※そう言えば、前回のまどかとほむらが最後にした会話。全く噛み合っていないことにお気づきでしたでしょうか?
※後、今回はかなり短めです。その理由は…………
第18話 Bをもう一度 ~ 臆病者でも構わない
私はさやかに助けられた後、箱の魔女の精神攻撃を受けていたときのことを思い返していた。
そこで私はまどか達の幻影を見せられて過去に行ってきた自身の罪を咎められた。
最初は動揺したが、まどか達が偽物であることに気付いていたことと、いつかはこうして仲間達に責められるであろうと覚悟していたことから然程ダメージは受けなかった。あのことを言及されるまでは…………
『鹿目まどかを裏切ったくせに、まだわたしを救うなんて言ってられるんだね』
その言葉を聞いた瞬間、前の時間軸での出来事がフラッシュバックして私の精神は音を立てて崩れた。目の前にいるまどかは偽物……頭の中では分かっているはずなのに責められる度にとてつもない吐き気と苦痛を感じてしまう。
「あれは違うの!! 本当にあなたを救うために……」
『言い訳なんて止しなさい。見苦しいだけよ』
『まどかを理由にして自分の行為を正当化するなんてサイテーだね。あんた』
『もういい…テメーはただの外道だ……そのままどうにでもなっちまいやがれ』
マミ、さやか、杏子の幻影が冷たく放つ言葉に心がどんどんと削られていく。
『あなたはわたしの友達なんかじゃない』
まどかの言葉が決め手なり、私は限界に達した。
だけど次の瞬間、目の前にいた幻影は消え去って、代わりに別のまどかが私に囁いた。
『____』
そして私の意識は現実世界へと戻された。
跪いて頭を抱えていた私にまどかが駆け寄る。偽物でも過去のでもない
彼女の心配そうな表情を見て、私は改めて決意した。
「そうね。今はそんなことに囚われている場合じゃないわね」
心がそっちのけの状態であったけど、変身することを促されたので特に意識をしないまま、まどかに指輪を渡す。
過去の贖罪はいつか必ず行う。今の自分がすべきことは何があってもまどかを守り続けること、今度こそは裏切らないように彼女の願いを叶えるために……
だからもう躊躇わない、何者にも負けたりしない。
『絶対に屈したりしない!!』
その掛け声と共に私は意識をまどかと一つにした。
★
さやかちゃんと協力して魔女の相手をしていたけど、さっきの幻覚を見せること以外は危険な部分が無かったので、特に苦戦することなく戦っていた。
だけどわたしは絶対に手を抜いたりなんかしない。わたしとほむらちゃんを傷つけたのだからそれに相応しい程の罰を与えなくちゃいけない。
「どりゃあ!!」
「さやかちゃん、ちょっといい?」
魔女の攻撃を捌き終わったさやかちゃんに声をかける。
「どした、まどか?」
「あのね……あの魔女にトドメ刺すのわたしがやってもいいかな?」
「あ、ああ……別に構わないよ……」
どうしてだろ? そこまで強い魔女でもないのにさやかちゃん、何だかとっても怯えてる。
何でだろうね、とほむらちゃんに聞いてみたけど彼女も『わ、分からないわ』と言うだけだった。
とにかくあの魔女をわたしの手で倒すことが出来るのだ、ならば躊躇なんかしないで全力で倒してあげよう。
矢を限界まで引いて先端に魔力を集中させる。狙いは魔女のど真ん中、わたしの怒りが伝わったのか一瞬、魔女が身震いをしたような気がした。でも後悔しても遅いよ? だってわたしはあなたを…………
「絶対に許さない!!!!!」
矢に貫かれた魔女は力無く呻き声をあげながら、消滅した。
☆
戦いを終えて、わたし達は変身を解いてグリーフシードを回収する。そしてほむらちゃんがそれを持ってマミさんの元へと向かった。
「よかった……まだ無事なようね」
安心した顔を見せながら、グリーフシードをソウルジェムに当てて穢れを取り除く。すると穢れはみるみる内に無くなっていってマミさんのソウルジェムは元の綺麗な黄色の宝石に戻った。
「あれ……ここは?」
目を覚ましたマミさんはキョロキョロと辺りを見渡す。魔女に操られていたときの記憶は残っていないみたいだ。
マミさんが無事でいるのが分かったさやかちゃんは安堵の胸を撫で下ろして彼女へと近づいていった。
「よかったぁ……無事で何よりです!」
「美樹さん……それに暁美さんと鹿目さんまで、私は一体……」
「大丈夫です。マミさんは悪い夢を見ていただけですから__」
彼女を安心させるために声をかける。そして別れたときからずっと考えていたことを言おうと話し始める。
