをねだってもどうしようもない。もうこの危機を脱するには……

 

 打開策を探していると美国織莉子が私を見下ろしていた。

 このまま殺されてしまうのか? そう思ったが、彼女はそうしなかった。その代わりに私にある質問をした。

 

「何故あなたは私やキリカの名前を知っていたのですか?」

 

「…………」

 

「それに魔女や私達の戦いの際、あなたはまるで相手の能力や行動を全て分かりきっているような動きをしていましたね」

 

「結構な観察力ね……今とさっきのでそこまで見抜くなんて」

 

「いいえ。その疑問は以前からずっとあなた達の戦いを監視していた頃にも思っていました」

 

「暇人……いえ、勤勉家といった方が正しいかしら? そうしていたから私達が変身を解除した後を狙っていたのね……」

 

「えぇ、あなたと鹿目まどかが変身するあの姿を相手にするには力の差が大きいですから。そんなことよりもあなたについてよ、暁美ほむら」

 

「…………」

 

 上手い具合に話を逸らせたと思ったが、無理だった。美国織莉子は私の時間停止の能力をすぐに見抜いて、そこから更に私が時間をやり直して何度も同じ一ヶ月を繰り返していることに気づくほどのとてつもない頭脳を持っている。

 このまま話を持ち込まれてしまってはいずれそのことに勘付かれてしまうだろう。

 

「まさか、あなた……」

 

 しかし私の予想は悪い方向に裏切られた。持ち込まれる前にバレてしまうとは……

 私が同じ時間軸を繰り返していることに気づいた美国織莉子は表情を険しくして再度私に問いかけた。

 

「何度繰り返したの? 何度やり直したの?」

 

「…………」

 

「そう、そういうことね……これで合点がいったわ」

 

 美国織莉子が私の服を掴んで自分の目の高さと同じ場所まで私を持ち上げる。

 

「インキュベーターが仮説として立てていたものだったけど、まさか本当にそうだったとはね……」

 

「おめでとう、相変わらずあなたの勘の良さには驚かされるわ」

 

「あなたが時間をやり直していることが分かれば、今まで感じていた色々な疑問にも納得がいくわね。

 あなたが他の魔女や魔法少女のことを知っているのか、鹿目まどかが何故あれほどまでに膨大な素質を持っているのか……

 そしてそこまでして鹿目まどかに執着するあなたの理由が……」

 

「…………」

 

「素晴らしいわね、たった一人の少女を救う為に何度も時間を繰り返しているなんて……

 

 

 

 そして自分の欲望の為だけにその想い人を見捨て続けるなんて」

 

 

 

 冷たく言い放つ言葉に私は声を失った。そんな私の様子に気づかないまま美国織莉子は呉キリカに問いかけた。

 

「キリカ、あなたはどう思うかしら?」

 

 その問いに呉キリカはやれやれといった様子で首を振った。

 

「あり得ないね。私だったら時間をやり直したりせずにその想い人と、織莉子と共に死を選ぶ」

 

「ありがとう私も同意見だわ」

 

 二人の会話に私は苛立ちを隠せなかった。

 

 確かに何度も時間をやり直し続けていることは、それと同じ数だけまどかを見捨てていることに繋がる。でもそれでも私は…………

 

 

 

『キュゥベエに騙される前のバカなわたしを助けてあげられないかな?』

 

『約束する。何度やり直すことになっても!! 何度繰り返すことになっても!!』

 

 

 

 ある時間軸で彼女と交わした約束。私はそれを守るために永遠の時の迷路に身を投じている。

 単純にまどかを救うだけならもうとっくに私の戦いは終わっている。

 

 込み上げてくる怒りを原動力に私は掴み上げている美国織莉子の顔へ勢いよく頭突きをくらわせた。

 

「うっ!!」

 

 思いもしない反撃に彼女の手の力が弱まって、私は解放される。そして銃口を美国織莉子へと向けた。

 

 

 

「この野郎!!!!!」

 

 

 

 次の瞬間、私の動きは急速に低下した。

 そして憤怒の表情をした呉キリカがゆっくりと動いている私の身体を何度も蹴りつけた。痛覚を感じる神経の速度も低下しているせいなのか蹴られていても全く痛みを感じなかった。

 

 だが速度低下が解除された瞬間、蹴りの痛みがまとめて私に襲いかかった。

 

「あああああああ!!!」

 

 一気に押し寄せてくる激痛に苦しんでいると更に呉キリカが畳み掛けるように蹴り続ける。

 

「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもッ!!!

