※本当はこれがExtra1になるはずだったんですが、急に朝の出来事を書こうと思って、先にあれを投稿しました。
※時系列は第4話のまどかとほむらが変身した後です。
鹿目まどかは、謎の声に導かれて気付かぬうちに魔女の結界の中へと入り込んでしまっていた。
そんなことを知らないまどかはそのまま歩を進める。そして彼女は結界の奥で血まみれで倒れている友人、暁美ほむらを発見する。
これは、お互いに支え合い共に戦うことを誓った二人の少女達の話__語られることの無かった絆の物語。
★
(わたしがほむらちゃんを守らないと!!!)
(私がまどかを護らないと!!!)
魔女の魔の手からお互いをかばい合いながら身を寄せ合う二人。
そのとき不思議なことが起こった。
「「?!!」」
まどかとほむらの体が桃色と紫色に突然光り出したのだ。
光は二人を包み込んで、それは結界に広がった。
やがて光はおさまって中から一人の少女が姿を現した。
「えっ、えっ……?!」
謎の現象にまどかはおろおろと辺りを見渡す。
そして自分の足元にほむらがいることに気付き、体を揺する。
だが、ほむらは何の反応もせずにまるで死んだように横たわっていた。
「ほ、ほむらちゃん…しっかりして!!」
「」
返事が返って来ないことに焦りを感じるまどか。
しかし彼女が待つ声は予想外の場所から聞こえてきた。
『これは…何が起こったの?!』
「ほむらちゃん?!」
不思議な感覚に戸惑っていると、ほむらがぐったりと地面に倒れている自分の体を見た。
『どうして私の体が……? それにこの感覚…自分の身体じゃないような……』
「ほむらちゃん、ちょっと待って!!」
『まどか?』
色々なことが一辺に起こって頭の整理がつかなくなっている二人。
取り敢えず、ほむらに黙ってもらうことにしたまどかは自分の体と服装をじっくりと確認してみた。
見慣れない服装に左腕についた大きな円盤のようなもの。
すらっとした手足に少しだけ高くなった目線。
そして腰の辺りまで伸びた癖が全くないピンクの髪。
外見だけ見ると髪の色以外は全てほむらの特徴と一致している。
倒れていた時にしていた彼女の服装。
それに加えて、直接語りかけてくる彼女の声。
これらを考えてまどかは一つの結論に至る。そしてそれは、ほむらも同じだった。
「わたし、ほむらちゃんとくっついちゃった?!」
『私、まどかと融合したというの?!』
信じがたい事実に二人が驚いていると、そこへ今まで動かないでいた魔女が彼女達へと襲い掛かって来た。
『……!! まどか、避けて!!!』
それに気づいたほむらは、まどかへ警告するが……
「えっ…きゃあああああぁ!!」
いきなりのことにまどかは、完全にパニックに陥ってしまう。
それによって、無意識の内に盾の中に手を延ばし、中に入っているものをやたらめったらに魔女へと投げつけた。
「いやぁ! 来ないでぇ!!」ポイポイ
『ま、まどか…それは……』
それが、ほむらお手製の爆弾と知らずに……
『ッッッッッ?!!!』
投げられた爆弾の数は総勢20個、一気に投げつけられたのを見た魔女は驚きを隠せずにいた。
そして爆弾の起爆スイッチが点灯して……
ドオォォォォォン!!!
