異世界召喚されたと思ったら意外とチートだった 作:日々はじめ
A.考査とか、シャドバとか、模試とか、シャドバとかシャドバで忙しかった。
『
それは、カード所有者が集まり自身の持つカードが一番強いということを決める大会のようだ。古来よりこの魔族の都市<アイオーン>では伝統的な行事であり、優勝者には称号と多額な賞金が授与される。
ルールは至ってシンプル。
1.相手のカードの生き物が気絶、又は死亡を確認したとき。
2.不正が発覚した場合失格。
3.決められたフィールド内から出た場合失格。
たった、この3つである。
ルールを見ればわかる通り相手を殺すことも認められているため血が流れるのも少なくはない。大切な仲間が死ぬかもしれない可能性もあるわけだ。しかし、俺はというとルールそのことを考えるより先にある一つの問題に対して頭をうなされていた。ギルドの受付嬢カルムはsssランク所持者というのは公にするものではないと忠告された手前、このように人が集まるところでへファイス、世界最強の『炎龍』を出すわけにもいかない、しかし、ほかのカードを持っているかと言われたら否としか答えることができない。
幸い、
「ごめん!ヘファちゃんッ!sssランクだから祭りには参加さえないほうがいいかも知れないんだけど一つ案があるんだけどいいかな?」
「ふむ」
「今から、獣のカードを手に入れることってできる?」
両手を丁寧にそろえ、頭を直角に曲げつつ謝罪を述べた後自分が考えてみたことはどうだろうかということを聞いてみる。
「…祭りが開催されるまでの時間を考慮してみても難しいな」
はい、僕の望みがすべて消え去りました。しかも、追撃をかけるようにへファイスが続ける。
「重、実は先ほど噂で聞いたのだが今回の祭りにssランク保持者が来ているらしいんだ。付近にいる魔物では相手になるまい」
Why?今、何て?
ssランクと言えば、sssランクには及ばないもののその次に強力な者ども、それを所持している奴がおると?しかも、噂があるっていうぐらいだからそれなりのギルドクラスなのかもしれない。待って、まじで辞退を考えるレベルなんだが。
「ギルドクラスってどれくらいかわかる?」
ギルドクラス。
それは、冒険者の働きによって自動で上がっていくもののようだ。クラスが高ければ高いほど優遇されていく。FからSランクまで存在し、Sランクまで行くと年に数千万の稼ぎさえ手に入れることができる。この世で手足の指だけで数えられる数しかいない、まさに、冒険者の中の冒険者だ。
「あんちゃん達も、その噂耳にしてんのか、お生憎様そのssランク保持者というふざけたやつはAランクだとさ、まったく、今年はレベルが段違いだぜ」
俺は、いきなり後ろから声をかけられ驚きつつその方向へと首を回す。そこに、そいつはいた。俺が初めて『死』の扉を開けた時に初めて遭遇した奴。
「ギルドにいた変な服装の奴ッ!?」
俺は、そいつに指をさして人が行き交うところで叫んだ。
「変な服とは失礼な奴だな…新人冒険者になったお祝いにお前が欲しがっている情報を与えようと思っていたんだが」
「いやぁ兄貴!今日もイカした服を着こなしてますねェ!まじリスペクトっす!まじかっけぇっす!」
「…重のその素早い掌返しには感服だ」
上から順に、ギルドにいた大男、重、へファイス。そんな中重の心中はというと。
ひゃはぁ―!見た目は大男で怖い印象を受けるが大抵こういう奴はチョロイ!経験じゃねぇ!俺の感覚がそう骨の髄まで訴えかけてやがるんだ!!
