鬼百合のその言葉を聞いて
「それは頼もしい話ですね…大樹殿、期待してますよ」
そう話して居る所に翔に服を着せたヴェルサンディが戻ってきたのを見た鬼百合が
「そろそろ飯時だがお嬢様方をお連れしても恥ずかしくない店を紹介してもらいたいんだかな?」
鬼百合にそう言われた副座長が
「マークス、アリスを呼んで来なさい」
その言葉に思わず眉を潜める鬼百合だったが、強いて何も言わず成り行きを見守っていると現れたのはりんや留美菜と同じ位の年頃の少女で背丈もりんと然程変わらない位だろう
「副座長さん、私にご用でしょうか?」
そう言って頭を下げる少女に
「こちらのお客様を赤レンガの店に案内して貰いたい、頼めるね?」
そう言われて眉を潜めて
「あのお店は一見さんは入れてくれないはずですよ?」
そう答えると
「アリス、この方逹を良く見なさい」
そう言われて改めて四人?の男女を見ると
「え、あ…お嬢様方…わかりました、ご案内します」
そう言って立ち上がるアリスを見ながら副座長に
「本来女人禁制のこの劇団に居る少女…色々事情有っての事だろうがその事情話しちゃもらえんだろか?
場合によっちゃ力になれるかもしれん」
そう言われて副座長とマークスにアリスが顔を見合わせてアリスが頷くと副座長が
このマークスとアリスは歳の離れた兄妹で二年前の流行り病で相次ぎ二親を亡くしたアリスはマークス以外頼る者が無いので緊急の処置でうちで引き取ってますが…
やはり早急に身の振り方を考えてやらねばと思ってます」
そう言われてギュッと目を瞑るアリスの肩を抱くマークスに向かい
「その悩み、アタイが何とかしてやりたいが…アリスと言ったな?人魚姫に会いたいか?」
そう聞かれて
「歌の国の命王女様の事ですか?」
そう鬼百合に聞き返すと
「あぁ、歌う人魚姫と呼ばれる命王女だがアタイ等はその王女の供としてこの国に来ている…
が、現在命王女が侯爵殿の公邸に招かれているため侯爵殿の使いを頼まれ今ここに来た
もしお前が望むならアタイが推薦してやるから王女の側で仕えないか?」
その意外すぎる提案に
「その様なことを貴女の一存で?」
そう聞かれて笑いながら
「大樹よ、お前達が供として仕えたいって言った時に何か条件言われたか?」
そう聞かれて
「俺達は初めての騎士志望だったから阿様の闘気の洗礼を受けましたが同じ街の侍女志望の女の子達やその後から来た子逹は親の承諾位ですが…
そのこの子の場合保護者である兄の貴方が鬼百合様に妹を宜しくお願いしますと命様にお伝え下さいと言えば良いと思います
実際両親を亡くした子も居たけど引き取って親代わりをしている人がお願いしますと言った事も有りますからね」
そう大樹に言われても自信の無いアリスが
「で、でも私何も…」
そう戸惑うアリスに
「心配しなくても大丈夫、その為の見習い期間で勉強や礼儀作法を習うのが最初にする事だから」
そう大樹が言えば鬼百合も
「それにな、お前ならすぐに出来る手伝いもいくらでも有るから期待してるぜっ♪」
そう言って翔を見てニヤリと笑う鬼百合が面白く無い翔だけど言われてる事が間違いじゃ無いのが余計に面白く無い事でもある
「アリスがその気なら寂しいがいつまでも一緒に居られないのはわかるだろ?
なら、今この方にお願いして命王女様の元へ行けるなら私は喜んでお前を送り出そう」
そうマークスに言われて
「私…命王女様の元へ行きお仕えしたいです…宜しくお願いします」
やっとアリスがそう言ったので兄のマークスも
「鬼百合様、アリスの事を宜しくお願いしますと命王女様にお伝え下さい」
そう言って頭を下げると他の者も頭を下げるのを見て
「アリス、お前の為にこんだけの人間が頭を下げてくれることを忘れるな、お前は一人じゃないんだからな
確かにアリスはアタイが預かったから安心しな
アリス取り敢えず当面の肌着の着替えを用意してきな…
その後で今のお前がすぐに出来るお手伝いのひとつ、早速その赤レンガの店とやらに案内してくれ」
そう言われて肩掛けカバンに着替えを入れて戻ってきたアリス
そのアリスを肩に乗せると頬を膨らませ抗議する翔をを苦笑いして抱き上げるヴェルサンディの後に続いて出ていくのを見送るマークスとその他の劇団員逹
アリスの門出を祝う…そんな気持ちでアリスの旅逹を見送るのだった