月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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文化交流

 そう言われて名前を名乗るのを忘れると言う失態を犯したことに気付いて

 

 「申し訳有りません、日頃下の者には礼節を重んじる様と言っておきながらこの失態

 

 私の名はアーレスと言って侯爵様の側近く仕える者の一人ですが改めて観月様にお願いしたい事があるのですが宜しいでしょうか?」

 

 そう問われた観月が

 

 「何でしょうか?言ってみなさい」

 

 そう答えたので

 

 「僭越ながら今朝から巫女様達の勉強を見させていただきましたがあのテキストの完成度の高さに感服しました

 

 それに雪華ちゃん、なみちゃん、りんちゃん達のドレス選びとヘアメイクの技術とセンス

 

 感心すると共に改めて私達の持つ知識と技術の古臭さに気付いた私達は観月様から学びたい事が山の様に有ることに気付きました

 

 どうか私達も美月のご指導をいただくわけには参りませんでしょうか?」

 

 そうアーレスに言われ

 

 「あのテキストはとかく低くみられ勝ちな女性の学者の方達と共におばあさまが編纂に携わった物で…

 

 それが認められ評価を受ける事は先人の功績が認められたことに他ならず喜んで提供致しましょう

 

 それにリン達のドレス選びとヘアメイクに関しては私自身は学びの機会を与えただけで指導者の元で学んた事を身に付けたのはあの子達自身

 

 ですが貴方達の古式ゆかしい技術も又、今を生きる私達が受け継ぎ後世へと受け継がせてゆく事が先人の苦労や功績に報いることならば…

 

 わかりました…貴方達の持つ技術を王女宮の巫女達や見習いの侍女達に教えていただき…

 

 雪華、留美菜、なみ、りんは侯爵様の元に留まり貴女達が学んだことを皆さんに伝えミサは四人のサポートをしなさい

 

 侯爵様、四人の巫女達とミサの事を頼んで宜しいでしょうか?」

 

 そう言われて笑いながら

 

 「勿論、それは私も喜んでお引き受けします」

 

 そう言われて五人を見ると五人も頷き

 

 「他の子を派遣するとか寂しい事を言われ無くて良かったですけど何故美輝ちゃんは?」

 

 雪華にそう不思議そうに言うのを笑いながら

 

 「美輝は貴女達の中で一番経験が浅いのとミナが側に居らず留美菜と美輝の二人が一度に媛の側から離れる様な人事をせねばならない状況には有りませんよ?」

 

 そう言われてその事に気付いた留美菜が

 

 「媛歌様の事は美輝ちゃんにお任せしますね」

 

 そう言って手を取ると美輝も握り返して

 

 「はい、頑張ります」

 

 そう言って互いの手を握り合うのを見て

 

 「雪華、今暫くは美輝の指導よろしく頼みますよ」

 

 そう話がまとまった頃合いを見計らったように戻ってきた大樹

 

 「大樹、修行のその後の事を報告しなさい」

 

 そう言われた大樹は

 

 「侯爵様にヴェルとの結婚を許してほしいとお願いして婿養子を条件にと言って頂きましたが…」

 

 そう言って言葉を詰まらせる大樹に

 

 「貴方は今、いくつですか?」

 

 観月にそう聞かれた大樹は

 

 「15ですが?」

 

 そう答えると

 

 「未々お若い侯爵様は貴方が育つのを待てますからこれからは剣だけでなく色々な事を学びなさい、勿論」

 

 そう言ってアーレスを見るとアーレスも頷き

 

 「私達小姓一同も、大樹様に次の侯爵様として私達やいつか生まれるだろう私達息子達を率いて欲しいと願いますから今は私達の持つ知識を大樹様に役立てたいと思います」

 

 そう言われて

 

 「あの時ハーモニー様は雅様にこう仰られましたね?

 

 人は、自信があるから使命を果たすのではなく使命を果たす為努力するのだと…

 

 俺達だって自信があるから命様にお仕えできるって思ったんじゃなくお仕えできるようになりたくて命様の元に集まったんでしたね…

 

 侯爵様、アーレスさんにその他の皆さん…未々未熟者の俺ですが頑張って侯爵様の期待を裏切らない男を目指しますからどうか宜しくお願いします」

 

 そう言われて頷く侯爵家の一同に

 

 「解りました…大樹の件に関しては王女宮の責任者である私が大樹の退団手続きを取り伯父様の…国王陛下の承認を得ますが問題は…」

 

 ウルズに近寄ると

 

 「貴女が長女のウルズですね?貴女に取り十四夜とはどんな存在か教えてください」

 

 そう問い掛けられたウルズは

 

 「初恋の…幼い私がいつかあの方のお嫁さんになりたいと夢見た王子様

 

 ですが…私に弟が…当家に男の子が生まれない事実を知った時に封印した私の儚い思い出…」

 

 そう答えると

 

 「未だ諦めたままなのですか?確かに貴女に弟が生まれなかったのは事実ですけど間も無く弟が出来るのですよ?

