思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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強欲な龍(のお供)2

私は今、猛烈に自分の運について疑っている。

私の中に宿るドラゴン、ファーちゃん曰く、今の私にはお金や物や人と言った、

言わゆる『財』と呼ばれるものが集まりやすくなっている。

それこそ、くじを引けば何かしら当たるし、行動を起こせば何かと好転していく。

 

だが、世の中は上手に出来ているらしく、幸運が訪れれば、それを補うように不運も訪れる。

一時期だが、顔も見たこともない、親戚だのと自称する人たちがやってきたことがある。

彼らは頻りに、私は両親のどちらかの家族でーとか、家族を助けるためにーと、

結局はお金を求めてきたのだ。

生憎だが、私の家族関係はそれなりに連絡をしているので、直ぐに彼らが不審者だと判った。

私としては無視するのが一番なのだが、私のせいで友人や周囲の近隣の方々、

それこそ家族を巻き込んでくる可能性があった。

 

昔、たまたま見ていたドラマで、宝くじを当てた主人公が、

周囲の変貌に人間不信になっていく話を思い出した。

その中で、お金を欲した赤の他人に、主人公が襲われるというシーンがあったのだ。

はっきり言って、今の私はそれに近いと言っていい。

という事で、顔も知らない、それこそ家族と自称する方々にはお帰り願った。

もちろん、暴力という野蛮な物を用いたわけではないので安心してほしい。

 

それ以降、私はお金を未来への資産として貯蓄をしてはいるが、

一方で海外支援だの、あしなが募金だのと、何かしら援助するようにした。

やはり、何かしら貯めると、悪いものがやってくるのだろう。

ファーちゃんからすれば、

『何故、赤の他人に施しをせねばならん。それは宿主の益にならぬではないか』と、

大層呆れる行為だったようだ。

 

次に、ファーちゃんという強大なドラゴンの力を宿したことで、

人外の方々から危険分子扱いを受けかねないという事だ。

私としては、いささか勘違いも甚だしいし、それこそ言いがかりだ。

だが、ファーちゃん曰く、

『二天龍という、戦いが三度の飯よりも大好きな脳筋共のせいで、

 彼奴らと同類の我らも危険視されてな。

 奴等からすれば、我らドラゴンは二天龍と同様、世界を滅ぼしかねない存在なのだ』とのこと。

 

おのれ二天龍!お前たちのせいで、私の生活は平和から遠ざかったではないか!

おのれ人外たちよ!誰も彼もが戦いが大好きだと思うな!

 

だが残念なことに、いくら私が叫んだところで、ファーちゃんを宿す私は、

彼らからすれば危険な存在でしかないらしい。

まあ、世界を破壊できるミサイルの発射ボタンを持った存在が、

『私は何もしたくないんだ!ただ平和に生きていたいだけなんだ!』といくら叫んだところで、

周りからすれば誰が信用できるか、なのだろう。

下手をすれば、『やられる前にやれ』という方向になりかねないし、

正義感を持った頭の螺子が取れた存在が、自身の懲罰覚悟で『正義執行!』をしかねない。

 

というわけで、私は今、ファーちゃんと共に力の制御を行っている。

それもこれも、私が目立たないようにするためだ。おのれ人外!

私の目立ちたい精神を抑え込むなど、卑劣なことを!

そのおかげか、私の幸運も最近では落ち着いてきており、そこそこの幸運になった。

周りの友人からは、大層不思議がられたが、一時的だったのだよ、と誤魔化しておいた。

 

一応これらは、既に解決済み、または解決しつつある問題だ。

だがその一方で、解決しにくい問題も出てきている。

 

 

「という事で、君の力は俺たち英雄派にとって大いに役立てると思うんだ。

 俺たちのようなちっちゃい人間が、人外たちに力を示すことが出来る。

 そのためにも、英雄派にないってくれないか」

 

今、私の目の前では、中国が舞台の映画やドラマで着られている漢服、

いわゆる昔の中国衣装をまとった男が、私に熱弁を振るっている。

ちなみに私たちがいるのは家ではなく、近くの公園だ。

宗教の勧誘だと思い、門前払いしたのだが、それからなにかと接触をしてくるのだ。

その比は、前述した自称家族や親族とは比べ物にならないほどに。

我慢比べは好きなので、徹底して対抗してやろうと思ったが、流石に周囲からも心配され出した。

なので末期の酒ではないが、警察に突き出す前にその思いを聞こうと至った。

 

