1/31追記 サブタイ変更しますた。そして改めて最初のまどかパートの部分を大きく修正しました。
※これで少しでも、原作っぽい感じになっていると感じてくだされば幸いです。もしそうでなかったら、ごめんなさい。
第9話
「なるほど……それは大変だったね」
「うん……」
詳しくは話せないからパパには、友達のことが信じられなくなってそのせいで喧嘩してしまったと説明した。
「それにはしっかりと話し合わなかったまどかにも責任があるね」
パパは、頷いて優しい口調でわたしに言う。
「でもわたし…急に怖くなって……今まではとても優しくしてもらって色んなことを助けてくれたりして嬉しかったけど……。
理由を聞いても全然話してくれないし、みんなもほむらちゃんを避けて……だけど、だけども!!」
もう出しきってしまったと思っていたのに、涙がまた溢れてくる。
「パパ…わたし、嫌な子になっちゃった……。
ほむらちゃんは、わたしのこと大切に思ってくれていたのに、それをフイにしてほむらちゃんの心を傷つけた」
目を閉じて見えてくるのは、ほむらちゃんの悲しそうな顔ばかりだった。それと一緒に込み上げてくる昨日してしまった過ちからなる後悔。
どれだけ謝っても許されることじゃないだろう。
「それでいいんじゃないかな」
「えっ?」
パパの言ったことに思わず泣くのを止めて見いってしまう。するとパパはゆっくりと近づいてきて、そっとわたしの頭を撫でた。
「本当の気持ちなんて誰にも分かることじゃない。その子のことを信じられないのなら、そのままでも構わないと思うよ」
「そんな…そんな酷いこと……」
「でもね__」
言葉を遮って、パパはじっとわたしの顔を見つめる。そしてわたしにとても大切なことを言ってくれた。
「まどかはそんなこと本心から思っているわけじゃないんだろう? 大切なのは、自分自身がどう考えているか…だ。
周りのみんながどうとかじゃない、まどかはその子のことをどう思っているんだい?」
「わ、わたしは……」
「悪いのはその子のことを避けたことじゃない、自分の気持ちをハッキリさせないまま行動を起こしたことなんだ」
「あぁ……」
「その子、暁美ほむらちゃんだっけ? 僕は、まどかが彼女のことを信用できない怪しい子だと思っているようには見えないけどなぁ」
思えば、本当のことは何一つとしてほむらちゃんから聞いてなかった。ただみんなが想像したことに揺さぶられて、勝手に思い込んで、ほむらちゃんのこと全然考えていなかった。
「わ、わたしは…信じたい……。
ほむらちゃんのことを信じたいよぉ……だって友達だもん! 大切なことをいっぱい教えてもらったんだもん!
それに、それに……」
もう一度見えてきたのは初めて出会って、河原で一緒に楽しくお話ししていたほむらちゃんの顔だった。それは、わたしが一番好きなあの子の表情。
「ほむらちゃんは、わたしの側でずっと笑っていて欲しいから!!」
「そう、それがまどかの本当の気持ちだね?」
「うん……」
パパがさっきよりも少しだけ力を入れて、頭を撫でる。
胸のつっかえも大分取れたお陰が、なんだか気持ちがあったかくなったような感じがした。
「そうだ。もう一つ、まどかに教えとかなくちゃいけないことがあった」
「なに?」
「誰にだって知られたくない秘密の一つや二つはある。人によっては変に詮索をされて怒る人もいるんだよ」
「でも…どうして隠し事をするのかな? どうして怒るのかな?」
ふと思った疑問にパパは笑いながら説明してくれた。
「例えばの話をしてみようか。まどかは誰にも知られたくない秘密は持っていたりする?」
「う、うん……あるけど……」
「どんな秘密か僕に話してくれないかな」
「そ、それは……えっと///」
顔を真っ赤にして顔を横に向ける。
流石にこれはパパにも言えないよぉ……中学生にもなってぬいぐるみにあだ名をつけて呼んでいるなんて……///
「そう今のまどかみたいにその秘密を知られるのが恥ずかしくて他の人に話そうとしない人もいる。
でもそれだけじゃない。人によっては知られてしまって幻滅させてしまう、呆れられてしまうんじゃないかと不安に思って隠し事をしたりする人もいる」
「じゃあ、ほむらちゃんは……?」
「僕は、彼女には別の思いがあってまどかに教えたくなかったんだと思う」
「それって……?」
「まどかに悲しい気持ちや辛い気持ちにさせたくないから……かな?」
頭の中が真っ白になる。パパが一体何を考えてそう根拠付けたのかさっぱりだった。
だから聞いた。自分では気づくことが出来なかった大切な友達が何を思って隠し事をしているのかを。
「前にもまどかは暁美さんにその隠し事について聞いたことがあるんだったんだよね」
「そうだよ、さっきも言ったけど…その度にほむらちゃんははぐらかすんだよ……」
「その時の彼女、どんな顔をしていたか覚えてる?」
「とても悲しい顔をしていた」
言葉の真意に気づき、勢いよく立ち上がる。パパはそれを見て目を細めて笑った。
「ただ後ろめたいことを隠しているだけの子がそんな顔をすると思うかい?
