思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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キャラ崩壊第二弾
どうあってもおかしな内容なので、ご注意ください。


白獅子

柔らかい何かを突き刺す感覚、硬い何かを砕く感覚、

熱い何か、液れる何か、そして鼓動する何か。

その全ての感覚が、私の右手に集まっている。

 

「ガフ・・・」

 

目の前の存在が何かを吐き出し、それが私の顔に掛かる。

私は無意識にそれを拭った。

赤い。それは赤い色をしていた。

そして粘つく様なぬるぬるとし液体だった。

 

「あれ・・・?」

 

私は目の前に視線を移す。それは人の形をしていた。

普段は結っているはずの黒髪はほどけ、長い髪が垂れている。

その顔は苦痛にゆがんでおり、口元からは赤い液体が垂れていた。

どうしてだろうと疑問に思うも、直ぐに答えを見つけた。

私の手が、その人の胸を突き破っていたのだ。

どうやら心の臓を外れていたらしい。

 

駄目ですね、私はこの人を殺さないといけないというのに。

私は右手を抜こうと引っ張るが、抜けない。

まるで固まったセメントに手を突っ込んでしまったかのように、抜けないのだ。

どれだけ押しても引っ張っても、うんともすんとも動かない。

 

「かか・・・ったわ・・・ね」

 

目の前の人の口元が歪む。どうやら私は罠にはまったらしい。

拙いですね、これでは逃げられません。

私はどうにかしようとしてもがくも、やはり動かない。

 

「ならこうしましょう」

 

私は空いている左手を振り挙げ、一気に振り下ろす。

 

「ぐぅぅぅぁぁ・・・」

 

肉を、骨を切り裂く感覚が手に伝わる。

突いて駄目なら斬るまでです。ですが、私の左手も途中で止まってしまいました。

なんと言うことでしょう、私の両手が動かなくなりました。

目の前のそれは、左胸を貫かれ、右胸を裂かれているというのに、まだ息があります。

なんという失態。

今から起こるのは、彼女による私への一方的な攻撃。

両手を封じられた私は、逃げることも攻撃を防ぐことも出来ません。

 

ヅブリと音を立て、彼女は貫かれたまま私の方へと歩いてきます。

なんというタフさですか。私もタフさには自信がありましたが、ここまでの差があったとは。

ああ、私の人生は今、この瞬間に終わるのでしょう。

 

「あっけない物ですね」

 

私は動けない身体が、一方的に滅茶苦茶にされるのを思いながら、溜息を吐いた。

ふと、私の頭の中に何かが過る。ああ、これが走馬灯というものでしょうか。

家族一緒にいた記憶、私を守ってくれていた家族の背中。

もはや叶わない記憶。私を捨てた、家族の思い出。あの人のせいで、私は心が壊れそうになった。

あの人が悪いと周りは責めた。あの人の家族ということで、私は殺されそうになった。

あの人を恨んだ。何もかもがあの人のせいだと、あの人が原因だと。

でも、それでも、あの人を恨めない私がいる、あの人を憎めない私がいる。

ああそうか、私はやっぱり、あの人のことが好きなのかもしれない。

でもそれも叶わない。今ここで、私は死ぬのだから。

それでも願わずにはいられない。せめて、せめて・・・

 

「最後に一目、姉様に会いたかったなぁ・・・」

 

そう呟き、ゆっくりと止めを閉じる。

すると、私は背中に手を感じた。

 

「え?」

 

目を開くと、私は目の前のはぐれ悪魔に抱きしめられていた。

何故でしょう?私とこの人は敵同士、私はこのはぐれ悪魔を殺しにきたと言うのに。

どうして私は抱きしめられているのでしょう?

 

「久しぶり・・・ね」

 

その声に、私はその存在をようやく認識した。

 

「ねえ・・・さま・・・?」

 

そのはぐれ悪魔は、私の家族だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、あの夢ですか」

 

私はゆっくりと目を覚ます。

小鳥の囀る音が聞こえ、暖かい、不快な陽の光が窓から注ぐ、なんとも爽やかな朝だ。

私の気分は最悪の不機嫌さに至っているが、だからと言って何かに当たる気も起きない。

私は痛む頭を押さえながら、ゆっくりと身体を起こす。

ああ、気分が悪い。私は無意識に手を拭う。

乾いたタオルのざらざらした感触が、私の手を刺激する。

 

「それにしても、お腹が空いたなぁ」

 

この前食べたのはいつだったでしょうか?

