『この世全ての悪』を背負いし少年も異世界から来るそうですよ? 作:クロック
言峰暗流は世界の果てにいた。
もう一度言おう。
世界の果てにいた!
何故こうなったか・・・話は数十分前まで戻る。
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「なぁ暗流、世界の果てまで行こうぜ」
箱庭の天幕の中へと歩いている途中に十六夜が暗流に投げかけた言葉。
それに暗流は
(この世界は聖杯の情報を辿っても一つも当てはまることがなかった世界だ。それは知識がないと同じこと。それに世界の果てならば修羅神仏の一体や二体入るはずだ。どれ位強いのか、十六夜と並行で試せるかもな)
「そうだな、俺も行こうか」
「そう来なくっちゃな!」
ヤハハと笑いながら暗流の方に歩き出す十六夜。
暗流は、どうやっていくのか聞こうとすると突然首根っこを掴まれた。
「なぁ、十六夜まさか・・・」
「勿論、俺がお前を連れてくんだよ!」
ドオオンという音とともに暗流と十六夜の姿が消え、代わりに小振りなクレーターが生まれた。
黒ウサギは鼻歌を楽しそうに歌っているので気付いてないが、春日部とか他で息をしながら久遠は哀れみの視線を向けて合掌している。
それから世界の果てまで着くのはすぐだった。
十六夜の身体能力は英霊の中でもトップクラス。
それもランサーか高速移動の宝具を持つライダーの中でも上位に位置するくらいはあった。
こいつ現代の人間だよな?って本気で考えてしまう暗流だった。
「しかし、世界の果てっていうのは随分といい光景じゃねえか!」
「まさかここまで美しいとはな」
ギルがいたらここは我のものだ!っていいそうだなと口ずさみながら十六夜の方を見ると十六夜は反対を向いて笑っていた。
暗流もつられて後ろを見るとそこには白い鱗のとても長い蛇がいた。
『小僧共、試練を選べ!試してやる!』
「なんか偉そうなのが出てきたな」
「ヤハハ!俺を試す?逆だよ、俺を試せるかテストしてやるよ!」
「小僧おおおぉぉぉ!」
十六夜がふっかけると蛇?は怒り水の竜巻の様なものを出して襲いかかってきたが・・・遅い。
十六夜は既に持ち前の脚力で飛び上がり胴体に蹴りを加える。
あまりの威力に蛇?は一撃で湖に倒れた。
「そういえばこの蛇妙に神性が高いな。いわゆる蛇神か?」
暗流は蛇神に触れて神性の高さを確かめると、後ろから十六夜にも劣らな速さで黒ウサギが来た。
「十六夜さん!暗流さん!」
「ヤハハ、遅かったな黒ウサギ」
「ようやく来たのか」
「お二人共、何をしているんですか!?」
「見てわかんねえか?世界の果てを見に来てるんだよ」
「思った以上に絶景でな、見蕩れてしまった」
「そんなことはいいですから早く戻りましょう!ここら辺を縄張りとしている神仏にゲームを申し込まれたら——」
「売ったぞ、ゲーム」
「既に終わらせたがな、十六夜が」
「えっ?それって」
「まだ勝負は決まってないぞ!小僧共おおおぉぉぉ!」
黒ウサギが暗流や十六夜の言葉に戸惑っていると倒れた蛇神が起き上がってきた。
「水神!?ていうか何であんなに起こっているのですか!?」
「十六夜が殴り飛ばした」
「おいおい言峰。俺はただ売られた喧嘩を買っただけだぜ」
「なら最後まで買った喧嘩にシメをつけろ」
「ヘイヘイ」
そう言って一同が水神の方に振り向くと叫びながら竜巻を4本作って襲いかかってきた。
「はっ!しゃらくせえ!」
その竜巻は十六夜の拳一振りでいともたやすく消えた。
「なかなかだったぜ、お前」
十六夜は回し蹴りをして今度こそ水神をダウンさせた。
「人間が・・・水神に勝った?」
黒ウサギは十六夜の勝利に驚いているが暗流は
「あれは打ち消す・・・いや、砕いているのか。能力を砕くのなら俺とは相性最悪だな。ならば俺は・・・」
十六夜と敵対した時のことを考えて冷静に分析していた。
それからは十六夜と黒ウサギのコミュニティ〝ノーネーム〟についてのことを話していたが、暗流は未だに何かを考えていた。
