思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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放置気味だった短編を一から再編集しました。


TRPG参考
アンシンできない町


私、調和花(シラベ・ノドカ)にとって、この世界は玩具箱のような世界だ。

 

特殊な生まれの私にとっては、普通の学園生活は憧れであり、生徒との交流も大きな発見だった。

私の家庭は少し分け有りで、お父さんが家にいることは少なく、

多くの時間をお母さんの2人で過ごしてきた。

もっとも、私はお父さんといつでも会えるので、別に寂しい思いをすることなかったけど。

というか、心配症のお父さんから四六時中監視されているような感じがする。

そのせいで、お父さんに対しては若干鬱陶しいという気持ちの方が強い。

でも、私はお父さんもお母さんも大好き。

 

駒王町にある駒王学園。それが私の通っている高校だ。

元は女子高だったけど、近年になり入学生の数が減っているせいか、男女校に変わったらしい。

とはいっても、結構な学力を求められるため、入学するための偏差値は高く、

テストが大の苦手な私には結構な難易度だった。

 

それでも駒王学園に憧れていた私は、死にもの狂いで頑張り、無事に入学を果たした。

うん、私、頑張った!

 

ちょっと気恥ずかしかったけど、入学式の際にはお母さんに無理を言って来てもらった。

写真を撮る時、お父さんが走ってきたのはびっくりしたけどね。

お父さん曰く、「だって娘の晴れ舞台を見に来ない親はいないぞ?」とのことで、

どうやら無理を言って仕事を切り上げてきたみたい。

来てくれるとは思っていなかったので、私はお父さんに力いっぱい抱きついた。

力いっぱい抱きつきすぎて、お父さんの腰をへし折りかけたけど。

 

私はお母さんもお父さんも大好き。クラスの皆も大好き。

出会った人たちも大好きだし、学校に行けるこの世界も好きだ。

今日も今日とて、私は笑顔で学校へと、砂埃を巻き上げながら走るのだった。

 

 

「待ちなさいそこのエロトリオ!今日こそは許さないわよ!」

「絶対に捕まえてしばき倒す!」

「あんたたちを薄い本にしてばら撒いてやるわ!」

 

「なんでバレたんだ松田!?あの場所は巧妙に隠しておいたはずだぞ!?」

 

「知るかよ一誠!そんなことよりも今は逃げるのが重要だろうが!」

 

「待ってくれ!俺を見捨てて逃げるんじゃない!」

 

先頭を走るのは三人の男子で、追うのは竹刀やバットなどを持った大勢の女子生徒。

これはいつもの光景だ。もう1年も経つのだが、毎度のこととなっている。

先頭を走る男子生徒は、ツンツン頭が兵藤、丸刈りが松田、眼鏡が元浜という名前で、

ここ駒王学園においては、セクハラトリオという名の悪名を轟かせている。

盗撮、覗き、セクハラ、パンツめくり、わいせつなDVDや漫画を持ち込むなど、

もはや性犯罪レベルの行為をしているわけだが、なぜか警察沙汰にならないというのが、

学園七不思議の一つとして有名である。

そして、このエロ餓鬼トリオは、何度も捕まってはシバかれるのだが、

もはや意地なのか、それともそうしないと死ぬ性質なのか、

懲りずに何度も何度も犯罪を起こしている。

そして今回も、どうやら女子更衣室に忍び込んだのがばれたらしい。

 

「このまま逃げ切るぞ元浜!あと少しで出口だ!」

 

「ああ、そこを抜ければバラバラに逃げることが出来るぜ!」

 

「あとは捕まっても恨むなよ!」

 

そう言って脱出しようとした瞬間、前から何かが三人に向かって突進し、

気付けば三人は床に沈められていた。

 

「犯罪、駄目。女子を泣かす行為、禁止」

 

そこには、三人を抑え込んでいる和花がいた。

 

 

 

「ありがとね、調さん。毎回こいつらの捕縛に協力してもらって、本当に感謝するわ」

 

「別に、見えたから、捕まえただけ」

 

