(旧)マギカクロニクル   作:サキナデッタ

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第10話 Yの過ち ~ ふれた心は輝いた

 

第10話 Yの過ち ~ ふれた心は輝いた

 

 

 

 まどかの唐突なお願いに私は驚いた。

 そしてそれをあっさりと了承したまどかの両親にもっと驚いた。

 

 正直言って急すぎるというか、なんというか……ただ単純に私の心の準備が出来ていないだけね。

 

 それから色々と話を聞くと、どうやらまどかは夕飯も食べずにずっと私の家の前で待っていたらしい。

 普段ならカップ麺などの簡単な食事で済ませていたけれども、まどかが来ているのならそうはいかない。客人をもてなすような大層な料理を出すことは材料とかの問題で無理だったけど、大丈夫だったかしら……

 

「ごちそうさまでした」

 

「お粗末様。ごめんね、簡単なものしか用意できなくて」

 

「全然! とっても美味しかったよ、ほむらちゃん!!」

 

 満足そうな顔で言うまどかを見て少しだけホッとして、テーブルの上にある食器を片付け始める。

 

「あっいいよ、自分の分は持っていくから」

 

「まどかはお客様なんだから私に任せて。洗い物もすぐに終わらせるからそれまで適当にくつろいでて」

 

「はーい」

 

 使った食器を水の入ったタライに入れて軽くスポンジで擦って、汚れを軽く落とす。本当ならしっかりと洗うところだけど、折角まどかが泊まりに来てくれたのだ少しでも時間を無駄にしたくない。

 

 タオルで手を拭いて、リビングに戻ってみるとソファーに座りながら、うつらうつらと舟を漕いでるまどかの姿があった。

 

「まどか」

 

「ふぇっ?!」

 

 隣に腰かけてそっと優しく名前を呼ぶとまどかは慌てて起き、辺りをキョロキョロと見渡した。その様子がおもしろ可愛く思わず笑ってしまう。

 

「ふふっ」

 

「も、もうビックリさせないでよ!」

 

「眠たいの?」

 

 時計を見るともう九時を過ぎている。まどかが何時に寝るのかは把握していないけれど、規則的な生活を送っているのなら普通なら眠くなる時間だろう。

 

「うん……大体家だと十時くらいに寝るんだよね……」

 

「このまま眠っても構わないけど、どうせならお風呂に入ってからにしない? すぐに沸くと思うけど」

 

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。あっ……でも着替えどうしよう……」

 

「私の服を貸すわ。サイズ的にちょっと大きいけど問題ないはずよ」

 

 胸以外は……心の中でそうぼやく。認めたくないけど、私の周りにいる女の子の中ではダントツに小さい。そう、まどかにも劣っている……

 

「色々とごめんね。迷惑かけちゃって」

 

「仲直りできたんだもの、もう少し遠慮しなくても大丈夫よ」

 

「ありがとう、ほむらちゃん」

 

「いいのよ別に、着替えは置いておくからゆっくり入ってらっしゃい」

 

「え?」

 

「え?」

 

 部屋に行って、彼女用の寝巻きと下着を取ってこようとすると、まどかが意外そうな声を出した。それに釣られて私も声を出す。

 そして次の瞬間、再び予想もしていなかった言葉をまどかは言った。

 

「一緒に入らないの?」

 

「?!!」

 

 とんでもない爆弾発言に頭の中身全て吹っ飛んでパーになる。

 

「ほむらちゃん?」

 

「はっ!!」

 

 まどかに呼び掛けられ、ようやく我にかえる。私としたことが……少し取り乱してしまったようね。

 

「もしかして嫌だった……?」

 

「ち、違う違う……これまで友達と一緒に入ったことなんてなかったから緊張しちゃって……」

 

 過去のループで何度かそういうシチュエーションに出くわしたことがあったけれど、その度に何かしら理由をつけて、一人で入るようにしていた。

 後、その上目使いは反則よ。そんなの見せられて断れるわけないじゃない。

 

「よかった!! じゃあ早く入ろう!!」

 

「わ、分かったからそんなに押さないで頂戴……」

 

 こうして私はまどかにお風呂場へと強制連行されていった。

 着替えをまだ用意してないけど、どうにかなるわよね? 