暁美さんが何のことについてまどかに隠し事をしているのか分からないけど、それはきっと彼女なりのまどかへの思いやりだと思う」
「それじゃ、ほむらちゃんはわたしのために……」
「これはあくまで僕の憶測でしかない。本当の答えは彼女しか知らない。
でもただ一つ僕が確信を持って言えることがあるよ」
「何?」
「まどかの友達がまどかに対して酷いことは絶対にしないってことさ」
「!!」
「それとまどかは一つ勘違いしていることがある。
友達だからといって隠し事は絶対にないなんてことはない。
人はその人なりの迷いや葛藤があって秘密を作っている。だからそれについて教えて貰えなかったとしても決して信頼されていないってことは無いんだ。
僕もママには教えられない秘密を持ってるしね」
照れくさそうに喋るパパを見てわたしは信じられなかった。
「パパがママに?」
「そうだよ」
「どんなことなの?」
「秘密」
「恥ずかしいこと、後ろめたいこと?」
「どっちもかな」
「ママは知ってるの?」
「夫婦だから、幾つもバレてると思うよ。現に僕もママの秘密結構知っているからね」
「言い争いになったりしないの?」
二人が喧嘩して言い争いになる光景を想像して、不安になる。だけどパパはニッコリとしながらこう答えた。
「ならないよ。だって僕も詢子さんもお互いのことを信頼しているからね」
「凄いなあ……でもちょっぴり羨ましいかも」
「話を戻すとね、まどか。本当の友達っていうのはどれだけその人のことを知っているかじゃなくて、どれだけその人のことを信頼しているかによって決まると思うんだ。
だからもう一度だけ聞かせて欲しいな__
__まどかは暁美さんのことを本当に信じてるかい?」
「…………」
顔を下に向けたまま、首を縦に振る。そして理解した。わたしが今これから何をするべきなのか。
「わたし、ほむらちゃんに謝ってくる。そしてなってもらうよ『本当の友達』に」
思いに気づいてくれたのか、パパは肩をそっと叩いてわたしを玄関へと送り出してくれた。
「行っておいで、きっと暁美さんもそれを望んでいるに違いない」
★
美樹さやかから逃げてきた後、私は家に帰ろうともせずにあてもなく道を歩いていた。辺りはだいぶ暗くなっていて時計を見るともう七時をまわっていた。
インキュベーターの企みを知った為、諦めて魔女になったり、自害しようとする気はすっかりなくなりはしたけれども……本当にこれからどうしましょうか。
途方に暮れながら近くにあるベンチに腰かける。なんだか今日はよくベンチにお世話になることが多いわね……そんなことを思いながら物思いに耽っていると不意に誰かが私に声をかけてきた。
「今晩わ、暁美さん。こんな夜分遅くにどうしましたか?」
「志筑さん……」
志筑仁美だった。そう言えば彼女もまどかと同じく、学校で何度か私に話しかけようとしてくれていたっけ? 美樹 さやかのせいとはいえ、申し訳ないことをしたわね。
「あなたの方こそこんな時間まで何をやっていたのかしら?」
「お稽古の帰り道の途中で暁美さんの姿を見かけたので……」
「そう」
「…………」
「…………」
