異世界召喚されたと思ったら意外とチートだった   作:日々はじめ

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暇があればへファイスの絵とかを描いてみたい。


第3話 冒険者

 祭りのように賑わう街。豪華な彩飾をされてる建物はさながら荒野に咲く一輪の花のように美しくそれが全体に広がっている。それに感嘆せざるを得ない俺はみっともない声を口から発することしかができなかった。それは、至って普通の反応だろう。異世界召喚(?)された神木重は元はと言えば地球の日本の住民なのだから。

 

 こう言ってはなんだが日本の家は至ってシンプルなものが目立つ。単色や2色から成り立つ壁ぐらいしか見どころがないといった見解を持つ重にとっては目の前に展開される光景には圧倒されるほかない。

 

 中国古来から伝わるシノワズリ、ヴェルサイユ宮殿で有名なバロック様式、またそこから派生されていくロココ美術などといった世界をまたにかけて市民層から富裕層に多く支持される作品などはご存じだろうか。一目気に入ってしまえばその美しさに魅了されてしまい、それは、個人が持つ美術的視感をより高度なものへと発展させ『固定的観念(ステレオタイプ)』を形成させていくだろう。固定的観念(ステレオタイプ)を持ってしまえば最後、どんな美しいものを作り上げたとしてもそれは世界をまたにかけることはできないため玩具としか評すことができなくなってしまうのではないだろうか。つまり、固定的観念(ステレオタイプ)は、美術に対しての観念の死の半分を与えるものではと考えることができてしまう。

 

 神木重もまたそのうちの一人であった。

 

 中学時代に文学部に所属していた彼は美術というものにとても惹かれてしまった身なのである。しかし、お気づきの通り彼には感嘆せざる得ない光景を見ているのである。ここまで言えばどれだけ美しい光景が広がっているか想像できるだろう。

 

 「――――ここが都市<アイオーン>!」

 

 やっとここまで来た!、その気持ちで一杯だった俺は嬉しさと素晴らしい家たちに出会えた気持ちの相乗効果により、両手を天に上げ叫んでいた。様々な人間が忙しそうに錯綜している中幼女を連れた若い男が立ち止まって叫んでいるならばそれは注目の的となるのは自然の理だ。それに気づいたへファイスは顔を恥ずかしさのあまりか熟したトマトのように赤く染め上げ隣に立つ重に注意を促す。

 

 「嬉しいのはわかるが、ここじゃ目立つ!早く目的を達成したほうがよいのではないか?」

 

 その言葉に美しさというものに囚われていた俺の意識は現実世界へと戻ってくる。へファイスが言った目的、それは各都市にしか置かれていないギルドなるものに関係してくる。

 

 端的に言おう。

 

 重は、冒険者を目指す、ただそれだけだ。

 

 何故か。それは重が初めての出会いであるへファイスに関係してくる。へファイスはその強大な力を求めて多くの冒険者たちと邂逅してきた経緯がある。それは、理由もさながら態度に対しても最悪といっていいほどの気持ちを味わい、長い間独りぼっちを経験してきた。sssランクであるが故の運命だと割り切って言い切っていたへファイスの顔はとても悲しさに満ち溢れたものとなってしまった。

 

 あのような顔をするsssランクがほかにもいるのではないか?と考えた重はお人よしだと思われてしまうかもしれないが〝助けよう″と、そう心に決めたのだ。

 

 そのために冒険者になるのは必須だった。冒険者になれば宿屋などの金額が安くなったりといろいろとうれしいことが盛りだくさんだからだ。

 

 「…、しかし都市とは言えなんか盛り上がりすぎてないか?祭りでもやっているのか?」

 

 明らかに人たちの熱気がおかしい、日本の都市でさえこんな盛り上がり方はしていない。

 俺は、へファイスとギルドを探しながら思い考えていた。

 すると、へファイスは店に置かれているポスターみたいなものに目を釘付けにしていた。しかし、俺はそれを気に留めることなく呼びかける。

 

 「ヘファちゃん、何見てるかわからないけど早くいくよー!」

 「…そうだな、重。

  急ごうか。」

 

 へファイスはこちらに向かいながらもポスターから目を離さずトテトテと走ってくる。

 幾分か歩いているとそれはあった。

 建物と言っては微妙な形をしておりピラミッド形状のものが平べったくなっており地面との距離を近づけている。さながら、ボロブドゥールみたいなものが異様な威圧感とともにそこに立っていた。

 

