(旧)マギカクロニクル   作:サキナデッタ

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※まさかの9000字……詰め込むだけ詰め込んだらこの様だよ‼

※追記 区切りをよくするために、最後ら辺をカットして次話にChapter1 epilogue を作りました。



第12話 救済へのZ ~ 希望を求めて

 

第12話 救済へのZ ~ 希望を求めて

 

 

 

 まどかとさやかは恐怖でその場から動けずにいた。

 ついさっきまで戦っていた憧れの魔法少女__巴 マミ。そんな彼女の惨状を見て、恐怖し、打ち震え、そして後悔した自分達がどれだけ軽い気持ちで魔法少女という世界に踏み込んでいたのか。

 

「二人とも、早く契約を!!」

 

 キュウベぇが必死に二人に呼び掛けるもただ身を寄せ合っているだけだった。

 魔女はマミの亡骸を食い荒らして、次の獲物へと視線を向ける。

 

「「あああ…………」」

 

「まどか!! さやか!!」

 

 ゆっくりと魔女が迫ってくる。逃げようとするもその視線に身がすくんで、蛇に睨まれた蛙のようだった。

 

 

 

「その必要はないわ」

 

 

 

 そんな彼女達の前に黒い影が舞い降りた。

 

「暁美 ほむら……」

 

「ほ、ほむらちゃん……」

 

 キュウベぇとまどかがその名を呼ぶが、さやかはただ彼女を睨み付けていた。

 三人の姿を一瞥したほむらは盾から重火器を取り出して、魔女へ目掛けて放つ。

 

『?!!』

 

「チッ、やっぱりこれじゃ駄目ね……」

 

 魔女は攻撃を受け、じりじりと後退していく。その様子を見て、ほむらは舌打ちをする。

 

「なら……これで、どう?」

 

 盾の中を探って今度は筒のようなものを手に持ち、魔女へと放り投げた。すると筒の中から大量の煙が吹き出して、それらは魔女を覆いつくし視界を完全に遮った。

 

「よし……」

 

「待てよ……」

 

 その状態を確認して、別の足場へと飛ぼうとする。だが、彼女の腕をさやかが掴んだ。

 それを鬱陶しそうにほむらは見る、一方のさやかは今にも泣きそうな表情をして激昂した。

 

「どういうことだよ……転校生ェ!! アンタ……なんで黙って見ていた!! どうしてマミさんを助けなかった!!!」

 

「さ、さやかちゃ……「まどかは黙って!!!」」

 

 襟元を乱暴に掴み、ほむらの顔を引き寄せる。その態度にほむらは顔色一つ変えずに答えた。

 

「馬鹿言わないで、敵をわざわざ助ける奴が何処にいるというの?」

 

「ッ!!!」

 

 まどかは信じられないものを見るように必死に首を横に振って「そんなはずない……」と自分に言い聞かせていた。

 

「それよりも邪魔よ、貴女」

 

 わなわなと体を震わせるさやかの体を突き飛ばして、その場からマミの亡骸まで飛んだ。そして無惨に食い散らされた身体を肩に担ぎ、分断された頭部を反対側の手を持って、それをまどか達の前へ放り投げた。

 

「ヒッ……」

 

「うっ、くっ……」

 

「よくその目に焼き付けておきなさい。魔法少女になることがどんなことか、そして一番迎える確率の高いその末路を……」

 

 身体を痙攣させるまどか、胃の中のモノを戻さないように必死に口元を抑えるさやか、彼女達を他所にほむらはただ冷酷に魔法少女について語っていた。

 

 それからほむらは何をするかと思えば、マミの身体に手をかざして魔女によってつけられた傷を治し始めた。

 すると傷は瞬く間に……とはいかないが、徐々に塞がっていって分断されていた頭と身体もしっかりと繋がれた。

 

「どういうつもりよ……」

 

「せめてもの償いよ」

 

「アンタ、それでも人間か?! 傷ついた身体を治して、はいこれでお仕舞い。一件落着なんて本気でそう思っているのかよ!!

