月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

32 / 39
悲しい予感

 

 残念ながら部外者である鬼百合には意味のその意味のわからぬ事ではあるが…

 

 「大樹様、私はここで見てても良いですか?」

 

 そう問い掛けられた大樹は

 

 「上から降り下ろすだけの単調な稽古ですから見てもつまらないですよ?」

 

 そう言われても

「それでも良いの、見ていたいのっ!」

 

 そう言われてまぁ良いかと思い刀身を抜くと素振りを始める大樹は気をみなぎらせて一振り毎に氣を高めていった

 

 屋内に入った鬼百合が侯爵に

 

 「今の会話にどんな意味があるんだ?」

 

 そう真っ直ぐに疑問を問うと侯爵は

 

 「会話自体にはなんの意味も無く言葉通りですが問題は大樹殿がヴェル様と呼びヴェルがそれを許していると言う事実にあります」

 

 そう言われて益々訳がわからない鬼百合が

 

 「イヤ、さっぱり話が見えんのだが?」

 

 鬼百合がそう言うと

 

 「後は私からご説明致しましょう」

 

 小姓の一人にそう言われて頷くと

 

 「あれはヴェルサンディ様が13歳の誕生会の事…

 

 今日で13歳になり大人の仲間入りした私をヴェルと呼んで良いのは家族だけで特に男性は禁止します

 

 いつか私の前に現れるだろう恋するその方以外は…

 

 そう仰ったのでそれを聞いた私は

 

『それは私達もでしょうか?』

 

 と、お尋ねしたら…

 

 『当貴方達は男性なのだから当然の事ながら禁止します…』

 

 そう仰られました」

 

 そう聞いた鬼百合も納得し

 

 「成る程な、スクルドがあんな顔をする訳だ…」

 

 そう言うと

 

 「スクルド様の危機感は相当なものでしょうね…」

 

 そう呟くのを聞き

 

 「まさかこれ程二人の距離が縮まるとは思ってなかったが…」

 

 鬼百合も又そう呟いた

 

 

 

 「この子はアリス、今日から皆の仲間入りだから仲良くしたげてね」

 

 そう命自らの紹介に感激するアリスの余り仕事向きでない服装であるのを見たりんが自分のクローゼットから出してきた海兵隊風のワンピースを渡して

 

 「一応制服の予備はあるけど私達の判断では渡せないから取り敢えずこれを着ててね

 

 遠慮は要らないからね、お友達の証だし早く命様にお仕えできるように一緒に頑張りましょうね」

 

 そう言ってアリスの手を取る留美菜、なみ、りんに美輝と少し年上の雪華が五人を笑顔で見守っていた

 

 

 スクルドは悲しかった…

 

 隣に座る大樹は特別ヴェルサンディと見詰め合っていたり二人だけで話したりしてるわけでなくスクルドが話し掛ければ笑顔で応えてくれる

 

 父や母に長女のウルズとも笑顔で受け答えしているし小姓達とも明るく話しあって互いに尊敬しあっているのがわかるから彼等の男らしさも伝わってくる

 

 でも、ヴェルサンディに対しては特別な笑顔を見せていてそれは多分自分には向けてもらえそうに無い気が強く感じるからだ

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。