思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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転生者第二弾。
長編は浮かばないのに、こういった設定擬きは浮かんでくる。


単発オリ主シリーズ
私は貴方の剣となろう(転生者第二弾)


神様転生と言うのは御存じでしょうか?

クソッタレで頭パッパラパーのぶん殴りたいくらいのおバカ神様が、

これまたクソッタレで頭パッパラパーなアホをやらかして罪もない人間(なぜか限定)を殺し、

その罪滅ぼし(口封じ)に別の異世界に転生させることです。

大抵は、超強いチート能力だの、超凄いスキルだのを渡されて、

好き勝手に大暴れするってのがお決まりでしょうね。

 

でも冷静に考えてください。

転生させられるにしても、それが人間だって決まってますか?

もしかしたら、人間以外、例えば虫だったり魚だったりと、人間以外になるとは思いませんか?

動物になれるならまだマシです。

下手をしたら、木や草花と言った植物になるかもしれません。

いえ、もしかしたら、もっと最悪なものになるかもしれないじゃないですか。

意識はあれど動けない、それって拷問じゃないですか?

ですから、転生先はしっかりと決めておいた方がいいと、私は声を高くして言いたい。

これ、私からのアドバイスね。

あと、これも言っておきましょうか。

 

神様のバカヤロー!

 

「うん、どうしたんだい?急に大きな声を出して」

 

「気にしないで。少し気が立っていただけだから」

 

私の言葉に、彼はクスリと笑った。

 

「何がそんなにおかしいのよ」

 

「いや、なんだか久しぶりだなぁってね。

 君がそんな風になるのは、いつ以来だろうって」

 

彼は私を撫でる。

その仕草に、私は恥ずかしくなって声を荒げた。

 

「ちょっと!馴れ馴れしく撫でないでくれる!?

 こんなナリでも、私はデリケートなんだからね!!」

 

「はいはい」

 

口ではそう言っても、彼は私をいっこうに撫で続ける。

初めて彼と出会ってから、彼は私をこんな風に扱う。

これでも私は女の子なんだからね!

私が怒っていると分かると、彼はその手を引っ込めた。

ふん、もう少し撫でても良かったけど、私はそんな安い女じゃないんだからね。

 

「それで、これからどこに向かう気?」

 

私の言葉に、彼は少し考え事をした後、「これからどこに行こうかなぁ」と答えた。

まったく、こういうことが彼の欠点なのよね。

後先考えずに行動するせいで、私がいかに迷惑を被っているか。

 

「取りあえず、近くの町にでも行けばいいんじゃないかしら。 

 そうすれば、自然と次の目的も思いつくと思うわよ」

 

私に言葉に、彼は満足げに頷く。

 

「そうだね、そうしよう。いや、君のおかげで本当に助かってばかりだよ」

 

「ふん、私をおだてても意味ないわよ?というか貴方が考えなしなのよ。

 こうなったのだって、そもそも貴方が・・・。

 それに、少しは貴方も知恵を絞りなさい。一応戦士なんでしょ?」

 

「まぁ一応、戦士ってことなのかなぁ。これでも数多く戦ってきたからね。

 それに、そうなるように作られたって方が正しいのかもしれないけど」

 

彼はそういうと、一瞬だが皮肉に笑う。

 

「あのね」

 

私、彼のこういうところが許せないところなのよね。

 

「いい?何度も言ったけど、生まれとかそんなの関係ないのよ。

 私が貴方に同情したところで、貴方の生まれが変わるわけないんだし。

 だったら、もう生まれなんて関係ない。君のしたいことをしなさいよ。

 君だって、それをする権利があるんだから」

 

「良いのかな?」

 

「良いに決まってるでしょ」

 

「すまない」

 

「すまないじゃないでしょ?」

 

私の言葉に、彼は少し考えてから改めて言葉を紡ぐ。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

ようやくその嫌な感じの暗い顔が笑ったわね。

本当に彼は、私がいないとしょうがないんだから。

少しだけど良い雰囲気の彼は、私に向かって声をかける。

 