 そんなことしたって……死んだ人は、マミさんが戻ってくるわけないだろ!!!」

 

「酷いよ……ほむらちゃん、こんなのあんまりだよ……」

 

 そう怒鳴り散らして、マミの表情を見る。それは恐怖で歪んでおり、例え身体につけられた傷が治ったとしても何一つとして救われない遺体だった。

 さやかはマミの亡骸に顔をうずめて泣いた。まどかも少し離れた場所でキュウベぇを手に持ちながら泣いていた。そんなまどかにキュウベぇはそっと囁いた。

 

「まどか、君が契約さえすればマミを生き返らせることだって可能なんだよ。もし本当にまたマミと会いたかったら今すぐ僕に言うといいさ」

 

「本当に……マミさんを生き返らせるの?」

 

「勿論さ! 君はとても言葉では言い表せないほどの素質を持っている。マミを生き返らせるなんて造作もないことだよ!!」

 

 契約の持ちかけに同意しようとするまどか、だがその瞬間に先程起こったマミの末路がフラッシュバックする。

 そして今しがたほむらが言った言葉が脳内で自動で再生される。

 

「うあぁあ……わ、たしは……それでも……」

 

 これから待っている過酷で恐ろしい運命。それでもマミを助けたい。

 自分の命とマミの命、どちらを取るか…………思いあぐねていると、ほむらがそっとまどかを抱き締めた。

 

「大丈夫よ、まどか。あなたが犠牲を払う必要はないわ」

 

「…………えっ?」

 

 ほむらがそっと目を配らせて、マミの方へと視線を向けさせる。するとそこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開いて、まばたきをするマミの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が……起きたの……?」

 

「「「?!!!」」」

 

 死んだはずのマミが生き返ったことによりまどか、さやか、キュウベぇが驚く。それから一泊置いてキュウベぇはあることに気づいて小さく言った。

 

「これが君の狙いだったのか……暁美ほむら。

 ソウルジェムが魔法少女の本体であることを利用して、わざとまどか達にマミの死に様を見せつける……そうすれば二人は契約することを躊躇い、もしかしたら止めるかもしれない。

 それを見越した上でこの方法を取ったわけか……」

 

「えっ…………?!」

 

 とんでもない爆弾発言を耳にしてまどかは目を丸くする。しかし今話したことは近くにいる三人にしか聞こえていなく、マミの生存に喜んでいるさやかの耳には届いていなかった。当然マミにも……

 

「ご名答、そして説明乙。ネタバレするつもりはなかったけど、これが私が考えた策よ。

 残酷で非道なやりかただけども、これがロクに魔力を使うことのできない私に出来る最高の手段だったわ。

 あの時、巴マミと交戦したとき私の狙いは彼女を無力かすることでは無く、ソウルジェムを奪うことだったのよ」

 

「ほむらちゃん……」

 

 マミが生きていたことについての喜びとまた疑ってしまったという罪悪感の二つが混じりあった涙を流すまどか。その彼女の頭をほむらは優しく何度も撫でる。

 

「あなたの考えていることは分かっているわ。だからそんなに自分を責めないで……何も話さずにいた私が全部悪いのだから……」

 

「ごめんなさい!!」

 

 ギュッとほむらの身体に回していた腕の力を強める。

 

「またわたし、ほむらちゃんのこと疑っちゃった……信じるって約束したのに……」

 

「あなたが謝る必要なんてどこにもないわ。これは私が独断で行った行為、責められるのも覚悟はしていた」

 

「ありがとう。それと、図々しいかもしれないけども……もう少しこのままいさせて……」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

「イヤアアアアアァァァァァ!!!!!」

 

 

 

 

 

「「「?!!!」」」

 

 ほむらの優しさからなる暖かな気持ちに包まれるまどか。だがその気持ちはマミの鋭い悲鳴によって消えた。

 

「マミさん、落ち着いて!!」

 

「美樹さん……私、死にたくないよぉ……」

 

 魔女に食べられた時のことが鮮明に表れて、怯えるマミ。どう見ても今の彼女はまともに戦える状態ではない。

 そんな彼女を必死にさやかが慰めていると、ほむらが大きく叫んだ。

 

「マズイ、見つかった!!」

 

「「「えっ?!」」」

 

 視線の先には怒りを顕にして凄まじい形相で彼女らを睨む、お菓子の魔女がいた。

 

「あぁ…………」

 

「どうすんのよ、この状況……」

 

「そんな……」

 

 てっきり倒されていると思い込んでいた二人は絶望した表情をし、マミは血の気がすっかり無くなっており顔を真っ青にして怯えていた。

 そんな中、ほむらは立ち上がって魔女と再び対峙する。

 

