月の明かりに照らされて   作:春の雪舞い散る

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侯爵家の三姉妹

 「王女の忍様に呼ばれたと仰る騎士様がお見えですが…」

 

 その報告を受けた侯爵は

 

 「こちらに案内しなさい」

 

 そう簡潔に答えると余程大樹に対し好印象を持ったらしい門番の少年が顔を紅潮させて

 

 「承知しました、直ちにご案内いたします」

 

 そう言って頭を下げると大樹を迎えに走った

 

 部屋に案内された大樹が主人への挨拶をしようとするのを止め

 

 「今は時が惜しいので必要有りませんが貴方はこちらの侯爵様のご領地は存じてますか?」

 

 そう忍に聞かれた大樹は

 

 「いいえ、勉強不足で存じません…」

 

  そう答える大樹の姿は確かに姉に小言を言われる弟のようで

 

 「ならばシュー、座長はお前の家の所縁の者…お前が案内して事情を話すのが早かろう?」

 

 と、言われて難しい事情を理解しなくて済むらしいと大樹は喜んで

 

 「シューさんでしたね?何分生まれて初めて国を出ましたからわからない事だらけですから宜しくお願いします、では参りましょうか?」

 

 その大樹の態度は他国の騎士に対する物で十二分に敬意が払われており大樹が出ていった後

 

 「彼は私達小姓に理解が有る方なんですか?」

 

 そうリーダー格の男がユウに聞くと

 

 「いいえ、勉強不足でと言ったあの者は小姓制度知をらないはずですが皆さんの態度や物腰は騎士の物

 

 その程度の事を見抜けぬ者が命様を始め王女宮の…ましてや忍様の騎士等と名乗らせはしません」

 

 そう答えるとシューを乗せ飛んで行く大樹を見ながら自分の知らない所で評価が上がっていく大樹だった

 

 

 

 

 「後は帰りを待つだけですから中断した食事を再開しましょう」

 

 侯爵の言葉で食事は再開され最初は氷の浮いていた冷たい水も温くなり始めていたからユウを見ると頷いたのでウルズに向かい

 

 「あんな、お姉さん…あれ取って欲しいんやけど…」

 

 そう言って指差されたウォーターサーバーを翔の前に置くと目を閉じて左手をかざし暫くすると

 

 「よっしゃ…こんなもんでえーやろ…お姉さん飲んだってみてや、お兄さんたーもね」

 

 そう言われてグラスに水を注ぐと侯爵家の者達が驚いた

 

 サーバーから出てきたのが氷水だったからで

 

 「美味しい…この季節にこんな冷たいお水が飲めるなんて…お父様とお母様に妹達の後に貴方達も頂きなさい」

 

 そう言われて主人達に注いで回り自分達も遠慮しながら飲むと驚いて顔を見合わせる中

 

 「翔ちゃん、もっと冷やしてくれますね?」

 

 そう言って別のサーバーを持っていかせ翔の吸熱魔法で冷やされると

 

 「遠慮は要りません、暑い厨房で頑張る料理人の皆さんに飲んでいただいてください

 

 翔ちゃんもその方が嬉しいでしょ?」

そう言われて

 

 「う~ん…取り敢えず…みこおねえちゃん、完成したばっかの新しい術試してみてもえー?」

 

 そう聞かれた命が頷くと宙に浮き上がり左手を上げ目を閉じる室内の空気の熱を奪い始めた

 


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