[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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ノゲノラは明日、遅くても今週中に。
テニスの王子様も同じくらいに出します。
テニスの王子様は早く終わらせたいなぁ。


決着

 時は少し遡り、森崎が将輝と吉祥寺に奮戦しているとき、一高テントでは議論が交わされていた。

 

「達也君、これはどういう原理なのかわかる?」

 

 真由美が聞いているのは、前触れもなくいきなり魔法が消えてることについてだ。

 

「おそらくですが、『空間転移』の応用です。魔法が何の脈路もなく、痕跡もなく消えることはありえません。魔法が発動しているその空間ごと、移動させているのではないかと」

 

「やっぱりそうよね……ところで、なんで佑馬君は攻めに行かないのかしら」

 

「何か意図があってのことですが、魔法は全て佑馬が消して、森崎が攻撃に専念するといった戦法ですね。これにより、三高は防御に徹するしかなくなります」

 

「つまり、森崎君のクイックドロウで防御される前に倒すといった感じなのかな?」

 

 確かに、今の話から推測するならば、真由美の作戦が一番的確なものと言えるだろう。

 しかし、それは相手が同格以下の話だ。

 

「いえ、いくら森崎家のクイックドロウといえど、あの一条家の御曹司ととカーディナル・ジョージを倒すには至らないでしょう」

 

「え、だったらなんでなの?」

 

「それはわかりません。だからこそ、見てて飽きない」

 

 そういう達也の口元は、楽しそうに笑っていた。

 試合展開は、達也の予想通り三高が防衛に専念しており、客観的にみれば、一高が有利だ。

 

 だが、違う。

 守りに専念している三高の二人には余裕があるが、森崎の動きが少しずつ鈍ってきているのが、モニター越しでも分かる。

 

「……ここまでだな」

 

「え?」

 

 達也の呟きに真由美が何がここまでなのか聞こうとした瞬間、その答えがモニターに見えた。

 

 森崎が『想子』切れにより膝から崩れ落ちたのだ。

 いくら佑馬といえど、完全なゼロ距離から撃たれた魔法を対象することは難しい。

 

 その後の結果が容易に想像出来、誰もが固唾をのんで見守るなか、突如森崎が光に包まれ消えた。

 

 それと同時に、将輝と吉祥寺がCADを向け合う。

 

「……なるほど、考えたな」

 

「え……どういうことなの?」

 

 その光景に、一高テント内はざわついた。

 その中で唯一その意図が分かった達也に、真由美が質問する。

 

「九高との試合を思い出してください」

 

「ええ……同じように森崎君が光に包まれてから、佑馬君の『空間転移』で移動したわよね」

 

「俺たちからすればそう考えられますが、何も知らない、例えば、佑馬が『空間転移』を使えることを知らない人からすれば、それはどう見えるでしょうか」

 

 その言葉にハッとする真由美。

 

「なるほどね。確かにそれを知らなければ、森崎君が何かしたと考えるのが普通ね」

 

「そうです。相手は恐らく『幻術』だと思っているでしょう」

 

「根拠を聞かせてもらってもいいかしら」

 

「ええ。森崎が光に包まれて消えたとき、二人は相方の後ろ(・・)にCADを向けました。これは、九高と戦ったときに森崎が後ろから現れた瞬間に攻撃したことによる対処法だと思われます。自分で守れないなら相手に守らせばいいという考えです」

 

 確かに筋は通っている。

 だが、一瞬で移動させることが出来る佑馬にそんなことをする必要があるのか思案していると、達也が追加でこう言った。

 

「佑馬があんなことをしたのは、森崎を戻すときに安全に戻すためだと思いますよ。人を移動させるときのリスクをしっかりと考慮したのでしょう」

 

「……変なところが優しいのね、佑馬君は」

 

「それは会長もよくご存知なのでは」

 

「それもそうね」

 

 モニター越しでゆっくりと歩みを進める佑馬を見ながら、真由美は佑馬なら絶対に勝てるというどこからか沸いてきた安心感に身を任せ、頬を緩ませながら試合観戦を再開した。

 

◆◆◆

 

「ジョージ、大丈夫か?」

 

「……ごめん、足が動かないんだ……!」

 

 佑馬の将輝ですら今までに感じたことがない殺気を向けられて、吉祥寺は汗を流して膝に手をついていた。

 

 あまりの殺気に、足がすくんでしまったのだ。

 

「そうか……ジョージ、お前はここにいろ。俺は中田 佑馬と戦ってくる」

 

