[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
投稿サボって練習した結果、3000Mを9分20秒で走れるようになりました。
このペースを5000Mで出せるように頑張ります。
活動報告追加したので、確認お願いします。
佑馬と嬉しがる間も無くアイス・ピラーズ・ブレイクの会場に向かって巫女服を着るジブリール。
達也によって
佑馬は現在、クラウド・ボール会場三高の控え室に侵入し、一色 愛梨の元へと向かっていく。
慰めるというわけではないが、行かなくてはいけないと思ったのだ。
佑馬はジブリールと愛梨の試合を見て思った。
――申し訳ない、と。
愛梨の実力は、ジブリールがいなければ間違いなく優勝出来るレベルにまであり、しかもそれが努力によって身に付いた実力だ。
事実、他を圧倒していた里見 スバルを完封して見せている。
三つある『一』の家のうちの一つ、一色家。
毎回師補十八家に選ばれる有力な家だが、同じ『一』の一条家の影に隠れてしまっている。
だが、愛梨はそこで諦めずに努力を続け、今の実力が身に付いたのだと容易に想像できる。
それなのに、もし今回ジブリールに惨敗したことにより、努力を辞めてしまったら。
それを佑馬は見逃すことは出来ない。
本来なら努力が報われなければいけない。
しかし、結果はジブリールと闘い、そこで力を使い果たして三位。
つまるところ、佑馬は心配だったのだ。
努力をせずとも力があったが、努力によって自分よりも上の力を持った者に情けを喰らって努力をした佑馬だからこそ、努力の大切さとそれが大事なときに報われなかった時の絶望感がわかる。
物言いは上からだが、努力によって裏付けされた力に自信があるだけで、慢心しているわけではなく、寧ろ貪欲に上を目指す努力家。
少なくとも、ここで落ちていい人ではない。
扉まで歩き、控え室の中に愛梨一人だけいるのを確認し、転移で中に入った。
「ちょーっとお邪魔するよ?」
「……っ!?一体何処から入ったのよ」
いきなり声がかけられてビックリしたような声を上げて、顔を下げながらもこちらを睨む愛梨。
やはり、相当落ち込んでいるようだった。
「まぁいいわ……私をからかいにきたのでしょう?あんなに大口叩いていたのだから、当然よね」
「そんなことするために俺がここに来るわけないだろう……てか、俺そんな風に思われてたんだ。結構ショックだな」
「でも、私が無様に惨敗したのは事実よ。栞には偉そうに説教したくせに、本人がこれじゃあ面目がたたないわね」
自嘲気味にそういう愛梨。
「そんなことはないぞ」
だが、それを断じる佑馬。
「努力をしたんだろ?なら、その努力をした自分を褒めて認めてやれよ。そうじゃないと、自分が救われない。でも、それと同時に自分がどれだけ下らない人間なのかを知ることも大事だ。そしたら、少しは楽になるだろ?」
「……私を慰めてくれているのかしら?」
「慰めているんじゃない。ただ、勿体ないと思っただけだ」
「……勿体ない?」
何が勿体ないのか分からない、といった顔で佑馬を見上げた愛梨。
その顔には涙が浮かんでいた。
「ああ、勿体ない。ここまで努力してきたんだろ?『一』の家で一番になるために、そこまでの力を手に入れても、まだ努力を怠っていないんだろ?それだけのことをしているのに、唯一回の負けで終わらせるのは勿体ない。あの試合だって、百点は出せなくても全力は出せてたと思うぜ?」
「……貴方って、実はいい人なのかしら?」
「そういう君はかなり乙女だよね。いつもは上からなのにこういうときは一人で泣いちゃって。ファンや一部の人からしたら堪らないんじゃない?」
「前言撤回。やっぱり嫌な奴だわ」
そして少しの間が空き、愛梨が笑いだした。
「フフフ……いきなり現れたと思ったら格好付けた台詞を口にして、いい印象持ったらバカにして……面白い人ね」
「よく言われる」
そして、愛梨は立ち上がり、佑馬と向き合った。
「礼を言うわ、中田 佑馬。でも、この借りは必ず返すわ。相手から貰いっぱなしってのは癪に触るのよね。それと、私は負けたからって努力を辞めるようなことはしないわ。元から壁は高いのくらい知っていたんだから」
「そうか、それはよかった。ジブリールが認めた奴が簡単に終わってしまったら、ジブリールの目ききが疑われるからな」