 

 

 

 

 脱衣場について、二人はお互いに服を脱ぎ始める。

 ほむらはまどかの脱ぐ姿が恥ずかしいのか背を向いた状態で脱いでいた。するとその時、まどかが驚いた表情でほむらの背中を叩いた。

 

「ま、まどか……どうかした?」

 

 急に触れられて心臓をバクバクさせるほむらだったが、まどかの意識は別の方に向いていた。

 

「ほむらちゃん……その傷跡、どうしたの……?」

 

 彼女の身体には無数の傷が残っていた。擦り傷、切り傷、打撲、痣__年頃の中学生にしてはあまりにも多すぎて、痛々しいものだった。

 

 ほむらは傷のことを言われて、そのことをすっかり忘れて浮かれていた自分を叱咤した。こんなものを見せてしまったら絶対にまどかを心配させる。そんなのは既に分かりきっていたはずだったのに……

 

「こ、これは……今日の帰りに転んでたまたま打ち所が悪かっただけで__「違う」__」

 

 苦し紛れの言い訳をするもすぐに看破される。そしてまどかは続けて言った。

 

「わたし保険委員やっているから、どういった時にどう怪我したのかは大体分かるの。ほむらちゃんの傷は普段生活していれば、絶対につくはずのないものだよ」

 

「…………」

 

「もしかして……魔女との戦いで?」

 

「!!」

 

 図星だった。

 ほむらの動揺に気づいたまどかは、数多ある傷の中で一番新しくまだ生々しい傷に触れる。それは先程、さやかと出会う前に戦っていた魔女と使い魔によってやられたものだ。

 

 傷を触られて表情を歪めるが、何とかして平静をほむらは保とうとする。

 

「そうよ。でもこんなの魔力を使えば、どうとでもなるわ」

 

「どうしてそこまでして魔女を倒すの?」

 

「前も言ったけど、魔法少女にとって魔女を倒して得られるグリーフシードはとても重要なもの。それは幾ら数があっても余分になることはないの、だから機会がある内に貯めておきたかったの」

 

「…………」

 

 その説明にまどかは半信半疑で聞いていた。そして事実そうだった。それはあくまで表向きの理由、ほむらがここまでして魔女を倒すのにはある目的があった。

 

 本当のことを隠していることを見透かされていることに気づいているほむらは、一拍置いてもう一つの理由を話した。

 

「そしてもう一つは……まどか、あなたに余計な負担をかけたくなかったからよ」

 

「やっぱりそうなんだね……」

 

 てっきりこのまま話さずにいってしまうのかと思っていたまどかは少しだけ意外そうな顔をする。そして前々から気になっていたことをほむらに質問する。

 

「ねぇ……どうしてほむらちゃんはそこまでしてわたしのことを気にかけるの?」

 

「それはね__あなたが私の最初の友達だったから……」

 

 その答えに驚いた顔をするまどかを見ながらほむらは遠い昔を懐かしむように話し続けた。

 

「私はね、小さい頃から心臓の病気のせいでずっと病院で入院生活を送っていたの。学校には通っていたけど、病気のせいでみんなにとって普通の生活をすることも出来なかった。

 当然、友達はおろか話してくれる人もいなかったわ。クラスでも苛められたりはしなかったものまるで腫れ物を扱うような感じで楽しいことなんて何一つ無かった。

 一時期にはいっそのこと死んでしまおうか……なんて考えてたりもしたわね」

 

「…………」

 

「そんな空っぽの私に生きる意味を教えてくれたのが……まどか、他でもないあなただったのよ」

 

「そう……だったんだ……」

 

「河原であなたと出会って、一緒に話さない? って言ってくれて嬉しかった。

 嫌いだった自分の名前を肯定してくれて嬉しかった。

 そして使い魔とすらもまともに倒すことが出来ない最弱の魔法少女の私に手を差し伸ばしてくれたことが何よりも……嬉しかった。

 これが私の『この世界』でのあなたを守る目的……分かってもらえたかしら?」

 

「グスッ……ほむ……らちゃぁん……」

 

 嘘偽りのない本心を伝えたほむら。その想いはしっかりとまどかの心に届いていた。

 

「ごめんね……ずっと苦しい思いをしていたのに、ほむらちゃんのこと信じてあげられなくて……」

 

「もういいのよ。こうしてあなたが私の為に涙を流してくれる。これ以上に嬉しいことはないわ」

 

「ほむらちゃ__くしゅん!!」

 

 突然くしゃみをするまどかにビックリするが、それと一緒に今の自分達の状況に気づく。

 

