思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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強欲な龍のお供
強欲な龍(のお供)(オリ主第三弾)


ほう、今週は4等か。これで5000円も得をしたな。

私は銀行に掲載されている抽選結果と、自分のくじを見比べる。

さて、今回は3000円を貯蓄に回そうと、私は販売所に足を運ぶことにした。

販売所に着けば、私を見つけた店員が、「またですか」と苦笑いをする。

 

まぁ、毎週くじの「当たり」を持ってくれば、流石にこんな対応になるのだろうか。

だが待ってほしい、これは私の責任ではないのでは?

私とて、当たってしまった物を、貰える物を受け取らないといった、

ある意味で拗れた人間ではないのだ。

 

だから、貰って当たり前の物を貰って何が悪いと言うのだ。私は悪くないぞ。

そういう思いを抱き、私は店員からお金を受け取ると、次いで銀行へと向かう。

なぜか店員にも同じ顔をされた。

 

 

ところで、いきなり自分のことを語ることを許してほしい。

 

唐突だが、私は友人から運がいいとよく言われる。

私自身はそんなことはないと思っているのだが、友人に首を横に振られて否定された。

他の友人に訊いても、同じような反応をされた時は、本当に驚いた。

曰く、私は運がいいらしい。

そう言われ、本当にそうなのか?と思いに耽ったことがあった。

確かに私は、友人たちの言うように運がいいのかもしれない。

ただし、クジといった類いのもの限定だが。

 

普段、私は宝くじなどの類いを買うことはない。私自身、当たることはないと思っているからだ。

それこそ、この日本において何億人もいる人々が何十枚も買っていくのだ。

当たる可能性は、100キロの米俵の中の米一粒の確立と言われれば、想像出来るだろうか?

他には、交通事故で450回死ぬ確率といえば分かってくれるのだろうか?

いや、私は不死身でもなんでもないので、1回で死ぬのだがね。

ようは、それほどまでに当たる可能性が低いと言いたいだけだ。

 

だが何を思ったのか、ふと買うことがある。

まるで誘蛾灯に集う虫のように、樹液に集まる昆虫のように、

フラフラと宝くじ売り場の方へと向かい、気付けば買っているのだ。

その時は何故か、当たる。

一等という莫大な金額ではないにしろ、クジを買った金額を優に超える額が返ってくる。

初めて当たった時は、あまりのことに目を点にし、

私は幸運だー!と思ったのか、それでまた宝くじを買ったこともあった。

結果は全て、ただの紙切れになった。そのため、私は宝くじを買うことを止めた。

もちろん、今はムダ金を使う気はないので、必要な経費を引いた後は貯金に回している。

それを差っ引いても、十分なお金を貯金している。

 

付け加えるならば、クジに当たると言ったが、宝クジに限った話でもない。

箱に手を入れて中身を取り出すようなクジ、

お祭りに出店している、紐を引っ張るようなクジ、

商店街などで行われる、取っ手を回して中の玉を取りだすようなクジ、

その他諸々のクジに関しても、ふと立ち寄った時に限って、当たる。

それも私が欲しいと思った物が。

 

私からすれば、単に運がいいとしか説明できなかったのだが、周りからは羨ましがられていた。

一方で、とある方面からはクジ荒らしとして恐れられている。

私が現れると、まるで怪物にでも、台風にでもあったかのように顔を青ざめる店員の姿は、

色んな意味で風物詩となった。

店員たちよ、私に向かって祈るんじゃない、と言いたくなるのを堪える私に身にもなってほしい。

 

私が幼かった頃は、そんなことはなかった。

ただ、アイスのアタリ棒が出て来たり、お金チョコでそこそこの小銭を当てていた程度だ。

だがここ最近はおかしいほどに、何かしら当たる。

クジを引けば欲しいものが当たり、偶然にも落ちている財布を届けてお礼を貰ったり、

気紛れに送った懸賞が当たったりと、何かしら物やら何かが私にやってくる。

 

友人たちはそれすらも、いいなーと羨ましがっている。

私としては、寧ろ恐ろしき思えてきているのだがな。

 

だが友人たちよ、喜べ。

私はついに、こうなった理由を見つけることが出来たぞ。

 

『ほう、ようやく我を認識できたか、宿主(我の所有物)よ』

 

どうやら私の中に、大きなドラゴンがいたらしい。

それも真っ黒なドラゴンが。

そりゃもう、真っ黒過ぎて、まさに炭の塊みたいなドラゴンが、私の目の前にいた。

取りあえず、自分の頬っぺたを指で抓ってみる。

うむ、痛い。

そして目の前のドラゴンを見る。

もう一度頬っぺたをつねり、痛みを感じつつも目の前のドラゴンを見る。

やはりドラゴンはいる。

ということは、これは現実『愚か者、これは貴様の夢の中だ』

 

では炭ドラゴンよ、これは私の夢の中として、なぜ炭ドラゴンがいるのだ?

