思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

21 / 43
ただの思いつきの短編擬きです。
途中、少しグロテスク?な表現がありますので、ご注意ください。



一誠大好きっ子(邪神)
一誠大好きっ子(転生者第一弾)


兵藤一誠には、同い年の弟がいる。

名前を兵藤優一、一番優しい子になってほしいという両親の願いからだ。

二人は双子であったが、二卵双生児なのでそっくりと言うわけではない。

一誠にとって、優一は大切な家族であり、大切な弟であった。

ゆえに、一誠はなにかと兄らしいことをしようと考え、行動した。

 

しかし、一誠と優一には大きな差があった。

優一は、とても頭もよく、運動でき、なおかつ人に好かれやすかった。

もちろん、一誠もそれなりに出来る子だ。

もちろん、一誠だって好かれている。

でも、なぜか周りは優一を見るようになっていった。

優一を評価するようになっていった。

 

何をやっても、優一君の方が、何を頑張っても、優一君の方が、

何をしても何をしても何をしても・・・・・・、周りは弟の優一を見るようになっていった。

何をやっても優一よりも低い、劣っている。

それは一誠の自信を少しずつ削り取っていく。

 

家での両親は、分け隔てなく一誠と優一を愛している。

分け隔てなく一誠と優一のことを考えてくれている。

それが一誠の心に負担となっていく。

それが一誠の心を不安させてくる。

それでも、一誠は兄らしくしようと、優一の兄であろうと努力し続けた。

 

だというのに、何故か一誠の周りは優一へと流れていく。

家の隣に住んでいた男の子も、かつては一緒に遊んでいた仲だった。

でも、いつの間にか優一と一緒に遊ぶようになっていった。

 

 

どうして?

 

なんで?

 

僕だって頑張っているんだよ?

 

僕だって、優一に負けないくらい必死なのに

 

なんでみんな優一を見るの?

 

誰も僕を見てくれないの?

 

助けてよ

 

僕を見てよ

 

僕がここにいるって、誰か認めてよ

 

 

 

一誠の心は限界だった。

優秀過ぎる弟の存在、頑張っても認められない努力、周りの姿。

彼を追い込むには十分すぎるものだった。

 

ああ、僕は・・・

一誠は全てを諦め心を閉ざそうとしていた。

それが自分を守るのに一番簡単だったからだ。

一誠が目を、耳を、心を閉じようとしていた時、声が聞こえた。

 

「あなた、私の友達になって!」

 

 

 

 

 

 

 

『オキテオニイチャン! オキテオニイチャン! 

 オキナイト、フライングボディープレスヲスルゾー!』

 

「あと5、6分・・・寝させてくれよぉ・・・・

 今、禁断の果実がこの手に・・・ゴファ!?」

 

俺は唐突な衝撃に、身体がくの字に曲がる。

肺の空気を一気に掃出し、俺は咽ながらも目を開ける。

 

「やっほ!起きた?」

 

俺の目の前には、自分を笑顔で見つめる少女がいた。

 

 

 

 

「私は宇都、新芝宇都よ(ニイシバ・ウト)。

 この町に引っ越してきたの、よろしくね!」

 

そう言って、自分に手を差し伸べる宇都に、一誠は戸惑った。

なにせ、一誠はこういったことを何度も経験している。

自分と友達になってほしいと言ってくれた子はいた。

隣に住んでいた男の子もそうだった。でも、気付けば優一の方に行っていた。

誘っても、優一の約束が先だと、断られるようになっていた。

だから、一誠はその手を取ることに躊躇した。また裏切られると思ったから。

 

「もう、恥ずかしがり屋なんだからー」

 

そう言うと、宇都は一誠の手を掴んだ。急に手を掴まれたことに、一誠は吃驚する。

なにせ、相手から手を掴まれたことは無かったからだ。

 

「私が友達になろうって言ったんだから、貴方はもう私の友達なの。

 だから、私の手を取らなきゃダメなの!」

 

「それってオウボウなんじゃないの?」

 

「良いの!私が決めたんだから!」

 

「そんなムチャクチャな・・・」

 

「ほら、私が名乗ったんだから、貴方も名前を言いなさい」

 