笑いながら部屋を出ていこうとする佑馬に、目だけ睨むように、ただ口は笑いながら愛梨が言う。
「またそうやって……そういえば、貴方達って双子なのかしら?全く似ていないのだけれど」
「いや?俺たちは婚約者だよ」
「……え?なら、何故苗字が同じなのかしら?」
ずっと兄妹、双子だと思っていたらしく、婚約者という事実に驚いた声をあげる愛梨。
「それは深い事情があるんだよ。どんな事情かは、想像に任せる」
そして、部屋の鍵を開けて出ていく佑馬。
その後ろ姿を見ながら、愛梨は呟いた。
「……ありがと、中田 佑馬」
◆◆◆
佑馬と愛梨が会っている中、ジブリールが出場するアイス・ピラーズ・ブレイク二回戦が始まろうとしていた。
しかし、今回佑馬が見に来ないのは知っていたため、いつもよりテンションは低い。
「あー、佑馬見てくれないとやっぱりやる気が出ないでございますね。ただ、それで負けたら佑馬になんと言われるか……またねだっちゃいましょうか」
とりあえず、このなんとも言えない感覚を佑馬に丸投げすることに決めたジブリールは、実況を聞き流しながら、相手の選手の力量を見てやる気を出そうとしてみる……が、すぐに萎えてしまった。
「やっぱり、深雪と雫、十七夜という方以外は楽しめそうにないでございますね……」
アイス・ピラーズ・ブレイク二回戦はジブリールの見立て通り、ジブリールの勝利であっという間に終わり、その日の日程は全て終了した。
そして、ジブリールと佑馬は現在、一高の面子と夕食をとっている。
みんなが集まるということは、その日の戦績に喜びと悔しさを分かち合う時間となる。
そして、今晩は見事に明暗が分かれた。
暗は、達也と佑馬を除く一年生男子選手の集団。
明は、達也と佑馬と一年生女子選手の集団。
そして、達也が女子に囲まれているのを片目に、佑馬とジブリールは料理を食べていた。
「はい、佑馬。あーん」
「……あーん」
公開恥辱プレイをしながら。
男子からは嫉妬の目を、三年生トリオはニヤニヤしながらコソコソとこちらを見て話しており、他の人達もチラチラと見てくる、というのが今の現状だ。
「ジブリール。あーん」
「あーん」
「……そろそろいいか?周りの視線が痛いし、正直恥ずかしい」
「仕方がありませんね……まぁ、許しましょう」
ジブリールが許してくれたため、スプーンをおいてグーッと背筋を伸ばした。
そして、まだ何人かの女子がこちらを、主にジブリールを見ているのに気が付いたため、佑馬はジブリールに行くよう促し、ジブリールは少し機嫌が直ったのか、嫌な顔をせずに向かった。
そして、佑馬は三年生の集団へと向かう。
「そこのお三方、そんなに面白かったですか?」
「いや?またやってるなって思っただけだ」
「佑馬君って周りの目線を気にせずにイチャイチャしちゃってるんだから、当然見てるこっちもニヤニヤしちゃうわよ」
摩利と真由美がニヤニヤしながら言ってくるのが何か癪に触ったため、即反撃に出る佑馬。
「いやー、何処かの誰かさんみたいに心の中でおちょくって仕返しされたらすぐ赤面するような女々しい人や、男の家に行っただけでオドオドするような初々しい人に比べたら、堂々としているとは思うけどなー?」
「――なッ!?」
「――そ、それはッ!!」
二人それぞれ、その時の事を思い出してすぐ赤面し、鈴音はほぉ、と笑いもせずに摩利と真由美を見た。
「中田君、その時のことを詳しく教えていただけますか?」
「勿論ですとも市原先輩。まずは渡辺先輩か」
「あーあーあー!悪かったって!」
「そう、じゃあ会長の方からはな」
「きゃー!やめて!お願いだから!」
赤面しながらギャーギャー騒ぐ二人を満足げに笑って、心の中で市原先輩にバッチリ話しといた佑馬は、後はよろしく、と目で言って、先程から女子に囲まれて質問攻めにあっている達也に困ったような目線を受けているため、助けに行こうかと思ったその時。
「不愉快だ!俺は帰る!!」
「おい、森崎」
「どうしたんだ、急に」
森崎が部屋から出ていったため、佑馬は男子のグループで比較的こちらの近くにいて、しかも話しかけられる唯一の一科生に声をかけた。
「十三束、どうしたんだ?」
「ああ、佑馬か。いや、二科生が、というより、司波が女子からあんなに持て囃されているのが気に入らなかったんだろ」
「まだ一科至高主義持ってるのか」
「まあね。そういえば佑馬、クラウド・ボール優勝おめでとう」
