月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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負けて得を取れ

 行きを妹に譲った褒美だ、スクルドの目はアタイと翔で誤魔化すからお前は大樹に適当な事を言って遠回りしな

 

 日が沈む迄に公邸に戻りゃ良いし侯爵にもそう伝えておく」

 

 そう言われてやっと気持ちを切り換える事にしたヴェルサンディだったがそんなヴェルサンディに

 

 「ヴェルサンディ、この先に何かあるのか?」

 

 鬼百合のその突然の問い掛けの意味はわからなかったけど

 

 「未だ月影の国が今の王家と侯爵家と伯爵家が三つ巴の覇権争いをしていた時代の国境の砦跡とその近くに村が在りますがそれがなにか?」

 

 そう聞き返すと近寄ってきた大樹も

 

 「鬼百合様、この先から不穏な気配を感じますが?」

 

 そう言ってきたのを聞いた翔が

 

 「ボクが様子見てくる…」

 

 そう告げるとヴェルサンディに抱かれていた翔の身体が光を放ちフッと消えると目の前に朱鷺色の小鳥が現れ村の方に向かって飛んでいった

 

 「鬼百合様、翔ちゃんが消えてしまったんですけどもしかしてさっき小鳥が?」

そう言われて

 

 「あれが翔の本性、火の精霊の巫女の霊玉で遊んでた小鳥の翔がうっかり呑み込んじまってあの少女の姿になった翔は言わば少女の姿をした霊獣

 

 済まんがこの事は未だ口外しないで欲しいのと出来たら翔の事を嫌わないで

やって欲しい」

 

 そう言われて

 

 「小鳥の翔ちゃんも可愛いから嫌うなんて事有りませんし人魚姫の命様達は良くて小鳥の翔ちゃんがダメなんておかしいって思うんですが…

 

 確かにそう思わない人が多いのでしょうね」

 

 そう言って考え込んでいると

 

 ー山賊崩れが女の子人質に取って金目のモンや食いモンを要求しとる

 

 人数は取り敢えず確認できたんは10人やけど他に隠れとるんが居らんとは言い切らんー

 

 そう鬼百合と大樹に報告すると

 

 「大樹よ、どう思うよ?」

 

 鬼百合にそう言われて

 

 「10人位なら少々増えても問題有りませんがやはり人質の身の安全確保が一番ですね」

 

 その大樹と鬼百合の会話を聞いたスクルドが驚いて

 

 「大樹様、人質とか一体何のお話なんでしょうか?」

 

 そう聞かれた大樹は

 

 「どうやら山賊崩れがこの先に在る村で女の子を人質に取るって事件を起こしてるらしいんだ…」

 

 そう答えると

 

 「何故その様な事を?」

 

 その妹の疑問にヴェルサンディは

 

 「翔ちゃん、来て」

 

 そう言って呼ばれた紅い小鳥がヴェルサンディの差し出した左手の人指し指に止まると

 

 その小鳥を愛しそうに撫でるヴェルサンディを見て

 

 「まさかあの小鳥が翔ちゃん?」

 

 そう言われて頷くと

 

 「き、綺麗な鳥…翔ちゃん、来てっ!」

 

 そう呼ばれてヴェルサンディを見たら頷くのを見た翔がスクルドの指先に止まる翔

 

 


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