宇都のムチャクチャな言葉に、一誠はしどろもどろに答える。

 

「一誠・・・」

 

「そう、一誠ね。じゃあ一誠、私は約束するわ」

 

宇都は一誠の手を強く握る。

 

「私は貴方を裏切らない。私が来たからには、もう絶対に傷つかせない。

 私がずっと、貴方の傍にいるわ」

 

気付けば一誠は、宇都に抱きしめられていた。

 

 

 

 

 

 

「一誠のお母さん、一誠を起こしましたよー!」

 

「いつもありがとうね、宇都ちゃん」

 

「いえいえ、私の仕事なのですから!」

 

未だ痛む腹を押さえながら、俺は二人を恨めしく見る。

 

「そんな目で見ても駄目よ、遅く起きる一誠が悪いんだから。

 少しは優一を見習いなさい。もう学校に行ってるのよ」

 

母さんのその言葉に、俺は苦い思いがこみ上げる。

 

「一誠のお母さん、私の仕事を無くさないでくださいよー。

 一誠を起こしに来るために私がいるのですからー。ね、一誠?私に感謝してるもんねー」

 

宇都がチラリと俺を見ると、こくりと首を縦に振る。

俺は少し気恥ずかしくなった。

 

「はいはい、解ってるよ。だったらもっと優しく起こしてくれても良いじゃんか」

 

「え、良いの?優しく起こしていいの?本当に?」

 

俺は宇都の表情と声に寒気を感じ、「やっぱなしだ!」と首を横に振る。

 

「えー、一誠が言ったんだよー?酷くないー?」

 

「今の表情を見たら、誰だってそう思うぞ!女の子の表情じゃなかったわ!」

 

そう、まるで餌を前にした肉食獣のような顔だった。

絶対にヤバいって!

 

「一誠、女の子の顔をそんな風に言うもんじゃないぞ?

 宇都ちゃんの顔は、お父さんからしても綺麗だと思う」

 

「あらやだ、お義父様。そう言っていただけると嬉しく思います」

 

「ちょっと待て、なんか字が違うよな?なんか違う意味で言ったよなその言葉!?」

 

俺の言葉に、宇都は「な、なんのことかなー?」としらばっくれるが、

目がゆらゆらと揺れているのが丸判りだ。

 

「わ、私、外で待ってるからねー」

 

そう言って、彼女は玄関へとそそくさと走って行った。

逃げたな・・・俺は確信した。

 

「一誠、早くご飯を食べて支度しなさい。宇都ちゃんを待たせちゃ駄目よ」

 

母さんの言葉に促されるように、俺は朝食の席に着いた。

 

 

 

 

「おっす一誠、宇都ちゃんを連れて登校ですか羨ま死ねー!」

 

「俺らに見せつけんじゃねぇぞボンバー!」

 

学園の校門前で、俺は二人の男子から羽交い絞めをくらう。

羽交い絞めにしたのは、坊主頭と眼鏡男子。前者が松田で、後者が元浜だ。

共に俺の親友なのだが、登校時は毎回絡まれる。

 

「おのれ一誠、俺と元浜がモテないというのに、お前は美少女とリア充ライフを満喫しやがって!」

 

「俺たちは親友だったというのに!一人だけ抜けしおって!許せん!」

 

「二人とも、一誠と仲がいいねー」

 

宇都の言葉に、二人は顔をにやける。

 

「そうです宇都さん!俺たちは一誠と、し・ん・ゆ・う・だからな!な、一誠!」

 

「ええ、そうですよ宇都さん、俺たちはずっ友ですから!」

 

「だったら現状のこれはなんだってんだ!お前等は俺に何の恨みがあるんだよ!」

 

「うるせー!幼馴染と登校なんてエロゲ・シチュエーションの体現者が!」

 

「お前はモテない男子の敵だー!」

 

「うん、みんな仲良しだねー」

 

宇都の言葉とは裏腹に、俺は校門の前で、声にならない声で悲鳴を上げるのであった。

 

 

 

 

 

「いやー相変わらずねー。見ていて飽きないわ」

 