「大丈夫……? そういえば私達ずっと下着姿のまま話していたわね。このままだと風邪ひくかもしれないから、一先ずお風呂に入ってしまいましょう」

 

「そうだね……くちゅん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ほむらちゃん……もういいでしょう?」

 

「まっ待ってまどか……私、心の準備が……///」

 

「大丈夫……私も初めてだけど自信はあるから……」

 

「お、お願い……痛いことしないで……」

 

「ほむらちゃんって意外と可愛いところがあるんだね。みんなが知ったらビックリするだろうね」

 

「こ、こんな姿見せるのはまどかだけなんだからぁ……///」

 

「もう……そんな顔されたらもう我慢できないよ……///」

 

「や、優しくして__ひゃん!!」///

 

「ふふっ……ほむらちゃん顔真っ赤だね」

 

「や、やだぁ……見ないで……///」

 

「ウェヒヒ!! とっても可愛いよ、ほむらちゃん」

 

「ばっ……バカぁ……///」

 

「いいのかな~そんなこと言っちゃって? でも嫌だったら仕方がないよね、これ以上はもうしないであげる」

 

「えっ……」

 

「冗談だよ。だからそんな切なそうな顔しないでよ……じゃあ次はどこを触って欲しい?」

 

「それは……その……///」

 

「えへへ……なら次は……ええい!」

 

 

 

「ちょっと……あはははは! や、やめてまどか……そんなに執拗にくすぐらないでっ!!」

 

「脇くすぐられるの弱いんだね。こんど学校でもやってみようかな」

 

「お、お願い……それだけはっ……あはははは!!」

 

「背中洗っているときとは全然違うね~我慢していたの?」

 

「やっやっぱりタオルで普通に洗ってくれていいから……手はもう勘弁して!!」

 

「駄目だよ。ほむらちゃん、身体にいっぱい傷があるんだからそんなに乱暴したら開いちゃうよ!」

 

「でっ、でも流石にこれはっ!!」

 

「しょうがないな~ちょっと物足りなかったけど、このくらいにしてあげる」

 

「ふっふっふっ……掛かったわねまどか!」

 

「えっ、ちょっ……ほむらちゃん?!」

 

「後ろに回り込めばこっちのものよ。さあ……今度は私の番よ……」

 

「やっ、止め……ほむ…………あははは! くすぐったいよぉ! お腹は止めてぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

「つ……疲れたね、ほむらちゃん……」

 

「そうね……今度はもう少し静かに入りましょう……」

 

 お風呂場ではしゃぎ過ぎて着替え終えた後、憔悴しきった状態でベッドに転がり込むことになった。

 

「はぁ~、こんなにお風呂ではしゃいだのいつぶりだろう」

 

「でも…楽しかったわ」

 

「そうだね!」

 

 満面の笑みで答えるまどか。疲れはしたけど、こんな風にまたはしゃぐのも悪くないかもね。

 それから歯を磨き、寝る準備を全部終えて私達はベッドの中に入った。

 

「狭くないかしら?」

 

「ううん、平気だよ」

 

「一人暮らしだから予備の布団とか無かったのよ……ごめんなさい」

 

「謝らなくていいよ。折角のお泊まりなんだから一緒のベッドで寝たかったし」

 

「そう、良かった」

 

 チラリとまどかの方に視線を向ける。するとまどかも私のことを見ていたようでお互いに目が合った。

 

「えへへ」

 

「ふふっ」

 

 今日一日、本当に色々なことがあった。

 まどかと喧嘩して雰囲気が険悪になったと思ったら、その後に謝りに来てくれてもう一度友達になってくれた。それも前なんかよりもっと親密なものの。

 

 彼女は勇気を振り絞って私に歩み寄ってくれて、私に本当の想いを伝えてくれた。

 私もそれに答える為に私自身の想いを伝えた。だけど全てではない……

 

 魔法少女の魂の在り所、ソウルジェムとグリーフシードの真実、『鹿目まどか』という少女を運命から救う為に幾度となく時間を繰り返している少女の話…………

 

 

 

 過去に犯した死よりも重い『私の罪』を…………

 

 

 

 本音を言うのなら今すぐに打ち明けたい。けれど思うように口が動かない……

 これじゃ美樹さやかの時と何も変わらない……

 

『まどかさん達のことを信じていないからですよ』

 

 夕暮れに話した志筑仁美の言葉が脳内によみがえる。

 私の中では信じているつもりだ。まどかは勿論、数々の時間軸ですれ違いはしたが美樹さやか、そして巴マミも……

 それでも、それでも私は…………!

