思いついたことを書いてみた   作:SINSOU

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親しき仲にも

親しき仲にも礼儀あり。

これは長年の友人関係などにおいて、耳が痛い言葉である。

気心を解りあった友人同士だからこそ、礼を忘れてはいけないという意味だ。

関係というものは、些細な擦れ違いや不満の積み重ねによって、容易く崩れてしまうものだ。

それこそ、納豆が決め手となり、離婚に至るのだから。

 

さて、私立駒王学園の生徒会室にて、現生徒会長である蒼那支取は頭を抱えていた。

内容に関しては、別に学園に関わる重大な件でもなければ、

それこそ、生徒会長である自分に及ぶようなものでもない。

 

ただ、『駒王町全体に関わる問題』であり、生徒会長の蒼那支取ではなく、

悪魔のソーナ・シトリーとして、胃に穴が開くような『超』重大内容であっただけである。

内容としてはこうだ。

 

長年の友人であるリアス・グレモリーが、自身の問題である婚約話を解消するため、

ライザー・フェニックスとレーティング・ゲームをすることになった。

ただ、試合は10日後となり、

初のレーティング・ゲームということや、相手が無敗のライザーであるので、

自分たちは特訓のために10日間山籠もりの修行をする。

なので、その間の駒王町の管理はよろしくね!byリアス

という内容である。

 

彼女らが住んでいる駒王町は、前任者のクレーリア・ベリアルの死後、

リアス・グレモリーが引き継いだ、悪魔が管理する土地である。

勘違いしてほしくないのは、悪魔が管理すると言っても、支配でないことだ。

映画やアニメにライトノベルのような、人間を奴隷扱いしてはいない。

もちろん、一方的に搾取している訳でもない。

あくまで、人間と悪魔の共存関係を目指している場所である。

そして、駒王学園もグレモリーが管理する学校である。

学園のトップは悪魔関係者で占められ、ぶっちゃけ悪魔が管理する学校だ。

まぁ、そんなことは一般人の生徒は知らないのだが。

 

閑話休題

さて、そんな悪魔が管理する駒王町であるが、

先述したとおり、管理者はリアス・グレモリーである。

ソーナにとって、彼女は長年の親友だ。

赤い髪を靡かせ、自分にはない大きな胸部装甲を携え、

母方のバアル家の滅びの魔力を宿すなど、なんというか凄いのだ。

もちろん、ソーナ自身もリアスに負けない才能と力を持っているのだが。

 

そんなことはどうでもいい、重要なことではない。

ソーナが頭を抱えているのは、

そんな友人のリアスが自分になんら相談なく、

唐突に『超』重要案件を放り投げてきたことだ。

それも、ちょっと手が離せなくなるからよろしくね!な感じでだ。

 

ソーナは思った、「ふざけないでください」と。

いくら友人のリアスとは言え、流石に思うところはあるのだ。

もちろん、友人であるリアスの頼みなら、できうる限り助けたい。

だが、限度があるというものだ。

 

「無いです。正直これはないです」

 

リアスにとって、自身の婚約解消は重要なことだというのは、ソーナも理解できる。

ソーナ自身、婚約相手をチェスで打ち負かし、破談にさせているからだ。

だがそれは、ソーナ自身で決着をつけたことだ。

もちろん、婚約話の破棄で、家族や相手方に迷惑をかけて事は理解している。

でも、嫌だったんだからしょうがない。

 

だが、リアスの行動はなんだ。

仮にも駒王町の統治者であるのに、私情で領地を開けっぱなしにするとは何事か。

ましてや、それを駒王学園で仕事に追われている私に投げるとは何事か。

もちろん、私を頼ってくれるのは嬉しいことだ。

だが、物事には順序というのもがある。

例外を作ってしまえば、そこから綻びが出てしまうのだ。

だから、上は下にとって手本でなければならないというのに。

 

「どうしますか、会長」

 

副会長である椿姫が、心配そうに声をかけてくる。

 

「これが大丈夫に見えますか?」

「いえ」

 

私の返答に、椿姫は直ぐに首を振るう。

匙や他の生徒会のメンバーを見れば、全員の顔が引きつっている。

 

「会長、せめて人前ではその顔は止めた方が良いです。

 正直、見ていられません」

「解りました。ありがとう、椿姫」

 

顔を隠す様に、ソーナは書面に目を落とす。

そして書面の内容に震えだす、怒りで。

 