「待って!僕もすぐいくから!」

 

「いや、ダメだ。ジョージは足がしっかりと動くまでそこで待ってろ」

 

 吉祥寺の言葉を聞いて、歩みを進めながら言う将輝。

 それに対して、吉祥寺は悔しそうな表情をしながら見るが、少しして、将輝が歩みを止めた。

 

「……必ず追い付いてくるのを待ってるからな。ジョージがいるからこそ、俺は闘える」

 

「……ああ!絶対に行く……!」

 

 それは、何よりも嬉しい言葉。

 今一番勇気が出る言葉だった。

 その勇気が、吉祥寺の足を動かした。

 

「ジョージ、いくぞ」

 

「そうだね、将輝」

 

 そうして、二人もまた、前へと歩みを進める。

 三人の距離が三百メートルにさしかかったころ、将輝がCADを向けた。

 

 消されるとわかっている、ただの牽制だ。

 

 魔法式が展開され、魔法を構築。

 空気圧縮弾が佑馬の方へ飛翔し、佑馬に後少しで当たる、というところで、魔法が反射され、将輝達の元へ戻ってきた。

 

 それを間一髪で交わす二人。

 

「バカな!!」

 

「魔法を反射させるなんてありえない!!」

 

 その光景に、将輝や吉祥寺は勿論、観客も驚きを隠せないでいる。

 当然それは両高のテント、九校参加者全員もだ。

 

 何もなかったかのように歩く佑馬に、次々と魔法を撃つも、全て反射され、将輝達の方へ戻ってくる。

 どこから攻撃しても、何回重ねても、全て跳ね返される。

 

 吉祥寺の『不可視の弾丸』でさえ、反射されるのだ。

 

 しかも、魔法が跳ね返ってくるため、消されるよりも質が悪い。

 

「どうするジョージ!このままだとジリ貧だ!」

 

「そうだけど、原理が全くわからない!魔法を反射させる魔法なんて聞いたこともないよ!」

 

 三人の距離は三百メートルを保ったままだが、それは少しずつ将輝と吉祥寺が下がっているからだ。

 

 このままだと、佑馬がモノリスに辿り着くのも時間の問題。

 反射されるので、あまり近くから撃ちすぎると魔法を避けられなくなるし、今はしてきてないが、近すぎると向こうから攻撃してくる可能性も出てくる。

 

 正に八方塞がりだ。

 

 なんとか打開策を、と思考を巡らせている二人に、佑馬が喋りかけた。

 

「これを破れないみたいだから、使わないでおくよ。ただ、魔法は使わせて貰うからね」

 

 それは、反射を使わないでやる、というハンデ。

 将輝と吉祥寺は、『お前たち弱いからハンデをあげる(・・・・・・・・・・・・・・・)』と受け取ったらしく、眉をひそめる。

 

 しかし、打開策が無いのもまた事実ため、それを了承するしかない。

 

「無言は肯定。それじゃあ、行くよー」

 

 その言葉の瞬間、佑馬は軽く足元を蹴った。

 

「なっ!?」

 

 そして、蹴られた場所からなんの脈路もなく岩が隆起していき、将輝達の方へと襲いかかる。

 

 それを二人とも横に転がって回避するが、顔をあげて見た佑馬の頭上には、雷の塊が出来ていた。

 

「これは原子から作った雷だ。当たったら少し気を失うから気を付けろ~~よっと!」

 

 その雷の塊を地面に叩きつけた瞬間、比喩でもなんでもなくフィールド全体に雷が走った。

 

 将輝は装甲魔法により、吉祥寺は浮遊魔法で回避、森崎と十三束は何かの光によって守られているが、

 

「ぎゃあぁぁぁ!」

 

 三高のディフェンスはそれを喰らい、気絶した。

 範囲は広いが、威力はないため、レギュレーション違反にはならない。

 

「原子から作るって、どんな魔法だ……」

 

「彼には常識というのがないらしいよ……科学者の僕としては困った存在だ」

 

「十師族の俺としても困った存在だな」

 

 将輝と吉祥寺も魔法を撃っているが、それを全て打ち落とされて佑馬の反撃にあっている。

 

 つまり、攻めても守っても、何も変わらないのだ。

 しかも、使う魔法は全てが理解の範疇を越えている。

 

 それに対して、二人とも苦笑した。

 

「さて、そろそろこの試合も終わらせようか」

 

