※突然ですが、皆さんベタな展開はお好きですか?
第11話 救済への
(遂に来たわね……この日が)
ほむらは携帯をしまい、魔女の結界へと急ぐ。
(今回の時間軸での巴マミとの関係は最悪……話し合いはおろか下手したら会った矢先に襲われかねない。そうなってしまっては高確率で彼女は死ぬ。
ならば私がこれからすべきことは……)
考え事をしながら走っている内に目的地へと辿り着く。結界の入り口を調べてみると何者かが侵入した痕跡があり、既にまどか達が内部に入り込んでいることが分かった。
(力を失った状態でどこまでやれるか不安だけど……やるしかないわね)
一方、マミと合流したまどかは結界内に侵入し、グリーフシードを孵化させないように慎重に進んでいた。
「無茶しすぎ……って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。これなら魔女を取り逃す心配も……っ!!」
「マミさん、どうかしましたか?」
訪ねた矢先、後方から誰かが近づいてくるのに気づく。
マミはまどかを庇うように自分の後ろに回し、迎え撃つ態勢に入る。彼女らに近づく者、それはほむらだった。
「ほむらちゃん」
「あら、暁美さん。一体何のようかしら?」
笑顔で接するマミ。だが彼女からは敵意__否、殺意に近いものが溢れていてそれは素人のまどかにもハッキリと感じ取れた。
「今回の獲物は私が狩る。貴女達は手を引いて」
「あなたが何を企んでいるか分からないけどそうはいかないわ。美樹さんとキュウベぇが奥にいるからね」
「その二人の安全は私が保証する」
「信用すると思って?」
「貴女がどう思おうと関係ない。退かないというのなら……」
「どうするつもり?」
獲物を忍ばせ、双方臨戦態勢に入り、距離を詰めながらお互いの出方を探る。
先に動いたのはほむらだった。
「まどか、先に謝っておくわ」
「えっ?」
盾の中から何かを取りだし、地面に勢いよく叩きつける。叩きつけられたそれはまぶしく輝き、二人の目を眩ませた。
「うわっ!!」
「くっ……閃光弾?!!」
怯んでいる隙にほむらが一気に距離を詰め寄る。そしてその手がマミの顔へと伸びて…………
「かかったわね!!」
「なっ……?!」
「ほむらちゃん?!」
直後、足元から複数のリボンが出てきてほむらの身体を拘束した。
「鹿目さんに免じて危害は加えたりしないわ。でもあんまり暴れられると保証しかねないけどね」
「こ、今度の魔女はこれまでの奴らとはわけが違う……うぐっ!!」
必死にもがいて拘束から逃れようとするが、動けば動くほどリボンがほむらの身体を締め付ける。
その姿にまどかはどうにかしようと、交互に視線を配らせるが、マミに手を引かれてほむらから離されてしまう。
「行きましょう、鹿目さん」
「で、でも……」
「まどか、わ……私のことはいいから早く魔女を……」
「うん……」
この場に置いていくべきなのか躊躇するまどかだが、先で待っているさやか達の為にも進むことにした。
マミに手を引かれ、結界の中を歩いていく。
あれからどちらも一言も喋らずに気まずい雰囲気が漂っていた。そんなときマミが声をかけた。
「幻滅したかしら?」
「えっ?」
「彼女は鹿目さんにとっては大事なお友達なのよね。それなのにあんな酷いことしちゃって……恨まれてもおかしくないわ……」
「その……それは……」
「でも心配しないで、使い魔にやられないように結界も張ってあるし、帰りにはちゃんと拘束も外すつもりだから」
「あ、ありがとうございます……」
とりあえずお礼を言う。けれどもまた会話が途切れて、再びだんまりとなってしまう。
何か話題を振るために思い付いたままのことをマミに尋ねた。
「あの……マミさん」
「何?」
「魔法少女って確か、魔女と戦い続けるという使命と引き換えになんでも願い事が一つ叶うんですよね」
「そうよ。もしかして叶えたい願い事が見つかったのかしら」
「いえ、その……マミさんはどんな願い事をして魔法少女になったんですか? って聞きたくて……」
「…………」
願い事の話でマミは一瞬だけ顔を明るくするが、目を逸らしてうつむいた。
「あの、どうしても聞きたいわけじゃなくて……話したくなかったら無理しなくても大丈夫です……よ?」
「私はね__」
「小さい頃、事故に遭ってたった一人だけ車の下敷きにならずに生き延びて……ただひたすら助けを求めていたの。そしたら私の目の前にキュウベぇが現れてこう願った__『助けて欲しい』と。
あのときの私はただ生きたかった。それしか願い事がない状態で祈ったわ。後悔しているつもりはないけど、振り返ってみるともっと良いお願いを出来たんじゃないかって思っちゃう……」
「マミさん……」
辛い過去の出来事を思い出し、落ち込む姿を見てまどかはさっきの自分の発言を取り消したくなっていた。
けれどマミは顔を上げてにっこりと笑う。
「鹿目さん。あなたはまだ魔法少女になるのかどうか分からないけれど、もしなるとしたらちゃんと考えたうえで願い事を決めて欲しいの。悔いの残らない選択をしてもらいたいの」
「悔いの残らない選択……」