うんうんと頭を捻っていても思い出せません。

ということは、ずいぶん前ということになりますね。なんということでしょう!

それでは私が空腹なのも頷けます。さっそく食事にしないといけませんね。

しかし、困ったことがあります。

 

 

「お金がありません」

 

お金が無い、これだけで生活することが厳しくなります。

かといって、流石に盗みも強盗も駄目ですし、人を傷つけて金品強奪も気が進みません。

しかし、お金が無いと物が買えない、食べれない。困りましたね。

それか・・・

 

その時、私の耳がピクリとした。

 

「ん」

 

噂をすれば陰、というものでしょうか、何とかなるかもしれません。

私はその音の正体を推察する。なんという、私にとってのグッドタイミングでしょうか。

鴨が葱を背負ってくるどころか、鍋も具材も持って来てくれました。

あまり変わらないと言われていた私の口元は、すこし上がった気がします。

ではさっそく、お迎えしなければ。私は準備をするのであった。

 

 

 

 

地面を叩く音が聞こえる。それも一つばかりではなく、複数の音だ。

しばらくすると、幾人かが部屋に入ってきた。

不思議なことに、その侵入者たちの背中には、黒いコウモリの羽が生えていた。

 

「目撃証言は確かなのか?」

 

「ああ、間違いない。逃走中のはぐれ悪魔を見たと連絡があった。

 気をつけろ、必ずどこかに潜んでいるぞ」

 

「援軍もじきに来るんだろ?だったらなんで先に来ているんだ?

 援軍と共にたたんじまったほうがいいだろ。

 

「ばーか、こういうのは早いもん勝ちなんだよ。

 指名手配のはぐれ悪魔を殺せば、何かしら拍がつくってもんだ」

 

「しっかし、こんな廃墟まがいのビルに逃げ込むとは、貴族の眷属さまが落ちぶれたもんだ。 

 待てよ・・・そういや、このはぐれ悪魔の家族もはぐれ悪魔になったんだっけか?

 おいおい、姉妹揃ってはぐれ悪魔になるなんて、どんだけ馬鹿な姉妹なんだろうな」

 

「まったくだ、悪魔を敵に回して生きられるわけがないのにさ。

 ああそうか、バカだからはぐれ悪魔になったんだろ」

 

「ちげぇねえや!」

 

下卑た声が部屋に響く。突然、カランとした音が響く。

侵入者たちが振り向くと、コロコロと空き缶が転がってきた。

 

「なんだよ驚かせやがって・・・!」

 

そう言った男が、腹いせに缶を蹴飛ばそうとして、転がる空き缶に近づく。

 

「おい、勝手に離れるな!」

 

仲間の一人が声をかけるが、無視をして近づく。

 

「このクソ缶がぁ!」

 

蹴り飛ばされた缶は、鉄筋がむき出しのコンクリートの壁に跳ねた。

 

「わりぃな、ちと苛々してたわ。さて、はぐれ悪魔をぶ・・・こ・・・」

 

男はその光景に目を疑った。

なにせ、コンクリートで真っ白だった部屋が、真っ赤に染まっていたのだから。

そして、ほんの数秒前に話をしていた仲間たちが、

身体から赤い液体を流していたのだ、噴水のように。

 

そしてその中心にいたのは、両手を真っ赤に染めた白い髪の少女。

よく見ると、口元が動いている。もぐもぐと何かを咀嚼している。

そして少女の足元には、ビクンビクンと痙攣している同僚。

まるで噛み千切られたような傷から、赤い液体を放出している。

そして少女が、赤く染まった口元を歪め、煙のようにふわっと消える。

 

「このクソはぐれがぁぁぁぁ!!」

 

目の前の光景に、恐怖し、仲間の姿に怒りが湧きあがり、

男は手に持っていた槍をブンブンと振り回しだす。

しかし、男の槍は空を切るだけで、何も当たらない。

 

「くそ、くそが!よくも俺の仲間を!絶対にゆるさねぇぞ!絶対に殺してやる!」

 

喚きながらも槍を振り回すが、何も手ごたえが無く、気が付けば男は息をきらしていた。

疲れか、それとも叫んだからか、男のゆで上がった頭は冷えた。

そうだ、自分がしなければならないのは、ここで奴を殺すことじゃない!