「Aランクの冒険者の名前はカロム、今回の優勝株だとよ」
ん?と、俺はその名前を聞いたとき何故か引っかかった。
そして、それがギルドの受付嬢カルムの名前に酷似しているのを思い出した。
「…名前が似ているだけで赤の他人だよな、それで悪いんだけど受付の場所ってどこにあるか教えてくれないか?」
俺がそう訊いたとき男は吃驚した。その反応が当たり前でそれが普通だ。この世界に生まれたものは昔からランクとその脅威について教え込まれていたのだ。Bランクまでなら人の手でどうにかなるレベルだがそれより上、つまりAランクからは選ばれしものしか太刀打ちできない代物、今回のssランクはもはや神の領域といっても過言ではないだろう。つまり、その話を聞いてもなお参加すると重は言っているのだ。神に、戦いを挑もうと、いうのだ。
「…やめておけ、新人じゃどうにかできる相手じゃない、ssランクと聞かされ辞退した者も少ないくない」
「新人とか、そういうのなしにしようぜ?俺は、受付の場所を知りたい。そういってるんだ。」
それから、数秒の沈黙が流れた。
その、沈黙は長い長い溜息で破られた、そして、それは忠告してきた大男のものであって、それと同時に俺の力強い懇願に根負けしたという証明をも表していた。
「そこの、曲がり角を右に曲がったところにある」
大男が角を指差しながら言った。その返答に俺は満足し足をその方向へと進めた。使えるカードはないが俺はある案を思い付いていたのでこれから行われる戦いに対しての緊張が体の中を渦のように掻き回す。
「…死ぬなよ」
大男の声は、観衆の声かはたまた単純にか重の耳には届かなかった。
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受付を済ましていた俺たちは時間になるまでヘファイスと祭りを堪能していた。無論、お金がないのでただ回るだけだが。
「…しかし重、使えるカードがない限り敗色濃厚だが一体どうするつもりなんだ?」
ヘファイスが訊いてきた。
確かに俺は使えるカードはないが使えるものがひとつだけある。
それは、チート染みた能力のひとつであり未だあまり使っていないもの。
「そうだな…まず一回、人気のないところへ移動しようか」
人気のないところに移動した俺とへファイスは、向かい合うように立ち会っていた。
「いいか?今から俺は
「…は?」
唐突にそんなことを言ったら誰だってこういう反応をするだろう。へファイスの目はまるでゴミを見るかの目だった。
待って!そんな目で見つめないで!!何かに目覚めちゃう!
「…なるほど、そういうことか」
へファイスは顎に手をかけながら思考し、重が考えていることを察する。
「模倣の魔眼、だな?」
へファイスが答え合わせをする子供のような顔で見てきたので頷いてあっていることを伝える。
「いいか?段取りはこうだ」
段取りを丁寧にへファイスに伝える、それは一句とも聞き逃さまないと真剣に頷くへファイス。
「つまり、この祭りで私が冒険者役で重が猛獣役を演じるというのだな?」
物の内容はこうだ。
本来ならば契約獣であるへファイスと契約者である俺という形で戦うがへファイスが使えない上ほかの契約獣もいない、ならここで出番となるのが模倣の魔眼というわけだ。
模倣の魔眼は見たもの受けたものありとあらゆるものを模倣し、魔法は無詠唱となるものだ。では、ここで一つ考えてほしい。見たもの受けたものありとあらゆるものの模倣ならばここに来る途中に見た
そんな、チート万歳の能力なんて百利あって一苦あるみたいなものではないか!