「こいつを倒すのは私。あなた達は早くこの部屋から逃げなさい」

 

「「…………」」

 

「ほむらちゃん……」

 

 黙ってほむらのことを見つめる三人。しかしそこへキュウベぇがほむらに警告する。

 

「君一人では無理だ。先程の攻撃もダメージはあまり受けていないように見える。

 それにただでさえ少ない君の魔力はマミの治療でほとんど使いきっている。仮に倒せたとしても魔力を使いきって力尽きてしまうよ!」

 

「珍しいわね、お前が私を心配するなんて」

 

 口ではそう言っているが、その目は驚きではなく怒りが篭っている。

 

「でも大きなお世話。私は戦うし、死ぬつもりも……ない!!」

 

 言い切るのと同時に両手に銃を構えて魔女へ向かっていく。

 その後ろ姿を見てキュウベぇは嘆息しているだけだった。

 

 

 

 

「すっげぇ……転校生の奴、魔女を圧倒している……」

 

 さやかちゃんの言う通り、魔女の戦いはほむらちゃんの方が押しているように見える。

 でもわたしにはとてもそうは思えなかった。さっきから一方的に攻撃しているほむらちゃんの顔には余裕が全然見られない。それに心なしか動きも段々と鈍くなっているようにも感じた。

 

「暁美さん……ダメよ、これ以上は……」

 

 マミさんも気づいているみたい。隠しているつもりだったのかもしれないけど、わたし達と話している時のほむらちゃんはずっと肩で息をしていた。

 

『____!!』

 

「くっ……!」

 

 たまに仕掛けてくる魔女の反撃を紙一重で避ける。

 攻撃のペースも悪くなってきて、反撃される機械も増えてきた。ハラハラしながら戦いの行方を見守る。そしてその時が来てしまった。

 

 噛みつきを避けたほむらちゃんだったけど、逃げた先が魔女に予想されてしまって追い討ちを受けてしまった。

 魔女の巨大な胴体がほむらちゃんにぶつけられる。

 

「うぐっ!! がはっ……」

 

「ほむらちゃん!!」

 

「だ、ダメよ鹿目さん。下手に動かないで……!」

 

 口から血を吐いて、そのままお菓子で出来た壁へと打ち付けられた。

 わたしは居ても立ってもいられなくなって、ほむらちゃんの飛ばされた所へと向かう。マミさんに呼び止められたけれど、それでも走り続けた。

 

「ほむらちゃん!!」

 

「ま、どか……逃げなさいって言ったでしょ……」

 

「ほむらちゃんを置いてそんなこと出来るわけないよ」

 

「前に言ったでしょ、あなたは私が守るって……」

 

 確かにほむらちゃんはわたしにそう言った。そしてわたしはそれに頷いた。でも本当は違う、あの時は今にも泣きそうな表情でお願いしていたから反論したくないからそうしたんだ。

 

『まどかは、暁美さんのことを本当に信じているのかい?』

 

 パパの言葉が不意に頭によぎる。そうだよ、ほむらちゃんは勇気を出して本音でわたしに話してくれた。だったらわたしも言わなくちゃ! 本当の気持ちを、わたしがほむらちゃんとどういう関係を望んでいるのかを。

 

「そんなの嫌だよ」

 

「えっ?」

 

 ほむらちゃんがビックリした様子でわたしを見る。その顔が珍しくてちょっとだけ嬉しかったけど、そのまま続けた。

 

「ほむらちゃんとそんな関係なんて望んでいない。わたしはあなたと守る守られる関係じゃなくて、一緒に横に並んでお互いに支え合っていきたいの。

 これ以上、ほむらちゃんが一人で傷つくところなんてもう見たくない。もう二度とほむらちゃんだけに辛い思いはさせない。だからお願い、わたしも一緒に戦わせて。一緒に戦う『相棒(パートナー)』になって!!」

 

「…………!!」

 

 何か言い返そうとする素振りをほむらちゃんは見せたけど、ため息を吐いてそれからわたしに笑顔を向けた。

 

「これじゃ、あの時と一緒ね。あなたは折れる気はないんでしょう?」

 

「勿論だよ」

 

「随分と頑固な子になったわね。でもそんなところもあなたの良いところよ」

 

「ありがとう。じゃあ、久しぶりにやろっか!」

 

「そうね、行くわよ。まどか!!」

 