 俺は、緊張した。なぜなら、その異様な威圧感に似た雰囲気を俺は味わったことがあるからだ。ここに来る道中で襲ってきた白狼(ホワイトウルフ)達との命を懸けたやりとりをした時のソレと酷似している。つまり、ギルドは冒険者という役職を与える変わりに『死』という人が一番忌み嫌うものを隣に定着させるのだ。

 

 その『死』の扉が開かれる。

 

 まず、一番最初に視線を浴びた。大きな建物だったためそれなりの人数が押し寄せており見渡してみると俺と打って変わって頑丈そうな肉体と2mをほこるような高さを要している人物や変わった服装をしている人などなど俺の場違い感をより一層引き立てるものであった。

 

 すると、椅子に座り込んでいた大男が俺の目の前まで歩いてきた。あまりの大きさと恰好で俺は吃驚した。前開きのボロボロの赤い服によくわからない黒いズボンが印象的だった。

 

 「…、見ない顔だな、冒険者希望か?」

 

 俺と隣に立つへファイスの顔を舐めるように見ながら聞いてきた。確かに、こんな弱そうな人二人が冒険者とはおかしいのだろう。実際、大男の発言に数人が噴き出し、あんなヒョロイ奴がっ!と笑っている。

 

 「そ、そうだけど、なんか文句があるのか?」

 

 俺は、ここでは屈してはいけないと直感で感じ大男に向かって言い放った。

 

 「いや、何可愛らしい彼女を連れているからな、そうか」

 「彼女ではないぞ」

 

 へファイスの即答が胸に痛みをもたらす。

 

 「まぁ、いい。登録するんだったらそこの受付に行きな。」

 

 ほう、思ったよりはいい人なのかな。そう思い礼を告げる。

 

 「恩に来ます」

 

 それから様々な洗礼(?)を受けた俺たちはとあることに気付いた。最初は心の奥底から刺すような視線を向けていた彼らは思った以上にその、なんだ、あれだ。

 

 とてもフレンドリーだった。

 

 へファイスと一緒に歩いていると、ひそひそ声で、しかし、しっかりと聞こえる声で「やだねぇ、あの子あんな小さい子に手だしているわよ」「ほんとぅ、もぅ、怖い世の中ねぇ」などなど〝男″どもが言っていてなんだと!といったら、顔を綻ばせ肩を組みどんちゃん騒ぎしだしたりする。

 

 「なんていうか…逆の意味で予想を裏切られた」

 「ふむ、我はよい経験になったぞ」

 

 疲れ切った俺の顔とは反対にへファイスは人の意外な一面を知れてうれしかったのだろうか顔が嬉しさで満ち溢れていた。

 受付で登録するために待っていた俺は登録した後どうするか考えていた。sssランクを探す旅に出てもいいのだが何しろ路銀が足りなすぎる。なら、答えは決まっている。

 

 「ヘファちゃん、登録を終わらせたらお金稼ぎに行こっか!」

 

 お金は人生の中で2番目に俺の中では大事だからね!と思いながらへファイスに聞いてみる。すると、へファイスが何かを言おうとしたがそれは叶わなかった。ちょうどそのとき受付嬢である人物が現れたからだ。

 

 「お待たせすみません!私、獣人族で新人受付嬢であるカルムといいます、本日はどういったご用件で?」

 

 …、はて、どういうことだろうか?と俺は心の中で思った。それもそのはず俺はへファイスから教えてもらったのだから。

 

 「獣人族って昔戦争で負けて奴隷になったんじゃ…」

 

 目の前にいる女の子は身長140㎝後半といった感じで栗のような色彩を持つ髪とそれに比例している耳と尻尾、目つきはへファイスに少し似ており色は真紅の赤色だ、しかし、どうだろうか太古に行われた戦争で獣人族と妖精族は奴隷となった、そう教え込まれてそれは誤認であったのがすぐに発覚する。カルムは説明してくれた。なんでも、奴隷となったのは貧民層でありほかは普通に暮らしていると。

 

 「ヘファちゃんや」

 「な、なぁに重?」

 

 へファイスは自分の間違いに気づきそれを責められると思ったのか甘ったるい声で返事をしてきた。

 

 「---いや、なんでもない」

 

 間違いを責めるのはやめよう、間違いを責めていいのは間違いを知っているものだけでいい。

 

 「えっと、それではいいですか?」

 

 カルムは、俺たちの一部始終を見てそれが収まったと感じ話し始めた。

 

 「冒険者希望でしたらここにある、球体に手をかざしてみてください」

 

 そう言われて今さっき取り出されたものを見る。

 これはなんだろうか?そう考えてみるがすぐにその思考は切り捨てられることとなる。

 それは、人知の異なるものだとすぐに理解したからだ。

 

