(旧)マギカクロニクル   作:サキナデッタ

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※未公開シーンその1は……タイトルの通りです。
※それでは、どうぞッ!!



Extra1 始まりの朝

 

 

 

『鹿…まどか、君には……を変え…れるだ……力が…る』

 

『まどか、ソイツの…葉に耳を………ちゃダメ!!』

 

 耳元で誰かの呼ぶ声が聞こえる。どちらも聞き覚えがない声だ……

 目を開けて、姿を確認しようとしたけども何故か靄がかかって見ることが出来ない。

 

「誰……誰なの?」

 

『騙さ……いで、……ツの思…壺よ!!』

 

『僕と契約…て魔……女になっ…よ!』

 

「ねぇ! あなた達は……」

 

 ちゃんとした返事は返ってこない。わたしの声が届いているのかは分からない。

 ただ分かることと言えば、二人ともまるでわたしに何かを呼び掛けているような感じだ。

 

『ダメェェェェェ!!!』

 

 片方の声…女の子の悲鳴に近い叫びが聞こえる。

 その瞬間、頭の中に何かの映像が流れ込んできた。

 

 黒髪で、綺麗な顔だち、キリッとした目付きに不思議な服を着ている…あの子の名前は……!!

 

「………ちゃん!!」

 

 無意識の内に出したのは、誰かの名前だった。

 だけど、その名前がハッキリと出てこない。

 

 その名前をもう一度出そうと、口を動かそうとした時だった……

 

 

 

 

 

 ジリリリリリ!!!

 

 

 

 

 

「ふぇっ?!」

 

 目覚まし時計がけたましく鳴り響く。その音でまどかは奇妙な声を出しながら目を覚ました。

 

「あれ…? わたし…何だか不思議な夢を見ていたような……」

 

 夢の内容を思い出そうとするも、おぼろげでよく思い出せなかった。

 だがその中で彼女は一つだけあることを覚えていた。

 

「誰だったんだろう、あの子……」

 

 

 

 

 

 それからまどかは制服に着替えて、下のリビングへと降りて行く。

 リビングでは彼女の父親の知久と弟のタツヤがいた。

 

「おはよー。パパ、タツヤ」

 

「おはよう、まどか」

 

「ねーちゃ! おはよ~」

 

「ママは?」

 

「まだ寝てるみたいだね。まどか、いつものようにお願い出来るかい?」

 

「はーい」

 

 知久にお願いされてまどかは母、詢子が寝ている寝室へと赴く。

 

 

 

 

 

 

 バンッ!!

 

 

「Zzz……」

 

 寝室のドアを勢いよく開けるまどか。しかし詢子は起きる素振りを全く見せずにそのまま眠っていた。

 まどかはそのことを気にせずにスタスタとカーテンに近づき、ドアと同じように思いっきり開ける。

 

「うぅん……」

 

 日の光が寝室に差し込んできて、詢子はうなされながら布団をかぶろうとする。

 まどかはそうすることを許さなかった。

 

「おっきろーーー!!!」

 

「うぇあああ!!」

 

 布団を一気に引っぺがして、太陽の光の元にさらす。

 すると詢子はベッドの上で悶え出したが、しばらくするとそれを止めて周りをキョロキョロと見渡した。

 

「……あり?」

 

「おはよう、ママ」

 

 寝ぼけ半分の詢子にまどかは笑顔で挨拶した。

 

 これが鹿目家の朝の習慣なのである。

 

 

 

 

 支度を全部済ませた後、まどかは家族と共に朝食を取っていた。

 すると知久がまどかにこんなことを聞いてきた。

 

「まどか。さっき起きてくる前に何か大きな声で喋っていたような気がしたけど、何かあったのかい?」

 

「えぇっと、たぶんそれ……寝言だと、思う」

 

「寝言?」

 

「うん…ちょっと変な夢見ちゃったから……」

 

「へぇー、どんな夢だい?」

 