 立ち上がってわたしの横に立って、中指につけている指輪をわたしに渡す。そして一歩後ろに下がって大きなケーキに寄りかかった。

 わたしは受け取った指輪を中指にはめて、指を組んで大きく唱えた。

 

 

 

『「変身!!!」』

 

 

 

 今の自分とは違う姿、ほむらちゃんと一緒に戦うための自分になる『魔法の言葉』を。

 

 

 

 

 魔法少女に変身したまどかだったが、彼女の右手に何かが握られていることに気づいた。

 

「これって……弓? 今までこんな武器無かったはずなのに……」

 

 いつもとは違うスタイルに戸惑っていると、ほむらがまどかに呼び掛けた。

 

『まどか。来るわよ!!』

 

「ッ!!」

 

 見上げるとそこには憤怒で顔を歪めたお菓子の魔女がいた。先程まで散々ほむらに翻弄された為、怒りが頂点まで達した模様だ。

 魔女は大口を開けてマミと同じようにまどかを頭から喰らおうとしていた。だが、ほむらの言葉に素早く反応したお陰で後ろに飛んで難なく避けることが出来た。

 すると魔女は周囲に大量の使い魔を召喚して、それらをまどかへ向けて襲いかからせた。

 

『盾から武器を取り出して、一気に殲滅させるわよ!!』

 

「オッケー!!」

 

 盾から二丁の拳銃を出し、向かってくる使い魔達へと銃口を向ける。そして容赦無く引き金を引いて使い魔を撃ち抜く。

 

『左後方から複数襲ってくるわ!! 気を付けて!!』

 

『右から魔女の凪ぎ払いが飛んでくるわよ!! 飛び上がって避けて!!』

 

 ほむらからのアドバイスに頷き、体の向きを変えて今立っている足場から別の場所へと移る。

 その移動の最中、爆弾を投げて攻撃するように指示されてそれに従う。

 使い魔が密集しているところへと爆弾を飛ばして、まとめて吹き飛ばす。

 

『爆風で相手が怯んでいる隙に弾の補充をしっかりしておいて!!』

 

「出来たよ!!」

 

『よしっ、なら第二波に構えておきなさい。まだまだ行くわよ!!』

 

 

 

「凄い……」

 

 離れた場所で二人の戦闘を見るマミは、その戦い方に見とれていた。キュウベぇも同じく感心した様子で話す。

 

「僕も実際の戦いを見るのは初めてだけどまさかこれほどとはね……想像以上だ」

 

「そんなに凄いの、あの二人って?」

 

「美樹さんは見慣れているから分からないかもしれないけど、コンビで戦うときもあそこまで息の合ったプレーなんか普通は出来やしないわ。ましてや一つの身体に二つの意識がある状態でなんてね」

 

「鹿目 まどかは暁美 ほむらに足りない魔法の威力、強大な素質を……対してほむらはまどかには無いこれまでの戦闘経験から磨かれた状況判断力、的確な射撃センスでお互いのデメリットを支え合う。

 更に双方のメリットを最大限に活用し、相乗されていってあり得ないくらいの力を発揮している。それぞれ全く違う精神を持っているはずなのに……わけが分からないよ」

 

「違う精神ね……」

 

 キュウベぇの言葉にさやかは表情を柔らかくする。

 

「あの二人は、身体だけじゃなくて心も一つになっているんだよ。きっと……」

 

 その言葉を聞いたマミは少しだけ悲しげな顔を見せた。

 

「羨ましいわね……そういうの……」

 

 

 

 

 一方のまどか達は倒しても次から次へと襲いかかってくる使い魔達に苦戦していた。

 

「ううっ……キリが無いよ……」

 

『私に考えがあるわ。まどか、高台へ飛んで頂戴』

 

「分かったよ」

 

 ほむらは何か作戦を思い付いたらしく、場所を移動するように促した。

 魔女の部屋を一望出来るくらいの高台へと着いたまどかは、ほむらの作戦について尋ねる。

 

「ねぇ、ほむらちゃん。どうやってあんなにたくさんの使い魔を倒すの?」

 

『変身したときに手に持っていた弓があるでしょ、あれを使うの』

 

「でもわたし弓なんて使ったこと無いよ」

 

 弱気な台詞にほむらは可笑しそうに笑う。

 

『大丈夫よ、あなたにならきっと出来る。ほら弓を出して』

 