彼の名は『曹操』と言うらしく、自分を『曹操』の魂を受け継いだ子孫だと言っている。

彼が言うには、俺たち人間は、人外からすれば矮小な存在だ。

だが英雄と呼ばれた祖先は、各々の力を振るい、国を、世界を動かしてきた。

俺たち人間は決して弱くはない。

ゆえに自分たちが異形に対し、

どれだけ偉業を為せるか、どれほどの力を示せるか、挑戦したいとのこと。

それが、俺たち『英雄』の魂を受け継ぐ子孫たちの役目だ、とのこと。

 

熱弁を振るう彼は、まるで自分を『曹操』と思っているそうな振る舞いだった。

彼の話を聞いていた私は、今日の夕飯はハンバーグにしよっかなーと考えていたが。

 

そして冒頭の言葉に戻る。

 

彼は自分がいかに素晴らしいことを言っているかと自信あるらしく、

彼の視線からは、はいorYESorJA(ヤ-)orOui(ウイ)という、

肯定の言葉を望んでいるようだ。

ということで、私は返答した。

 

それは当方において利益があるものなのですか?と。

 

これには『曹操』も驚いたらしく、面食らった顔で、目を瞬いていた。

私は続ける。

 

人外たちに挑戦し人間の力を示すにしても、それで何か良いとこがあるのか。

そこのところを『正確』に、『詳細』に、それこそ『文面』や『書類』にして、

私に示してくれないと、私も判断できない。

解ってはいないかもしれないが、これはいわば『契約』

それこそ口約束程度で済まして良いものではない。

ちゃんと契約しましたという『証拠』になる物が無いと、こちらは貴方を信用できない。

なので、信用できない貴方と『正式な契約』をするのは、こちらからすれば愚かしい行為だ。

口約束で済ましてしまうと、下手すれば勝手に契約内容の改竄や無効、

『騙して悪いが』と詐欺まがいなことをされる危険が、こちらにはある。

なので、もしも英雄派に入ってほしいならば、ちゃんとした文面を持って来てください。

 

私の捲し立てる言葉に、曹操は理解が追いついていないらしく、ただ黙っていた。

という事で、私は懐から一枚の紙を取りだす。

 

なので、これを使って契約しませんか?

 

私は曹操(自称)にそう告げると、にっこりと笑う。

 

取りあえず、これに契約内容を書き込んだうえで、後日私の所に持って来てください。

もしも私が面白いと思ったら、その時に契約しましょう。

 

私は曹操(自称)にこれを渡すと、公園から去っていった。

 

『宿主よ、随分とえげつないことをしたな』

 

何がおかしいのか、ファーちゃんの声は愉快そうに笑っている。

 

いやいやファーちゃん、これは私の生活を守るためのものだ。

さっき言ったことを掻い摘めば、

『文面も書類もなしに、ただ夢だけを語るだけで、こっちには得が無い。

 それに、あなたのことは一切信用できないので、このことは無かったことに』だ。

それに彼のことだ、きっと渡した紙のことを理解し、もう私の所には来ないだろう。

 

 

因みに彼に渡したものだが、ファーちゃんの宝物庫にある物の1つで、

絶対に契約を遵守させる呪いが込められた紙らしい。

『契約内容を破った場合、相手の体中の穴という穴から血が噴き出す』という、

ファーちゃん曰く、『平等という名を騙った一方的な契約』とのこと。

ちなみに紙の所有者は私(ファーちゃん)なので、相手とは曹操(自称)のことになる。

 

ぶっちゃけ、こんな危険な物を渡されれば、誰だって「あ、こいつやべぇ」と思うだろう。

ということで、彼はもう来ることもないだろうし、これで私もストーカーから解放される。

 

『宿主よ、あれは我からしても思うところがある。そう簡単に事が運ぶかの?』

 

ファーちゃんは、何か詰まった物の言い方をするが、私は別に気にしない。

さて、ファーちゃん。

私の破滅の未来を回避するためにも、頑張っていこうではないか!

 

『声を上げるなやかましい!』

 

叫ぶファーちゃんもなんのその、私は未来に向かって、全力で楽しむのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「取りあえず、こちらの要望は渡してくれた紙に纏めた。

 それに俺だけでは何かと信用ならんと思って、必要な者達の署名もさせたぞ」

 

後日、文面にしたものを持ってきた彼に対し、私は涙を流した。

 

『やはり愚か者じゃな』

 

ファーちゃんの呆れた言葉は、どっちに向かってのことだろうか。


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