「・・・」
そんなことを見事に
「まさか、ここまで本物と見分けがつかないほどまで模倣するとは…いやはや、重のそのスキルもあまり見せびらかすものではないだろうか」
「そんなこといわれても、この能力を分け与えた奴に言ってください、お願いします」
そういえば、
模倣した後のへファイスの態度の変え方を不思議に思い訊いてみる。
「なんか、さっきから目が輝いているような…」
そこでへファイスはえっ!?といった感じの反応をした。
無意識であそこまで輝いている目を演出するとはこの子やるわね!と内心感心して喉を鳴らす。
「いや、なに。いつもはこういった可愛い獣の頭とかをこのように間近で見たことがなくてな…。大抵は逃げられるか襲われるかのどっちかだったためこういった知り合いが獣に化けた時って撫でられるかな?と…。いやッ!別に撫でたいわけではないぞ!ただ単に興味があるだけでどういった感触か知りたいとかそういうことも考えてないし、やましい気持ちもないし撫でられたら撫でられたら重も嫌だろうし…撫でさせてください、お願いします」
・・・。へファイスが意味不明なことを早口で捲りたて最終的に自身の思いに負けた。
その光景を傍観していると
「…だめ、か?」
不覚にもドキッっとしてしまう。
突然顔を近づけて少し弱弱しい声でこういわれたら全国の
その結論には特に意味もなくその結論が必然であり偶然でありそれが世界が定める結論だ。
そんな結論に歯向かうほど俺は馬鹿じゃない。
無言で俺はへファイスに頭を下げ、撫でていいよというアピールをする。そうすると、へファイスの顔は驚くように晴れやかとなった。
手を恐る恐る伸ばしてくる。それに対し俺はじっとそこで静止している。
へファイスの小さく透き通った肌が頭に触れる。炎龍とは思えないほどその手は冷たくまた、心が温かいことをわからせる。
「んっ…」
胸に手を与えつつへファイスがぎこちなく撫でてて来る、ぎこちなくても気持ちいい、再度俺は喉を鳴らす。
それは、
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ウワァァァ――――――‼
観客には熱気が携わり、それは一つの狂気と言えるほどまでなっていた。この
司会が大声で話す。
『さぁー!皆さん盛り上がってるかぁー‼』
その雄たけびに呼応するように観客のボルテージもヒートアップしていく。
『今回はなんとッ!Aランク冒険者カロムの参加により大勢の辞退者が発生する中唯一参加するとした選手がいましたッ!まずは、その勇気に大きな拍手を‼』
拍手が鳴り響く。
『まずは、Aランク冒険者カロムの登場ですッ‼』
司会がそう言うと会場には一人の選手が入場してくる。見た目は獣人族を思わせる耳と尻尾が特徴的で髪は薄い水色、目つきはキリッとしていてそれはとても勇ましく感じ肝心の胸はとてもシャープな形を成している。
カロムはただ前を見ている。それは、勇敢ある選手をこの目で見ようという敬意、それだけだった。
『そして、新人冒険者である重選手の登場ですッ‼』
観客はその選手を見た瞬間今まで放出していた熱気がすぐに収まった。それは、カロムも同じで名前からして男だということを予測し、よほど逞しい体つきをしていると考えていたが、それは考えであって結果ではない。
それを、証明するかのように目の前の人物は驚くほど期待とはかけ離れていた。
フードを深くまでかぶり、その顔は見えない。そして、男とは思えないほどの身長と、その細さ、カロム自身女ながらその細さは羨ましく感じた。
「…」
へファイスはフードを深くまで被りながらあることを考えていた。
まさか、辞退者が多く出て我たちとあやつらのみしか参加していないとはな、まぁ、早めに終わって好都合だな。
さて、ここでフードはどこから?と思った人、それは、単に重が模倣の魔眼で作り上げたものである。物さえ作り上げれればお金も作れるんでは、とへファイスが訊いたところこう答えた。
そんなんじゃ、冒険っぽくない。
重の価値観が分からず、へファイスはため息をついたのは記憶にも新しい。
フードを被る理由は正体がばれてしまう可能性を考慮していた、ギルド内で少しばかり騒ぎになったいい例もありそれが要因だ。
『両者、カードをッ!』
司会のその合図にまず先にへファイスが動く。
華奢な手からカードを投げるとそれは眩い光に包まれて一匹の獣を生み出した。
「
その声には、失望の念が込められていた。カロム自身最近胸が躍るような戦いをしてこなかった、この祭りが終わったら炎龍が住むという洞窟に訪れようかと思っていたほどだ。Aランクに挑むのだからそれなりの力があると加味しすぎていた。
なら、こんな試合はとっとと終わらせよう。
一枚のカードを上空に投げる。
そして、呟く。
―――顕現せよ、
感想や指摘などありましたらお願いします!
さて、ようやく聖猛獣祭が始まりました、そして断言します。
次で聖猛獣祭終わります(迫真)