 言われるがままに弓を出して、魔力で矢を作り出し、限界まで引っ張る。

 それから上空へ矢を向けて、ほむらに言われた通りのイメージを想像する。そして技名と一緒に矢を放った。

 

 

 

「マジカルスコール!!!」

 

 

 

 掛け声と共に空高く放たれた矢は空中で四散して、雨のように一帯に降り注いだ。

 その攻撃によって、魔女の使い魔は全滅して残った魔女も相当弱っていた。

 

『まどか、今のって……』

 

「必殺技だよ!! マミさんだって使ってたでしょ?」

 

『はぁ……油断しないでよ?』

 

「分かってるって、でも次はほむらちゃんも一緒に言ってね?」

 

『正直気が進まないけど……』

 

 呆れた感じで話すほむらだったが、まどかはすっかりノリノリでいた。内心でマミの二の舞になら無いようにしなくちゃ……と思いながら、トドメの一撃を放つべく魔女に矢を向ける。

 

「これで決めるよ!!」

 

『ええ!!』

 

 

 

「『フィニトラ・フレティア!!!』」

 

 

 

 放たれた一撃は魔女を貫き、爆発四散した。こうしてお菓子の魔女、シャルロッテは彼女達の手によって見事倒されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 二人に戻ったまどかとほむらは、魔女の部屋の外で見守っていたさやか達と合流した。

 変身をする前にほむらが負っていた怪我も解除されたときには、やっぱり最初の変身後と同様に治っていた。

 

「ふぃ~、疲れたよ~」

 

「まどか、お疲れさま。何処か怪我とかしてないかしら?」

 

「うん、背中がちょっと痛かったりするけど、多分久しぶりに動いたから筋肉痛だと思うな」

 

「無理は禁物よ」

 

「ほむらちゃんもね」

 

「暁美さん!!」

 

 仲良く横並びに結界の出口へと向かう二人。そんなときマミがほむらに呼び掛けた。

 

「何かしら?」

 

「どうして私を助けてくれたの? 今まで私はあなたにたくさん酷いことをしてきたのに……」

 

「ただ魔女がいたからそれを倒した。それだけに過ぎないわ」

 

「なら、自分の魔力を犠牲にしてまで私を救うことだってしなくて良かったじゃない……そのせいで暁美さんはあんなに傷ついて……」

 

「別にもう治ったから気にしなくて結構よ」

 

 マミの言葉に淡々と返すほむら。そんな彼女の腕をまどかが強くつねった。

 

「ちゃんとマミさんと話さなきゃダメだよ、ほむらちゃん」

 

「……仕方ないわね」

 

「正直言って話したくないっていう気持ちでいるのは分かっているわ。でもそれを踏まえてでも伝えておかなくちゃならないことがあるの」

 

「…………」

 

「私ずっとあなたのこと疑っていた……鹿目さん達を利用して何かよからぬことを企んでいるってずっと勘違いしていた。

 あなたが私のことを気にかけてくれていたのに、私はそれに対してまともに取り合おうとせずにあまつさえあんな酷いことをしてしまった。

 それなのに……それなのに、どんな理由があってもこんな私を魔女から助けてくれて、ありがとう……そしてごめんなさい…………」

 

 話をしている内にマミの目から涙が溢れていた。それでも構わずにマミは懸命に謝罪と感謝の言葉をほむらに言い続けた。

 その一連を見ていたほむらはあることを語り始めた。

 

「私がまだ魔法少女でなく、何の取り柄も無かった弱い自分でいたときだった。自己嫌悪に陥って、いっそ死んでしまおうと思っていたときその心の闇を魔女につけこまれ、殺されかけた。

 でも、そんなとき私を暗い絶望から救ってくれた人達がいた…………」

 

「??」

 

 急に一人、話し出したほむらにマミは不思議そうに首を傾げるだけだったが、ほむらは構わずにいた。

 

「それが私が魔法少女という存在を知って、助けてくれた彼女達に強い憧れを持った瞬間だった。その魔法少女の内の一人があなたなのよ『マミさん』」

 

「!!」

 

「あんた今……」

 

「マミさん、って……」

 

 ほむらの放った言葉に一同、驚きを隠せずにいる。それからほむらは優しく微笑んで言葉を続けた。

 

