異世界召喚されたと思ったら意外とチートだった 作:日々はじめ
そろそろ遅延しすぎてる自分が憎く感じてくる。
―――当たらない。
幾度となく繰り出してきた技は嘲笑われるように躱されていく。
―――なんでッ!
心の中でそう思う。
相手は、低ランクの猛獣なのにっ!こっちは格上だから当たらない道理はないのにっ!
―――また躱していく、【未来】でも見えてるの!!
目の前にいる
それは高ランクの相手を手玉に取るほどのもの。
その光景に呆気に取られているのはカロムだけではない、司会も観客も皆同じだった。
フードの奥に隠されている表情は、わからない。
∽
うっわぁ…、今思ったけどこれひょっとしなくても俺死ぬじゃん。
身軽な動きで攻撃を躱していた
へファイスがもつ身体能力を継承しているため勝負にはなっているが流石はssランクといったところだろう。
重、と突然頭の中に声が響いた。
【
へファイスがもつスキルの一種だ。
考えていることを相手に伝達、また受け取ることができるとても便利な能力だ。
何か、いい案でもあるのッ!?あったら早く教えて、今にもやられそうなんだけどッ!!
異世界召喚されてからまだひと月も立たずに死ぬなんてこの界隈での最速リタイアになるじゃん!と俺は訴えかける、しかしへファイスから伝えられた作戦は非常にも無理無謀な作戦だった。
・・・何、躱し続けていれば相手が勝手に魔力切れして自滅する、だから切れるまで躱し続けていればいい。
へっ?と間近まで迫ってきた
そこでようやく思い出す。
契約獣となるものを顕現させるだけで自身の魔力が吸われていくのだ。重はその無尽量の魔力量のお陰でなんとかなっているが普通より少し多い魔力量だったらもったとしても数十分だろう。
先ほどからカロムの額から汗が滲んでいるのはそのせいなのかもしれない。
わかった!そうなったら・・・ッ!
へファイスの考えを実行するため躱し尽くしていこうとそう思った矢先俺は
それを見逃すカロムではない、これを好機と捉えてか頬を少し綻ばせる。
∽
目の前の
それだけでもう十分だ。
ありったけの魔力を自身の相棒へと流し込む、もうこれで終わらせる。
その時、ふと思った。
この感情はなんだろうか。
ssランクを仲間にする前に持っていたこの感情、強者を対峙してきたときに沸々と湧き上がる感情。
あぁ、思い出した。
―――これが、楽しいっていうことなんだ。
久しぶりに思い出したこの感覚は自分が好きなもの。
それを思い出させてくれたこの強敵には敬意を払わなければならない。
「
その咆哮を受けた者は塵すら残さない大技、それが
∽
足を窪みに入れ体制を崩してしまった際に相手が技を繰り出してきた。
俺の直感がこう告げる。
死ぬ、と。
まだ死にたくなかった俺は自身に化していた約束を破るほかなかった。
へファイスの能力の禁止。
つまり、炎属性の禁止というわけだ。
ならどうやって勝つつもりだったか?と問われるわけだが、まぁ、そのへファイスの身体能力を受け継いでいるわけだし余裕余裕と思っていました、はい。
へファイスの技はどれも強力で当たればssランクも一溜りないだろう、しかし、
しかし、ここでへファイスの技を使わなければやられてしまう。
それほどの大技だと分かった。
「
…自分でも凄く安直な名前だと実感しているがこの攻撃はまぁ、強い。例えるなら水素と酸素をこうかき混ぜてそれを発火させ起きる大爆発を一点に凝縮させたものみたいな感じである。ほんとに強い。
大地をも揺るがし、人々をも恐怖に陥れていたソレは重の体をも滅ぼそうと襲いかかる数コンマ前、そこに都市一つを悠々と消し飛ばすことができる技とが激突する。技と技とがぶつかってしまった際そこに莫大なエネルギーが生じ土煙が宙を舞う。重は威力の調節をしていたため土煙が生じるだけで済んでいたが本気で技を出したときのことを考えただけでも悪寒が走る。
端から見れば直撃だ、これで勝負はついたと観客や司会は思い込んだ。
しかし、
「なんで…ッ!!まだっ生きてるのよォッ!!!」
カロムの悲痛な叫び声は、無傷で佇む獣へと向けられる。
あ、危なかった、あと少し反応が遅れてたら死んでいた。
重は次ぐ次ぐ思う、やはりssランク相手には舐めプはやめたほうがいいということに。
両者は睨め合いつつ間合いを一定に保ったまま動き出す。
本当に、いつ決着がつくのかのかと観客たちが固唾を飲んで見守る最中終わりはやって来た。
一人のボロボロの騎士が突如として会場へと転がり込んできたのだ。
突然のことでポカンとすることしか出来ないなかそいつはカロムに大声で地面に伏しながら懇願する。
「どうかッ!助けてくださいッ!!」
息を切らしながら、言う。
「炎龍の住み処の洞窟から最低ランクs以上の獣たちがこちらに向かい進行し出しましたッ!!」
その言葉は、俺とヘファイスとカロム以外の力のないものたちを絶望の淵へと追いやるのに十分すぎる言葉だった。