「鹿目さんは、なんでも一つ願い事が叶うとしたら何を求めるのかしら?」
「わたしは……昔から得意な学科とか、人に自慢できるような才能とかも無くて、きっとこれから先ずっと誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのかなって、そう考えると自分が嫌でしょうがなかったんです。
でもそんなときに、ほむらちゃんと出会って、一緒に誰かのために必死に戦うことを体感して嬉しかったんです。そして、マミさんが昔からずっとこの見滝原の街を守っていることを聞いて憧れたんです。
だから、もし願い事を叶えてもらうとしたら……それは魔法少女に、誰かを救える力を手に入れたい。それで願いが叶っちゃうんです」
「そうなの……なら、鹿目さんはキュウベぇと契約して魔法少女となった時点で願い事は叶ってしまうのね」
「はい。こんな自分でも誰かの役に立てるんだって胸を張って生きることが一番の夢だから」
「ふふっ、優しいのね鹿目さんは__」
願い事を聞いて、嬉しそうに頷く。そしてそっとまどかに聞こえないくらいの小声で呟いた。
「そんなあなただから私は……」
「? マミさん、今何か言いました?」
「ううん、何でもないわ。でもねあなたは私を憧れているって言っていたけど、そこまで大したものじゃないわよ……」
「え?」
「無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり……それがあなたが見ている私の本当の姿なの……
魔女と戦うときだっていつも自分を抑えて、逃げ出したくなる気持ちを隠しながら戦っている。だって、もし死んじゃったら誰にも知られずに、いつしか忘れられて……永遠に孤独であり続けるから……」
ポツリポツリと話すマミは普段、まどかが見ているような優雅で頼りになる先輩ではなく、自分と同じ女の子で、ほむらと同じく傍にいてあげて支えたくなる人に見えた。
そんなマミを見て、優しく彼女の手を握りしめる。
「ほむらちゃんも同じことを言っていました。魔法少女は孤独で常に死と隣り合わせで危険だって。
マミさんはずっと一人で辛い思いをしていたんですよね?」
「うん……」
「ならこれからはわたしがマミさんと一緒にいます。
どんなに危険であろうと、他の誰かがそれを止めようとしても、わたしはマミさんのことを絶対に一人ぼっちにしたりしません。絶対にマミさんのことを忘れたりしません!」
「鹿目さん……」
「ううん、わたしだけじゃない。さやかちゃんもきっとマミさんと一緒にいてくれます。
マミさんが街の皆のために戦ってくれるのなら……わたし達はそんなマミさんのことを支えます! だからわたしなんかでよかったら……マミさんのお友達でいさせてください!」
力強く言った言葉にマミは今すぐにでも泣き出しそうな表情で手を握り返す。
「本当に友達でいてくれるの? 私の傍にいてくれるの?」
「勿論ですよ。でもその代わりと言ったらあれなんですけど、一つだけお願いしたいことがあるんですけど……」
「何だって構わないわ」
「この戦いが終わったら…ほむらちゃんと仲直りしてください」
「!!」
その名前が出てきた瞬間、何かを恐れるような感じでマミは体を強張らせた。
「マミさんにはダメって言われていたけど、この前ほむらちゃんと二人で話し合ったんです。
そしたらベテランでとても頼りになるから一緒に協力して魔女を倒したいって言ってくれて」
「意外ね……あの子がそんなこと言う子には見えないけれど」
「言ったことをそのまま伝えてはいないですからね。素直じゃないんですよ」
「でも……私は彼女にたくさん酷いことを言ってしまったわ。仲良くなるなんて出来っこない……」
「そんなことないですよ。だってほむらちゃんは、マミさんとの誤解を解きたくて今日わたし達の前に来てくれたんですから」
「…………」
「ダメ、ですか……」
「よくよく考えてみれば、彼女とは一度たりともまともに話したことが無かったわね。ただ危険なイレギュラーであると思いながら避け続けてきた……分かったわ。
この戦いが終わったら暁美さんとしっかりと向き合って話し合ってみる。キュウベぇから聞いた情報じゃなく、私自身の目で彼女のことを見るわ」
「マミさん……!」
「だから協力してくれないかしら? 私と暁美さんが仲良くなれるように、敵同士じゃなく味方で友達になるために」
「はい、約束ですよ!」
「うん!!」
小指を出し、二人は指切りげんまんをする。
そうしてお互いに笑いあっていると急に結界内の雰囲気が一変し、直後キュウベぇのテレパシーが届いた。
『マミ、グリーフシードが動き出した!! 孵化が始まる。急いで!!』
「オッケー、分かったわ。今日と言う今日は速攻で片付けるわよ。鹿目さん、しっかりついてきて!!」
「分かりました!!!」
ソウルジェムを高く掲げ、マミは魔法少女の姿に変身する。そしてまどかの手を離さないようにしっかりと掴み、魔女のいる部屋へと走り出した。
道中、行く先に使い魔達が彼女らを阻むがそれらは全てマミの射撃によって撃ち落とされ、やられていった。
(身体が軽い。こんな気持ちで戦うなんて初めて!)