 大きい声で寝言を言っていたことに恥ずかしく思いながら、話していると詢子がちょっと興味深そうに夢について尋ねてきた。

 

「よく覚えていないんだけどね……

 目を瞑っていたら声が二つ聞こえてきて、わたしに何かを呼び掛けているの……

 片方が凄い声で叫んでいて…もう一つが……」

 

 不確かな記憶を必死に呼び起こそうとする。そして一ワードだけ思い出した。

 

「……魔法少女に、ならないかって言っていた…気がした」

 

「へぇー」

 

「ほぉーん」

 

「ねーちゃ、まほーつかい?」

 

 まどかの言葉に三人はそれぞれ反応を見せる。

 

「あ、あはは……へ、変な夢だよね……」

 

「確かに不思議な夢だったね」

 

「まっ、いいじゃんか。まどかくらいの歳だったらそういう夢くらい見るって」

 

「まほーつかい、かっこいいー」

 

 詢子と知久はうんうんと頷いている中、まどかは恥ずかしそうに俯いていた。

 そんな様子を見て、詢子はまどかの肩に優しく手を置いた。

 

「なーに、恥ずかしがることないってこの年頃の子はな、みーんな似たようなことがあるさ」

 

「そうなの……?」

 

「そっ、子どもは夢を見ることが出来る生き物だからね。だからそういう経験が出来たまどかはラッキーだってことさ」

 

「夢を見る……じゃあ大人はどうなの?」

 

「んー、そうだねぇー」

 

「夢を叶えることが出来る生き物、じゃないかな?」

 

 知久がフォローを入れると、まどかはなるほどと頷く。

 それに詢子が付け加えて言った。

 

「確かにそうかもしれないけど、大人になるにつれて厳しい現実だって知っていくことになる。

 だから夢を叶えると言っても、必ずしも自分の理想通りになるわけじゃないからな。それだけはしっかりと覚えておきな」

 

「はーい!」

 

「……ってなんでこんな話になったんだろ?

 ま、いっか。そう言えば前に話していた仁美ちゃんのラブレターの件、どうなったんだ」

 

「それがね…あれから更にもう一通ラブレターが届いたんだって

 

「へぇーそれは凄いね」

 

「ふっ……」

 

 感心する知久だったが、詢子はそのことを鼻で笑っていた。

 

「直に告白できないような奴がラブレターなんか書くなっての」

 

「あはは…相変わらず厳しいね。ママ」

 

「当然さ。まだ中学生には先の話だけども、将来のパートナーってのはしっかりと選ばなくちゃいけないからな。

 相手がしっかりとした人じゃないと苦労するのは自分だからね」

 

「そのパートナーってどういう人を選べばいいのかな?」

 

「一緒にいて心が安らぐような人、自分のことを大切に想ってくれる人、その人のことを本気で大事にしたい。

 後は…その人と一緒にこれからもずっと生きていきたい。そういう人だな」

 

「ママにとってのパートナーはパパなんだね」

 

「勿論さ、パートナー選びにはその人への愛も大事になるんだからな」

 

「そうそう。それがあるからパパはママと結ばれたんだからね」

 

 二人はそう言って笑い合う。その様子にまどかは羨ましそうに眺めていた。

 

「いいなぁ……わたしも早く出会いたいな~。そんなパートナーに」

 

「大丈夫。まどかにもきっと良い人が見つかるよ」

 

「そうそう自信持ちなよ。まずはそこからだ」

 

「……そうだね!」

 

 今朝、詢子から貰った新しいピンクのリボンを見ながらまどかは笑顔になる。

 自分の両親のように、大事に想いあえるような人といつか出会えることを祈りながら……

 

 

 

 

 

 これは…全ての始まりの朝に起こった出来事……

 

 

 

 

 





※一応これは番外編のようなもので、本編で明らかになっていなかったことや、今後の物語の伏線みたいな部分が入っているので色々と探してみてください。

※それでは、また次回!!

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