月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

18 / 39
角豚か?

 その鬼百合の耳に

 

 「侯爵様、料理長が今夜は肉をどれ位用意しましょうかと聞いてますが?」

 

 そう叫ぶ留美菜の明るい声が聞こえたので

 

 「おいおい、まさかその肉たぁ侯爵領名物の角豚の事じゃねえだろうな?」

 

 そう鬼百合が言うと

 

 「勿論我が領内で肉と言って出てくるのは角豚の肉と相場が決まってますからな

 

 

 同じ豚でも角の無い物は角豚と区別する為に豚肉と呼ぶ習わしになってます故に」

 

 そう言われて

 

 「そう聞いちゃ是が非でも久し振りに角豚にかぶりつかにゃ気が済まなくなっちまったぜ

 

 みこっ、風呂に入るぞ…上がってこい」

 

 そう声を掛けると人魚姫の姿で鬼百合の胸に飛び込むと鬼百合に抱かれて風呂場に向かうのを見て

 

 「りんは命様の着替えの支度、なみは恐らく鬼百合の荷物に着替えが入ってるだろうから持っていって上げなさい」

 

 そう指示すると

 

 「はい、承知しましたっ!」

 

 その打てば響くようなやり取りに

 

 「賢くて素直な彼女達が側近く仕えてくれたら良いのに…」

 

 そう呟く夫人に小姓達は複雑な表情を浮かべていた

 

 大樹の気を引きたいヴェルサンディとスクルドの二人は手の空いてる雪華、なみ、りんにドレス選びとヘアメイクを頼むと

 

 「雪華ちゃん…今、歌の国ではどんな髪型が流行ってるのかしら?」

 

 ヴェルサンディがそう聞けばスクルドの方は

 

 「流行りより私が気になるのは、大樹様の好みの髪型でどんな風にしたら大樹様は喜んで頂けるのかしら?

 

 と言うその一言につきますけど実際のところはどうなんでしょうか?」

 

 そう言われた雪華となみは

 

 「流行りかどうかは知りませんけどヴェルサンディ様の長さでしたら観月様と同じ位ですから女神の祭典観覧仕様にしましょうか?」

 

 笑顔でそう答える雪華に驚いて

 

 「でしたらそれがこれからの流行りでしょう?公式の場で観月様が披露された髪型がよく流行ると聞きますからね、お願いできますか?」

 

 そう聞かれてやはり笑顔で

 

 「お任せください」

 

 そう答えるとりんに手伝ってもらい作業に掛かった

 

 その一方でなみは

 

 「スクルド様の長さでしたら真琴様とほとんど同じ長さですから真琴様の女神の祭典仕様にしましょうか?

 

 祭典当日の真琴様のヘアメイク班で鍛えられましたから」

 

 そう言われてスクルドも

 

 「ええ、なみちゃんにまかせます…当然美月のデザインですものねっ♪」

 

 と、こちらも嬉しそうに答えると変わっていく妹達を見て感嘆するウルズも

 

 (私もあの方の為に…そう言えたら…)

 

 そう思いながら変わって行く二人の妹の様子を眺めているウルズだった

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。