まどかを守りながら使い魔達と戦うマミの姿はとても美しく__
(もう何も怖くない!!)
まぶしい笑顔で輝いていて__
(私、一人ぼっちじゃないもの!!)
希望で満ち溢れていた。
「…………そろそろね」
まどか達の後ろ姿が遠退いていく中、ほむらは予め袖の内に仕込んでいたナイフを使ってリボンの拘束を解いていた。そして彼女らに気づかれないようにゆっくりと後を追いかけた。
★
まどかとマミは魔女の部屋に辿り着き、そこでさやかと合流を果たしていた。
「お待たせ」
「さやかちゃん、大丈夫?!」
「よかったぁ、間に合ってくれて」
「気を付けて! 出てくるよ!!」
さやかの無事にそっと胸を撫で下ろすまどかだったが、その安堵はキュウベぇの警告によって打ち消された。
キュウベぇに言われた方を三人は見つめる。するとお菓子の箱の中からぬいぐるみのような可愛らしい外見の姿をした魔女が飛び出してきた。
「折角のとこ悪いけど、一気に決めさせて……もらうわよ!!」
それを見るやマミは魔女へ向かっていき、銃と魔力を使って瞬く間に魔女を捩じ伏せる。そしてリボンで動きを完全に抑えてそこへ必殺の一撃を撃ち込んだ。
「ティロ・フィナーレ!!!」
「「やったぁ!!」」
攻撃が当たり勝利を確信したさやかとまどかは手を取り合い、喜び合う。マミはその光景を見て微笑ましそうに笑う____だが…………
魔女の口から巨大な恵方巻みたいなものが出てきて、大口を開けて物凄い勢いでマミへと襲いかかった。
「あっ……」
「「あぁ……!!」」
★
『お邪魔しました~」』
『ふふっ、まどかでよかったらいつでも来ていいわよ』
夜が明けて休日の昼。まどかは自分の家に帰ろうとしていた。
本当はこの後にでも一緒に出掛けたり……とか考えていたのだけど、あんまり遅くまで帰らなかったらまどかの親御さんに迷惑をかけてしまうと思ったので、渋々断念したわ。決して誘う勇気が無かったわけじゃないわよ。
『でも、ほむらちゃんに悪いよ』
『気にしなくていいわよ。私だって独り暮らしだから少しだけ……寂しかったし』
『それなら今度はわたしの家に泊まりにおいでよ。パパもママもきっと喜んでくれるよ!!』
『なら、近い内にお邪魔しても構わないかしら?』
『うん!』
まさかまどかから誘ってくれるなんて……夢でも見ているんじゃないかしら。
お泊まりの約束に浮かれていると、まどかは急に深刻そうな顔をして話しかけてきた。
『ねぇ、やっぱり昨日の話だけど……』
『巴マミのこと?』
『うん……』
『彼女が敵意を持って接していてくれさえしなければ、私は協力する気でいるわ。でも、もしそうでなければ……』
『ほむらちゃんは…マミさんのことどう思ってるの?』
『どうって……?』
まどかからの問いに深く考える。
私が巴 マミのことを? 何故、そんなことを聞くのかしら?
『マミさんは、ほむらちゃんのことあんまり信用していないけれど…それでもほむらちゃんは心配してわたしに警告してくれた』
『あれは……ただ魔女と戦う戦力の足しにする為に……』
『それは建前だよね。わたしはほむらちゃんの本当の気持ちを知りたいの……』
私にとってあの人は…………
☆
「ごめんなさい、巴マミ……」
私はゆっくりと魔女の部屋へと続く道を歩いていた。今頃、彼女達は魔女と出会い、交戦している最中だろう。
「あなたはこの先に待ち受ける敵。ワルプルギスの夜と戦う上で貴重な戦力となる……
でも、私が戦う目的はそれではない。私の目的は、まどかを魔法少女として契約させない為に……インキュベーターが作り出した狂ったシステムに彼女を巻き込まないようにする為に」
そう……そのためなら私は何だって犠牲にするって心に決めた。
「貴女にこんな仕打ちをさせるのは気は進まなかった……けれど、許して頂戴……」
『マミさん、逃げて‼』
『あぁ……』
「これも全て__」
ガブッ!!!
/ ∥ =只= ∥ ヘ
i / ´ ` ヘ i
゙、 ヘ.___,ヘ__,ノヾr’
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\_/ ヽ-´ 彡
「__まどかの為なのよ……」
☆ to be continued…… ★
※計画通り(ゲス顔)
※このままほむほむがマミを救って和解なんてありふれたエンドにする気はありませんよ?
※なので、ちょっとひねくれた展開にしてみました。
次回、第一章完結!!!