「さて、急な案件が来ましたが、私たちに拒否権はありません。

 これから10日間、みんなには無理を強いるでしょう。

 ですが、私たちの頑張りが、町の人々を護ることに繋がります。

 ですのでみんなさん、この10日間を生き残りましょう」

 

ソーナの叫びに、匙が大きな声で返答し、続くように他の子たちも声を上げる。

その姿に、ソーナは「ありがとう」と感謝せずにはいられなかった。

 

ところで、基本的に悪魔は何をしているかというと、使えそうな下僕を増やすことであり、

リアスのような領主の活動は、主に領地の管理である。

 

まず、新たな悪魔を増やすということだが、

今の悪魔は、戦争によって数が激減し、子供の出生率が低い故に数が減少傾向にある。

そのため、数を増やすことは、自分たちを生き長らえさせるための命の綱となっている。

だが、だからと言ってやたらめったら増やしても良い訳ではない。

重要なのは、力を持った悪魔を増やすことである。

天使や堕天使に対抗できる資質を持つものが好ましいと言える。

どこも、弱い存在などいらないというのだから世知辛いものだ。

 

そして、悪魔を増やすための足掛かりとして、契約が行われている。

悪魔召喚の魔法陣が書かれたチラシを配布し契約を結ぶ、ということだ。

召喚された先々で願いを叶え、代償として代価を貰う。

まぁ、命を賭してまで行うような者はいないので、大抵はお金やら物が代価となるのだ。

こうした積み重ねによって、徐々に契約者を増やしていくのだ。

 

そして領地の管理であるが、これはそのままの意味だ。

領地は基本、領主によって管理されている。

故に、領地で起こった問題等は領主の責任であり、その対応をしなければならない。

まぁ、主に領民に害をなす存在の討伐や、地域安全のパトロールと言ったものだ。

こうした活動も立派な領主の役割である。

 

さて、ざっくりと説明出来たわけだが、こうした活動は夜に行われる。

なぜかって?夜は悪魔の時間だからだ。

 

こうした活動は、基本的にオカルト研究部として活動しているリアスたちがメインであり、

生徒会として活動しているソーナたちには、こうした活動はあまり関わることはなかった。

 

そしてこの10日間はリアスたちがいないので、

こうした活動は全てソーナ達にぶん投げられました。

そしてソーナ達にも生徒会という仕事があり、忙しいと言えます。

 

さてここで問題です。

今まで役割分担でなんとか動いて活動が、一時的だが一方に集中することになりました。

上手くやっていけるでしょうか?

 

 

 

「みんな、大丈夫ですか・・・?」

 

「まだ・・・何とかいけます」「私も、まだ大丈夫です」

 

心配するソーナとそれに答える眷属たち。

だが、双方ともに目の下に薄らと隈が出来始めている。

 

さて、リアスたちが山籠もりをしてから数日が過ぎたわけだが、

生徒会室のソーナ達は半ば疲れ果てていると言える。

なにせ、仕事量が一気に増えたのだからだ。

 

変態トリオの一角である兵藤一誠がいないとはいえ、

残りの2人が相変わらず問題行動を起こすせいで、生徒会はいつものように対応に追われる。

そして、行事の取り決め、部活動の書類管理など、生徒会の仕事は変わらない。

そこにリアスの仕事が追加されたのだ。

忙しくなるのは当たり前である。

 

もちろん、召喚されればお仕事としていくわけだが、これがまた大変と言える。

イケメンの木場を目当ての女性陣や、アーシアや小猫を望んでいた客層から小言が来るのだ。

もちろん、仕事はしっかりと行うものの、やはり不満は言われる。

その小言によるストレスが、少しずつだが積み重なるのだ。

悪魔だって、メンタルが強いわけではない。

 

そして、毎回行う領地内のパトロールにしたって、交代とはいえ常に緊張の中で行うのだ。

不審者や怪しい存在を見逃せば、そのせいで民間人に被害が出るかもしれないのだから。

ちなみにパトロールでない方は、契約のお仕事に向かうので、双方とも忙しい。

 

結果として、この数日間、ソーナ達は休みをあまりとれていないのだ。

一応、数時間の睡眠をとるものの、無茶をしていることに変わりはない。

というわけで、始めてから数日間で、既にソーナ達は死屍累々となっていた。

だが現実は非常であり、リアスたちが帰ってくるまでまだ日数がある。

リアスたちがまだ帰ってこない以上、自分たちがやらなければならない。

 

ソーナは、後でリアスに文句を言ってもいいのではないか?と、

生徒会室のカレンダーを見ながら、親友に対して恨み言を考えるようになっていた。


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