 

 貴女が、お嫁に行けない理由は既になくなりましたし十四夜が今も見合いを断り続けている理由がわかりませんか?

 

 色々障害はあるでしょうがみこや、鬼百合は貴女を応援しているし貴女がその気なら私も貴女の初恋を応援しますがどうなのですか?」

 

 そう問い掛けられたウルズは項垂れて

 

 「私は…諦めたつもりでした…でも今、観月様に改めて問われて全然諦められてなかった事にやっと気付きました…

 

 今度は私の方が断られるかも知れません…だけど、このまま黙って諦めるよりはずっとまし…

 

 もしこの思いが叶わなかったその時は髪を下ろして修道尼となります…」

 

 「「ウルズっ!」」

 

 驚いたヴェルサンディとスクルドが声を上げたけど泣き出しそうな表情で首を降り

 

 「ヴェルと大樹様のお陰で意に沿わない結婚をしなくても良くなりました私は、幼い頃からの夢に…初恋に殉じたいだけです」

 

 そう答えるとウルズの手を取ると

 

 「解りました…貴女の初恋が叶うよう私も応援しますが…侯爵様、まずはお国の女王陛下と歌の国の王妃様の理解と協力を得ましょう」

 

 その観月の言葉に驚いた夫人が

 

 「何故貴女がそこまでウルズに肩入れを…」

 

 そう聞かれた観月が

 

 「 お忘れですか? 私の父が婿養子で有ることを…

 

 幸い、私達の両親は初恋同士の相思相愛の仲の二人にはなんの問題もありませんでしたからその意味からも大樹とヴェルサンディにはお幸せにとしか言えませんが…

 

 そんな訳ですから決して他人事と言ってしまえないと感じますし、その事を思い出していただければ伯父様の説得もより容易いはず

 

 それに何よりも私のサロンに集まる方達は事の他恋ばなが好きな方が多く貴方達の恋物語りも色々伺ってますよ? 」

 

 そう観月が告げると苦笑いの侯爵夫人はウルズに向かい

 

 「今度は私達も応援します…ですから、貴女の思いを今度こそ貫きなさい」

 

 そう言って抱き合う母娘を見て

 

 「侯爵様はまずこの度の経緯、ヴェルサンディと大樹の恋とスクルドが精霊の巫女になった事にウルズの恋の悩みを相談される事をお勧めします

 

 大樹、ヴェルサンディを連れて侯爵様の手紙を持って王妃様を訪ねなさい

 

 ヴェルサンディは王妃様と王女達の理解を得て味方に付けなさい

 

 それとは別に大樹は真琴に修行を着けてもらうと良いでしょう

 

 後は機会があればヴェルサンディを実家に案内する機会をもうけます」

 

 そう言われた侯爵は

 

 「解りました…助言に従い急いで手紙を書きましょう」

そう言って部屋に戻ると手紙を書き始め観月は

 

 「大樹は雪華を連れて王城に行き雪華は自分と留美菜、なみ、りんの荷物を持って来なさい

 

 そう言って雪華を伴い王城に向かう観月

 

 「女王陛下に雪華、留美菜、なみ、りん、ミサを侯爵様にお預けすると報告します」

 

 そう言って公邸を後にし王城を目指す事になった観月達

 

 久し振りに訪れた月影の国の王城ではあるが女王の秘書がすっかり板に着いた春蘭に王太子の恋人としての振る舞いも板に着いてきた瑞穂

 

 命の不在の穴を埋めてきた人魚媛の澪とユカの不在の穴を埋めるミナとスー

 

 「女王様…瑞穂、忍、媛華に続き春蘭、ミナ、スー、澪を引き続きこちらの仕事を任せていただいて宜しいでしょうか?」

 

 その喜ばしい提案を受け驚いていると更に驚いたのが四人の巫女と侍女一人が侯爵家との文化交流使節団として滞在することになったことだ

 


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