「おう、ありがとう。この調子でモノリスも、と言いたいところだが、そちらの調子はどうだ?確か俺はディフェンスなんだろ?」
「調子はいいけど……森崎は佑馬をいないものと見なしていたから、結局ディフェンスは僕になったんだよね……」
その時の森崎の事を思い出したのだろう、苦笑しながら言う十三束に、佑馬も同じく苦笑する。
つまり、三高にも二人で勝とうしていたということになるのだ。
「なるほど、じゃあ俺は遊撃手でもやらせていただきますか」
「そうしてくれると助かるよ。まぁ、森崎も佑馬の実力は認めていると思うから、それなりに意識して上手く行動してくれるとは思うよ」
「まぁ、技量は確かにあるからな……もう夕食の時間は終わりだな。明後日よろしく頼むぞ」
「こちらこそ、よろしくね」
佑馬は十三束と別れ、先に出ようとしていた達也と深雪、ジブリールの元へと向かう。
追い付いたときに、達也から恨めしげな目で見られたが、それをジブリールと話すことにより回避した。
そして会場を出てしばらくたった頃、前方から集団がこちらに向かってくるのが見えた。
そして、先頭にはその集団の中では見馴れた五人がいるのも見えた。
「三高……!」
「あら、一高の皆さんこんにちは。ご夕食でした?」
愛梨の言葉に答えたのは、深雪。
「ええ、お先にいただきました。皆様はこれから?」
「ええ、そうです。入れ違いで残念でしたわ……でも、ここでお会いできてよかった。司波 深雪さん、あなたにお詫びしたいことがあります。私は以前あなたを侮った発言をしました」
愛梨の言葉に、へぇ、そうなんこともあったんだー、と他人事のように呟いたが、ふと愛梨がこちらを見てニコッと笑ったような気がしたため、再び会話に耳を傾ける。
「しかし、私の認識が間違っていたことをはっきりと悟りました。あなたは私たちの世代でトップクラスの魔法師、だからこそ、私は貴方に勝利するために全力を尽くし、この九校戦を第三高の優勝で飾って見せるわ」
堂々と言い切った愛梨。
それに答えるように、深雪は手を差し出しながら対抗するように答えた。
「ええ、そうですね。もちろん私もあなたに負ける気はありませんので、お互い全力を尽くして戦いましょう」
「いい戦いをしましょう」
その差し出された手を握って、しっかりと宣戦布告を果たした愛梨は、今度はジブリールに話しかけた。
「貴女もよ、中田 ジブリールさん。今度勝負するときは、私が必ず勝たせていただくわ」
「いつでも相手させていただきます。しかし、何度やっても勝つのは私でございましょうけど」
「さすが中田 佑馬の恋人ね……性格も本当に似てるわ」
「恐縮でございます」
言葉だけみたら少し関係が悪いのか、と思うが、表情は二人とも笑っているため、その場の雰囲気はどちらかといえば良い方だ。
「完全復活したんだな、一色 愛梨」
「ええ、貴方のおかげで早く立ち直ることが出来たわ。でも、それを必ず後悔させてやるから、覚悟しなさい」
「うんうん、いい答えだね。あ、それとそこの十七夜さんだっけ?勝手に魔法を真似して悪かった。見てたら使いたくなったからつい真似しちゃった」
「使いたくなったから、という理由で『
佑馬に謝られた栞だが、正直、自分が苦労して身につけた魔法をあんなに簡単に真似してしまった佑馬の力量を認めざるを得ないため、諦めた様子だった。
「まぁ、新人戦、九校戦ともに一高が優勝するから、お祝いの品でも用意して待っていてくれ」
「残念だが、優勝するのは俺たち三高だ」
「少なくとも、モノリスで僕たちに勝てるとは思わないでください。いくら身体能力や演算能力が高いとはいえ、魔法の腕はこちらが優位なことに変わりはありませんから」
先の試合で、身体能力と演算能力、加速魔法しか見せていない佑馬は、本気の片鱗すら見せていないのだが、どうやらクラウド・ボールの試合を見て勝てると思われたらしく、それがとても滑稽に思えた。
「まぁ、それはモノリスで対戦すればわかるよ……それじゃあそろそろいいか?」
「ああ、邪魔したな」
そうして、一高はそれぞれの部屋へ、三高は食事会場へと入っていった。
ifルートで真由美や愛梨を作るのもよさそうですね。
……愛梨はジブリールがいないと無理か……いや、深雪がいるから問題ないかな……。
というか、一高一年はただでさえ優秀なのに、佑馬とジブリールが入ったら他の高校涙目になりますよね。
現時点で新人戦優勝ほぼ確定しているし……。