月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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ヴェルサンディーの覚悟

 スクルドの哀しみに関わりなくその時は来た

 

 「大樹、黒炎竜に目覚めの時が来たよ…修行に行こ」

 

 そう声を掛けると

 

 「まさかみこが大樹に修行をつけるってゆーのか?」

 

 驚いた鬼百合にそう聞かれた命は笑いながら

 

 「鬼百合、それ変っ♪剣を扱えないみこが剣士の大樹に剣を教えるのは裁縫が得意な麦に鬼百合が裁縫を教えるみたいだよ?」

 

 そう言われてそのわかりやすい説明で納得はしたが面白くない鬼百合がムッとして

 

 「つまりどう言う事だ?」

 

 と、説明を求めると

 

 「魔剣黒炎竜に埋め込んだ黒い勾玉にはみこの呪文黒炎竜が込められてるのは知ってるよね?

 

 だからみこが出来るのは黒炎竜の制御の為の魔力の制御、なれれば黒炎竜を放つ事だって出来るようになるんだよ」

 

 そう説明された鬼百合

 

 (成る程な、やはり黒炎竜はアタイにゃ向かんらしいからアイツはアイツに相応しい奴に受け継がせアタイはアタイに向いた物を出して貰おう)

 

 そう考えていると

 

 「鬼百合や忍お姉さんは知ってるよね?黒炎竜がどん位物騒な呪文かは…」

 

 そう言われて

 

 「あぁ、間違ったって喰らいたかねぇ呪文だ」

 

 そう鬼百合が言えば

 

 「不死身の人狼逹に再生を許さず喰らい尽くしましたからね…」

 

 そう話すのを聞いた侯爵が

 

 「その様な危険な魔法の制御をする修行をせねばならんのですか…」

 

 そう驚く侯爵に

 

 「どんな力だって制御を誤れば危険だけどその分得られる力は大きいんだ

 

 それに勾玉の魔力と地の精霊の巫女の霊玉の祝福を受けた大樹に出来ないことじゃないんだよ?慎重さは必要だけどね」

 

 その話をじっと聞いていたヴェルサンディが不安を募らせ

 

 「命様にお願いします、私をその場に立ち会わせてください…お願い致します」

 

 そう言って頭を下げるとスクルドも

 

 「不安に押し潰されそうになりながら待つのはイヤで私も大樹様の修行を見守りたいです」

 

 そう言って頭を下げるけど

 

 「お前達がついて行った所で何が出来ると言うのだ?精々命様を非難して大樹殿の修行の足を引っ張るくらいが関の山だろう?」

 

 そう言われて返す言葉の見付からない二人に代わり

 

 「二人にとっても良い試練となりましょう闇の者との戦いはまだまだ始まったばかりで今回の試練が大したこと無いと思えるような試練がこの先にいくつも待ち受けてますから」

 

 その言葉にヴェルサンディが

 

 「あの少女の目には山賊達がさぞかし恐ろしい魔物の様に映っていたんでしょうね

 

 私達には侯爵家の者として領民を守らねばならない義務が有ります

 

 例え力なくとも闇の者の前に立ちはだかり守らねばならない義務が…」

 

 ヴェルサンディがそう毅然と言い放つ

 


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