「じゃあさっそく近くの町へ行こうか。

 一応、ここは安全だと思うけど、いつ魔物に襲われるか分からないからね」

 

「それ、フラグっていうのよ」

 

キョトンとする彼に、私は溜息を吐く。

そして案の定、私たちの影に重なるように、突然別の影が差した。

 

「へえー、何やら強い気配を感じて来てみたら、貴方、結構いいわね」

 

酷く粘つくような、気色の悪い声が聞こえた。

振り返ってみれば、コウモリの翼を生やした女たちが立っていた。

 

「ほらみなさいよ。貴方が変なことを言うから来ちゃったじゃない」

 

「これは俺のせいなの?」

 

首を傾げる彼に、私は「そうよ」と言った。

本当に世話の焼ける人なんだから。

 

「ちょっと、何ぶつぶつ言ってるのよ。気持ち悪いわね。

 まあいいわ。見たところ顔も私好みだし、見逃す意味はないわね。

 あなた、私の下僕になりなさい」

 

「って言ってるけど、どう思う?」

 

「却下よ却下!あんな顔と肉体が綺麗なだけの、外面美人の下僕なんかになってみなさい。

 一生モノの首輪を付けられて、永遠の家畜か性欲を満たすための愛玩動物一直線。

 最後は飽きられて狩猟ごっこの標的にされて死ぬだけよ。

 というか、下僕の時点で胡散臭過ぎ」

 

「それは嫌だなぁ」

 

彼は頗る嫌な顔をする。一応、私は嘘を言っていない。

というか、この世界はこんな奴等ばっかだと私は思ってる。だってそういう描写ばっかだもの。

 

この世界の主人公に一言言ってやりたいわ。

いくら自分が恵まれてるからって、自分以外に目を向けなさいってぇの!

あ、目を向けてもダメだったわね。確か、この手を話題に触れても、何もしなかったし。

 

「と言うわけで、俺は断らせて貰うよ」

 

あ、彼の言葉にコウモリ女の顔が酷く歪んだ。

あーあ、こいつ絶対に断られないって思ってたんだー。プププ、バッカみたーい!

 

「私の下僕になれば、永い命と富、そして快楽を得られるんだけど?」

 

「そんなのはいらない。」

 

あ、更に歪んだ。綺麗な顔だったのに、青筋浮かべてる。

 

「私に遣えれば」

 

「なる気はない」

 

あ、ブチって音が聞こえた。

あーあ、外面だけは美人だったのに、見る影もなく歪んだ顔になってるわね。

本性が滲み出てるわよぉ。

 

「いいわ、転生悪魔にさえできれば問題ないもの。

 この愚かな下等生物に、自分がいかに愚かか教えて差し上げましょう。

 地べたに這いつくばらせて、命乞いをさせて、屈辱の中で転生させてあげましょう。

 そして転生させた後は、徹底的に搾りつくしてあげるわ!」

 

妄想の中では、彼とギッコンバッタンしてるのか、

蕩けた笑みを浮かべた上に舌なめずりをするコウモリ女。

その姿に、彼は私を見てくる。

 

「だってさ」

 

「うーわ、きっしょ!だから私は悪魔なんて嫌いなのよ!

 こういう奴等ばっかだから、原作に好感がもてないってぇの!」

 

「原作?」

 

「何でもないわ!それより来るわよ!」

 

コウモリ女が叫ぶと、彼女の周りにいた者達が前に出る。

あ、コウモリ女は後に下がるんですね。やーいへタレー!根性なしー!口先だけの臆病者ー!