「別に謙遜しなくていいわよ。本当に助かるわ。

 オラ、エロ餓鬼トリオ!今日という今日は許さないんだから!」

「その身体を剥いて薄い本してやるから覚悟しなさい!」

 

「いやー!犯されるー!女子に逆レイプされるー!」

「待て元浜、これはこれでアリなんじゃないか!?」

「おお!さすが兵藤、お前の発想には毎回脱帽するぜ!」

 

「お仕置き、頑張れ。応援する」

「それじゃぁね、調さん。いくぞ被害者たちよ!こいつらを血祭りにあげるのだー!」

 

簀巻きにしたエロトリオを、ワッショイしながら運ぶクラスメイト達に手を振り、

私は教室へと向かった。

 

私は勉強に関しては、本人も優秀ではないことは自覚してる。

だから、授業中はしっかりとノートを取るし、必死に教科書や板書とにらめっこをする。

その成果もあって、テストは中の中という程度で済んでるのが、私には救い。

毎回のテストの返却時には、私は身が縮む思いで受け取っているけどね。

 

身体を動かすことは大好きだから、保健体育が私の好きな教科だ。

特に運動の時間だったら、私はいつも頑張ってしまう。

でも、何故か皆は驚いてるんだよね。私はまだ本気じゃないのにさ。

お父さんから、「本気でやるなよ?」と言われてるから、私としては不完全燃焼。

でも不思議と各部活から勧誘されたり、補助として頼まれたりしているのよね。

忙しいお母さんのお手伝いがしたいから、私は悉く断ってるけど。

それにお父さんの言いつけは守らないとね。

 

頭がこんがらがりそうな授業を終え、楽しい運動の授業で頑張り、

こうして私はの学校生活は終わり、一目散に家へと帰るのだ。

 

「お母さん、ただいま」

「お帰り、和花。今日も学校楽しかった?」

「うん!」

 

お母さんにただいまを言って、すぐに着替えをしようと自室に行く。

鞄を机に置き、制服から私服へ着替えようとしたが、私は視線を感じてその手を止める。

いつものことなのだが、やっぱり勘弁してほしい。

 

「お父さん、何してるの?」

「いや、ノドカが来るのを待っていたんだが・・・駄目だったか?」

「勝手に、娘の部屋にいる、父親。許されない」

 

自室の隅にいた父親を部屋から追い出し、私はさっさと着替える。

お父さんは、律儀にも扉の前で待っており、着替え終わったので部屋にいれた。

 

「それで、話って、何?」

 

私の鋭い視線を受け、しどろもどろするお父さん。

だが観念したのか、すまなさそうに話す。

 

「いやな、娘のことが心配で仕方ないんだよ。

 色っぽくなったピチピチの孫娘に合わせろ!会わせないなら俺が迎えに行く!

 って糞オヤジが言うから毎回凹ってきたんだが、どうもやりすぎて入院させちまってよ。

 お袋と姉貴等にやり過ぎ!って怒られて、仕事を増やされて帰れそうにないんだ。

 だから、母さんによろしくって伝えておいてくれ」

 

「解った。お母さん、悲しむけど、私のために、してくれたから。ありがとう」

 

「おおー!俺の娘は天使だ!いや女神だ!

 あ、今ここに姉貴はいないよな?いたらお前がヤバいことになる!特に髪が蛇に変わる!」

 

「もう、大げさなんだからー」

 

おろおろする父親に対して、私は笑う。

お父さんのお姉さんは、お父さんと違って規律を重んじる人の印象だったけどなぁ。

ただお父さん曰く、プライドが高く、怒らせた相手を容赦なく叩き潰すらしい。

うん、やっぱりお父さんのお姉さんでした。

 

「それで、学校の方は順調か?何か困ったことはないか?」

 

「問題ないよ。ちょっと不思議な先輩たちがいるけど、別に気にすることじゃないし」

 

「そうか。何かあったら俺にも相談しろよ。俺や家族が総出でお前を助けるからな」

 

「ありがとね、お父さん」

 

「おう」

 