もうすぐ援軍がやってくる。だったら、自分がしなければならないのは、生き延びることだ。

仲間の為にも、俺は生き延びなければならない。

そして援軍と共に、自分は仲間の仇を討つんだ!

 

すると、まるで運命の女神が男に微笑んだのか、何かが走ってくる音が聞こえる。

どうやら援軍が到着したようだ。

男は自分の居場所を教えるために、力いっぱい叫ぶ。

 

しばらくすると、こちらに向かって走る人影が見えた。

先頭に見えるのは赤い髪の少女だ。その隣には茶色の髪をした少年、

その後ろには青髪の少女や金髪の少年少女と、ぞろぞろとやってくる。

 

ああ、助かった!

男は走ってくる援軍に向けて、力を振り絞るよう走る

 

 

 

 

 

 

前に、何かが男の胸を貫いた。

 

「は?」「え・・・?」

 

あっけにとられたのは男だけではない。

目の前の援軍たちも、何が起ったのか理解できない表情をしている。

男が自分の胸を見ると、赤く染まった手が突き抜けていた。

 

「駄目ですよ、ちゃんと狩られてくださいよ」

 

声の主は、ズプリと空いていたもう一方の手を、男の胸に突き刺し、

そしてゆっくりと開いていく。

メキメキとミチメチャと粘着質な音と、肉を引き裂く音が響く。

 

「くそ、くそ、くそがぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「えい」

 

男は力いっぱいに引き裂かれた。

 

 

 

 

「え・・・?」

 

赤い髪の少女は、目の前の光景に唖然とした。

指名手配のはぐれ悪魔の連絡を受け、自身の眷属と共に駆けつけてきた。

だが到着した際には、既に悪魔たちが中に入っていたという。

 

まずい、赤い髪の少女は思った。

もしも、はぐれ悪魔が彼女ならば、到底勝てる存在ではない。

それこそ数が増えるほど、彼女にとっては好都合になる。

彼女の眷属たちも理解しているので、すぐに彼女たちは中に突入した。

 

そしてこちらに助けを求める彼を保護しようとしたが、その彼が真っ二つに引き裂かれたのだ。

赤い液体と、いくつかの臓物と、恐怖に歪みきった男の顔が、少女たちの目に飛び込む。

白い修道服を着た少女が、口元を押さえてうずくまる。

周りの少年少女たちも、その光景に吐き気を覚える。

見れば、後ろにも倒れている人影が見える。

そして、真っ赤から赤黒く変色した部屋も目に入る。

 

「あれ、こんなところで出会うなんて珍しいですね」

 

その声に、赤い髪の少女は声の方へと振り向く。彼女たちの眷属もそれに追随する。

そしてそこにいたのは、白い髪の少女だった。

かつて短かった髪は、腰に掛かるまでに長くなっている。

そしてその長い髪は、まるで風に靡くたてがみのように、揺らめいている。

小柄だった彼女の姿は、彼女の姉とうり二つのように大きい。

だがある一部だけは、あまり変わり映えがしていない。

 

だが彼女たちは知ってる。もはや別人のような姿なのに、目の前のはぐれ悪魔を知っている。

なぜなら自分の目の前にいるのは、この凄惨な状況を作り出した犯人であり、

指名手配中のはぐれ悪魔であり、そして少女の大切な眷属の一人であった存在、

 

「白音・・・」

 

「その名を呼んでいいのは、黒歌姉様だけですよ、部長」

 

両手を真っ赤に染めた獅子が、部長と呼んだ少女に笑った。

 

 

 

「どうして・・・どうしてなの、白音」

 

その名で私を呼ぶな。

 

「どうして・・・私たちの下から去ったの?」

 

部長が私に尋ねる。その表情は、哀しくて、でも信じられないという顔だ。

そして今の質問は、部長の本心なのでしょう。

 

ああ、どうやら解ってくれなかったみたいです。

 

「小猫ちゃん、一体どうしちゃったんだよ?

 どうして小猫ちゃんがはぐれ悪魔になっちまったんだ!

