『この世全ての悪』を背負いし少年も異世界から来るそうですよ?   作:クロック

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虚偽説明

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

まず口を開いたのはプライドが高そうな女の子。

そして学ランにヘッドホンで金髪という派手な格好の男の子。

 

「石の中に呼び出されたら動けないでしょ?」

 

「俺は問題ない」

 

二人は早速口喧嘩をしてる。

 

「ここ、どこだろう?」

 

ネコを抱えた女の子が口にする。

 

「どっからどう見ても異世界だろ。・・・英霊だってもっとまともに呼び出すぞ・・・」

 

最後に愚痴を言ったのは愉悦の養子、言峰暗流。

 

「まず間違いないだろうけど確認しとくぞ。お前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずはそのお前って呼び方を訂正して。

久遠飛鳥よ。そこの猫を抱えてるあなたと、黒髪のあなたは?」

 

「春日部耀。以下同文」

 

「いや、みんな呼び方にこだわりすぎだろ。言峰暗流だ」

 

「そう。女の子みたいな名前ね。よろしく春日部さん、暗流くん」

 

(早速名前呼びですか・・・)

 

「それで、野蛮で凶暴そうなあなたは?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴そうな逆廻十六夜です。粗野で凶暴で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれ、お嬢様」

 

(なんだコイツ、異常なほど霊格が高い・・・英霊候補か?)

 

暗流は壊れていながらも体の中に聖杯を宿しているので相手の霊格や真名は見ればたいていは分かる。

だからこそ十六夜を一目見て異常だと思ったのだろう。

 

「そう、取扱説明書をくれたら考えてあげるわ十六夜君」

 

「マジかよ、今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」

 

心からケラケラと笑う逆廻十六夜。

傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。

無関心を装う春日部耀。

そんな三人を値踏みするように見つめる言峰暗流。

 

彼等は人類最高位のギフト保有者達。

 

——————————————————————————

 

「で、呼び出されたはいいけど、なんで誰もいないんだ?案内人とかいるんじゃねえの?」

 

不満そうな声を漏らす十六夜。

 

「そうね、何の説明もないままだと動き用はないもの」

 

「この状況に対して落ち着きすぎてるのもどうかと思うけど」

 

「いたとしたら切り刻んでやるか」

 

「「「お願いそれはやめて」」」

 

手に黒鍵を数本持つ暗流にやめるように全速力で指示する三人。

暗流は冗談だ、と言いながら黒鍵をしまった。

 

「仕方がねえな。そこにいるやつにでも聞くか」

 

十六夜の視線が茂みの方を見る。

 

「なんだ、あなたも気づいてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そこの2人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「あれに気づけなかったら俺は既に死んでいる」

 

暗流はギルガメッシュとの特訓を思い出していた。

 

「へぇ、面白いなお前ら」

 

「や、やだなぁ御四人様。ここは黒ウサギの話を聞いてくれたら嬉しいのでございますよ?」

 

「断る」

「却下」

「お断りします」

「火葬式典で燃やしてやろうか?」

 

「あっは、取り尽くしまもないですね。それで最後の方はその手に持っているのをお収めください」

 

バンザーイしながら涙を流して謝る黒ウサギ。

 

「えい」

 

と、突然春日部が黒ウサギの耳を掴んだ。

 

「な、何をするんですか!?突然黒ウサギの素敵耳を引っ張るとは!」

 

「好奇心のなせる技」

 

「自由にも程があります!」

 

「へぇ、その耳本物なのか。えい!」

 

「なら私も」

 

三人は黒ウサギの耳を引っ張り出した。

暗流は長くなりそうなので地面に寝転がって寝ている。

 

ちなみに黒ウサギの悲鳴は一時間ほど続いてた。

 

——————————————————————————

 

「あ、ありえないのですよ!まさか話を聞いてもらうのに一時間もかかるとは。学級崩壊とはまさにこのことを言うのですよ」

 

 

ぜェぜェ、とか他で息をしながら服装を正す黒ウサギ。

 

「いいからさっさと進めろ」

 

黒ウサギは涙目で今にも倒れそうだが十六夜が話を聞くと言ったら元気を取り戻した。

 

「それでは始めますよ?ようこそ〝箱庭の世界〟へ!我々は御四人様に、ギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」

 

後半の方の言葉に暗流の眉がピクリと動く。

これは暗流が直感的に相手の嘘を見つけた時の癖だ。

 

暗流は体内に壊れていながらも聖杯を保有しており、黄金律や直感等のスキルが高かったり低かったりと差異はあるが、全て保有している。

 

ちなみに今使ったのは直感スキルBだ。

 

そこからは嘘があまり混じっておらず、説明はスムーズに進んでいった。※原作と同じ。

 

「なぁ、質問してもいいか?」

 

「どのような質問でしょうか?ルールですか?」

 

十六夜の質問を先回りして当てようとする黒ウサギ。

だが十六夜は首を横に振り、

 

「そんなのはどうでもいい。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。俺が聞きたいのはたった一つ」

 

十六夜は視線を外し春日部、久遠、暗流を見る。

 

「この世界は・・・面白いか?」

 

春日部と久遠、暗流は無言で返事を待つ。

 

家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて異世界に来た者達。

それに見合うだけのものがあれば彼らは自由に動く。

 

「Yes。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は下界より断然面白いと、黒ウサギは保証いたします」

 

黒ウサギの言葉は彼等に期待を抱かせた。


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