 

「まどか、話しておきたいことがあるの……」

 

「どうしたの?」

 

「信じて貰えないかもしれないけど、どうか聞いて欲しい……」

 

 身体全てが震えてまともに話すことが出来ない。昔、何度もこういった経験はありはしたけど、慣れないものね……

 

 それでも貴女は伝えなければいけない。勇気を出せば望む未来が一歩また近づいてくれるはずだから!!

 

 臆病な自分を奮い立たせようと必死に自身に語りかける。そして…………

 

 

 

 

 

「…………近い内に美樹さんがお見舞いに行っている病院に魔女が現れる。そいつはかなりの強敵で巴マミと相性が悪い奴なの。

 だからもしその魔女を発見したら私に連絡して欲しい……」

 

 

 

 

 

 口から出た言葉は、私が秘密にしていることと何の脈絡もないことだった。

 どうしようもない、救いようがない私の頭にそっと手が置かれる。

 

「やっぱり優しいね、ほむらちゃんって」

 

「えっ?」

 

 不意に誉められてしまい、何がなんだか分からなくなる。

 

「だって敵だって言っていたはずのマミさんのことを心配してくれているんだもん」

 

「あれはその……敵であることには変わりないけど、彼女はベテランの魔法少女だから今後の戦いにおいて貴重な戦力になるから……」

 

「そうなんだ~」

 

 短く返答するまどか、彼女の顔は何故か笑っていた。

 まるで全て見透かされているような感じがしたのでぷいっと顔を背ける。

 

「どうしたのほむらちゃん?」

 

「な、なんでもないわ……」

 

 私の反応を見て、楽しそうにしていたまどかだったけど、ふとその笑顔に陰りが射した。

 

「ねぇ、その魔女には勝てるのかな……?」

 

「分からないわ、少なくとも私と彼女が協力すれば勝てることは確実ね……」

 

『協力できれば』ね。この時間軸の巴マミはインキュベーターの策に完全に乗せられて私のことを警戒している。ああなってしまった彼女とはもう仲間になることが出来ない……

 

「マミさんと仲良く出来ないのかな?」

 

「厳しいと思うわ。私も誤解を解こうと話そうとしたけど、全く聞く耳を持ってくれなかったわ」

 

「そんな……それじゃあもう!」

 

 ここでまどかの目付きが鋭くなるのを私は見逃さなかった。彼女が一体何を考えたのかはほとんど察しがついている。

 

「まどか、何をバカなことを考えているのかしら」

 

「だ、だってこのままじゃ二人ともその魔女にやれちゃうんでしょ? それならわたしも魔法少女になって一緒に戦えば……いやそうしなくてもほむらちゃんと二人で変身さえすれば……」

 

「ダメよ、何があっても契約だけはさせない。

 それにあの変身だって、元の身体のベースはまどかのままなのだから危険には晒せないわ。今までの魔女はそこまで強くなかったから良かったけど、今回のは訳が違う……あなたを傷つけさせたくないの……」

 

「やっぱりそういうことも考えててくれたんだね。でもわたしだってほむらちゃんが傷つくのは見たくないよ……」

 

「大丈夫、あなたは人間だけど私は魔法少女……ちょっとばかり体の出来が違うのよ」

 

 安心させるために言った言葉だけど、これじゃ自分がゾンビであることを自慢しているみたいね……複雑。

 

「でも……」

 

「心配しないで、もしその魔女が現れたら私が何とかして巴マミを説得する。そして二人で戦って勝つ。だからあなたは戦おうなんて思わないで……『あなたは私が守るのだから』」

 

「……分かったよ、ほむらちゃん」

 

 まだ何か言いたそうな感じであったけど、とりあえず退いてはくれた。

 でもこの状況はあまりいいものではないわね……仮にお菓子の魔女を倒したとも、それ以上の強敵はもっと現れる。その度にまたこんなやりとりをしていたはいつか魔法少女として契約してしまうかもしれない……なんとかしなければ……

 

 

 でも、今はその前に……

 

「まどか、もう遅いからそろそろ寝ましょうか」

 

「そうだね……」

 

「ねぇ、もう少しだけあなたの方に寄ってもいいかしら? 久しぶりに誰かと寝るから人肌が恋しくなっちゃって……」

 

