月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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意識し合う二人

 

 そしてその大樹の言葉を聞いたヴェルサンディーは

 

 「逆にですけど、私からしたら貴方の騎士号は様々な幸運が有ったにせよ自らの力で勝ち得た物

 

 だけど、私達の侯爵令嬢はたまたま侯爵家に生まれ落ちたからに過ぎません

 

 勿論その様に生まれたのだからそれに相応しく生きてきたつもりですしこの先もそうして生きていくのでしょう

 

 ですが、たまに思うんですよ…

 

 自分の周りでちやほやする殿方達にとり、肩書きの無い私を見てくれる人は果たして何人居るのだろか?と…」

 

 そのヴェルサンディの言葉に大樹は

 

 「俺達が命様の供を許されてすぐの事だけど、俺と海斗って言う幼馴染みの二人はユカ様に言われてその夜の宿を取りに町に先乗りして宿を探したんだ

 

 だけど…命様の事を伏せてと言う縛りがあった俺達はどこの宿屋からも断る以前に話すら聞いてもらえず

 

 最初は落ちぶれてるからと言って、最初は通りすぎた宿に行ったら話を聞いてくれ部屋も空いてるって言ってくれたんだけど

 

 更にその宿の女将さんが、ユカ様に何故命様の名前を出さなかったのですか?

 

 そうすれば断る宿等一軒もなかったのでしょうに?」

 

 そう言われてユカ様は

 

 「肩書きで客を選ぶ程度の宿に大切な命様をお泊めする気はありませんっ!って言ったんだ」

 

 きっと自分の求めていただろうその言葉に

 

 「その宿屋はどうなりましたか?」

 

 そう問い掛けると

 

 「女神の祭典後の今では中々予約の取れない人気の宿になってるそうです」

 

 そう告げられて

 

 「有り難う大樹…」

 

 「君で良いよ、年下の留美菜やりん達にまでそう呼ばれてるからね」

 

 そう苦笑いで言う大樹に

 

 「それなら私の事はヴェルって呼んで…少なくとも今のこの時だけは…

 

 私、この呼び方は家族以外…特に男の人には許してないのよ」

 

 はにかんで言うヴェルサンディに

 

 「わかったよ、ヴェル…でも…「でもなんか要らないっ!」」

 

 大樹の言葉を遮りしがみつくヴェルサンディに苦笑いしながら

 

 「俺が言いたいのはヴェルさえ良ければ皆の…特に侯爵様の前でお嬢様じゃなくヴェル様とお呼びしても良いですか?って事なんだよ」

 

 そう言って真剣に見詰めて聞いてくる大樹の胸に顔を埋め

 

 「えぇ、そう呼んでくれたら嬉しい…特別な大樹君にそう呼んでもらえたらとても…」

 

 そう言って暫くの間寄り添っていた二人けど

 

 「もう帰らなきゃ、間も無く日が沈む…」

 

 大樹にそう言われたヴェルサンディは

 

 「最後に今日の思い出が欲しいの…このネックレスを大樹君に着けてもらいたい…」

 

 そう言って差し出された化粧箱を受け取るとそっとヴェルサンディの首に掛ける大樹に

 

 「似合うかな?」

 

 恥ずかしそうにはにかみながら大樹に聞くヴェルサンディ

 


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