 

「そこまで言っちゃ駄目だよ」

 

彼は私の言葉に受けたらしく、笑いを堪えようとするも、口から笑い声が漏れる。

 

 

「貴方、今笑ったのですか?そうですか、私を笑ったのですか。

 私を嗤ったのですね?良いわ、殺しなさい。転生さえできれば問題ないもの」

 

コウモリ女の顔から表情が消え、感情の無い言葉を告げる。

その言葉を聞き、彼女の部下らしい者達が一斉に私たちに襲い掛かる。

でも私と彼は平然だった。だってこんなのいつも通りだったから。

 

「いけるかい?」

 

「心配しないで良いわ。私がついているんだから」

 

「そうだね、君がいれば問題ない」

 

そう言葉を交わし、私たちは魔物に突っ込んだ。

 

がむしゃらに突っ込んでくる、顔が犬の獣人っぽい悪魔の攻撃を躱す。

避けた爪が岩に触れると、まるで熱したナイフでバターを斬るかのように岩が斬れた。

 

「凄いね」

 

爪が触れれば、鎧なんて何の意味もないだろう、その爪の力。

でも私たちからすれば、そんなのは大したものじゃない。

なぜなら、

 

「よいしょ」

 

腕ごと斬れば良いだけだもの。

振り返った隙を突き、犬顔悪魔の右腕を肩ごと斬り落とす。

腕を切り落とされながらも、犬顔悪魔も左手を突きだして反撃する。

その突きを伏せて躱し、指の隙間を通して、肩へと一気に斬り伏せる。

途中、剣の刃先が爪に触れて火花が散った。

 

「ごめんね」

 

そして振り替えながら首を斬り飛ばす。

間欠泉の如く、切断面から血が迸り、周囲を赤く染めた。

 

「大丈夫かい?」

 

「別に問題ないわよ。私をなんだと思ってるの」

 

彼は私を気遣うけど、私はそんなに軟じゃない。

 

「! 6時方向に前進!」

 

私が叫び、彼が飛ぶ。

一瞬の後、今私たちがいた地面から岩の槍が飛び出した。

避けなかったら、今頃は串刺しだったわね。

 

「ありがとう」

 

「お礼は後、来るわよ」

 

気配の方を見れば、コウモリ女が、地面に魔法陣を顕現させ、何やら呟いている。

どうやら今の槍は、彼女の仕業ね。だから距離を取ったのかしら。

コウモリ女を少しは見直してあげようかしらね。

 

「どうしよっか?」

 

「いつも通りにやればいいんじゃないの?」

 

尋ねてくる彼に私は答える。

そう、こういった状況は経験してきたのだ。

それこそ実験や訓練と称して、何度も何度もやってきた。

 

「それにしても厄介ね。一応、あっちも戦いの基準は解っているみたいだし。

 流石に遠くに距離を取られると厳しいわ」

 

コウモリ女の遠距離も厳しいが、それを守るように、他の悪魔たちが彼女の前に立つ。

遠距離を主軸として、他がそれを支援する。

彼女の遠距離に気を取られれば配下がその隙を、配下に気を取られれば彼女が隙を突いてくる。

基本的な戦術だけど、だからこそ型に嵌まると対処が厳しい。

 

「じゃあ、少し無茶をするね」

 

そう言うと、彼は私を持ち上げる。そして腰に差していたもう一本の剣を抜く。

その行動に、私は嫌な予感がした。

 

「え、ちょっと!一体何をする・・・って、まさか!?待って、それは一言声をか」

 

「えい」

 

そして私をぶん投げた。

 

いぃぃぃいぃぃやぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!?

 

絶叫をあげながら一直線に飛んでいく私。

流石にこれは想定外だったのか、コウモリ女を守っていた悪魔も直ぐに対処できなかったらしい。

通り過ぎる私を目で追ってしまった。目の前には彼がいるのに。

 

「隙だらけだよ」

 

だからこそ、その隙で命を落とす。

後ろで斬り殺されていく悪魔たちの悲鳴を聞きながら、

投げられたせいでパニックに陥っている私。

そして同じように混乱していたコウモリ女は、とっさに魔術防壁を作る。

だが悲しいかな。私を止めるには技術も、厚さも、強度も足りず、防壁は砕け散った。

コウモリ女は勢いを殺しきれず、私ごとそのまま大木に叩き付けられた。

 