教室に入って席につけば、眼鏡を掛けた女子が話しかけてくる。名前は桐生藍華。

俺たちと仲良くしてくれる珍しい女子だ。

 

「あ、桐生ちゃんおはよう」

 

「宇都ちゃんオッハー。いや相変わらず可愛いわねー、ちょっと胸触っていい?」

 

「え?いいよ?私、桐生ちゃん大好きだし」

 

「ごめん、今ので自分が許せなくなったわ」

 

「?」

 

桐生が床に崩れ落ちる姿に、宇都は首を傾げている。

こうしたボケなのか本音なのか判らないが、宇都はこういうことを平気で言う。

結果、元浜も松田も、宇都の前でエロネタを言わなくなった。もちろん、俺もだ。

一回、松田がパンツ見せてと言った際、「私ので良ければいいよ?」と返され、

松田は無言のまま、地面に頭を叩き付けながら土下座をしたことがあったのだ。

元浜もスリーサイズを聞いた際は、「触ってたしかめた方が早いよ?」と返され、

ただ一言「すみませんでした」と謝っていたこともある。

 

「元浜君も松田君も、頑張っている姿とか、普通にかっこいいのになー」と言った際は、

「俺たち、真っ当に生きようと思う」と、二人に決意させた経緯もある。

結果として、俺たちの駒王学園のモテモテ計画は破たんした。

だが、何故かそれで良かったのかもしれないと思うのだ。理由はよく解らないけど。

 

そんな風に、俺たちがワイワイしていると、外の方でキャーキャーという声がする。

見ると、赤い髪と黒い髪、そして白い髪の女生徒と、金髪の男子生徒が歩いていた。

 

「おー、学園の二大お姉さまの御登場ね。あらマスコットにイケメン王子もいるわね」

 

教室から外を見ていた桐生が言う。

その声は他の生徒とは違い、至って普通だ。いや、周りが叫び過ぎているのか。

 

「それにしても凄いわね。あの人たちが通ると、みんな声を上げるんだから。

 ま、人気者の性って奴かしら」

 

「そうだねー。本当にすごーい」

 

宇都が間延びした声で応える。その声色に俺は何となく違和感を感じた。

 

「って、あれ?後ろにいるのって一誠の弟?」

 

「「・・・」」

 

俺は無意識に手を握りしめる。

 

「ほんと、彼奴ってすげぇよな。成績優秀でスポーツ万能、挙句にイケメンときたもんだ。

 なんか、あそこまで行くと嫉妬すらわかないわ」

 

「そうそう、なんつーか、別世界の人間?って感じ。

 それに、俺からすればなんか怖いんだよなぁ。こう、腹に何か抱えてそうでさ」

 

松田と元浜は、直ぐに「わりぃ」と俺を見て謝ってくれた。

 

「いや、いいよ。あいつは俺よりも凄いってのは事実だし。

 まいったなぁ、兄貴の面子丸潰れだわ・・・」

 

俺は自分で自分を情けなく思う。

彼奴に兄貴らしいことをしようと頑張っても、彼奴は簡単に俺を越えちまう。

だから俺は・・・。

 

「一誠」

 

沈み込もうとした俺はハッとする。

 

「私は、一誠が今のままでも良いと思う。私は今の一誠も大好き。

 だから無理しなくていいんだよ?」

 

「ば、何急に言ってんだよ!?」

 

「何って、私の気持ち」

 

首を傾げる宇都に、俺は気恥ずかしさで顔を背ける。

 

「見てつけやがってコノヤロー!」

 

「孫に囲まれて老衰で死ねー!」

 

「ほんと、面白いわね」

 

周りの声も、俺には聞こえないほどに、俺は顔が熱かった。

 

 

 

「それじゃあね、一誠。また明日」

 

「おう、また明日な」

 

俺は家の前で宇都と別れた。宇都の家は俺の家の近くだ。だから、毎回俺の家に来る。

もうかれこれ、出会ってから長い時間だが、本当に解んない時がある。

毎回俺を起こしに来たり、隙あらば抱きついて来たり、俺は毎回ドキッとする。

今日もそうだ。

あの告白まがいの言葉に、俺は悶々とする。

くそ、やっぱいいように弄ばれているのか?あー、もう!