 

『もしや炭ドラゴンとは我のことか?』

 

私は首を縦に振る。

 

『無知蒙昧もここまで来ると笑いも出ぬ。いや、これは人間という種の病かもしれぬな。

 良く聞くがいい、我の宿主よ、我の名はファフニール。

 北欧神話に描かれし、財を守護するドラゴン、それが我だ』

 

ほほう、炭ドラゴンの名前はファフニールとな?

ということは、君はファーちゃんと呼べいいのだろうか?

 

『・・・ファーちゃん?』

 

若干戸惑い気味のファーちゃんに、私は肯定の意味で頷く。

ファニフールと呼ぶのはメンドイし、可愛げがない。

そもそも、ファーヴニルにファーブニルにファーフニルにファフナーと、

微妙に違うだけで殆ど一緒ではなかろうか?

ゆえに、共通であるファーの名前だけを使っても何らおかしくはない!

という事で、愛称のファーちゃんの名を進呈しよう!

有難く受け取るがいい!

 

『・・・・・・』

 

私の素晴らしい命名に、ファーちゃんは感動のあまり黙ったままだ。

やはり私のネーミングセンスは素晴らしいに尽きる!

友達の猫にケット・スフィンクスと、別の友人の犬にはケルビスと名付けた私の凄さ!

 

『ククク・・・』

 

ファーちゃんが震えだす。

 

『クククククク・・・』

 

そりゃもう、トコロテンや豆腐やプリンのように震えだす。

 

『我を馬鹿にするの大概だぞ、人間!』

 

ゴバァとファーちゃんの口から洩れる紫の煙を、私は浴びる。

くさ!?なにこれくっさ!くっさいぞこの息!?

 

『我の毒の息を浴び、苦しむがいい!本来ならば死ぬがここは貴様の夢の中。

 死にはせぬが、死ぬほどの苦しみをうけ・・・あいたぁ!?』

 

口臭は犯罪なんだぞ!人に臭い息を吹きかけるなど、マナー違反デス!

ということで、その口を綺麗にしてやる!ついでに身体もだ!覚悟するがいい!

私は口の臭いファーちゃんを睨みつけると、デカい歯ブラシと歯磨き粉を取りだす。

ここが私の夢の中ならば、私の想い通りになるのデス!

 

『貴様、それだけで気付いたというのか!?』

 

こちとら成績は上位に入るんです。馬鹿を馬鹿にした報い、受けるのデス!

 

『ヤ、ヤメロォー!』

 

私は嫌がるファーちゃんを押さえつけ、丁寧に歯磨きをするのでした。

ついでに身体も洗ってあげた私は、なんて気が利く良い子なのだろうか。

 

『く、殺せー!』

 

ピカピカのファーちゃんの照れ隠しに、私は微笑ましく感じるのだった。

 

しばらくして、ファーちゃんが何とか威厳を戻した後、私は再びファーちゃんと対峙する。

神話世界の存在のドラゴンであるファーちゃんが、どうして私の中にいるのか?

確か、シグルートだのジークフリドーだのに、心臓をあぶり焼きにされたのでは?

 

『宿主よ、解ってふざけておるだろ?シグルズとジークフリードだ。

 貴様と話と疲れる・・・。まあよい、確かに我は死に、その財も何もかもを奪われた。 

 その後何千年とたった後、我は再び蘇ったのだ。

 失った財の代わりに、再び財を集める為にな』

 

ふむふむと、私は首を頷く

 

『だが、二天龍という、戦いしか頭の無い龍がおってな。

 そ奴らが別の勢力に喧嘩を売ったせいで、我らを含む龍も危険視された。

 はっきり言って迷惑以外の何ものでもない。そして結果、我も封印されたのだ』

 

一呼吸置き、ファーちゃんは笑う。

 

『だが、我とておとなしく封印される気はなかったのでな。

 我の持っていた道具で、魂を別の器に移動させたのだ。

 だが咄嗟のことだったのでな、気付けば貴様に宿っていたというわけだ・・・って、

 寝るでない!』

 

ファーちゃんの長そうな自分語りを、半ば夢うつつで聞いていた私は、

ファーちゃんの怒鳴り声で眠気を飛ばされた。

ようは、私の身体にファーちゃんが憑りついたという事なのだな?

 

『その通りだ。なんだ、ちゃんと聞いていたのではないか』

 

何故か私を感心するファーちゃん。

ところで、私に憑りついたことで何かしらの影響は何のだろうか?

 

よくあるマンガやアニメやゲームやらのサブカルチャーでは、

魔を払う力だの、超能力だのに目覚め、何かしらの事件に巻き込まれるというのがお約束だ。

また、能力に支配されて人間辞めてました、

『私、こんなんになっちゃった・・・』というのもお約束なのだが。

 

『安心するがいい、既に影響は出ておるぞ』 

 

そうですか、既に影響は・・・って、おい、待ってくれ。既に影響が出ているだと?