 「こう、ですか?」

 

 俺は、戸惑いながら手をかざすとその球体は光を発した。どのような原理かはわからない、しかし、俺はこの光は知ってる。いや、これは俺ではなく、この世界に生を受けた者なら必ず知っているであろうものだ。その光が収まると受付嬢であるカルムの手にはカードらしきものが握られている。

 

 「はいっ!これで登録完了ですっ!わかってると思いますが冒険者になりますと金銭面にそれなりの余裕ができる措置が行われます、それにそれに!レベルと称号が付くことになります、こちらについてご説明は必要でしょうか?」

 

 レベルと称号。

 PPGゲームをそれなりにやっている人は聞き覚えのある単語だろうか。まぁ、レベルは上がれば上がるほどそれ相応の恩恵が、称号は二つ名的なものだろう。

 

 「いやっ、大丈夫だ」

 

 わかりました!と大きな声で返事したカルムはカードの確認作業へと移っていった。どんなものが書かれているんだろうか?そうワクワクしながら待っていると突然カルムがビクンッと身を跳ね上がらせ俺たちを、いや正確にはへファイスを見て震えていた。その時点で俺はある程度察することができた。

 

 どうかした?

 

 カルムに声をかけてきた先輩らしき人は突然急変したカルムが心配になり声をかけてきた。カルムはままならない、例えれば言葉を覚えたばっかり赤ん坊のように言葉を発する。

 

 「・・・・ぁ!・・・ぁぁ!!」

 

 ヒラリとカルムの手からカードが落ちる。

 それを、先輩らしき人は手に取り、

 

 「すみません、うちの後輩が…」

 

 そう言って、カードを見ようとした。

 見られてはいけないそう思ってはいるけど時間と体が追い付かない。こういうときこそヘファちゃんのチートスキルが顕現されるときじゃ!と思って俺は隣に座るヘファちゃんを見る。

 

 「・・・」

 

 すぴーという声が聞こえる、目は閉じられている。つまり、これは、あれか。

 

 寝ている、ということかね!

 

 俺の、頭の中ではもう終わったと告げていた。確かに、途中からヘファちゃん喋ってなかったし疲れていたんだもんな、寝顔が可愛いしもういいや。と自暴自棄になり果てていた。

 

 先輩らしき人は、震える。

 

 「なんです、か、これは…」

 

 継ぎはぎだらけの言葉が今見ているカードの異常さを裏付けていた。

 

―――――――――――――――――――――――

 

Name 神木重 A:0 B:0 C:0 D:0 S:0 Mp:E

 

種族 人間

 

レベル1

 

称号 【】

 

ギルドクラス【F】

 

所有カード 『炎龍』sss

 

スキル 模倣の魔眼 見たものまた自分に受けたありとあらゆることを模倣し発現できる。魔法の場合無詠唱となる。

 

―――――――――――――――――――――――

 

 炎龍、それを知らないものはいない。

 

 それは、なぜか?

 

 最強があるが故である。

 

 炎龍が火を噴けば辺りは塵と化し。

 

 炎龍が地を踏めば死体の山を作る。

 

 炎龍がーーー

 

 そういった伝承をもつ生物がレベル1の、いや冒険者でもなかった人物に従ったっていうの?目の前の女の子が炎龍なのは納得できる。特定のランクから発現できる能力があるからだ。

 

 うん、よし、決めた。

 

 「カルム、あとは任せたわよ!」

 

 後輩に投げ出すのが一番ね!

 

 「あっ!ずるいですよ先輩!!」

 

 先輩、次会ったらただじゃ済まさないんで。そう、心の中で強い決意を宿し、混乱の要因となる人物二人へと顔を戻す。ふんだっ!炎龍っていっても今はこんな幼い女の子なんだから怖くないんだから!少し目を擦りながらこちらに向けている顔は考えようによってはいいかもしれない!!屈しないよ、炎龍になんてっ!

 

 「さ、先ほどは大変お見苦しい所をお見せいたしてしまいました。その節は誠に申し訳ございません。しかし、かの有名な炎龍様とそのお供のお相手をさせて頂けるなどこのカルム光栄の極みであります。炎龍様はここから数十キロのところでお住みになられていると存じ上げております。ならば、喉のほうが少しばかりか乾いてはおられないでしょうか?差し支えなければ飲み物とまた、胃袋を満たすような愚民が買うものですのでお口に合うかわかりませんがご用意させていただけ「長い」すみませんでしたぁ!」

 

 カルムは先ほどと打って変わった態度で接しまた長い言葉で羅列し始めたのを見てへファイスが制すと座っていた椅子から下がり土下座で謝罪してきた始末だ。

 

 先輩のバカ!相手は炎龍だよっ!屈しないほうが無理だよ!!