 

俺は母さんにただいまと言うと、直ぐに部屋に駆け込み、ベッドに飛び込んだ。

俺は、ベッドで横になりながらも、彼奴の言葉の意味を理解しようと、悶々とするのであった。

 

 

 

 

 

 

「ふふん、可愛かったなぁ」

 

私は彼の真っ赤になった顔を思い出し、自然と顔が笑顔に歪む。

まるで完熟トマトか、リンゴのように真っ赤になった彼の顔。

うんうん、思い出すだけでも口から涎が出ちゃう。

って、いけない、本当に垂れてた。

慌ててハンカチを取り出し、口元を拭う。回想は家に帰ってからにしないとね。

自然と足が速くなる。

 

 

 

それにしても、

 

「本当にいたんだねぇ」

 

私は一振り返り、一誠の家がある方へと目を向ける。

『本来いるはずのない弟がいる兵藤家』へと。

 

「ま、それを言ったら私もそうね」

 

いるはずのない『キャラクター』・いるはずのない『弟』・いるはずのない『私』

『筋書から外れた物語』『役割を失った者・それを奪った者・それを補う者』

これがこの世界。

 

「ま、私はどーでもいいしー」

 

私はニンマリと笑う。

そう、どうでもいい。私にはどうでもいい。これは私の本音。

誰がなにをしようと、誰が誰に成り代わろうと、誰が誰を救おうとも、私にはどうでもいい。

 

だって私には

 

 

 

「ん?」

 

私の後ろで何か音が聞こえた。

なんだろうと後ろを振り向こうとしたら、背中に衝撃が走り、何かが砕けた音が響く。

気が付けば、私は壁に叩き付けられていた。

 

 

 

 

「グヘヘヘエhエエヘイエヘエイエ、良い音だぁ」

 

それは毛むくじゃらをした塊だった。毛の塊に大きな手足があった。

そして、つぶらな二つの目と、大きな口があった。

それは怪物だった。

その怪物の趣味は、綺麗な女を殴り、その身体が砕ける音を聴くことだった。

怪物が追放されるまでは、正式な場で多くの女悪魔を砕いてきた。

だが、怪物は満足しなかった。満足しなかった結果、怪物は人間の世界に逃げた。

初めは戦々恐々していたが、自分を殺すための追手が来ることもなく、

今ではこうして、この町でのんびり趣味に没頭しているというわけだ。

 

「さぁあぁぁあぁて、良い音もきぃけえたぁぁしぃ、ごはんにしちゃおうおうおうお」

 

怪物は、壁に叩き付けた手を退かす。その怪物の趣味はもう一つあった。

それは、砕いた相手を食べるということ。

強張った骨も綺麗に砕け、柔らかい肉が食べられるという、

趣味と食事が混ざった、まさに一挙両得な食事法だ。

 

さて、今晩もおいしい食事にありつけたということで、

怪物は獲物有様を見ようとして、「あのさぁー」声をかけられた。

怪物は、その声に振り返ると、そのつぶらな瞳を震わせた。

 

「これは酷いんじゃないのー?」

 

そこには、身体がくの字に曲がった、血まみれの女が立っていたのだから。

 

 

 

「いったぁぁぁい!」

 

私は力の入らない足で踏みとどまり、なんとか立つ。

が、どうやら背骨が砕けているらしく、イナバウアーのように逸れるか、

くの字の前に歪むかで、身体のバランスが取れない。

視界が後ろに行ったり前にいったりと、気持ち悪くなってきた。

って、腕も普段の方向とは逆方向に曲がってる!螺子のように捻じれてる!

取りあえず、身体を前向きにして、顔を相手に向ける。

 

「あーもう!折角思いにふけっていたってのにー!なんでお楽しみタイムを邪魔するのかなー?

 それとも何?私にはお楽しみをお楽しむことすら許されないって訳?

