月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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実る恋と精霊の導き

 

 そしてその舞姫を見ながら

 

 (命様はああ言われたけど私達に何が出来ると言うのだろうか?)

 

 そう思い大樹を見て

 

 (出会ってから未だ二日にしかならないし未々互いに知り合えているとは言えないけど誰よりも大切な存在になりつつある…え、私達にある物ってまさか…)

 

 そう気付いてスクルドを見るとスクルドと目が合ったヴェルサンディはスクルドと頷きあい命を見ると笑顔で頷いてくれたので確信を持ち

 

 「一時休戦ね、今は大樹様が私達の元に無事帰っていただかなきゃ…」

 

 独り言でヴェルサンディがそう言うとスクルドも

 

 「大樹様が生きていてこその恋敵」

 

 そう呟きそれに合わせて

 

 「修行もいよいよ大詰めを迎えましたから貴女達の想いを大樹に届けなさい」

 

 そう言われて祈り始めた二人を見て大樹に

 

 「振りが鈍ってきてます、氣を更に高めなさいっ!」

 

 そう言われて氣を高め素振りを続ける大樹

 

 そしてその時は来た…黒炎竜が咆哮を上げ始めたからでそれを聞いた命が

 

 さ「大樹、大きく振りかぶり黒炎竜と叫び振り下ろしなさい」

 

 そう言われて

 

 「黒炎竜っ!」

 

 と、叫ぶと振り降ろした刀身から黒炎竜が放たれ方向を変えると大樹に襲い掛かってきた

 

 「さぁ、仕上げです…黒炎竜よ、我と戦えと叫びなさい」

 

 そう命に言われたけれどれ落ちる大樹の耳には届いておらずその大樹の姿を見たヴェルサンディが

 

 「大樹ーっ!」

 

 そう叫びながら駆け寄るとその声に反応した大樹が命に言われた通りに

 

 「黒炎竜よ、我と戦えっ!」

 

 裂帛の気合いと共に叫ぶと黒炎竜は刀身に還りその真の姿を表しそれを鞘に納めるとヴェルサンディが大樹に抱き付いて嗚咽を漏らすのを見て

 

 「ヴェル…生身で命様の結界から出るなんてなんて無茶をするんだ…」

 

 大樹の胸に顔埋めて泣くヴェルサンディの頭を撫でながら言うと

 

 「だ…だって大樹が…」

 

 それだけをやっと言葉に出来たヴェルサンディを見ながら滂沱の涙を流し

 

 「大樹、さ、ま…」

 

 と、呟いたスクルドは自分の初恋が今終わりを告げたことを理解した

 

 そのスクルドに近寄った命が指差す方を見ると

 

 ー私は出水の精、祈りを捧げる今の貴女の姿を見て貴女を導きたくなりました、私を受け入れてもらえますね?ー

 

 そう言って受け入れを求められたスクルドが命を見ると頷くの見て

 

 「受け入れはどうすれば良いのでしょうか?」

 

 そう訪ねるスクルドに

 

 ー私に向け左手を掲げればそれで良いのです…ー

 

 そう言われて手を掲げて

 

 「私をお導き下さい、出水の精様…」

 

 そう言って祈るスクルドの左手を受け取り契約を交わしたスクルドはヴェルサンディーとは異なる運命を受け入れた

 


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