 あんなに部長を慕っていたってのに!」

 

変態が私に声をかけてくる。ああ、どうやらこの人も理解していないらしい。

見れば、他の方々も同じみたいです。誰も理解してくれなかった。

 

本当に反吐が出ます。

 

「それを私に問いますか、部長」

 

「え・・・?」

 

私の言葉に、部長は呆けた顔をする。

 

「知っていたんですよね、姉様は悪くないって」

 

「「「「!?」」」」

 

ああ、やっぱり。

私は真っ赤な手をぺろりと舐める。鉄の味がして、酷く生臭い。

 

「姉様がはぐれになったのは、姉様の主が契約を破ったこと。

 私を守る為に仕方なく殺したこと。私に黙ってましたよね」

 

「それは違うわ!あなたのお姉さんに黙っていてほしいって頼まれたのよ。

 それを知った貴女は、酷く自分を責めてしまうからって」

 

「そうだぜ小猫ちゃん!リアス部長は悪くない!

 こんなことになるなんて誰も思ってなかったんだよ!」

 

「その結果が、今の私ですよ?」

 

私はバラバラになった肉の塊を掴み、咀嚼する。うん、不味いです。

 

「私の気持ち、解りますか?

 姉様を憎んでいたのに、実はその姉様に守られていたということ。

 実は私のせいで、姉様がはぐれ悪魔になってしまったこと。

 そもそもの原因が、姉様の主が約束を破ったこと。

 それを知らず、ずっと姉様を恨んで、全てを知ったのが・・・」

 

私は真っ赤な手を、部長たちに見せつける。

 

「私が姉様をこの手で殺した後だったということ」

 

「・・・・・・」

 

悲痛な顔になる部長さんたち。

でももう遅い、私は全てを知ってしまった。そして大切な家族を手に掛けた。

 

「どうして、どうして言ってくれなかったんですか!

 どうして、ちゃんと調べてくれなかったんですか!

 もしかしたら、もしかしたら!どこかで違っていたら!こうならなかったのに!」

 

「白音・・・」

 

「私をその名で呼ぶなぁ!呼んでいいのは黒歌姉様だけ!でもその姉様はもういない!

 私が殺したんだから!この手で、この手で殺した!」

 

私は部長さんたちを睨みつける。

憎い!何もかもが憎い!姉様が憎い!部長たちも憎い!姉様をはぐれにした悪魔たちが憎い!

そしてなによりも自分が憎い!姉様を知ろうともしなかった自分が、一番許せない!

 

「だから私、もう何もかもが信用できません。

 姉様も、部長たちも、悪魔も、そして私自身さえも」

 

「待って白音!もう止めて!こんなことをしても、貴女のお姉さんはきっと」

 

「知った風な口を利かないでください」

 

私の心が冷える。

 

「黒歌姉様を知らないのに、姉様のことを語らないでください。

 何より、姉様を知ったように語らないでください、反吐が出ます」

 

「小猫ちゃん!部長になんてことを言うんだよ!いくら小猫ちゃんだからって」

 

「許せませんか?」

 

「!?」

 

私は変態の横に立ち、耳元に囁く。驚いた変態が、距離を取ろうと後ろに跳ぶ。

 

「許せませんか?」

 

次に驚いていた部長の前にたち、私は尋ねる。

 

「どうして・・・」

 

「仙術の応用です。気を纏うことで、私は世界と同調が出来るようになりました

 ですから、私を探すのは不可能に近いですよ?それこそ、目で見えても捉えられません

 まあ、寝ている時は流石に無理ですけど」

 

あはっ♪みなさん、驚いていますね。私は自分の立ち位置に戻った。

 

「話を戻しますけど、私は許せません。

 姉様を殺した自分を、姉様をはぐれ悪魔にした悪魔たちも、色んな物、全てが」

 

だから私は全て壊す。私たちを不幸にした存在全てを。

 

そう言って私は、もう一度気を纏う。

部長たちから見れば、私の身体が透けていくように見えるでしょうか。

 

「待って白音!お願いだから!」

 

「今回は、見逃してあげます。もし次に会ったら、覚悟してください」

 

 

そうして私は、その場を離れた。

あーあ、部長たちが来てしまったせいで、お肉が食べれませんでした。

そのせいでお腹が減ってます。しかし、隠れるというのも大変ですね。

さて、次はどこに行きましょうか。

私は何を食べるかを考えながら、街中に溶け込んでいった。




狩りごっこ開始

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