 は?ふざけんなよ!こっちは愛しい一誠と、明日どうしようかと考えていたってのにさー!」

 

「」

 

「ちょっと、黙ってないで何か喋りなさいよ!私をこんな体にしやがってさ。

 あんた、酷いって自覚無いの?ないわけ?」

 

あーもう、頭がふらふらする・・・って、うわ、私まっ赤じゃん。

道理で視界が真っ赤に染まってると思ったら、血を流してるじゃん。

ったく取りあえずどうにかしないとね。

 

私はフラフラな頭を冷静にして、念じる。

それは本来いない存在が、

この世界で生きるために『渡された・願った・奪い取った・望んだ。押し付けられた』力。

 

 

すると、私の脚元に広がる血だまりと影が盛り上がり、二重らせんのように私を包む込む。

 

「あーあ、普通に生きたかったのになー」

 

そして、私は力を使った。

 

 

 

私は、自分の身体を確認する。うん。腕も身体も出血もなし、うん、元通りね。

私は安堵を感じつつも、今の自分の姿に溜息を吐く。

頭から大きな山羊の角を生やし、黒いドレスを纏う私。

自分の足を見れば、それは人間の足ではなく、山羊のように短く、蹄だ。

その私の足元から、影から、そしてドレスからは、無数黒い手がうごめいている。

これが、『私が神に押し付けられた力』

勝手に殺されて、勝手に選ばれて、勝手にこの世界に放り込まれた私には、

ある意味相応しい姿かもしれない。

 

「ああぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!?」

 

あら、私の姿を見て、目の前の怪物が発狂してる。

まぁいっか、私もこの姿は嫌いだし、さっさと済ませちゃおっと。

 

私は、発狂している怪物を捕まえるように、黒い手に指示を出す。

私の身体なので、念じるだけ十分なんだけどね。

 

「いやだぁぁぁぁぁあああ!助けでぇ!じにだぐないぃぃぃ!」

 

怪物は黒い手から逃げようと必死に足掻くも、そうは問屋が卸さない。

しっかりとラッピングさせて貰いまーす。

そして、黒い塊となったそれを見ながら、私は右手を掲げ、そして、

 

「えい♪」

 

握り潰した。

 

 

 

 

 

 

「おはよう宇都、今日もいい天気だな」

 

「おはよう一誠!会いたかったわー!」

 

私は一誠に抱きつく。

はー、一誠の香りが良いのですわー!極楽極楽ですわー!

 

「ばかっ!急に抱きつくな!臭いをかぐな!」

 

「えー!?いいじゃなーい、減るもんじゃないしー!」

 

「俺の大事な何かが減るんだよ!」

 

「はーい止めまーす。一誠に嫌われたくないし」

 

私は一誠から離れる。

おや、一誠の顔があかいねぇ?ふふん、照れてるのかしら?

 

「ところで一誠、訊いて良い?」

 

「なんだよ、突然・・・」

 

「私の恋人になってくれませんか?」

 

「」

 

私の言葉に、一誠は時間から隔離された様に固まってしまった。

あれ?もしかして間違えたかしら。

 

「おーい、一誠?もしもーし?起きてるー?」

 

私は、固まった一誠をつっつき、撫でまわし、クンクンし、撫でる。

 

「ばっか、おま、急に何言ってんだよ!?」

 

「だって昨日、私、言ったじゃん?好きだってさ。それでどう?」

 

私の言葉に、一誠は顔を背けつ、頬を掻き、そして

 

「取りあえず・・・よろしく」

 

「はい!」

 

私は一誠の出して右手を、両手で包み込んだ。

 

私には一誠がいればそれでいい。

それが、この世界で自分の与えられた役割だとしても。

本来の世界を盗られた彼を守れるなら、私はそれでも構わない。

たとえそれが、原作キャラと、私と同じ存在と刃を構えることなっても。

それは同情かもしれないし、憐れみかもしれないし、傷の舐め愛かもしれない。

でも今では、それも構わないと思っている。

せめて、私は好きに生きようと思う。自分に正直なろうと思う。

一誠が好き、それが今の私の気持ち。この世界の一誠を。私が幸せにするの。

 

なぁに、何があっても世界は回るわ。

既に狂って(原作とかけ離れて)いるんだから。

私は、照れてる一誠を見て、そう思った。




平行世界だからこそ、こんな転生者がいても良いと思った。
ちなみにこの世界の一誠は、ただの一般人です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。