私の言葉に、お父さんは笑顔になる。どうやら元気になったようだ。

 

「っと、言い忘れてた」

 

お父さんが私に向き合う。

 

「ノドカ、お前は俺の娘だ。お前はもう分かっていると思うが、お前は他の子とは違う。

 そのせいで、色々と苦労すると思う。だがこれだけは解ってほしい。

 俺は母さんとお前を愛してる。家族の為なら俺はなんだってする。

 それだけは忘れないで欲しい」

 

「解ってるよ、お父さん」

 

私は笑顔で答えた。

 

消えていく父親を見送った後、私はお母さんに、お父さんが帰れそうにないことを伝えた。

少し悲しそうな顔をするお母さんに、私は少し複雑だった。

お母さんは私と違うって、普通の人だから。

でも、お母さんもお父さんを愛していることは分かってる。

だから帰ってきた際に、奥歯が溶け出すほど、

口から砂糖を吐きだしたくなるほどに、蜜月になるのは止めてください。

私、耳も良いから余計に辛いの!

確かに、幼い時に妹が欲しい!といったのは私だけどさぁ。

私はあの時を思い出して、顔が真っ赤になるのを感じた。

 

 

ある日、私は登校途中で、友人の桐生ちゃんから奇妙な話を聞かされた。

なんと、あの性犯罪者トリオの一人である兵藤一誠に彼女が出来たという。

なんでも結構可愛い女の子のようで、嫉妬に駆られた残りの二人から殴られていたとか。

私からしてみれば、お父さんの父親、つまり私の御爺ちゃんが昔、

奥さんがいるのに、自分の姉や他の人に片っ端から手を出してたことを聞かされていたので、

別に普通なんじゃないの?と思うんだけどな。

 

ちなみに昔、御爺ちゃんから、

「大きくなったら食べ頃じゃな」と言われことを、親戚一同の前で話した時は、

その場でお父さんやお爺ちゃんの奥さん、私のお婆ちゃんやお兄さんやお姉さんらが、

総出で御爺ちゃんをフルボッコしてたけど、一体どういう意味だったんだろ?

 

 

変態一誠の恋人騒動のほかに、桐生ちゃんはもう一つの話をしてくれた。

なんでも最近、駒王町では変な噂が流れているみたい。

 

・車を運転していたら、大きな獣が道を横切った

・勉強中、気晴らしに窓の外を見たら、人らしき存在が空を飛んでいた

・夜遅くに外へ出ると、黒い人影に襲われる

・願いの叶う広告が撒かれている

・自分の番号に電話をかけ、殺したい相手の名を言うと、謎の怪人が相手を殺してくれる

・異次元へ行けるテレビがある

・赤い頭巾を被った人影や、首のなし生徒が徘徊しているなど

 

不思議なものや物騒な噂もあれば、

 

・二大お姉さまは、実は異世界の王女さまで人間じゃない

・変態三人組はエロがなくなると死ぬ

・生徒会長は眼鏡からビームを出せる

・木場祐斗は、どこかの国の王子様か貴族の隠し子

・小猫ちゃんは猫属性など

 

もはや個人を名指ししたいちゃもんの噂まである。

まぁ、どれもこれも眉唾物でしかないみたいだけど

 

でも、そういった噂が流れているということで、

学校からは夜遅くの外出は厳禁と言われたのを私は思い出した。

本当に物騒になったなぁ。

私は桐生ちゃんの話を聞きながら、お父さんに貰った物を握る。

一見、液体の入ったガラスの瓶だけど、なんでも霊薬?みたいで、

傷口に掛けると治してくれるんだとか。

なんか怪しいけどなぁ。

 

「ん?どうしたの?」

 

「ううん、なんでもない」

 

まぁ、危険なことに気をつけないとね!