「ふぇっ?!」///

 

「嫌だったかしら? ごめんなさい、少し馴れ馴れしかったよね……」

 

「い、いいよ……お……おいでほむらちゃん」///

 

「ふふっ、可愛いわまどか」

 

「もう……///」

 

 まどかとのお泊まり、存分に楽しませてもらうわ。

 昨日今日と辛いことがあったのだもの、少しくらいは甘えていいわよね。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「マミ、何をしているんだい。明かりもつけないで?」

 

「キュウベぇ……帰ってきたのね」

 

「見たところ随分と落ち込んでいるようだけど、何かあったのかい?」

 

「ちょっとね……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「ねぇ、キュウベぇ……私がしていることって本当に正しいことなのかな?」

 

「なんだい唐突にもしかして暁美ほむらのことかい?」

 

「えぇ、確かに彼女はあなたの言う通り得体も知れないイレギュラーな存在。迂闊に放っておくのは危険だと分かっている。

 そんな人を一般人の鹿目さん達と接触させるわけにはいかない。だからわざと二人の不安を煽るような言い方をして無理矢理彼女達を引き剥がした。

 けど、それは間違いだったんじゃないか……今日の美樹さん達を見て思ってしまったの……」

 

「やれやれ……その口ぶりだと敵と見なしている暁美ほむらにも同情しているように思えるね」

 

「彼女のことは以前から監視はしていたけど、正直見ていられなかった……おかしいよね、全部私が仕込んだことなのに……」

 

「全くだ。それで君は一体何を言いたいんだい? ひょっとして後悔しているのかな、自分の選択に?」

 

「そんなわけないじゃない、でも……」

 

「前に僕が話したことを覚えているかい? 希望と絶望の相関についてを……君が行っていることはそれと同じだ。暁美ほむらの孤独の代わりに鹿目まどかの安全を優先させたんだろう?」

 

「…………」

 

「君の決意はその程度のものだったのかな?」

 

「それは……」

 

「マミ……ここまで来たんだ。もう後戻りは出来ない、君が今するべきことは自分の目的の為に突き進むことだけだ。その途中に何があろうとも振り返ってはいけない。君の信念が鹿目まどかを救う唯一の方法なのだから」

 

「ごめんなさい、キュウベぇ……私、弱気になっていたみたい」

 

「気にすることないさ。ほら、今日はもう遅い……明日の魔女退治に向けてしっかりと身体を休めとかないと」

 

「ありがと、励ましてくれて。それじゃ寝る準備をしてくるから待っててね」バタン

 

 

 

「…………」

 

(そうだよ、マミ。君がこんなところで立ち止まってくれちゃ何もかもが救われないんだ。

 暁美ほむらを絶望させ、鹿目まどかと契約を結ぶ。そして三週間後にやってくるワルプルギスの夜で彼女を魔女化させてエネルギーを得る……

 君が上手く働いてくれないと困るんだよ……君たちの為にも、この宇宙の為にもね……)

 

 

 

 

 

 

 そして数日のときが過ぎて、ある日の放課後……事件は起きた。

 

 

「さやかちゃん、あれって……!!」

 

「ぐ、グリーフシード?! どうしてこんなところに?!!」

 

「ほむらちゃんの言った通りだ」ボソッ

 

「何か言った、まどか?!」

 

「ううん……何でもないよ!!」

 

「なら、あたしがここで見張っているからまどかはマミさんを呼んできて! 出来るだけ早くね」

 

「分かった。けど無理はしないでね!」ダッ

 

 

 

(マミさんに……後、ほむらちゃんにも連絡しないと!!)

 

 

 

 訪れた第二の分岐点、待ち受けるはお菓子の魔女__シャルロッテ。

 相性が悪い巴マミ、力のほとんどを失った暁美ほむら、そして彼女に変身を拒まれている鹿目まどか……

 彼女達はこの状況に一体どのようにして立ち向かうのか?!

 

 

☆ to be continued…… ★

 





☆次話予告★


「もう何も怖くない‼」

「お願いです。この戦いが終わったら……」

「どういうことだよ……転校生ェ!!!」

「これが君の狙いだったのか……暁美 ほむら」

「ごめんなさい……これしかなかったのよ……」


第11話 救済へのZ ~ その力は誰が為に 


※第一章もいよいよクライマックス‼

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