 佑馬が歩くのをやめて終わりを宣言。

 それに二人ともまた眉を潜める。

 

「この試合が終わるのは、俺たちが勝つときだけだ」

 

「いやでも、終わりだよ。だって、後ろ」

 

 後ろを指差す佑馬に、二人揃って後ろを見た瞬間、二人ともが倒れた。

 

「まさか俺たちにトドメをさせるなんて思わなかったよ」

 

「やっと僕の出番がきたと思ったら、もう終わりか」

 

 そこにいたのは、森崎と十三束。

 喋ってる間に転移させて、後ろからの空気圧縮弾で意識を刈り取ったのだ。

 

「よし、まぁとりあえず優勝だ」

 

 一高の勝利宣言がされ、盛り上がる観客席。

 それに合わせるように手を振る三人。

 

 惜しみ無い拍手が送られながら、三人は退場した。

 

◆◆◆

 

 控え室に戻ると、そこにはジブリールがいた。

 

「佑馬、優勝おめでとうございます」

 

「ありがとう、ジブリール」

 

 森崎と十三束はそれを見てそそくさと控え室から出ていき、部屋にいるのは佑馬とジブリールだけとなった。

 

「あの方達はどうでしたか?」

 

「普通の一年生だったら、一高で勝てるのは達也ぐらいかな」

 

 将輝と吉祥寺は、決して弱いわけではないし、寧ろ一年の中でもトップクラスの実力を持つ。

 ただ、佑馬が異常なだけなのだ。

 

「そうでございますか。確かに彼なら勝てそうですね」

 

「ああ」

 

 そこで、会話が途切れた。

 いや、敢えて佑馬が途切れさせた。

 

 ジブリールも何かを感じ取ったのか、黙って佑馬を見つめる。

 

「なぁ、ジブリール」

 

「なんでございましょうか」

 

「俺たち、付き合い始めてからかなり経つと思うんだ」

 

「そうでございますねぇ……約八十年ほどでしょうか」

 

 そう、他の人たちが聞けば驚く、または信じないだろうが、佑馬は既に三桁にいっており、ジブリールに至っては四桁の後半なのだ。

 

「そろそろ、大きな進展があってもいいと思うんだ」

 

「それならこの前あったじゃないですか♪」

 

 キャッ!と言いながらその時のことを思い出して楽しそうに言うジブリールに、微笑む佑馬。

 

「ジブリール、俺が告白したとき、なんて言ったか覚えているか?」

 

「勿論でございます。『俺は、初めて会ったときから、一目惚れしてしまったんだ。天翼種に主従愛はあれど、普通に愛するという感情はないことを知っている。でも、だからと言って諦められない!なら、その感情をしっかりと理解させるだけだ!呼び捨てを頼んだり、対等な立場を要求したのも、俺の過去を話したのも、全部そのためだ。だから……だから、ジブリール。俺と付き合ってくれないか?』でしたね……ふふ、今でもしっかりと覚えております」

 

 その時のことを思い出しているのか、嬉しそうに微笑むジブリール。

 

「そうか……やっぱり恥ずかしいこと言ってるな」

 

「でも、佑馬のおかげで感情というものを理解出来ました。主従愛ではなく、しっかりとした恋愛もすることが出来ています」

 

「この世界に俺と来て、本当に良かったか?」

 

「佑馬とじゃないと、嫌ですよ?」

 

 恥じることなく、堂々と言い切ったジブリール。

 

「やっぱりジブリールは俺には勿体ないくらいの人だよ」

 

「そんな、佑馬がいなければ、今の私は何も出来ませんよ」

 

 今度は焦ったように両手を振りながら、佑馬の言ってることを否定するジブリールに、佑馬は意を決して言った。

 

「そうか……なら、ジブリール。俺と結婚してくれないか?」

 

「……え?」

 

 ジブリールの前に差し出されたのは、いつの間にか持っていた、綺麗に装飾された小箱。

 受け取って開けると、そこには指輪が入っていた。

 

「私で……いいのでしょうか?」

 

「ジブリールじゃなきゃ、ダメだ」

 

 指輪を取りだし、ジブリールの左手薬指に付けながら言う佑馬。

 

「……喜んでッ!」

 

 ジブリールは泣きながらも満面の笑みでそう答え、二人とも何十秒もの間、熱い口付けをした。




決着は呆気ないものでした。

最後は約束通り少し佑馬×ジブリールを入れてみました。
どうでしょうか。

つまり、この作品で結婚式とかが……ゲフンゲフン

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