適当にあしらってやろうとわざと素っ気ない口調で会話をするけれど、彼女は何の反応も見せなかった。いや、彼女は最初から私に会って何を話すのかを既に決めていたのかもしれない。例えどんな対応をされても。
「暁美さん、まどかさん達と一体何があったんですか?」
「…………」
「つい昨日まではあんなに仲が良かった三人が、たった一日で険悪な雰囲気になってしまうなんて私には全く想像もつきませんわ」
「奇遇ね、私も二人がどういった心境の変化でここまで変わってしまったのか検討もつかないの」
「ふざけないでください」
顔と顔がぶつかる距離まで詰め寄り、キッと私のことを睨み付ける。美樹 さやかの時みたいに誤魔化すのは厳しそうね……
「私はこれでもあの二人の親友でいるつもりです。ただの喧嘩や言い争いであそこまで変わるとは思えませんし、暁美さんが二人をそこまで変わらせるようなことをするお方にも見えません」
「貴女に私の何が分かるの?」
「大切な友人を傷つけたりはしない優しい方だってことは分かってます」
威圧するように私も彼女を睨み付ける。だが彼女は全く食い下がる様子を見せずにキッパリと言った。
これじゃ何時まで経っても埒が空かないわね……正直に話さないと何処までも食らい付いてくる。心の中で大きくため息をついて引き締めていた表情を元に戻す。
「分かったわ、私の負けよ。説明するわ……とは言っても所々私の憶測が入るけど」
「十分ですわ」
私は昨日の件、そして今日起こったことを彼女に話した。当然、魔法少女のことは伏せておいてね。
「そうだったんですか……」
「えぇ、彼女達が私のことをどう思っているのかは分からないけど、少なくとも美樹さんは完全に信用していないことは確かね」
「まどかさんはどう思っていると考えてますか?」
先程のまどかとの言い争いのことを思い出す。警戒しながらも一応は私のことを気遣ってくれてはいた。心の優しい子だから美樹 さやかや巴 マミみたいに明確な敵意を持ちながら接することはないだろう。でもやっぱり……
「彼女も同じでしょうね。それに私を怖がっている様にも見える」
「どうしてさっきまどかさんと話していたときにでも暁美さんが隠していることを教えてさしあげなかったんですか? そうした方が誤解は解けたかもしれないのに……」
確かにそうだ。すべて打ち明けてしまえば、こんなことでうじうじと悩む必要もないだろう。けれど私は……
「信じてもらえる確証が無かったから。もし本当のことを話したとしても私のことを拒絶してしまうかも……って不安になっていたからかしら?」
「そうやって後ろ向きに考えている内に事態は結局、悪い方に進んでしまって今に至るわけですか」
「…………」
ごもっともだ。過去を振り返ってみてもいつも悪い方向に転がっていってしまって失敗する。時には上手くいくこともありはするけど、大体は誰かかしらの協力を得ていないとそうはなっていない。
「どうしてこうなってしまったか分かりますか?」
「分かるわけないじゃない……じゃなければ現に悩んだりはしない」
「それはですね。暁美さん、あなたが『まどかさん達のことを信じていない』からですよ」
「…………どういう意味かしら」
彼女の放った言葉にほんの一瞬だけ思考が停止した。面食らったって言った方が正しいのかしら?