魔女の身体は結界と共に跡形もなく消え去った。
☆
「ふ、ふへぇ……」
結界が無くなった後、力が抜けたのかまどかは地面に両膝をつく。
すると急に彼女の体が光り出して、彼女の視界を奪った。
それから目を開けてみると、これまで気絶していたほむらが目を覚ましていた。
「ううん……」
「ほむらちゃん!!」
慌ててほむらの元へと近づいて、彼女の手を強く握る。
友達が無事で安心しきっているまどかだったが、ほむらの方は依然として混乱していた。
「まどか…? 私…元の体に……」
「ほむらちゃん…だ、大丈夫?」
「え、えぇ…問題ないけど……」
「血がいっぱい流れていたけど、ほんとに平気なの?」
「心配には及ばないわ」
「ねぇ、さっきのは何だったの? それにあの怪物って__」
「ちょっとストップ」
状況が掴めなかったほむらだが、まどかの質問に答えながら段々と落ち着きを取り戻してくる。
そして間髪入れずに続く質問ラッシュを一旦、止めさせる。
「順を追って説明はするけども、ちょっと頭の中を整理させて欲しいの。構わないかしら?」
「ご、ごめん! 困らせるようなことしちゃって……」
「いいのよ。えっと…何から話したらいいのかしら……」
ほむらが頭を悩ませていると__
ピリリリリ
ふと、まどかの携帯が鳴り出した。
「えっと……」
「気にしないで」
電話に出ようか迷っていると、ほむらが出るように促す。
着信元を見てみると、それはまどかの父親の知久からの電話だった。
ピッ
「もしもし、パパ? えっ…あっ、大丈夫だよ。
ちょっと寄り道してて……うん、すぐに帰るから。
心配かけてごめんなさい……分かった、それじゃあね」
電話を切った後、どうしよう…といった表情でほむらを見つめる。
「あのね…パパが早く家に戻ってきなさい、って心配していたから。あの…それでね……」
「おつかいの途中だったものね。今日はひとまず家に戻りなさい」
「でも……」
「明日、あなたの学校が終わった後にしっかりと話してあげるわ。だからもう帰った方がいいわ、あまり家族を心配させてはいけないし」
「…………」
釈然としない様子であったが、まどかはほむらと共に結界のあった場所から離れる。
しばらく歩いていると見慣れた通りに出れて、まどかはホッと息を吐く。
「家に帰る道は大丈夫よね」
「うん、ちゃんと帰れるよ」
「よかった。それならもう寄り道せずに行くのよ」
「し、しないよぉ……」
「それじゃ……」
「あっ、待ってほむらちゃん!!」
背を向けて去るほむらを見送ろうとしたが、大事なことを聞き忘れていたことに気付いて急いで呼び止める。
「何?」
「明日、どこで待ち合わせすればいいの?」
「あちらの方にある総合病院の一階の受付で待ってて。丁度昼過ぎに検査も終わって、退院も出来るから」
「分かったよ。じゃあバイバイ、ほむらちゃん」
「また明日ね、まどか」
お互いに手を振って、二人はそれぞれの戻る場所へと向かっていった。
★
「遅くなりはしたけど、なんとか病室まで戻ってこれたわね」
土埃で汚れてしまった見滝原中学の制服から病人用の服に着替える。
後でしっかり洗濯しておかないと、それとシャワーも……
そんなことを考えながら、見回りで部屋に来る看護師の人を待つ。
「暁美さん。調子はどうですか?」
「かなり良いです」
「そう? 良かった、これなら明日退院しても問題なさそうね」
「はい」
「でも念のために明日もう一度だけ検査するから、それまでしっかり休んでいてね」
「分かりました」
「じゃあご飯ここに置いておくね。一時間くらいしたら取りに来るから」
「ありがとうございます」
「また後でね、暁美さん」
「…………」
色々と考えたいことがあるけど、ご飯を食べてからにしましょうか。
「ごちそうさまでした……」
食事を終えて、食器の入ったトレーを入り口近くの台に置く。
さて……
この数時間で色々なことがあったわね。いや……
「あり過ぎたわね、さすがに……」
破壊されたはずの盾が修復されていて、魔法少女としての力が大幅に弱体化。
まどかとの接触。そしてあっという間に仲良くなる。
それから魔女の気配を追って、戦うも時間停止が使えないせいで一方的にやられる。
「問題はそれからね」
どうしてか彼女が私のところまでやって来て、戦いに巻き込まれてしまう。
二人とも魔女に殺されそうになって……
「あれは何だったのかしら?」
まどかが既に魔法少女になっていた? それはあり得ない。なら魔女のことだって知っているはずだし、キュゥベえの監視も行き届いているはずだ。
奴の姿が見えなかったのは、まだまどかの素質に気付いていないから……
イレギュラーな事態が立て続けに起きているけど、今回のはこれまで以上ね。
それと……
服を脱いで、自分の体を確認する。
魔女との戦闘で私は大きくダメージを受けた。傷も負ったし、血も大量に流した。
それは魔法少女だから平気だとして、もう一つ不可解なことが……
「やっぱりほとんど治ってる」
完璧。までとはいかないにも、魔女との戦闘の際について傷は塞がっていて、痕こそは残っているけども完治と言っても差し支えない程だ。
私の魔法少女としての素質は相当低い。
美樹さやかや巴マミのように治癒魔法を使えるわけでもないのに、どうしてこんなことが……
本当にこの時間軸は一体どうなってるの?