 

 「…ふむ、私がいると話が進まんな。どうする、重、戻っておくか?」

 

 それは、カードになっておくか?ということを意味していた、確かに先ほどからまったく話は進んでいない。

 

 「いや、そのままでいい」

 

 まずは、炎龍もといへファイスのイメージを払拭することが先決、という結論に辿り着いた重は床に額を擦り付けて綺麗な土下座をしているカルムの傍まで行き、ポンッと頭に手を乗せてやる。

 

 「お前らが思っているより炎龍はいい奴だよ」

 

 その言葉にカルムは頭を上げ自分の手に乗せる重とへファイスを見やる。

 確かに、先ほどから炎龍は友好的な態度しか取っていない…、本当に炎龍には害を与える気がないの?とカルムは考えていた、伝承と言ってもそれは昔の人が作ったおとぎ話みたいなもの、炎龍が危険という意識を頭に植え込むだけで守りたかったものがあったのかもしれない。

 

 「…ふぅ」

 

 カルムは、短く息を吐く。膝に手をつきながらゆっくりと立ち上がる。その顔は先ほどとは打って変わっていた。一体何を言い出すのか、そう思い俺は身構えた。

 

 「ではっ!こちらがカードになりますっ!!」

 

 そう言って、満面の笑みでカードを渡してきた。

 

 コイツッ!さっきまでのことなかったことにしやがった!!

 

 俺は、吃驚して固まっていたがへファイスが手渡されたカードを手に取ってみて疑問に思う。

 

 「このABCDSというのはなんだ?」

 

 確かにカードにはそう記載されていた。

 俺は横目でカルムを見つつどこかでこれを聞いたことがある気がした。

 

 「はいっ!Aというのは物理的な攻撃力、Bは物理に対しての防御力、Cは魔法の威力、Dは魔法に対する防御力、Sはどれぐらいか早いかを表している。」

 

 炎龍に対しおびえ切った顔はその影を今はひそめていた。

 てか、これ、わかるよ、俺。

 

 ポ○モンみたいなやつだ。

 

 「それとですね、重様、sssランク所持者というのは黙っててもらえますか?」

 

 上目遣いでこちらを見るカルム、嗅いでいて気持ちのいい匂いが鼻の奥をくすぐり胸の心拍数は急上昇する。その体の変化に戸惑いながらも答える。

 

 「なっ、なんでだ?」

 「はい、sssランク所持者というのだけで御棺がついてしまい、新人冒険者だということも発覚してしまえばそれをよく思わない輩に狙われる危険性があります、炎龍様がついているとはいえ不意打ちなどにはさすがに対処できません。」

 

 まったくもってその通りだと俺は思った。金持ちだけで悪態をつく輩がいたとした場合そのお金持ちに可愛い許嫁がいたとしよう。

 

 ―――うん、絶許

 

 「―--わかった、それは隠しておくよ」

 

 そう言って俺は椅子から立ち上がる。

 

 「行くのか?重」

 「あぁ、目的は達成したわけだし長居するにも意味がないからね、カルム、短い間だったけど世話になった。」

 

 へファイスを連れて出口へと向かう。

 

 「・・・」

 

 カルムは頭を下げただただ見送るだけだった。

 

 「ふぅ、やっとスタート地点に立ったわけか」

 

 ギルド内の緊迫した空気とは裏腹な外の心地よい風を身で感じつつ爽やかな匂いの余韻を楽しみながら次の目的について考えていた。そういえば、ギルド内で路銀について会話していたときへファイスが何かを言おうとしていたのを思い出す。

 

 「―――そういえば、お金の話していたときヘファちゃん何か言い掛けていたよね?」

 「重、実は今この都市<アイオーン>でとある祭りがおこなわれているらしいのだ」

 

 祭りやっていたのか、だからこの賑わいも納得が行く。けど、それとこれとでお金に何か関係するのか?

 

 「祭りで行われるある物で優勝すればお金がもらえるらしいのだ」

 「へぇ!それは今の俺たちには打ってつけのやつじゃないかっ!けど、どこでそれを?」

 「紙に書いてあった。」

 

 あぁー!あの時か!と、心の中で叫ぶ。

 そう、へファイスが店に置いてあったポスターみたいなのを凝視していたときのあれがそうだったんだ!!

 

 「その祭りの名は―――」

 

 

 

 『聖猛獣祭(フィリオ・ファイス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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