「暁美さんは、まだ転校してきたから日が浅いせいかもしれないですけど、私達の間でどこか壁を作っていませんか?」
「それは__」
「仕方がないことは理解しています。だけども相手を疑いながら接している人、距離を置いたままでいる方を信じきるのは難しいと思っていますわ」
「……どうすればいいのかしら」
何を弱気なことを言っているんだ、と自分を叱咤しながら志筑 仁美に尋ねる。すると彼女は普段のような柔らかな優しい笑顔を見せて言った。
「暁美さんが今からでも間に合うと思っているなら、最低でもまどかさんには話してあげた方が良いと思いますわ」
「まどかに……でも……」
「わざわざ用事を断って、あなたと話しに来たんですもの。きっと聞いてくれます。
さやかさんだって、嘘偽りのない本当の気持ちで話せばきっと分かり合えます。ちょっと思い込みが激しいだけで根は友達思いの良い方ですから」
「流石、二人のことよく知っているのね」
「自分の親友ですもの、当然ですわ」
得意気に話す彼女にちょっとだけ嫉妬してしまう。自分にはこんな風に自信をもって自慢する『友達』が一人もいなかったから……
自嘲しながらそんなことを考えていると、志筑 仁美が私を微笑ましげに見ていた。
「どうかした?」
「いえ、いつもクールに振る舞っている暁美さんもこんな表情をするんだ、と思うと何だか新鮮で」
「失礼ね。私だって落ち込んだりするし、悩んだってするわ」
「ごめんなさい、でもそれを知れて良かったですわ」
「どうして?」
「友人の新しい一面を見ることが出来たから」
「!!」
目を見開いてきょとんとした表情になる。そして彼女の言った言葉が恥ずかしく思ったのか顔の周りが熱くなる。
赤くなっている顔を見られているのか彼女はくすくす笑っていた。
「私は待っていますわよ。今度は四人でこうやって楽しく笑い合える時を……」
「本当にごめんなさい……私のせいで迷惑をかけて」
「そこはありがとうって言って欲しいですね」
「ありがとう志筑さん、あなたのお陰で何だか胸の内がスッキリした気がするわ」
「どういたしまして。また何か困ったことがあったら是非私に話してください。いつでも相談に乗りますわよ」
「頼もしい限りね」
「あっ、もしそれが逆の立場だったとしてもよろしくお願いできますか?」
「ええ……私なんかでよければ」
「暁美さん、よいお知らせ待ってますわよ。それではごきげんよう」
最後に会釈をして志筑仁美はその場を立ち去った。
まさか彼女に励まされるなんてね……意外すぎてビックリだわ。でもそのお陰か本当に楽になった気がする。今度学校で会ったらしっかりお礼を言わなくちゃね。
明日、もう一度まどか達と話し合って誤解を解きましょう。私の為にも志筑さんの為にも……
心の中でそう決意し、私は今度こそ家に帰るために駆け足で夜道を歩いていった。
★
これは一体どういうことかしら……?
「…………」
「ティヒヒ……」
思わず時計を見て今の時間を確認する。時刻はもう八時になろうとしている。
そうか……きっと私は疲れているのね。昨日今日と色んなことが立て続けに起こったから幻覚を見ているのね。今夜は早めに寝ましょう、そして明日へ向けて頑張ろう。
「…………」
「よかった、いつまで経っても帰ってこないから心配してたんだよ……?」
あぁ、遂に幻聴まで……ダメね本格的に参ってるみたい……。そうよ、こんなことあるはずない……
まどかが私の家の前でずっと待っていることなんて……
「ほむらちゃん……? どうしたの?」
まどかの幻覚が私の手を握る。いや、この感触、この温もり、これは……!!
「幻覚じゃない?!!」
「?!!」
思わず大声を出してしまい、まどかがビクッと身体を震わせる。
「ご、ごめんなさい……急に大声を出して……」
「い、いいんだよ別に……いきなり自分の家の前に人がいたら誰だって驚くだろうし……」
「…………」
「…………」
どうしよう、凄く気まずい!! 夕方の件もあるし、さっきの志筑仁美との話もあって何を話せばいいのか分からない……何か、何か言わないと……
パニックになって慌てふためいてると、まどかは私の方をじっと見つめて、それから勢いよく頭を下げた。
「ほむらちゃん……ごめんなさい!!!」
「えっ……?」
「事情も何も知らないのに、酷い態度を取っちゃって……ごめんなさい!!!」
「ちょっ……まど……」
「大切な友達だったのにほむらちゃんのこと疑って__」
「落ち着いてまどか!! 貴方どうしてそんなに泣いてるの?!」
「__ごめん……グスッ、ヒック……うわあぁぁあ……」
何何何何何?!! どうなってるのよ?!
家に戻るなり玄関先にまどかがいて、そしていきなり泣き出して……! と、とりあえずこのままだとご近所迷惑にもなりかねないから一旦、家の中に入れましょう。
「ま、まどか……とりあえず話は中で聞くから入ってくれないかしら……?」
「グスッ……分かったよ……」
☆
「ごめんね? いきなり泣き出したりして……」
「い、いいのよ……別に……」
さっきよりは大分落ち着いたようね……それにしてもこんな時間に一体どうしたのかしら?