予想外のことが起こり過ぎてていて、対応が追い付かない。
そのせいで大して強くもない魔女に遅れを取ってしまったし、何よりも……
まどかに魔法少女と魔女の存在を知られてしまったのはかなり大きい。
詳しい事情についてはまだ知らないけども、明日になれば話さざるを得ない。
そうなってしまったら、あの子の性格からしてかなりの確率で魔法少女になる道を選んでしまう。
「はぁ……」
思わずため息が出ても仕方がない。
唯一の救いと言えば、まだまどかの素質をキュゥベえに気付かれていないことくらい…か。
全くおかしなことよね、まるで魔法にでもかけられているみたい。魔法少女である私が言うのは、それこそ変だけど……
初日から様々なアクシデントに見舞われたけども、私がするべきことは何も変わらない__
「まどか。今度こそあなたを救って見せる……」
★
「はぁ…疲れたなぁ……」
寝る準備も全部済ませて、ベッドの上にゴロンと横になる。
家に帰った後、パパに叱られはしなかったけど説明するのが、大変だったなぁ。
ほんとはちゃんと理由を話したかったけど、あんなこと言っても多分信じてもらえないだろうからね。
その後、わたしはお風呂に入って……
パジャマを捲って、自分の体のあちこちを見る。
そこには体の至る所にアザのようなものが出来ていて、青くなっていた。
体を洗っているときに気付いたけども、触ってみても全然痛く感じなくて、ほんの少しだけピリピリするくらいだった。
「それにしても……」
仰向けになって天井をじっと見つめる。
そして今日あった不思議な出来事を思い返してみる。
ほむらちゃんと河原で出会って、仲良くなって。
それから不思議なことを言われて、帰ろうと思ったら声が聞こえてきて。
声を辿ってみたら傷だらけのほむらちゃんがいて。
変な怪物に襲われると思ったら、わたしにも変なことが起こって。
色々なことがあったけども、それでもわたしの中で一番不思議だったのは__
「ほむらちゃんのこと、どうしても初めて会った女の子って思えない……」
何処で会ったのか、それはハッキリと覚えてはいないけども、これは絶対に間違いじゃないってことは断言できる。
「明日ちゃんと聞こう。変な子って思われるかもしれないけど、このまま悩んでいても仕方がないもん」
布団をかぶってお気に入りのぬいぐるみを抱っこしながら、目をつむる。
色々と不安に感じてはいたけども、どうしてかわたしは__
「えへへっ!」
明日が楽しみでしょうがなかった。
そして今夜もまたわたしは、あの不思議な夢を見ることになる。
※この話を先に書かなかったのは、後の方にも書いてありますが全52話完結が当初で、これらのエピソードは考えてはいたけど泣く泣くカットしたものです。
※後付けとかとおもわれるかもしれませんが、そのような事があろうはずがございません。
(まあ、先の展開に少し合わせた部分もあるけどね)ボソッ