 私の織莉子を傷つけたな!! 許さない…………死をもって償えェェェ!!!」

 

 呉キリカの猛攻を受けて、何度か意識が飛びそうになる。けれどその前に攻撃が入って呼び戻される。しばらくの間はそれの繰り返しだった。

 

 

 

「はぁはぁはぁはぁ…………」

 

「」

 

 攻撃が終わり、呉キリカは肩で息をしている。私はもう虫の息だった。

 その様子を静かに眺めていた美国織莉子が声をかけた。

 

「キリカ」

 

「もういいだろ、織莉子。コイツはもう殺さなければ気が済まない」

 

「そう……」

 

 このとき彼女はどんな表情をしていたのか分からない。分かったのは彼女が呉キリカに処刑執行を命じたことだけだった。

 

「ならもういいわ。殺りなさいキリカ」

 

「分かったよ」

 

 そう答えて呉キリカは私が握り締めている銃を奪い、引き金を引いた。それから狙いを私に定めて…………

 

「終わりだ、暁美ほむら」

 

 何度も私の身体へと銃弾を撃ち続けた。

 

 

 

 

 銃撃が終わり、織莉子達の目前にいるのは血まみれになって倒れている暁美ほむらだった。普通の人間なら既に死んでいるが、魔法少女は本体であるソウルジェムを砕かなければ完全には死なない。

 それを知っていた織莉子は、ほむらのソウルジェムを砕こうと彼女の身体を探ろうとした。だがそうする前に彼女の目の前を青い閃光が横切った。

 

「ほむらを殺させるかァ!!」

 

 彼女達の前にさやかが立ちはだかる。そして織莉子は先程まで倒れていたまどかの身体が無くなっていることに気がついた。

 どうやら、キリカがほむらを攻撃している内に傷を回復させて安全な場所に動かしたみたいだ。だけど大した問題ではない、何故ならさやかを倒した後にいくらでも探す時間があるからだ。

 

「そんなボロボロの状態で勝てると思ってるのかい?」

 

「このまま逃げるのなら見逃してもいいですよ」

 

「ふざけるな!!」

 

 さやかが激昂して二人に立ち向かおうとした時だった。

 

 

 

 ファンファンファンファン……

 

 

 

 何処からかパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

 その音を聞いた瞬間、織莉子は自分の失態に気づいて舌打ちをした。

 

 ここは今は誰も使っていない廃墟、人が寄り付くはずもない。

 しかしこの廃墟はただ人が近寄らないだけであって近くには当然、人が住んでいる。

 そこの住人がいきなりほむらが発した大量の銃声を聞いたらどうなるのか?

 答えは明らか、不安に思った住人が警察に通報する。ほむらが銃を使ってから大分時間が経過していた。

 

(戦う場所を変えていれば、あるいはもっと早く暁美ほむらを始末していれば……!!)

 

 織莉子は駆け出して、気絶しているマミの元に向かって彼女を担いだ。そしてさやかと対峙しているキリカに撤退を命じた。

 

「キリカ、ここは一旦引くわよ!!」

 

「ま、待て!!」

 

 さやかが呼び止めるも聞くはずもなく、織莉子とキリカはその場から姿を消した。

 残されたさやかはほむらの傷の手当てをして、隠していたまどかの身体を引っ張り出す。

 

「これが見つかったら後が大変そうだな……」

 

 目で見える範囲の薬莢を全て拾って、床にある血だまりを廃材を幾つも積み上げて見えなくする。

 それから二人の身体を魔力で補いながら持ち上げて、廃墟から脱出した。

 

 

 

 

 

 その後、廃墟に警察が到着して魔女に魅入られて気絶していた人達を発見した。

 気絶していた人々は皆、記憶がなくて詳しく情報を聞くことが出来なかった。それから廃墟の調査を行ったが、あちこち倒壊していて思うように動けずに仕方がなく人が入ることが出来る部屋だけ調査した。

 しかし結局は何も見つからずに近隣の住人が聞き付けた謎の銃声の正体は分からず仕舞いで終わってしまった。

 

 

 

☆ to be continued…… ★

 





※おりこ☆マギカはB○○K○FFで数回しか読んでいないので上手くキャラを書いているのかちょっと不安です……

※まどマギの本編以外の本も買おうかなぁ……。おりマギとかかずマギとか……


☆次回予告★


第20話 襲撃I ~ 一夜が明けて


次回もお楽しみに!!

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