「ナイスコントロール」

 

「絶対に、後で、後悔させてやる・・・!」

 

私を見下す彼に、呪いあれと願いたくなった。

よいしょの掛け声と共に、私を大木から抜き出す彼。

ガフッとコウモリ女が血を吐く。あら、まだ生きてたんだ。

でも、流れ出てる血の量からして、長くはないわね。

 

「お、お前は一体・・・何者なの・・・よ・・・」

 

「うーん、俺は誰なんだろうね」

 

コウモリ女の問いに、彼は首を傾げながら答える。

 

「最後まで・・・私を・・・ば、バカにするのね・・・」

 

「いや、本当のことなんだけど」

 

コウモリ女は、口元を歪め、ガクリと頭を垂れた。

それを見つめる彼と私。ああ、やっぱりこの世界は嫌いよ。

嫌な奴でも、死んでしまうと嫌な気分になる。

血まみれの私は、そのことに何も言えないんだけどね。

 

「さ、日が暮れない内にに町へ行くわよ」

 

私は、コウモリ女を見つめる彼に声をかける。

コウモリ女たちのせいで時間を食ってしまった。下手するとこのまま野宿コースになる。

 

「待って」

 

彼が私の言葉を遮る。

 

「お墓、作ってもいいかな?」

 

「君がしたいと思うなら」

 

「ありがとう」

 

「早くしなさい。日が暮れちゃうから」

 

私は彼の言葉を、少し嬉しく思った。

 

 

「こんなもので良いかな?」

 

こんもりと盛られた土の山がいくつか出来た。それは全て、私たちが殺した悪魔たちのお墓。

殺し殺されるのがこの世界の常識だけど、やっぱり供養はした方が良いかもね。

ただ、十字架を刺しておくのはどうなのかしらねぇ。

だって十字架って、悪魔にとっては致命的な殺傷物じゃなかったかしら?

まぁ、いいわね。

 

最後に墓の前で十字を切る彼。

一見すれば、死者のために祈りを捧げているんだけど、

駄目押しのとどめを刺してる気がするのは何故かしら。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「そうね。誰かさんがお墓を作って時間を食っちゃたけど、急げばまだ間に合うかしら」

 

星が見え始めた空を見つつ、私は彼に言う。

 

「それじゃ、君の機嫌を損ねる前に、急ぐとしようか」

 

「お願いだから丁寧に走ってよ、君・・・って、めんどくさいわね。

 いい加減、君は名前を決めなさいよ。毎回、君とか貴方とか言うの大変なんだから」

 

私の言葉に彼は頬を掻く。

彼と出会ってから少しだけど、いい加減、名前を決めてほしいのよねぇ。

それによって、私も対応を変えなきゃいけないし。

 

「でも、俺は施設だと番号で呼ばれてたんだよ?名前を決めろなんて言われても・・・」

 

あーもう!苛々する!

私の感情が伝わったのか、彼は慌てて答えた。

 

「わ、わかったよ!ジーク、ジークって呼んでよ。

 取りあえず、俺の元になった名前の一部だって、施設の人は言ってたし」

 

「そう、ジークね。じゃあジーク。さっさと町まで走りなさい。

 そうね、あとはお風呂に入れてくれたら最高かしら。

 誰かさんが、私をスコップ代わり使ったせいで泥だらけよ」

 

「ときどき思うんだけど、君って結構我儘だよね?」

 

ジークの皮肉に私は黙る。決して、図星だからじゃないわよ。

溜息を吐くジークは、私を腰ベルトの鞘に戻し、町へと駆けて行く。

 

あ、そうだ。私が誰か言ってなかったわね。

私の名前は・・・って、前の私の名前を言っても意味ないわね。

しいて言うなら、グラムリアってとこかしら。

今までのことと、名前でピン!と来ると思いうけど、『魔剣グラム』に宿ちゃった転生者。

それが私よ。


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