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「なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟に接触して喧嘩を売る状況になったんですかー!」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」
「黙らっしゃい!」
反省の顔が見えない飛鳥、耀、そしてコミュニティのリーダーのジン・ラッセル。
「まぁいいじゃねえか。見境なく喧嘩売ったわけじゃねえんだからさ」
「ならこの〝契約書類〟を見てください!」
〝契約書類〟にはお互いの勝利報酬が書かれていた。
こちらが勝利した時はガルドにしっかりと罰を与える。
こちらが敗北した時はガルドの罪を黙認する、というものだった。
それから話を聞いていればリーダーのジンは何度も〝正義〟という言葉を使っていたのでとても気分が悪かった。
暗流は生まれながらの悪だ。十年前のあの日から■■■■は死に、新たに生まれたのがアンリ=マユの生まれ変わりのようなもの、言峰暗流。
第五次聖杯戦争中にセイバーのマスター、自分と同じ生き残りの少年は『正義』を求めていたが、監視中はとても不快だった。
その事を思い出して暗流が顔を顰めていると耀が見ていたのに気付いて無表情にした。
それからジンを抜いたメンバーで〝サウザンドアイズ〟というコミュニティが経営している店に行くことになった。
黒ウサギの話曰く、暗流達はそれぞれ別の世界の別の時間、『立体交差並行世界論』という理論を元に箱庭に来たらしい。
暗流はそれをマスターが英霊を呼び出すようなもの、と認識した。
「まっ」「待ったナシですお客様」
サウザンドアイズの店の前に黒ウサギが飛び入りで入ろうとすると定員に呼び止められた。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「全くです!閉店五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるなら他所へ。あなたがたは今後一切の出入り禁じます」
「出禁!?これだけで出禁ですか!?」
暗流以外が騒いでいるのを他所に暗流はずっとその奥を見ていた。
恐ろしく神性が高い、それも神造兵器よりも神性が高い人物がいる。
だが飛び出しながら出てきたのは幼女だった。
それも黒ウサギ目掛けて飛び出した。
それを黒ウサギはかわして蹴りで止めた。
それからは警戒しながら幼女、『白夜叉』の私室まで案内された。
それからの話はあまり覚えていない。
白夜叉の部屋に入った時から嫌な予感がするのだ。
暗流は前にも感じたことがある。
聖杯戦争中、自分の中にあった聖杯と他所にあった大聖杯。敗退した英霊は大聖杯の方へと導かれるが、少なからず暗流が持つ聖杯の中にも流れ込んでくる。
そして聖杯に収められた英霊達の余分な記憶等を消去するために英霊のカスは聖杯の外に捨てられる。
それが英霊の残滓、『シャドウサーヴァント』。第五次聖杯戦争中にも現れた『シャドウサーヴァント』は英霊には届かなくても十分に強いと言える。
普通は『シャドウサーヴァント』の気配なんてわからないが、暗流は体の中に壊れていながらも聖杯があるので『シャドウサーヴァント』の気配には敏感だ。
『シャドウサーヴァント』に知能はないが集団で来られると厄介極まりない敵となる。
それは第五次聖杯戦争中に分かっていることだ。
話はいつの間にか進んでいて決闘やら挑戦だとか言っている。
「おんしらが望むのは〝挑戦〟か————それとも〝決闘〟か?」
その瞬間、世界が変わった。
驚いている問題児達。状況が良くわからない暗流。
問題児達の反応を見る白夜叉。
そしてこの世界に連れてこられた、暗流達を見つめる黒い影。
交わる時は近い。
なんか勢いで飛ばしまくっちゃった。
次からはシャドウサーヴァントが出るっぽくしたが、実際ちゃんと出すよ。
ボクウソツカナイモン