「まどかに言われてよく考えてみたの。私にとってあなたはどういった人なのか。そして気づいたの、強くて頼りがいがあって……でもちょっぴり繊細で私にとって大切な恩人。

 だからあなたにどう勘違いされようとも、敵対されたとしても私は全然気にしてなんかいないわ。どんな形であれ、『今度は』あなたの命を救うことが出来た……それだけで十分なのよ」

 

 その告白は、これまでの繰り返してきた時間軸の出来事を振り替えり、彼女の本心であった。それを聞いてマミは号泣し、まどかは嬉しそうに二人のことを見ていた。

 

「あけ……みさぁぁん……」

 

「もしあなたが私のことを信じてくれるのならお願いしたいことがあるの、いいかしら?」

 

「うん……」

 

「これから私と魔女を一緒に倒してくれないかしら?」

 

「もちろん……です」

 

「違うよ、ほむらちゃん」

 

 泣きながら応えるマミだったが、そこへまどかが首を振った。そして笑顔でほむらの発言を言い直した。

 

「『私達』と……でしょ?」

 

「そうね……そうだったわね」

 

「ありがとう……鹿目さん、暁美さん。ぐすっ……わぁぁぁあああん!!」

 

 二人にお礼を言って、ほむらの胸の中でマミはこれまでの感情の糸が切れたようにしばらくの間、泣き続けていた。

 

 

 

 

 結界から出て、四人がそれぞれの帰路へ向かおうとしたとき不意にさやかが提案をした。

 

「ねぇ、まどか。このまま魔女との戦いで疲れたマミさんと転校生を一人で帰らすのはマズイと思うから、二人バラバラで家まで送っていかない?」

 

「「えっ?」」

 

 急なことにマミとほむらは固まっていたが、まどかはさやかの意図に気づいたのかにっこりと笑って、マミの手を引っ張った。

 

「それならマミさん、家まで案内してください。しっかりとエスコートしますから!」

 

「えっ、でも……」

 

「ほらほら早く!」

 

「あのっ……鹿目さん?!」

 

 まどかに連れられていく様をほむらは呆然と眺めていると、急に彼女は謎の浮遊感を感じた。

 見るとさやかがほむらの身体を抱えて、背中へ乗せていたのだ。

 

「ちょっ……美樹 さやか?!」

 

「傷は治っていても、まだ無理しているでしょ? 家までこれで送っていくよ」

 

 

 

 夕暮れの帰り道、さやかはほむらをおぶりながらゆっくりと歩いていた。そしてほむらに話しかけた。

 

「あたしもさ……ずっとアンタのことを誤解していたよ。

 この前、公園で話したときだってやましいことがあって隠し事があったわけじゃないんでしょ?」

 

「…………えぇ」

 

「そのことを薄々分かっていたのにさ、しっかりあたしの方から歩み寄ろうとせずに一方的に突っぱねて……ずっと後悔していたんだ。

 だからさ…………その……許してくれ、とは言わないけど……まどか達と一緒にいる間は、あたしと仲良く接してくれないかな? それ以外の時はどんなことをしても構わないからさ……お願い、転校生!!」

 

「…………」

 

 無言でなんの反応も示さないほむらをさやかがただ待った。彼女が自分の謝罪に、償い方に対する応えを……

 ほむらはゆっくりと口を開いた。

 

「そんなやり方じゃ、ダメよ」

 

 そう言い放たれ、さやかは寂しそうな顔をする。だがその直後、彼女の首にほむらの腕がそっと優しく回された。

 

「まどかの親友にそんな酷いことなんて出来ないわ。だから私から代わりに条件を出しても構わないかしら?」

 

「うん……何だって構わないよ」

 

「ほむらよ」

 

「えっ?」

 

「転校してもう一週間経つのだからそろそろ名前で呼んで欲しいのよ。いつまでもそれじゃ『友達なのに』よそよそしいでしょ?」

 

「てん……いや、ほむらぁ……」

 

「何かしら『さやか』」

 

「ううん……何でもない」

 

「なら早く家へ向かって頂戴、だいぶ日も落ちてきたからね」

 

「了解!!」

 

 さやかは表情を明るくさせて、さっきよりも軽い足取りでほむらと一緒に夕日に包まれている街中を歩いていった。

 

 

 

☆ to be continued…… ★





※よくよく考えてみると、まどほむの変身って第1、2話でやったっきりなんですよね。第4話は変身寸前!ってとこで終わっちゃうし……次章からは戦闘シーンかなり増えてくのでそこもお楽しみに。

では、次回また会いましょう。

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