少し訝しげになる私を、ファーちゃんはニタニタ笑い(のような表情)をする。

 

『気付いておるのだろう?ここ最近、宿主は金や何かがやってくることを』

 

そう言われた私は、ここ最近のおかしなほどに、クジやら何かに当たる現状を思い出す。

 

『我はファーブニル。強欲にして蒐集家のドラゴンだ。

 我の影響によって、宿主に物や何かが集まってくるのだ』

 

ほほう?つまり、私の取り巻く元凶はファーちゃんだったと?

 

『そう睨むな宿主よ。別に悪いことではなかろう?むしろ、得をしているではないか。

 欲しいものが手に入るという欲望を満たせているであろう?』

 

ぐうの音もでない。

確かに、たまたま当てた温泉旅行で、両親への親孝行が出来たこともあった。

出発する際の、喜んでいた両親の姿を思えば、私は得をしている。

 

『ククク、ぐうの音も出ぬであろう?

 宿主と共にいるという事は、宿主のことを見ていると同義。

 故に、宿主のことは全て解っておるぞ?』

 

それって実質、プライバシーの侵害ではなかろうか?いや、侵害ではないか!

エッチ!スケベ!ロリコン!この盗撮ドラゴン!

 

『ならば我と別れるか?言っておくが、引き離せばいいという問題ではないぞ?

 それこそ、我と宿主は魂の段階で融合しておる。下手に分ければ、どうあっても死ぬぞ』

 

なんという理不尽!私はこの変態ドラゴンに一生監視されて生きていくのか!

あ、でもそれもそれでありかも・・・!

 

『妙にくねるな気持ち悪い!

 宿主よ、その面白ければ何でも良いという感情、欲深き我からしても一線を越えておるぞ』

 

あぁん!伝説のドラゴンからもお墨付きとは!感無量なり!

 

『だからやめろと言っているであろう!終いには我が泣くぞ!』

 

ふむ、ドラゴンという割にはメンタルが低い。人生、楽しまなければ損なのだ。

自由と責任は表裏一体。ならば私は、自分に出来る範囲で全力で楽しむだけである。

 

『やはり宿主の考えは、我としても未だ理解出来ん。考えても無駄であろうな。まあよい。

 最初に言ったことだが、我のことを認識できたという事は、

 宿主と我は、それほどまでに馴染んでいるということ。

 今は金や物、人材が集まるだけだが、このままいけばそれ以上の力も目覚めるであろう』

 

ということは、動物の声も理解できるのだろうか?

かのジークフリードは、血を舐めただけで動物の言葉を理解出来、心臓を食べて英知を得たのだ。

そういった力に目覚めるのかもしれない。

 

『察しがよいな、宿主よ。たが知っているであろう?我や憎きジークフリードの末路を』

 

ファーちゃんの言葉に、私は首肯する。双方ともに、腕輪の持つ破滅の呪いによって滅んだ。

つまり、このままいけば、私にもたらされるのはデッドオアデスである。

 

『そう言うことだ。我とて二度も死ぬ気はない。

 ということで宿主よ、少なくとも力の制御は学んでもらうぞ?』

 

バッチコーイ!特訓とか私は好物です!

 

『やはり、宿主のことは解らぬ・・・』

 

こうして私は目を覚ました。

身体を起こせば、私は制服のままの姿でベッドの上にいた。

ふむ、疲れて眠ってしまったのだろう。ということは、あれの私の妄想なのか?

そう思った私だが、私の腕に巻きついている、黄金の腕輪がそれを否定する。

そして頭に響く声。やはり夢ではなかった。

 

まあ、こうなったことは宿命と諦めつつ、私は今後のことを考える。

取りあえずファーちゃんの言うように、まずは力の制御が課題だろう。

先ほどの会話の際、ファーちゃんはこの世界の裏について教えてくれた。

 

この世界には、人間やドラゴンの他に、実は天使や堕天使や悪魔、終いには神様もいるとか。

八百万の神を持つ日本ってどうなんだろ?とか、世界の宗教は拙くないか?と思ったが、

それはそれ、これはこれと考えるのは止めた。

どうやら悪魔や堕天使や天使の皆様は、自分たちが危険視する存在を片っ端から滅しているとか。

つまり、ファーちゃんを宿す私は、どう考えても超危険存在である。おのれ三勢力!

という事で、早くしないと私が死んでしまう未来が来るので、早急に対処しよう。

 

ふと時計を見れば、時計の針は6時過ぎ。取りあえず夕食の準備をするか。

私は自室を出て階段を降り、台所に行こうとすると、丁度よく玄関の鐘が鳴る。

はて?この時間に誰だろう?そう思い、私は玄関の戸を開けた。

 

「失礼だが、英雄派に入らないか?」

 

宗教の勧誘だったので、私は直ぐに扉を閉めた。




原作のファーヴニルの姿に思うところがあったので、
思いのままに書いてしまいました。
駄目だなぁ・・・。

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