「__それと怖いのはわたしだって同じです」
「えっ?」
マミさんは目をパチクリとさせる。話が全く分かっていないさやかちゃんがわたしに問いかけようとしたけど、それをほむらちゃんが止める。
心の中で彼女にお礼を言う。
「初めて魔女と戦うことになったとき、わたしは怖くてパニックになって……がむしゃらになりながら戦っていました。
それからも危険な目にあったりした後も逃げたしたくなったりもしました……」
「なら何故、鹿目さんは戦い続けられるの? やっぱり私よりも強いから?」
「そんなことありませんよ。わたしが戦えるのは傍でほむらちゃんが居てくれたから、一人ぼっちだったらすぐにダメになってしまいます」
「…………」
すっと息を吸い込んで、続きを話すために口を動かす。まだ言いたいことは言えてない……マミさんを傷つけさせないように、でも嘘偽りのない気持ちを伝える。
「それでもマミさんはこれまでずっと一人で戦ってきた、こんなに凄い人のことをわたしは幻滅なんかしたりしません」
「鹿目さん……」
「マミさんは頑張りすぎているんです、もう一人ぼっちじゃないんだから無理してカッコつけなくても、わたし達の為に強がる必要もないんですよ。
わたし達はあなたの仲間であり、友達なんだから……もっと素直になっていいんですよ」
「仲間……友達……」
「足がすくんで戦えなくなっても構わない、怖くて逃げ出したくなっても構わない……そんなときはわたしを、ほむらちゃんを、さやかちゃんを頼ってください。いつでもマミさんの力になりますから」
マミさんと一緒に後ろにいる二人を見る。ほむらちゃんとさやかちゃんはニッコリと頷きながら彼女のことを見ていた。
「ありがとう、みんな……こんな泣き虫の先輩でごめんね……」
すすり泣くマミさんの身体をそっと優しく包み込む。
だけど次の瞬間、マミさんの鋭い声がわたしの耳元で発せられた。
「鹿目さん!! 今すぐ私から離れて!!!」
そして、気がつくと____
わたしの身体は銃で撃ち抜かれていた。
★
何が起きているのかさっぱり分からなかった。
巴さんがまどかのお陰で立ち直って一件落着、そう思った矢先に突然巴さんが叫びだして銃を召喚してまどかへ向けて発砲した。
「あ、ああああぁぁ……」
呻き声をあげながら巴さんは地面に膝をつける。
銃で撃たれたまどかは何が起きたのか分からない顔をしながら倒れる。
その光景を私とさやかはただ黙って見ていることしか出来なかった。まるで二人のいる世界だけ時間を止められたように…………
「なるほどこれが君の作戦なんだね。一つ目の爆弾は箱の魔女、二つ目は巴マミ。
操っていたのは魔女だけではなく、彼女も含まれていたって訳か」
「その通りよ、あのとき二人を拘束した巴マミは魔女に魅入られていたわけではなく既に彼女の術中に堕ちていたから……その後、意識だけを戻して彼女達が油断した隙を突いた」
「捨てたもんじゃないねぇ、アイツの能力も」
制止した世界を壊したのは、二人の少女の声だった。その声を聞いて、私の中に忌まわしい記憶が甦る。
かつて一度だけ起きたイレギュラー、鹿目まどかが全くの第三者の手によって殺された時間軸の出来事を…………
胸に込み上げてくる激情を顕にしながら、私は声の発せられてきた方に目を向ける。そしてその人物達の名を叫んだ。
「美国織莉子ォォォ、呉キリカァァァ!!!!!」
私の声に二人は反応して、ニヤリと笑った。
それから美国織莉子は魔力の塊を出現させ、呉キリカは鉤爪を手に装備する。
「ここまでの流れは完璧、さて後はあなたを殺せばフィナーレよ」
「さあ!! 終演だ。暁美ほむら」
それぞれ言い終えた後、二人は私へと襲いかかった____
☆ to be continued…… ★
※というわけで、まどマギ外伝『魔法少女おりこ☆マギカ』から
第15話まで出すかどうかかなり迷いましたが、彼女ら以上によい敵キャラが思い付かなかったので、出すことを決断しました。下手にオリジナルの敵を出すより、こっちの方がいいかな? と思ったのもありますが……
※次回から第二章後半戦、突如現れた強敵にほむら達はどう立ち向かう?!
☆次回予告★
「やめて……やめてェェェ!!!」
「何度繰り返したの? 何度やり直したの?」
「コイツは殺さなきゃ気が済まない」
「僕は敵でも味方でもない」
「何なんだよ、アイツらは!!!」
第19話 襲撃I ~ 最悪の展開
「彼女らは……魔法少女を狩るもの」
これで決まりだ。