「まどか、こんな夜遅くに私の家の前で何か用でもあったの?」
「どうしても今日の内にほむらちゃんと話したいことがあって……」
「それってさっきのこと?」
「うん……わたしの思い込みで、ほむらちゃんを傷つけて、怒らせちゃったから……」
まどかの申し訳なさそうな態度にまた胸がズキズキと痛む。
「いいのよ。あれば私が勝手に傷ついて、勝手に癇癪を起こしただけに過ぎないから。
それよりも肩の傷、大丈夫かしら? 血が出ていたし、跡が付いていないか心配だったのだけど……」
「跡はまだ残っているけど、そこまでのものじゃないよ。そんなことよりもほむらちゃんの方が__」
「そんなことなんて言わないで!! 私なんかのせいで大切なまどかを傷つけた方がよっぽど__」
「私なんか……って言わないでよ!! ほむらちゃんはわたしの大切な人なんだから!!」
「……ッ!! どうして貴女はいつもいつも!!」
「ほむらちゃんこそ!!」
じっと睨み合いながら、まどかと口論をする。まどかに対してこんなにも怒るなんて初めてね。
だけども言い合っている内に私のまどかへの怒りは段々と薄れていった。そしてお互いに口を閉じて何も口にしなくなる。そして__
「…………ぷっ」
「…………ふふっ」
「「あはははは!!」」
「お互いのことを想いながら喧嘩するなんて……こんなの絶対に可笑しいよ!!」
「そうね。何だか喧嘩するのがバカらしく思えてきたわ」
「そうだね! でもこれだけはハッキリと伝えておきたいなぁ」
「何かしら」
「ほむらちゃん、ごめん……こんなの謝って許されることじゃないけど本当にごめんなさい!!」
今度は泣かずにしっかり私と向き合って謝罪の言葉を言うまどか。でもその言葉を言うのはあなただけではないわ。
「私の方こそごめんなさい……私が意気地無いばかりにあなた達を疑わせるようなことをして」
「いいんだよ……誰にだって隠しておきたい秘密があるんだからわたしはもうこれ以上、しつこく問い詰めたりしないよ。だってほむらちゃんを傷つけたくないもん!!」
「まどか、今はまだ言えないけれど、必ずいつかあなたに話すわ。絶対に、誓ってもいい」
「分かったよ、わたし待つよ。ほむらちゃんが勇気を出してくれるその時まで」
天使のようなその笑みに思わず涙が溢れそうになる。でもそれをぐっと堪える。そうしているとまどかはゆっくりと近寄り、それからギュッと私のことを抱き締めた。
「ねぇ……もしほむらちゃんが良かったらお願いしたいことがあるんだけど……」
「わ、私に出来ることなら何だって構わないわ……」
腕の力が強くなる。ちょっぴりだけ苦しいけど、我慢しながら次の言葉を待った。
「わたしの本当のお友達になってくれませんか?」
そう尋ねるまどかの声は震えていた。もしかしたら否定されてしまうのが怖いのかもしれない。
でも、そんなこと無いわ。私の答えはとっくに決まっているもの。
「私でよかったらよろこんで」
まどかと同じように私も彼女の背に手をまわし、そっと抱き締める。
それからしばらくの間、私達はお互いに抱き締め合いながらじっとしていた。
「……………………」
「……………………」
「…………ねぇ、まどか」
「…………何、ほむらちゃん?」
「そろそろ離れてもいいかしら……///」
「うん……///」
名残惜しくはあるけども、いつまでもこうしていられない。手を腰から離して、まどかから離れる。
長時間抱き合っていたのが恥ずかしかったのか、私もまどかもお互いに顔が真っ赤だった。
「ねぇ、ほむらちゃん。もう一つ頼みたいことがあるけど……」
「何?」
少し言いづらそうな感じをしているけど、私は急かさずにゆっくりと彼女の次の言葉を待つ。
「今夜、ほむらちゃんのお家に泊まっていってもいいかな?」
☆ to be continued…… ★
1/31追記 まどかパートの部分を修正はしたけど、TMHS(知久)さんがやっぱり色々と凄い人に……
※詢子さんも頑張って活躍させなくちゃな……
☆ 次回予告 ★
第10話 Yの過ち ~ ふれた心は輝いた