私は桐生ちゃんとの会話を楽しみながら、駒王学園へと登校するのだった。

 

 

 

 

 

さて、今日も大変な学校生活だった。

変態を取り押さえ、苦手な数学に頭を悩ませ、大好きな保健体育でハッチャケちゃった。

みんな口を開けてたなぁ・・・どうしよう・・・。

 

「調さん」

 

学校から下校する際に、私は呼び止められた。

振り返ると、眼鏡を掛けたきりっとした雰囲気をの女子生徒が私に向かってきた。

駒王学園三年生で現生徒会長の支取蒼那先輩だ。

 

支取先輩と関わりを持ったのは、一年当初、変態トリオが覗きで逃走していた際に、

私が3人を取り押さえ、そのまま生徒会室に引き摺ったことが切っ掛け。

その時の支取先輩は、目を点にして和花を見つめ、戸惑いながら感謝してくれたと記憶している。

まぁ、結局三人の悪行は止まることなく、それ以降は定例行事になってしまったけど。

 

「支取先輩、何か用、ですか?」

「いえ、偶々見かけたものですから、挨拶をと思いましてね。

 また彼らの捕縛に協力してくれたのですね、生徒会を代表してお礼を言わせてください」

「いえ、お礼を言われること、じゃないです」

 

わざわざお礼を言ってくれる支取先輩に、私はしどろもどろになる。

こういった好意を言われるのは、私は少し苦手だ。

 

「会長ー!探しましたよー!」

 

支取先輩を呼ぶ声がすると、生徒会書記の匙君がこちらに向かってくる。

どうやら支取先輩を探していたようだ。

 

「それではまた学校で。さようなら、調さん」

「さようなら、支取先輩」

 

ちょうど間が良かったのでここで御開きにし、

互いに言葉を交わした後、私は家へと急ぐ。

支取先輩や匙君もそうだけど、なぜか私は生徒会の人たちが怖い。

実際、話してみるとそうじゃないと解っているけど、なぜかその印象が抜けきらない。

 

生徒会の人たちもそうだけど、

この駒王学園の二大お姉さまのグレモリー先輩や姫島先輩、同学年の木場君や後輩の塔城さん、

通称オカルト研究部の人たちも同じ印象だ。

でも、なんでだろ?

ずっと消えない違和感だけど、別に気にすることでもないよね。

 

「あ、そうだ。お母さんから買い物頼まれてたっけ!」

 

私は近くのスーパーへと足を向けるのだった。

 

 

 

「会長、探しましたよ!って、あれって和花ですか?」

 

「ええ、偶然にも見かけて、問題児等のお礼を言おうと思いましてね」

 

「まったく、あのバカ達には毎度困ったものですよ。

 今日のこともそうですけど、和花がいなかったらと思うと頭が痛くなります」

 

今日のエロ餓鬼トリオのことで、匙は額に手を当てる。

和花がいなかったら、全てを自分たち(生徒会)で対処しなければならないからだ。

 

「ところで匙、私を探していたようですが、何か問題でも?」

 

「そうだった!書類を見てほしいと副会長が探してました。

 それと、駒王町におけるはぐれ悪魔に関して、すこし話があるとか」

 

匙の話を聞いて蒼那は頭が痛くなるも、直ぐに気を取り直す。

 

「解りました。直ぐに行きますと椿姫に言っておいてください」

 

「了解しました!」

 

先に生徒会室へと走って行く匙を見送った後、蒼那は調和花が帰っていった方を見つめていた。

駒王学園2年生、調・和花

腰にまでかかる黒髪で、鋭い目と整った顔立ちで人形を思わせる出で立ち。

一見すると恐い印象を持たれるが、実際は少し口下手な少女。

成績に関しては、どの教科も平均点とあまり目立つ要素はない。

だが、彼女の身体能力はあまりに異質だった。

まるでオリンピック選手のような、一般生徒とはかけ離れた運動能力も持っていた。

 

興味本位で彼女の体育を見たことがあったが、

下手をすると、リアスの騎士と戦車すらも越えているような印象さえ感じる。

また彼女から感じる不可思議な印象。ピリピリと感じる、自分たちとは異なる気配。

 

「調和花さん、興味深いですね」

 

支取蒼那、ソーナ・シトリーの呟きを聞く者はいない。




実際、安心できないよね?この町って

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